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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W19
管理番号 1396504 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-16 
確定日 2023-03-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6524757号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6524757号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6524757号商標(以下「本件商標」という。)は、「Kid’s」の文字を標準文字で表してなり、令和3年8月30日に商標登録出願、第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材,石材」を指定商品として、同4年2月8日に登録査定、同年3月9日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証(枝番号を含む。以下、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)本件商標は、「Kid’s」の文字を標準文字で書した構成からなるところ、(ア)「Kid’s」は「子供の」を意味し、様々な分野において、「子供向け」であることを表すものとして「Kid’s(キッズ)」の語が一般的に使用されていること、(イ)建築材料の分野においても、子供のいる住宅や、子供のための施設(幼稚園、保育園、学校等。以下同じ。)に適した建築材料といった「子供向け」の商品が広く開発・販売されている実情があることから、(ウ)本件商標を指定商品に使用しても、商品が前述の「子供向け」の商品であることを取引者・需要者に認識させるにすぎないため、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
以下、詳述する。
(2)本件商標を構成する「Kid’s」は、「子供」を意味する平易な英単語の「Kid」に所有格を表す「’s」を付したものであり(甲2)、「キッズ」と称呼され、「子供の」という観念が生じる。「キッズ」の語は、例えば、子供向けの遊び場が「キッズルーム」や「キッズコーナー」等と呼ばれていたり(甲3〜甲5)、子供向けのカメラや自転車が「キッズカメラ」、「キッズバイク」等と呼ばれていたりする他(甲6、甲7)、同じブランド内で子供向けの商品を区別するために「キッズ(Kid’s)」が使用されていたりするように(甲8〜甲11)、商品等が「子供向け」であることを表す語として、一般的に使用されている。
官公庁においても、子供向けのコンテンツが掲載されているウェブページを「キッズページ」と称していたり(甲12)、子供が安全に通行するための道路区域を「キッズゾーン」として整備していること(甲13)等からも、「キッズ」といえば「子供向け」のものを表すことは、一般に認識されているといえる。
(3)本件商標の指定商品の属する建築材料の分野においても、子供のいる住宅や、子供のための施設に適した建築材料といった「子供向け」の商品が、広く開発・販売されている。子供の不慮の事故のうち、約半数が家庭内で起こっているという中で、子育て世帯が安心して生活できる住まいづくりは重要な課題となっており、国や自治体は子育てに配慮した住宅についてガイドラインを作成して配布したり、基準を満たした住宅等を認定する制度を設けたりして、住居等の安全対策を推進していて(甲14〜甲19)、ハウスメーカー等も子供に配慮した設計や建材の提案を積極的に行っている(甲20〜甲22)。
また、共働き世帯の増加や待機児童の問題などを受け、幼稚園・保育園・こども園などの幼保施設が都市部を中心に増加しているところ、子供の安全性を確保しつつ、保育者の負担を軽減する施設づくりは、重要な課題となっている(甲23〜甲26)。
このような需要を受けて、建築材料を製造・販売する多くの企業において、子供の安全性や利便性に配慮した様々な建築材料が開発され、販売されている。例えば、転倒時の衝撃を和らげる床材や滑りにくい床材、指はさみ防止の構造を備えたドアや引き戸、壁の出隅・柱・造り付け家具等用に角を丸く加工した木材、割れにくく破片が飛び散らないガラスを用いた窓や建具、シックハウスの心配の少ない建材、調湿機能のある建材、遮音性能の高い床材・壁材、バルコニー等からの転落を防止する構造を備えた手摺、クレヨンやマジック等の汚れも簡単に落ちる床材や壁材等、様々な商品が多くの企業によって提案されている(甲23〜甲34、甲38)。
経済産業省が連携するキッズデザイン協議会主催の「キッズデザイン賞」は、子供や子供の産み育てに配慮した製品等を顕彰する制度ですが(甲35、甲36)、毎年多くの建築材料が同賞を受賞している。「建築部材・内装材等」でこれまでの受賞作品を検索すると227件もの作品が検出されるが、受賞しているのは限られた企業ではなく、建材分野の大手企業をはじめ様々な企業が受賞していることからも(甲37、甲38)、多くの企業が、子供のいる住宅や、子供のための施設に適した建築材料といった「子供向け」の商品の開発に注力していることがわかる。
また、建築学会においても、子育てに配慮した建築材料について、大規模な調査・研究が行われていて(甲39、甲40)、建築の分野における「子供向け」の建築材料への関心は高いことがうかがえる。加えて、単体の商品だけではなく、ドアや床材、壁材等、「子供向け」の建築材料を取りそろえ、幼保施設向けの一連の商品ラインとして、需要者に提案、販売している例も少なくない(甲26〜甲33)。このような実情からすると、建築材料の分野において、子供に配慮した「子供向け」の商品は、既に一つの商品分野を構成しているといえる。
(4)上述のとおり、「Kid’s(キッズ)」が「子供向け」であることを表すものとして一般に知られていて、建築材料の分野において、子供のいる住宅や、子供のための施設に適した建築材料といった「子供向け」の商品が、一つの商品分野を構成しているといえるほど、多くの企業によって開発、販売されていることからすれば、建築材料の取引者・需要者にとって「Kid’s(キッズ)」の文字は、商品が前述の「子供向け」の商品であることを容易に認識させるものといえる。
実際に「Kid’s(キッズ)」の文字は、建築材料を取り扱う複数の企業によって、「子供向け」の商品に使用されているし(甲28、甲29、甲34)、本件商標の権利者自身も、自己のパブリックスペース向けフローリングブランド「MESSAGE(メッセージ)」において、保育施設向け、すなわち、「子供向け」商品であることを表すものとして「Kid’s」を使用したり、保育施設向けフローリングに「Premium KiD’S」を使用している(甲41〜甲43)。
そうすると、本件商標「Kid’s」を指定商品に使用しても、子供のいる住宅や、子供のための施設に適した建築材料といった「子供向け」の商品であることを認識させるにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないといえる。また、建築材料の分野において、国や自治体が子供に配慮した建築を推進していて、多くの企業によって「子供向け」の建築材料が開発、販売されているという実情の中で、「子供向け」であることを表す「Kid’s」は、商品の目的や特徴を表すものとして、誰もが使用を欲する語であり、これを特定人に独占的に使用させることは、公益上適当ではない。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 当審の判断
(1)本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「Kid’s」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「Kid」の欧文字が「子ども;若者;息子」等の意味を有する英語(甲2)であり、また、「’s」の文字が「・・・の」の意味を有する名詞の所有格語尾(「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」株式会社大修館書店)であって、両者を結合した構成全体から、「子供の」程の意味合いを生じ得るものである。
(2)「Kid’s(キッズ)」の文字の使用状況
本件商標の指定商品の分野における「Kid’s」の欧文字及びその表音である「キッズ」の片仮名の使用状況は、申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下のとおりである。
ア 「大建工業株式会社」の「幼稚園・保育園・認定こども園用製品カタログ」(2021年9月発行)には、「安全なうえ、軽い力で開け閉めしやすい『おもいやりキッズドア』吊戸・引違」「汚れにくく掃除がしやすい『おもいやりキッズ収納 共用下駄箱』」の記載がある(甲28)。
イ 「アイカ工業株式会社」の「キッズ建材/育児・教育施設向け商品カタログ」(2021年6月発行)には、「キッズ洗面セット特選タイプ/ご好評いただいているキッズ洗面セットにお値打ちな特選仕様が登場。・・・」「気くばりUDドア キッズ仕様<指詰め防止機能付引戸>/安心・安全でキズや汚れに強い引戸です。・・・」「キッズフロア<育児施設向けフロア>/健やかな成長を足元から支えます。・・・」の記載がある(甲29)。
ウ 「文化シヤッター株式会社」のウェブサイト(2022年6月1日印刷)には、「園児用トイレブース プレキッズ(園児用ローパーティションタイプ) 園児のトイレ空間を明るく楽しく感じさせてくれるブースです。推奨施設:幼稚園/保育園・デパート/遊園地」の記載がある(甲34)。
エ 「朝日ウッドテック株式会社」のニュースリリース(2021年7月27日付け)には、「朝日ウッドテック株式会社(大阪市中央区南本町・・・)は、パブリックスペース(非住宅)向けのフローリングを、「MESSAGE(メッセージ)」ブランドとして新発表いたします(2021年7月28日)。・・・「MESSAGE」には、保育施設向けフローリングを「Kid’s」、高齢者施設向けフローリングを「Care」、店舗向け土足用フローリングを「Hard」、オーダーメイド対応の土足用フローリングを「Order」とし、各施設に求められる性能と製品ラインナップを施設別にまとめました。・・・」の記載がある(甲41)。
オ 「朝日ウッドテック株式会社」の「PUBLIC SERIES/MESSAGE/Kid’s/保育施設向けフローリング」と題するカタログ(2022年5月1日現在)には、「メッセージキッズは、保育施設向けに生まれたフローリングです。朝日ウッドテックのメッセージキッズは保育施設向けに最適な床性能を徹底的に考えたフローリングです。・・・」の記載がある(甲42)。
カ 「朝日ウッドテック株式会社」のニュースリリース(2020年8月17日付け)には、「保育施設向けフローリング「Premium Kid’s」、2020年10月より順次SIAA基準「抗ウイルス仕様」へ。」のタイトルの下、「朝日ウッドテック株式会社(大阪市中央区南本町・・・)は、・・・。当社は、2020年10月、保育施設向け「Premium Kid’s」を含む挽き板フローリング「LiveNatural Premium」シリーズを皮切りに、その他床材商品についても順次「抗ウイルス仕様」に切り替える予定です。・・・」の記載があり、また、フローリングの画像と共に「Premium/KiD’S/プレミアムキッズ」の三段書きの表示がある(甲43)。
(3)商標法第3条第1項第3号該当性
本件商標は、前記1のとおり、「Kid’s」の文字を標準文字で表してなるところ、上記(1)によれば、「子供の」程の意味合いを生じ得るものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標の指定商品の分野では、数件の商品カタログやニュースリリースにおいて、「キッズ建材」「キッズ洗面セット」「気くばりUDドア キッズ仕様<指詰め防止機能付引戸>」のように、「Kids」又は「Kid’s」の欧文字の表音と認められる「キッズ」の片仮名を含む記載が用いられ、また、本件商標権者である「朝日ウッドテック株式会社」が保育施設向けフローリングを「Kid’s」、「KiD’S」と称している(甲41)ことがうかがえる。
しかしながら、上記(2)の使用例は、そのほとんどが「おもいやりキッズ」、「キッズドア」、「キッズフロア」、「プレキッズ」、「MESSAGE Kid’s」、「メッセージキッズ」及び「Premium/KiD’S/プレミアムキッズ」の三段書き表示といった、「キッズ」の文字又は「Kid’s」若しくは「KiD’S」の文字と、他の文字との結合であって、全体として直ちに自他商品識別標識としての機能を果たし得ないとはいい難いものである上に、「Kid’s」の文字のみの単独での使用は、本件商標権者による1件のみにとどまっている。
また、上記の使用例に係る商品は、いずれも「幼稚園・保育園・認定こども園用」「育児施設向け」「保育施設向け」とされており、直接的に「子供向け」とされるものではない。
さらに、当審において職権をもって調査するも、本件商標の登録査定時に、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「Kid’s」の文字のみが単独で商品の具体的な品質、用途を表示するものとして取引上、一般に使用されている事実は発見できない。
してみれば、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、「Kid’s」の文字は、これに接する取引者、需要者をして商品の品質、用途等を直接的かつ具体的に表示したものと認識させることのないものであって、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(4)申立人の主張について
申立人は、「建築材料の分野において、国や自治体が子供に配慮した建築を推進していて、多くの企業によって「子供向け」の建築材料が開発、販売されているという実情の中で、「子供向け」であることを表す「Kid’s」は、商品の目的や特徴を表すものとして、誰もが使用を欲する語であり、これを特定人に独占的に使用させることは、公益上適当ではない。」旨主張する。
しかしながら、建築材料の分野において、国や自治体が子供に配慮した建築を推進し、「キッズデザイン賞」等で「子供向け」の建築材料を開発、販売する企業が増加しているとしても、上記(2)の使用状況に照らせば、本件商標の指定商品の分野においては、「Kid’s」の文字自体が単独で、一般に使用されている状態にあるものとはいえないことに加え、本件商標の指定商品との関係において、「子供向け」の商品を表現するに当たっては、「幼稚園 保育園 認定こども園用」(甲28)、「育児教育施設向け」(甲29)、「園児用」(甲34)、「保育施設向け」(甲41)等、他の一般的な用語の選択も可能であることからすれば、「Kid’s」の文字からなる本件商標が、商品の品質、用途等を記述する標章として、取引に際し必要な表示として誰もがその使用を欲するものであるということはできない。
したがって、申立人のかかる主張は採用することができない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
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異議決定日 2023-03-15 
出願番号 2021107442 
審決分類 T 1 651・ 13- Y (W19)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小松 里美
鈴木 雅也
登録日 2022-03-09 
登録番号 6524757 
権利者 朝日ウッドテック株式会社
商標の称呼 キッズ 
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