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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1396507 |
総通号数 | 16 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-05-26 |
確定日 | 2023-03-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6532347号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6532347号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6532347号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「SUNTANK」の欧文字を横書きした構成よりなり、令和3年7月8日に登録出願、第9類「コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),ダウンロード可能な携帯電話機用のアプリケーションソフトウェア,力計,インバーター(電気式のもの),太陽光発電インバータ,電池,蓄電池,バッテリーチャージャー,光電池,太陽電池,電力管理用の電気式制御装置,無線LAN用電気通信機械器具,遠隔制御装置,エネルギー管理用の電気式制御装置,電流センサー,太陽光発電用太陽電池モジュール」を指定商品として、同4年2月22日に登録査定され、同年3月23日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の5件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第5509574号商標(以下「引用商標1」という)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成22年1月27日に登録出願、第42類「太陽エネルギーに関する調査及び研究,太陽エネルギーの研究についての技術的助言」を指定役務として、同24年7月27日に設定登録されたものである。 2 登録第6021716号商標(以下「引用商標2」という)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成29年5月9日に登録出願、第9類「光電池,光電池用モジュール,太陽光発電インバータ,太陽電気生成用の太陽光発電装置」を指定商品として、同30年2月23日に設定登録されたものである。 3 登録第6036046号商標(以下「引用商標3」という)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成29年6月1日に登録出願、第19類「セメント及びその製品,合成建築専用材料,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」及び第37類「建築設備の運転・点検・整備,照明用器具の修理又は保守,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守」を指定商品及び指定役務として、同30年4月13日に設定登録されたものである。 4 登録第5606767号商標(以下「引用商標4」という)は、「サンテックパワー」の文字を標準文字で表してなり、平成25年4月18日に登録出願、第9類「太陽光発電装置,太陽光発電装置用のパワーコンディショナー,太陽光発電装置用のモニター装置」を指定商品として、同年8月9日に設定登録されたものである。 5 登録第5663275号商標(以下「引用商標5」という)は、「サンテックパワー」の文字を標準文字で表してなり、平成25年4月18日に登録出願された商願2013−29407号に係る商標法第10条第1項の規定による分割出願として、同年5月17日に登録出願、第9類「蓄電池」を指定商品として、同26年4月11日に設定登録されたものである。 以下、引用商標1ないし引用商標5をまとめていうときは、「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 1 申立人の登録商標及び申立人等が使用する引用商標について (1)申立人は、太陽光発電のセル・モジュール製造販売を行う中国の会社であり、日本国内で太陽光モジュールシステム販売を行う「サンテックパワージャパン株式会社」の親会社である(甲2)。 (2)引用商標1ないし引用商標3は、それぞれ白抜きのS字を模した図と文字列「SUNTECH」を横並びにして配置するものであり、図の部分において色が違う点を除き、同一の商標である。また、引用商標4及び引用商標5は、標準文字「サンテックパワー」である。 (3)「サンテックパワージャパン株式会社」のホームページ、「PV Expo 2017 (PV Expo 2017 第10回[国際]太陽電池展:東京ビッグサイト)」の展示ブース、展示会「PV EXPO 2016」の展示ブース、及び千葉県にある「ZOZOマリンスタジアム」において表示される広告には、引用商標3の商標が表示されている(甲2)。 (4)「サンテックパワージャパン株式会社」は、「東京電力グループTEPCOホームテック株式会社」と業務提携をしており、東京電力グループと共同で事業を実施している(甲2)。 (5)「日経産業新聞」(2009年6月25日)において「生産量で世界3位の太陽電池メーカー、中国のサンテックパワーのブース」及び「日刊工業新聞」(2009年6月26日)において、「サンテックパワーは太陽電池生産量で世界3位」と記載されている(甲2)。 (6)「サンテックパワー」の太陽電池モジュールは、世界中の主要な太陽光発電施設に採用され、ドイツの第三者調査機関 EuPD Research社が毎年実施する調査において、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリアでの「TOP BRAND PV 2021」を6年連続で受賞した(甲2)。 2 申立人の登録商標及び申立人等が使用する引用商標の周知性について (1)甲第2号証によれば、引用商標3や、「SUNTECH」、「サンテック」、「サンテックパワー」(引用商標4及び引用商標5)、「サンテックパワージャパン」の標章が、本件商標の出願日(令和3年7月8日)及び登録日(令和4年3月23日)において、「サンテックパワージャパン株式会社」及び申立人の使用する標章として、日本国内及び外国において周知・著名であることは明らかである。 (2)株式会社電通東日本による「企業認知度・イメージに関する調査 集計結果レポート」(2014年12月実施:ネットリサーチ)のアンケート結果によれば、「サンテックパワー」という会社が太陽光発電システムを取り扱う会社として、一般消費者に認知されていることがうかがえる。また、新幹線での広告や、テレビCMも実施していることが確認され、2014年時点において相当な広告活動を実施していた事実が存在する。また、これら広告、CMには、引用商標3が表示されていることが確認できる(甲3)。 (3)以上の(1)及び(2)によれば、引用商標3は、サンテックパワージャパンが太陽光発電システム(装置)、発電事業、保守管理業務について使用する商標として、本件商標の出願日(令和3年7月8日)及び登録日(令和4年3月23日)のいずれにおいても、サンテックパワージャパン株式会社の使用する商標として、日本国内において周知・著名であったといえる。 また、各種メディアや広告によって表示される「SUNTECH」、「サンテック」、「サンテックパワー」、「サンテックパワージャパン」の標章も、サンテックパワージャパン株式会社の使用する商標として、日本国内において周知・著名であったといえる。 3 本件商標と引用商標の類似性 (1)本件商標「SUNTANK」は、一般的な欧文字を灰色で表示したものであり、「サンタンク」の称呼を生じさせるものである。 引用商標1ないし引用商標3は、平行四辺形に白抜きのS字を模した図と、一般的な欧文字を黒色で表示した「SUNTECH」とを横一列に配置したものであり、「サンテック」の称呼を生じさせるものである。 (2)称呼において「サンタンク」と「サンテック」は、語頭の2文字「サン」が同一であり、語尾の1文字「ク」が同一である。異なる部分「タン」と「テッ」は中間にあり、文字数は互いに5文字であって、一連に称呼されるものである。 そうすると、全体として互いに聞き誤られ、称呼において相紛らわしい類似の商標である。 (3)観念について、本件商標の「SUN」の部分からは「太陽」の意味を生じさせ、「TANK」の部分からは、「タンク」、「貯蔵容器」、「戦車」などの意味を生じさせる。 一方で、引用商標1ないし引用商標3の「SUN」の部分からは「太陽」の意味を生じさせ、「TECH」の部分からは「テクノロジー」、「技術」などの意味を生じさせる。 両者は、印象の強い語頭の「SUN」(「太陽」)の部分において共通することから、観念において相紛らわしい類似の商標である。 (4)外観について、本件商標の「SUNT」の部分と、引用商標1ないし引用商標3の「SUNT」は共通し、両商標は共にアルファベット7文字からなり、そのうちの印象の強い語頭の4文字が共通するものであることから、文字部分においては、外観において相紛らわしい類似の商標である。 したがって、全体として外観において相紛らわしい類似の商標である。 (5)他方、引用商標4及び引用商標5は、標準文字「サンテックパワー」で表示されるものであるが、「力」の意味を有する「パワー」の部分と、その前段の「サンテック」は分離して認識されるものと考えられるから、引用商標4及び引用商標5において「サンテック」が抽出される場合には、本件商標とは、称呼において相紛らわしい類似の商標となる。 (6)取引の実情の考慮について 2009年6月25日時点で、引用商標1ないし引用商標3は、中国のサンテックパワーという会社が使用する商標であることは、太陽光発電業界において知られているものである。また、引用商標4及び引用商標5は、会社名の略称として用いられている(甲2)。 また、サンテックパワージャパン株式会社は、日本国内において全国的に大規模メガソーラー事業を実施し、国、地方自治体、関連企業との共同事業が数多くなされており、太陽光発電業界における関係業者において認知されていることは明らかである(甲2)。 そして、一般需要者に向けての広告活動がされ、アンケート結果からは一般需要者により「サンテックパワージャパン」が認知されていることがうかがえる(甲3)。 以上を踏まえると、太陽光発電に関する業界及び一般需要者において、引用商標1ないし引用商標3や「サンテックパワージャパン」の社名の認知度、また、引用商標4及び引用商標5の知名度は相当高いものであって、太陽光発電に関係する装置、システム、メガソーラーにおいては、「SUNTECH」や「サンテック」が直ちに思い浮かぶものといえる。 このような状況において、少なくとも称呼において類似する本件商標の称呼「サンタンク」が、例えば、電話取引等で使用された場合には、相手方に対し、著名性の高い「SUNTECH」、「サンテック」、「サンテックパワー」と混同を生じさせる可能性が高く、相紛らわしいものとなる。 (7)以上の外観、称呼、観念及び取引の実情を考慮すると、本件商標は、引用商標1ないし引用商標3や、サンテックパワージャパン株式会社の略称である「サンテック」や「サンテックパワー」(引用商標4及び引用商標5)と相紛らわしく、これらの引用商標や使用商標(標章)と全体として類似する商標といえる。 4 商標法第4条第1項各号の該当性 (1)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、申立人やその子会社である「サンテックパワージャパン株式会社」が引用商標の使用を開始して既に日本で相当の著名性が存在していた後に、我が国に登録出願したものであることは明らかである。 そして、本件商標と使用商標は辞書等に掲載されていない造語であり、その独創性は高いものといえることから、本件商標権者が偶然に使用商標と相紛らわしい類似の商標を採択したとは想定できず、むしろ、本件商標の出願は、申立人や「サンテックパワージャパン株式会社」の使用商標の存在を認識し、申立人の事業の阻害、あるいは、相紛らわしい類似の商標を利用した有利な事業遂行を目的に採択したものと推認できる。 してみれば、本件商標の登録出願の経緯には、その目的からすれば社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、健全な商取引の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害するものであるから、公序良俗に反するものである。 したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第10号について 本件商標と引用商標とは互いに類似する商標である。 次に、本件商標と引用商標が使用される商品及び役務は、本件商標の指定商品中、少なくとも、太陽光発電インバータ、太陽光発電用太陽電池モジュールにおいて用途、需要者の範囲が一致する。 したがって、本件商標の指定商品は、申立人の使用に係る商品及び役務と同一又は類似するものである。 よって、本件商標は、日本国内において周知・著名な引用商標と同一又は類似する商標であって、その指定商品も引用商標が使用される商品及び役務と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標5は、商標が類似する。 本件商標と引用商標2は、指定商品の類似群コードが11A01 11A03において共通し、本件商標と引用商標4は、指定商品の類似群コードが11A01 11A03 11B01において共通し、また、本件商標と引用商標5は、指定商品の類似群コードが11A03において共通する。 本件商標は、引用商標2、引用商標4及び引用商標5の登録日よりも後の令和3年(2021年)7月8日に出願されたものである。 そうすると、本件商標は、商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品について使用をするものであることから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第15号について 引用商標は、特に太陽光発電に関する使用商品及び役務について高い著名性を獲得しているのであって、当該分野の取引者・需要者において広く知られるに至っていることは明らかである。 本件商標の指定商品のうち、とりわけ引用商標2の指定商品「太陽光発電インバータ,太陽電池,太陽光発電用太陽電池モジュール」、引用商標4の指定商品「太陽光発電装置,太陽光発電装置用のパワーコンディショナー,太陽光発電装置用のモニター装置」、引用商標4(決定注:引用商標5の誤りと思われる。)の指定商品「蓄電池」は、申立人やその子会社である「サンテックパワージャパン株式会社」と取引者・需要者の範囲が一致し得るものであり、非常に関連性が高いものである。 このため、引用商標の周知・著名性が高く、本件商標と引用商標とが類似する状況において、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する取引者・需要者が、その商品が申立人やその子会社の商品であるとか、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、取引者・需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第19号について 引用商標は、日本の太陽光発電業界において相当の著名性を獲得している。 また、申立人や子会社であるサンテックパワージャパン株式会社などの関係会社は、太陽電池生産量で世界3位と報道されており(甲2)、また、ヨーロッパにおいて「TOP BRAND PV 2021を6年連続で受賞」(甲2)という実績があることからしても、日本国内のみならず世界的な著名性を獲得しているものである。 以上によれば、本件商標権者は、太陽光発電関係の製造事業者・取引者及び需要者の間において、広く認識されていた引用商標を知ったうえで、類似商標を使用しての引用商標の信用へのフリーライドや、引用商標のダイリューションといった不正の目的をもって出願をしたものというべきであり、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、引用商標が有する信用や名声、顧客吸引力を毀損するおそれがあることも明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について 申立人提出の甲各号証、同人の主張によれば、申立人は、太陽光発電のセル・モジュール製造販売を行う中国の会社であり、日本国内で太陽光モジュールシステム販売を行う「サンテックパワージャパン株式会社」の親会社であること(甲2の第1頁、第24頁)、「サンテックパワージャパン株式会社」のホームページや「PV Expo 2017」の展示ブース、「PV EXPO 2016」の展示ブース、及び千葉県にある「ZOZOマリンスタジアム」のバックネット下に表示される広告には、引用商標3と同一又は類似の商標が表示されていることが認められる(甲2の第7頁、第8頁、第19頁、第20頁、第23頁等)。 また、「サンテックパワージャパン株式会社」は、「東京電力グループTEPCOホームテック株式会社」と業務提携をしており、東京電力グループと共同で事業を実施している(甲2の第11頁)ことがうかがえる。 そして、申立人は、太陽電池生産量で世界3位である旨(甲2の第16頁、第17頁)、また、申立人の太陽電池モジュールは、世界中の主要な太陽光発電施設に採用され、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリアでの「TOP BRAND PV 2021」を6年連続で受賞(甲2の第24頁)した旨記載されている。 しかしながら、引用商標を付した商品又は役務の使用状況は明らかでなく、加えて、引用商標の使用に係る商品又は役務についての我が国における売上高、販売数、市場シェアなど販売実績を示す証拠は見いだせない。 また、ZOZOマリンスタジアムでの広告は、テレビ中継の際に視聴者に見られることがあるとしても、その放送日、放送回数、放送範囲などは不明であり、甲第3号証の「企業認知度・イメージに関する調査 集計結果レポート」からは、新幹線デッキ広告やTVCM等を行っていることがうかがわれるが、その広告期間、放映日、放映範囲等は不明であり、その他に宣伝・広告実績を定量的に確認できる客観的な証左は提出されていない。 さらに、新聞記事(甲2の第16頁、第17頁)によれば、「生産量で世界3位の太陽電池メーカー、中国のサンテックパワー」及び「サンテックパワーは太陽電池生産量で世界3位」の記載があるが、そのことを具体的に裏付ける証拠の提出はなく、また「サンテックパワー」に関する新聞記事は2件にすぎないものである(他の1件は発行日が不明である。)。 そして、外国での受賞歴にしても、当該賞の具体的な内容については明らかではなく、このことが直ちに引用商標の外国又は我が国における周知・著名性を示すものということはできない。 以上によれば、引用商標が申立人又は申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。 加えて、外国における引用商標が使用された商品の売上高などの販売実績を示す主張、証左もないから、引用商標は、申立人及び申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。 なお、「企業認知度・イメージに関する調査 集計結果レポート」(甲3)は、「太陽光発電システム」を購入・導入した、若しくは、する予定がある者を対象としたものであり、申立人や申立人の子会社について一定程度の認識を有している可能性がある者のみを対象とするものであるから、その回答に、「サンテックパワー」を知っている人がある程度いたとしても、これをもって、「サンテックパワー」を含む引用商標の周知・著名性を直ちに示すものとはいえない。 したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「SUNTANK」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「サンタンク」の称呼を生じるものであり、当該文字は、一般の辞書等に載録のない語であって、一種の造語として認識し、把握されるものであるから、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 ア 引用商標2は、黒塗り平行四辺形を右上から左下にS字状に白抜きした図形(以下「図形部分」という。)と、その右側に「SUNTECH」の欧文字(以下「文字部分」という。)をやや斜体に横書きした構成からなるところ、図形部分と文字部分とは、重なり合うことなく間隔を空けて配置されていることから、引用商標2は、視覚上、図形部分と文字部分とに、分離して看取されるものである。 そして、図形部分は、特定の意味合いを表すものとして認識されるものではないことから、特定の称呼及び観念を生じないものであり、文字部分は、一般の辞書等に載録のない語であって、一種の造語として認識し、把握されるものであるところ、図形部分と文字部分とは、意味上のつながりがあるとはいえないものであり、また、いずれかが指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき特別な事情も認められないものである。 そうすると、引用商標2は、図形部分と文字部分とを分離して観察することが、取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないものであり、両者は、それぞれが独立して出所識別機能を有する要部となり得るものである。 したがって、引用商標2は、構成中の文字部分を要部として抽出し、商標の類否を判断することも許されるというべきであるから、引用商標2は「サンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標4及び引用商標5は、「サンテックパワー」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、一般の辞書等に載録のない語であって、また、特定の意味合いを生じる語として知られているものとも認められないものである。 さらに、上記文字は、同じ書体及び大きさをもって、等間隔に表されているため、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取されるものであって、その構成全体から生じると認められる「サンテックパワー」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものである。 そうすると、引用商標4及び引用商標5は、これに接する者において、全体として特定の意味合いを想起させることのない、一種の造語を表してなるものと看取されるとみるのが相当である。 したがって、引用商標4及び引用商標5は、「サンテックパワー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標5との類否 ア 本件商標と引用商標2を比較するに、両者は、外観において、図形部分の有無や5文字目以降の「ANK」と「ECH」の文字の相違等により、外観上、明確に区別できるものである。また、本件商標と引用商標2の文字部分とを比較しても、上記のとおり、5文字目以降のつづり字が相違等することから、外観上、明確に区別できるものである。 次に、本件商標から生じる「サンタンク」の称呼と引用商標2から生じる「サンテック」の称呼とを比較すると、第3音目及び第4音目において「タン」と「テッ」の音の差異を有し、かつ、「テッ」の音は促音を伴うことにより強い音として発音され、明瞭な音として聴取されることよりすれば、両称呼の比較的短い称呼にあって、該差異が称呼全体に与える影響は、決して小さいものということはできず、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念については、本件商標と引用商標2からは特定の観念を生じないから、両者は、観念上、比較することができないものである。 そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないものの、外観において明確に区別でき、称呼においても明瞭に聴別できるものであるから、これらを総合的に勘案すると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 イ 本件商標と引用商標4及び引用商標5とを比較するに、両者は、外観において、欧文字と片仮名、構成文字の相違により、判然と区別できるものである。 次に、本件商標から生じる「サンタンク」の称呼と引用商標4及び引用商標5から生じる「サンテックパワー」の称呼とを比較すると、両者は、語頭の「サン」のみが共通し、それ以降の「タンク」と「テックパワー」の音の差異を有するものであるから、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念については、本件商標と引用商標4及び引用商標5は特定の観念を生じないから、両者は、観念上、比較することができないものである。 そうすると、本件商標と引用商標4及び引用商標5とは、観念において比較することができないものの、外観において判然と区別でき、称呼においても明瞭に聴別できるものであるから、これらを総合的に勘案すると、本件商標と引用商標4及び引用商標5は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標5は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。 そして、上記2(3)のとおり、本件商標は、引用商標2、引用商標4及び引用商標5とは非類似の商標であるから、引用商標2と、その構成態様を同じくする引用商標1及び引用商標3も同様に非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。 そして、上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、太陽光発電分野における需要者、取引者において共通性があるものの、本件商標は、これを本件商標権者がその指定商品に使用しても、需要者、取引者が引用商標を想起して、その商品が申立人又は同人と親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると、その商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号について 上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたものということはできないものであり、さらに、上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。 そして、申立人の提出に係る証拠をみても、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的な事実を見いだすことはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号について 上記1のとおり、引用商標は、申立人及び申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたものではなく、また、上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標であるから、申立人やその子会社である「サンテックパワージャパン株式会社」が引用商標の使用を開始した後に、本件商標権者が、本件商標の登録出願を行ったことのみをもって、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものということはできない。 さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。 加えて、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合に該当すると認めるに足る具体的事実も見いだせず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足る証拠の提出はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 ![]() 別掲2 引用商標1 ![]() 別掲3 引用商標2 ![]() 別掲4 引用商標3(色彩については、原本を参照。) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2023-03-15 |
出願番号 | 2021085747 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W09)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
森山 啓 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 荻野 瑞樹 |
登録日 | 2022-03-23 |
登録番号 | 6532347 |
権利者 | 晶科能源股▲分▼有限公司 |
商標の称呼 | サンタンク、スンタンク |
代理人 | 大上 寛 |
代理人 | 弁理士法人三枝国際特許事務所 |