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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1396499 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-05 
確定日 2023-04-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6506687号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6506687号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6506687号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「Ms.dolce」の殴文字を横書きしてなり、令和3年5月31日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類」を指定商品として、同4年1月18日に登録査定、同月31日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第107号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。
(1)申立人の商標「Dolce & Gabbana」の著名性について
申立人の著名商標「Dolce & Gabbana」(ドルチェ&ガッバーナ)は、1985年にイタリアで創設された世界的なラグジュアリーファッションブランドであり、我が国において紹介されている(甲2〜甲19)。
また、ドルチェ&ガッバーナは、多くの商品を我が国へ納入しており(甲8〜甲19)、さらに、ドルチェ&ガッバーナの我が国での売上げは、2017年度は65,629,876ユーロ(約92億5,381万円)、2018年度は66,142,789ユーロ(約93億2,613万円)、2019年度は66,531,027ユーロ(約93億8,087万円)、2020年度は60,855,913ユーロ(約85億8,068万円)、2021年度は42,118,966(約59億3,877万円)、2022年度は44,259,714ユーロ(約62億4,061万円)である。
(2)申立人の商標「Dolce(ドルチェ)」の周知・著名性について
申立人の著名商標「Dolce & Gabbana」の略称である「Dolce(ドルチェ)」も種々の商品に使用されており、その結果「Dolce(ドルチェ)」も我が国において周知・著名となっている。
ア 靴についての使用
申立人は、世界的なアパレルブランドであり、婦人用靴・紳士用靴を多く取り扱っており、なかでも、スニーカーについて、「DOLCE」及び「GABBANA」の欧文字をそれぞれ片方の足の甲の部分やソールの部分等に付したデザインのものを多く展開しており(甲20〜甲23)、我が国でも雑誌等で広く紹介されている(甲24〜甲35)。
イ かばんについての使用
申立人は、かばんについて、申立人の著名商標「Dolce & Gabbana」以外にも、「Dolce(ドルチェ)」の文字を含む商標を使用しており、このかばんはウェブサイトにおいて紹介されている(甲36〜甲58)。
ウ 香水についての使用
申立人は、香水についても、「Dolce(ドルチェ)」の文字を使用しており、当該商標を付した香水が2014年3月1日より我が国において展開されており(甲59)、当該香水は「ドルチェ」シリーズとして、ウェブサイトにおいて紹介されている(甲60〜甲70)。
また、当該香水は日本国内だけでなく世界各国で販売されており(甲71〜甲75)、「Dolce & Gabbana」ブランドを代表する香水である。
エ 化粧品についての使用
申立人は、香水のほかに化粧品についても、「Dolce(ドルチェ)」の文字を使用しており、当該化粧品は、ウェブサイトにおいて紹介されている(甲76〜甲81)。
また、「Dolce」の文字が付された口紅が、ウェブサイトにおいて「ドルチェ マット リップスティック」として紹介されている(甲82〜甲84)。
オ 小括
上記アないしエの事実より、申立人が取り扱う商品に、著名商標「Dolce & Gabbana」以外にも、その略称である「Dolce(ドルチェ)」及びそれを含む商標を使用していること、また、これらが我が国において周知・著名であることは明らかである。
(3)ドメニコ・ドルチェ氏及びその略称「Dolce(ドルチェ)」の著名性について
「Dolce & Gabbana」の創業者、かつ、デザイナーであるドメニコ・ドルチェ氏については、ウェブサイトにおいて紹介され(甲2〜甲7、甲85〜甲90)、また、ドメニコ・ドルチェ氏の略称として、「ドルチェ(ドルチェ氏)」がウェブサイトにおいて紹介されている(甲91〜甲100)
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、「Ms.Dolce」の欧文字からなり、その要部は「Dolce」であると考えられ、上記(2)のとおり、「Dolce(ドルチェ)」の文字が、著名商標「Dolce & Gabbana」の略称としても使用され、少なくとも本件商標の登録出願日前より取引者、需要者の間で周知・著名であったこと、ファッションブランドがそのブランド内において、ブランド名に男性や女性を意味する語(Lady(レディ)、Miss、Mr、Hommeなど)を付して使用することが多くあること(甲101〜甲107)、そのような場面において、取引者・需要者が注目するのはそのブランド名であると考えられることを考慮すると、本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者は、その商品を世界的にも著名なファッションブランドである「Dolce & Gabbana」の靴であると誤認・混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
上記(3)のとおり、「Dolce & Gabbana」の創業者、かつ、デザイナーであるドメニコ・ドルチェ氏の略称「Dolce(ドルチェ)」も、本件商標の登録出願日前から周知・著名であったことは明らかである。
そして、本件商標は、その構成中に、ドメニコ・ドルチェ氏の著名な略称「Dolce(ドルチェ)」を含むものであり、かつ、同氏の承諾を得ていないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

3 当審の判断
(1)申立人の商標「Dolce(ドルチェ)」の周知・著名性について
申立人は、「Dolce & Gabbana」の略称である「Dolce(ドルチェ)」が、種々の商品に使用され、著名となっている旨主張しているところ、申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 「Dolce & Gabbana」(ドルチェ&ガッバーナ)は、1985年にイタリアで創設されたファッションブランドであり、その取扱いに係る商品は、アパレル商品から始まり、現在では靴やバッグ、財布、香水など、様々なジャンルに及んでおり(甲2〜甲7)、申立人は、遅くとも、2017年ないし2022年にかけて、我が国において、当該商品を販売していることがうかがわれる(甲8〜甲19)。
イ スニーカー(靴)についての使用
申立人は、遅くとも2018年より我が国において、スニーカーを販売していることがうかがえ、当該スニーカーには、「DOLCE&(&は小さく付されている。以下同じ。)」の文字が、左足の靴の甲の部分やソールの部分に表示されているものの、右足の靴には「GABBANA」の文字が表示され、かつ、タン(舌)やクォータ(腰)の部分には、「DOLCE & GABBANA」の文字が表示されている(甲20〜甲35)が、いずれの証拠をみても、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字のみを表示した商品を示すものではない。
ウ かばんについての使用
申立人は、遅くとも2016年より我が国において、かばんを販売しているところ、当該かばんは、「ドルチェ ショッピング(DOLCE SHOPPING)」、「ドルチェ ボックス(DOLCE BOX)」、「ドルチェ バッグ」、「ドルチェ ラジオバッグ」という商品名で、「DOLCE & GABBANA(Dolce&Gabbana)」、又はドルチェ&ガッバーナ」の文字とともにウェブサイトにおいて紹介されているものであって、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字のみを表示した商品を示すものではない。
エ 香水についての使用
申立人は、2014年3月1日より我が国において、「ドルチェ」及び「DOLCE」の標章を付した香水を販売し(甲59)、当該香水は、「ドルチェ」シリーズ又は「Dolce」シリーズとして紹介されている旨主張している(甲60〜甲70)。
しかしながら、これらのウェブサイトにおいて、香水の容器や包装箱の画像が表示されているところ、これらの香水容器や包装箱には、筆記体で大きく「Dolce」の文字が表示されているものの、その下部に小さく「DOLCE&GABBANA」の文字も併せて表示されており、また、ウェブサイトにおける記事も、「ドルチェ&ガッバーナ」又は「Dolce & Gabbana」若しくは「DOLCE&GABBANA」の文字とともに、当該香水が紹介されているものであって、いずれの証拠をみても、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字のみを表示した商品を示すものではない。
オ 化粧品についての使用
申立人は、遅くとも2018年より我が国において、化粧品を販売していることがうかがえ、「口紅」については、「ドルチェ マット リップスティック」、「ドルチェローズ フェイス&リップセット」、「ドルチェ シモマット リキッド リップカラー」、「ドルチェブラッシュクリーミーチーク&リップカラー」として、「ドルチェ&ガッバーナ」又は「Dolce & Gabbana」の文字とともに、ウェブサイトにおいて紹介されている(甲76〜甲84)。
しかしながら、これらのウェブサイトには、画像と記事が掲載されているところ、口紅の画像において、商品容器に筆記体で「Dolce」の文字が表示されているものが見受けられるものの、「口紅」の本体部分には「DG」の文字が表示されているものや「口紅」の容器のキャップ部分に「DOLCE&GABBANA」の文字が表示されているもの(甲77、甲79、甲82)も確認できる等、いずれの証拠をみても、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字のみを使用した商品を示すものではない。
また、これらのウェブサイトには、「口紅」以外のいずれも「化粧品」の一である「ネイルカラー」、「フェイスカラー」及び「コンシーラー」についても紹介されているところ、当該各商品の容器には、「DOLCE&GABBANA」の文字が表示されており、かつ、当該商品は、ウェブサイトにおける紹介記事においても、「ドルチェ&ガッバーナ」又は「DOLCE&GABBANA」の文字とともに紹介されており、いずれの証拠をみても、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字のみを表示した商品を示すものではない。
カ 申立人が著名性を主張している「Dolce(ドルチェ)」については、申立人の提出に係る各証拠において、全て大文字で表した「DOLCE」の欧文字の使用状況が混在しているものの、その構成文字のつづりは同じであることから、「DOLCE」の文字の使用状況も勘案して検討するに、上記イないしオによれば、申立人は、自己の業務に係るスニーカー(靴)について、片方(左足)に「DOLCE&(&は小さく付されている。以下同じ。)」の文字が表示されているものの、もう片方(右足)には「GABBANA」の文字が表示され、かつ、「DOLCE & GABBANA」の文字が表示されている。
また、かばんについて、2016年から「ドルチェ ショッピング(DOLCE SHOPPING)」、「ドルチェ ボックス(DOLCE BOX)」、「ドルチェ バッグ」を、香水について、2014年から「ドルチェ」シリーズ、「Dolce」シリーズを、化粧品について、2018年から「ドルチェ マット リップスティック」等の商品名を用いているものの、これらは、いずれも「ドルチェ&ガッバーナ」又は「Dolce & Gabbana」若しくは「DOLCE&GABBANA」の文字とともに、ウェブサイト上で紹介されている。そして、これらのウェブサイトは、2014年から2022年にかけてのものである。
また、香水の容器や包装箱については、筆記体で大きく「Dolce」の文字を表示しているとしても、当該筆記体の「Dolce」の文字の下部に小さく「DOLCE&GABBANA」の文字が表示されている。
さらに、化粧品についても、そのうち「口紅」については、商品容器の表面に、筆記体で「Dolce」の文字が表示されているとしても、ウェブサイトにおけるその説明には、「口紅」の容器のキャップ部分に「DOLCE&GABBANA」の文字が表示されていることに加え、「口紅」以外の化粧品についても、その商品容器の表面に「DOLCE&GABBANA」の文字が表示されている。
そうすると、申立人が、その業務に係るスニーカー(靴)、かばん、香水及び化粧品(以下「申立人商品」という。)について、「Dolce(ドルチェ)」又は「DOLCE」の文字を含む表示を付していることは確認できるものの、「Dolce(ドルチェ)」又は「DOLCE」の文字のみを付した申立人商品を、我が国において広告・宣伝したとする時期、回数、方法や、当該商品をどの地域で、どのくらい販売、提供したものか等、その周知性の度合いを客観的に判断するための具体的な資料の提出がされていないから、申立人提出の証拠によっては、「Dolce(ドルチェ)」の文字のみの周知性の程度を推し量ることはできない。
そのほか、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、「Dolce(ドルチェ)」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
したがって、提出された証拠によっては、「Dolce(ドルチェ)」の文字が、我が国において、申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものであり、かつ、「Dolce(ドルチェ)」の文字が「Dolce & Gabbana」の著名な略称ということもできない。
(2)ドメニコ・ドルチェ氏の略称「Dolce(ドルチェ)」の著名性について
ア イタリアを代表するブランドの一である「Dolce & Gabbana」の創業者及びデザイナーは、ドメニコ・ドルチェ氏とステファノ・ガッバーナ氏である(甲2〜甲7、甲85〜甲100)
イ ドメニコ・ドルチェ氏に関する記載があるウェブサイトでは、同氏を「ドルチェ(ドルチェ氏)」と記載しており、当該ウェブサイトの日付けは、2013年から2021年の期間のものである(甲91〜甲100)が、当該ウェブサイトにおける「ドルチェ(ドルチェ氏)」は、例えば、「「ドルチェ&ガッバーナ」のドルチェが・・・」のように、いずれも「ドルチェ&ガッバーナ」の表示の下に表示されているものである。
ウ 上記イからすると、2013年から2021年の間に掲載されたウェブサイト等において、ドメニコ・ドルチェ氏に関する記載について、「ドルチェ(ドルチェ氏)」と表示されているとしても、いずれも「ドルチェ&ガッバーナ」の表示の下に表示されているものであって、「Dolce(ドルチェ)」の表示のみで、直ちにドメニコ・ドルチェ氏の略称を表しているとはいえないから、申立人提出の証拠からは、「Dolce(ドルチェ)」の文字が、ドメニコ・ドルチェ氏の略称として、我が国の取引者、需要者の間で広く知られていた認めることはできない。
そうすると、「Dolce(ドルチェ)」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ドメニコ・ドルチェ氏の略称として著名となっていたということはできない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「Dolce(ドルチェ)」の著名性について
「Dolce(ドルチェ)」(以下「申立人商標」という。)は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、かつ、申立人の著名な略称ということもできない。
イ 本件商標と申立人商標との類似性の程度について
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、「Ms.dolce」の欧文字を表してなるところ、その構成中の「Ms.」の文字は、「(未婚・既婚を問わず、女性に対する敬称に用いて)・・・様、・・・さん」(「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館)の意味を有する語であり、「dolce」の文字は、「甘美な[に]、柔らかな[に]、甘いデザート」(前掲書)などの意味を有する英語である。
ところで、「Ms.」の文字は、日本語の「さん」、すなわち「人を表す語や人名・役職名・団体名などに付いて、尊敬の意を表す。また、動物名などに付いて、親愛の意を表すこともある。」(「大辞泉 第2版」株式会社小学館)の意味を有する語として広く一般に使用され、例えば、身近なものを擬人化し親しみを込めて愛称的にいう場合にも使用されるものであるから、本件商標からは、「「甘いデザート(dolce(ドルチェ))」に対する親愛の意を込めた呼び名」「ドルチェさん」ほどの意味合いを理解させるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応した「ミズドルチェ」の称呼を生じ、「「甘いデザート(dolce(ドルチェ))」に対する親愛の意を込めた呼び名」「ドルチェさん」の観念を生じるものである。
(イ)申立人商標について
申立人商標は、「Dolce」又は「ドルチェ」の文字よりなるところ、「Dolce」の文字は、「甘美な[に]、柔らかな[に]、甘いデザート」(前掲書)の意味を有する英語であり、また、「ドルチェ」の文字は、「イタリア料理で、菓子やケーキ、フルコースのデザートについてもいう。」(「コンサイスカタカナ語辞典第4版」(株式会社三省堂))、「イタリアの甘い菓子・デザート」(「広辞苑第七版」(株式会社岩波書店))などの意味を有する成語であるから、申立人商標からは、「甘いデザート(dolce(ドルチェ))」ほどの意味合いを理解させるものである。
そうすると、申立人商標は、「ドルチェ」の称呼を生じ、「甘いデザート(dolce(ドルチェ))」の観念を生じるものである。
(ウ)本件商標と申立人商標との類似性の程度について
本件商標と申立人商標とは、構成文字及び構成態様が異なり、外観上、相紛れるおそれのないものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「ミズドルチェ」の称呼と申立人商標から生じる「ドルチェ」とは「ドルチェ」の称呼を共通にするものの語頭における「ミズ」の音の有無の差異により、明瞭に聴別し得るものである。
また、観念においては、本件商標から生じる「「甘いデザート(dolce(ドルチェ))」に対する親愛の意を込めた呼び名」「ドルチェさん」と申立人商標から生じる「dolce(ドルチェ))」とは、観念が異なることから、相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と申立人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。
ウ 申立人商標の独創性について
「Dolce」の文字及び「ドルチェ」の文字は、一般に親しまれている語とまではいい難いものであるが、一般の辞書に掲載されている成語であることから、独創性が高いものとはいえない。
エ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記1のとおり、「靴類、げた、草履類」の商品を含むものであり、また、申立人商品は、上記(1)カのとおり、スニーカー(靴)、かばん、香水及び化粧品であるから、本件商標の指定商品と申立人商品は「靴」を共通にするものである。さらに、近年のファッションにおいて、単にかばんや靴等、身に付けるものにとどまらず、顔や身体そのものについて、身に付けるものに合わせて化粧をしたり、身体の手入れ等を全体的にコーディネートしたりする傾向にある。そして、身体の手入れ等を行う際には、香水や化粧品が使用されることは一般的に行われていることからすれば、本件商標の指定商品中、「靴類」と申立人商品は商品の関連性を有し、その需要者を共通にするものといえる。
オ 出所の混同のおそれについて
上記アないしエを総合的に考察すると、本件商標は、その指定商品の一部において、申立人商品と関連性を有し、需要者を共通にするとしても、申立人商標とは非類似の商標であり、申立人商標は独創性が高いとはいえないものであることに加え、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用をしても、取引者、需要者が、申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第8号該当性について
上記(2)のとおり、「Dolce(ドルチェ)」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ドメニコ・ドルチェ氏の略称として著名になっていたということはできない。
してみれば、本件商標は、その構成中に「Dolce」の文字を有し
ているとしても、ドメニコ・ドルチェ氏の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲(本件商標)




(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-03-23 
出願番号 2021066636 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2022-01-31 
登録番号 6506687 
権利者 株式会社ビーンズ
商標の称呼 ミズドルチェ、ドルチェ 
代理人 白川 孝治 
代理人 弁理士法人R&C 

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