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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1396495 |
総通号数 | 16 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-07 |
確定日 | 2023-03-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6473385号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6473385号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6473385号商標(以下「本件商標」という。)は、「DOUBLE BOOSTER SERUM」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月14日に登録出願、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,シャンプー,固形せっけん,せっけん類,歯磨き,洗口液,美容液,精油,香料及び薫料,芳香剤,芳香剤としてのリードディフューザー,薫料」を指定商品として、同年11月4日に登録査定され、同月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する登録第2533924号商標(以下「引用商標」という)は、別掲のとおり、「DOUBLE SERUM」の欧文字及び「ダブル セーラム」の片仮名を上下二段に横書きした構成からなり、平成3年1月10日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年5月31日に設定登録され、その後、同16年11月17日に第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第92号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「DOUBLE BOOSTER SERUM」の標準文字をもって表されてなるものであるところ、その構成中の「BOOSTER」は、「増幅器、(薬の)効能促進剤、追加免疫」程の意味を有し、コロナ禍における近年においては「追加の予防接種」を意味する「(ワクチンの)ブースター接種」として一般的に広く使用されている英単語であって、本件商標の指定商品を取り扱う業界では、化粧水や美容液を肌になじみやすくさせる「導入美容液」を指称する際に「BOOSTER」の語が使用されているといった実情がある。 したがって、「BOOSTER(ブースター)」の語は、本件商標の指定商品との関係で独占適応性を欠くものであり、他の商標との比較検討に際して当該語が及ぼす影響は極めて小さく、要部足り得ないものである。 そうとすると、本件商標と引用商標とは、「DOUBLE」及び「SERUM」の文字を共通にする全体として相紛らわしい商標であり、また、本件商標と引用商標の指定商品は同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人について 申立人は、1954年に設立された、化粧品や香水などの製造販売を行う、フランスを本拠とする世界的に有名な高級化粧品メーカーである(甲3、甲4)。 申立人は、1970年代初めに国際的な進出を開始して以降、遅くとも2005年の終わりまでに、各国に子会社を設立して世界150ヶ国で販売ネットワークを構築し、日本においては、1985年に子会社(甲5)を設立し、現在に至るまで、同社を通じて全国の有名百貨店やオンラインショップなどでの商品販売やスパの運営を行っている(甲6、甲7)。 (2)引用商標の著名性について 引用商標に係る「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」は、申立人の業務に係る主に美容液との関係で1985年から今日に至るまで継続的に使用されており(甲8、甲9)、海外でも申立人が販売ネットワークを構築している国々を中心として「DOUBLE SERUM」の態様で広く使用されている。 日本においては、主に全国の有名百貨店内の直営店舗やオンラインショップ等(甲6、甲7)で、引用商標が付された美容液(以下「申立人商品」という。)の販売がなされており(甲11〜甲58)、2018年から2022年2月までの申立人商品の日本での売上高は、2018年が約380万ユーロ(約5億3000万円)、2019年が約510万ユーロ(約7億円)、2020年が約380万ユーロ(約5億3000万円)、2021年が約490万ユーロ(約6億7000万円)、2022年(1月及び2月)が約80万ユーロ(約1億1000万円)であり、販売数量は、2018年が約5万5000個、2019年が約6万5000個、2020年が約4万6000個、2021年が約6万5000個、2020年(1月及び2月)が約1万1000個であった(甲10)。申立人商品は、1個あたりの定価が9,900〜16,500円という、化粧品分野では比較的高額な価格帯の商品であるにもかかわらず、日本だけでも毎年平均して5〜6万個の数量を販売している。 また、申立人商品は、昨年には国内の主要美容情報誌3誌(「美的」「MAQUIA」「Voce」)でベストコスメ賞を受賞して3冠を達し(甲59)、これ以前にも毎年各種ファッション情報誌や美容情報誌で150以上の賞を獲得してきたほか(甲60)、国内最大級の化粧品・美容情報サイト「アットコスメ」でもユーザーから高評価を得ており(甲61)、長年の販売実績に加えて商品の品質・効能の高さも相まって、化粧品分野の取引者、需要者に広く認知されるに至っている。 更に、申立人は、申立人商品の販売開始以降、雑誌・インターネットヘの広告及びタイアップ記事の掲載、SNSでの情報発信、芸能界や化粧品業界の著名人等をゲストとし招いたプレスイベントの開催など、多岐にわたる手法を通じて宣伝広告活動を行ってきた(甲62〜甲92)。 このような宣伝広告活動に要した2018年から2022年2月までの日本での費用は、2018年が約5000万円、2019年が約1億6000万円、2020年が約1億5000万円、2021年が約2億2000万円、2022年(1月及び2月)が約5000万円であり(甲10)、引用商標の認知度を高め、また、申立人商品についての名声を獲得するために、申立人が多大な労力と費用をかけて宣伝広告活動を行っている。 (3)出所の混同のおそれについて 引用商標は、1985年から現在に至るまでおよそ40年近くにわたり、申立人の最主力商品たる美容液のブランド名として使用されており、化粧品との関係で高い周知性を有している。 また、本件商標と引用商標とは、「DOUBLE」と「SERUM」の文字を共通にし、両商標の差異は単に「BOOSTER」の文字を有するか否かに過ぎず、また、「BOOSTER」の文字は、化粧品の業界では化粧水や美容液を肌になじみやすくさせる導入液を指称する語として使用されている実情があることを考慮すると、引用商標の極めて高い周知性と相まって、本件商標は申立人の「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」ブランドと何らかの関係を有する商品について使用される商標と認識され得るものである。 したがって、「DOUBLE SERUM」の文字を包含する本件商標が、美容液及びその他の第3類の指定商品に使用された場合、これが申立人の業務に係る商品であること、「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」ブランドのシリーズ商品やコラボ商品であること、或いは、申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について誤認を生じさせるおそれがある。 (4)小結 したがって、申立人商品との関係で広く認識されている引用商標の「DOUBLE SERUM」の文字を包含し、又当該文字が容易に看取される本件商標が付された本件商標の指定商品が実際の商取引に資された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人又は同社の業務に係る「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」を容易に想起又は連想し、当該商品は申立人又はこれと経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品、或いは申立人の業務に係るブランドに関連する又は同ブランドから派生したブランドに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 3 むすび (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標とは、相紛らわしい類似の商標である。また、その指定商品も同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標が本件商標の指定商品に使用された場合、その商品が申立人の業務に係る「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」が付された商品「美容液」と関連のあるものと需要者が出所について混同するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「DOUBLE BOOSTER SERUM」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、各文字(語)間に1文字分の空白があるとしても、構成文字はいずれも同じ大きさ、同じ書体で、外観上まとまりよく表されており、これから生じる「ダブルブースターセラム」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、本件商標は、その構成中の「DOUBLE」の文字が「倍の、2倍の」等の意味を、「BOOSTER」の文字が「増幅器」等の意味を有する語であって(ともに「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)、「SERUM」の文字が商品「化粧品」との関係において「美容液」の意味を認識させる語であるとしても、これらを一連にした構成文字全体から具体的な意味合いを理解、認識するものではないし、かかる構成及び称呼においては、その構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが自然である。 そうすると、本件商標は、その構成文字全体をもって、「ダブルブースターセラム」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、上記第2のとおり、「DOUBLE SERUM」の欧文字及び「ダブル セーラム」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の「ダブル セーラム」の片仮名部分は、上段の「DOUBLE SERUM」の欧文字の読みを表したものと容易に認識できるものである。 そして、「ダブルセーラム」の称呼も、冗長ではなく、よどみなく称呼し得るものである。 また、上記(1)のとおり、「DOUBLE」の文字が「倍の、2倍の」の意味を有する語であり、「SERUM」の文字が商品「化粧品」との関係において「美容液」の意味を認識させる語であるとしても、これらを一連にした構成文字全体から具体的な意味合いを理解、認識させるものではないし、かかる構成及び称呼においては、その構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが自然である。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ダブルセーラム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、文字の書体の違いに加え、「BOOSTER」の欧文字の有無及び「ダブル セーラム」の片仮名の有無という顕著な違いがあることなどから、外観上、判然と区別できるものである。 次に、称呼については、中間音における「ブースター」の音の有無という顕著な差異を有するから、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念については、共に特定の観念を有しないものであるから、両者は観念においては比較することができない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別することができるものであって、称呼において明瞭に聴別し得るものであるから、これらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すれば、両者は、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。 したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人について 申立人は、1954年に設立された、化粧品や香水などの製造販売を行う、フランスを本拠とする化粧品メーカーであり、1970年代初めに国際的な進出を開始して以降、遅くとも2005年の終わりまでに、各国に子会社を設立して世界150ヶ国で販売ネットワークを構築し、日本においては、1985年に子会社を設立し、現在に至るまで、同社を通じて全国の有名百貨店やオンラインショップなどでの商品販売やスパの運営を行っているとされる(甲3〜甲7、申立人の主張)。 イ 「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」の著名性について 引用商標に係る「DOUBLE SERUM/ダブル セーラム」は、申立人の業務に係る商品、主に美容液との関係で1985年から使用されており、日本においては、全国の有名百貨店内の直営店舗やオンラインショップ等で、申立人商品の販売がされているとされる(甲6〜甲9、甲11〜甲58、申立人の主張)。 ウ 申立人商品は、2021年には国内の美容情報誌3誌(「美的」「MAQUIA」「Voce」)でベストコスメ賞等を受賞している(甲59)ものの、これらの受賞によって、引用商標が需要者にどの程度認識されるに至ったのかは明らかではない。 エ 申立人は、申立人商品について、雑誌・インターネットヘの広告及びタイアップ記事の掲載、SNSでの情報発信、芸能界や化粧品業界の著名人等をゲストとして招いたプレスイベントの開催などによって、宣伝広告活動を行ってきた(甲62〜甲92)。 オ 申立人商品は、日本で毎年平均して5〜6万個の数量を販売しており、2018年ないし2022年2月の日本における売上高は、年に約5億3000万円ないし約7億円であったとされ、同期間の日本における宣伝広告費用は、年に約5000万円ないし約2億2000万円であったとされる(甲10、申立人の主張)が、当該主張は申立人の役員が作成した宣誓供述書(甲10)によるものであって客観的な証拠とはいえないものであり、ほかに販売数量、売上高及び宣伝広告費を裏付ける証拠の提出はない。 カ 以上を踏まえると、引用商標については、申立人商品を表示するものとして、美容に高い関心を持つ者にはある程度知られていたことはうかがえる。 しかしながら、引用商標を使用した商品(申立人商品)の販売数量、売上高、市場シェアなどの販売実績、並びに引用商標に係る広告宣伝の費用、回数、期間及び地域など、その事実を量的に把握することができる客観的な証拠の提出はないし、雑誌の配布部数やプレスイベントの開催回数等についても不明である。そして、他に引用商標について、我が国における周知性の度合いを判断するための客観的な証拠を見いだすこともできないから、引用商標の使用事実に基づいて、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 したがって、申立人提出の証拠をもってしては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記1(3)において認定したとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 (3)本件商標の指定商品と申立人商品との共通性について 本件商標の指定商品中「美容液」は、申立人商品と同一のものであるから、本件商標の指定商品と申立人商品とは、その需要者を共通にすることがある。 (4)出所の混同のおそれについて 本件商標の指定商品は、申立人商品と同一のものを含み、その需要者を共通にする場合があるとしても、引用商標は、上記(1)のとおり、申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであって、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、別異の商標であることからすれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者が引用商標を連想、想起するようなことはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 また、ほかに本件商標が、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2023-03-22 |
出願番号 | 2021045526 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W03)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 淳 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 須田 亮一 |
登録日 | 2021-11-18 |
登録番号 | 6473385 |
権利者 | カラーズ株式会社 |
商標の称呼 | ダブルブースターセラム、ダブルブースターシーラム、ダブルブースター |
代理人 | 田中 尚文 |
代理人 | 弁理士法人浅村特許事務所 |
代理人 | 渡部 彩 |