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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W3943 |
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管理番号 | 1396493 |
総通号数 | 16 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-21 |
確定日 | 2023-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6384894号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6384894号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6384894号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和3年2月4日に登録出願、第39類「自動販売機の補充」及び第43類「飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」を指定役務として、同年4月20日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5174361号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成19年6月28日 設定登録日:平成20年10月17日 指定商品:第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商標登録原簿に記載のとおりの役務 (2) 登録第6385131号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:令和2年1月15日 設定登録日:令和3年5月6日 指定商品:第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商標登録原簿に記載のとおりの役務 (3)登録第5300098号 商標の構成:別掲4のとおり 登録出願日:平成21年10月30日 設定登録日:平成22年2月5日 指定商品:第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商標登録原簿に記載のとおりの役務 以下、上記引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第67号証(なお、表記にあたっては、「甲○」(「○」の部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)本件商標について 本件商標は「mujicon」の英文字を表してなるが、前半の「muji」は、引用商標の「MUJI」と共通する。また、引用商標3の「MUJI com」とは、末尾の1文字が異なるのみで、外観に加え、それぞれの自然な称呼「ムジコン」及び「ムジコム」は非常に紛らわしい。 そして、引用商標の「MUJI」は、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、需要者の間に広く知られた周知著名な商標である。したがって、かかる「MUJI(muji)」を共通にする本件商標は、申立人の業務に係る商品及び役務との間で混同を生ずる。 (2)引用商標の周知著名度 ア 異議決定 申立人は、「無印良品」や「MUJI」の商標のもと、衣類、雑貨、生活雑貨、食品などの各種商品の小売事業を主として営み、「MUJI」の表示は、周知著名な商標となっている。そして、このことはすでに特許庁においても明らかな事実である。すなわち、申立人がおこなった異議2009−900427の決定においては、上記小売事業に関し、「商標「MUJI」も店舗名などに使用された結果、申立人の業務に係る商品を表示するものとして相当程度に需要者の間に認識されているものと判断するのが相当である。」とされ(甲5)、「MUJI」の周知著名性が認められている。したがって、引用商標に含まれる「MUJI」の表示が周知著名であることは事実であり、このことは現在においても変わらない。 イ「MUJI」の使用状況や認知度 申立人は、1980年より「無印良品/MUJI」のブランドのもと、日本全国及び外国において広く前記小売店舗を展開している(甲6)。我が国における店舗数は、「無印良品/MUJI」の店舗で2020年では437ないし438店存在し、直近の2021年5月の時点では453店が存在する。この2021年5月の売場面積が347,774平方メートルで、一店舗の平均売場面積は約767.7平方メートルであり、比較的大きな店舗がこれだけの数存在していることが分かる。また、飲食店である「Cafe&Meal MUJI」の店舗も2021年5月の時点で31店存在し、これらを合わせると484店もの多くの店舗が我が国で展開されている(甲7)。これらの店舗は、日本全国に及び、各都道府県すべてを網羅する(甲8)。 「無印良品/MUJI」の店舗は、その入り口などに大きく「MUJI」及び「無印良品」の文字が上下二段あるいは横に並べて表示されているが、「無印良品」とともに、あるいは単独で「MUJI」の文字は大きく表されていて非常に目立つ態様である(甲9)。 店舗においては、商品を持ち帰る際の買い物袋にも大きく「MUJI」の文字が表示されており、商品タグにもやはり「MUJI」が表示されている(甲10)。また、こうした実店舗のほか、需要者との重要な接点として「無印良品/MUJI」のネットショップも存在し、ここでも「無印良品」とともに「MUJI」の表示が目立って表示されている(甲11)。 この店舗全体の売り上げにあたる営業収益は、日本国内のみでも2019年9月〜2020年5月で1877億3100万円の規模にあり、直近の2020年9月ないし2021年5月では2266億500万円とさらに業績を伸ばしている(甲7)。年間の売り上げが2000億円を超えるということは、毎日6億円以上の売り上げを維持している計算となり、生活雑貨など日常に密着した商品を扱うことから、多くの需要者が日常的に「MUJI」に親しんでいるということができる。 申立人は、広告宣伝にも力を入れており、2020年9月ないし2021年5月の間においては48億5500万円の費用を投じている(甲7)。これは外国を含めた連結の売上高の1.4%に相当する金額であり、継続的にブランドの認知及び価値の向上に努めていることが分かる。また、ここ2ないし3年の具体例の一部として、広告会社による証明書を提出する(甲12)。ここに記載するだけでも、例えば2019年においては雑誌や新聞広告に合計で2465万円、2020年においてはテレビCMを含め5370万円、2021年においては雑誌広告に430万円の費用を投入している。 申立人がおこなったブランド調査においては、「MUJI」は高い認知度を誇っている。当該調査を行った会社による2018年のレポートによれば、我が国需要者に対するアンケートにおいて、「MUJI」の「名前を知っている」「商品や店内のイメージができる」といった回答を行った者が、合わせて95.8パーセントに上っており、ほとんどの者が申立人の「MUJI」を知っているという、高い認知度が報告されている(甲13)。なお、申立人の店舗は、「MUJI」とともに「無印良品」としても知られるが、これら表示は上記のように一体的に使用されるなど、ブランドとしては同一視してとらえられているといってもよい。 このように、申立人は1980年以来長年にわたり、我が国においてネットショップを含め「MUJI」の表示のもと広く店舗を展開しており、宣伝広告費や売上高からも分かるように、多大な努力のもと大きな規模でこれを行っている。したがって、その中の各種場面で使用される「MUJI」の表示は、調査結果にも示すように、既に需要者らの間で広く知られるところとなっており、これは生活雑貨を中心とする申立人の小売事業を表す商標として我が国において周知著名なものとなっている。 ウ 「MUJI」のブランド評価や受賞歴 申立人の業務に係る「MUJI」の表示は、これがすでに一般需要者に浸透しているがため、同じ位置付のブランドである「無印良品」や申立人事業の動向とともに、しばしば評価・表彰され、メディアにおいても取り上げられる。 まず、「MUJI」は、2004年の段階ではすでに「日本有名商標集」に掲載されるほど有名な商標である(甲14)。 直近の2021年の我が国のブランドランキングTop100でも、「MUJI」は第32位にランクされ(甲15)、2020年の同じランキングでは「MUJI」は第29位であり(甲15)、2017のランキングでも「MUJI/無印良品」の商標が掲載されている(甲16)。 また、申立人は、「MUJI」のデザイン活動の成果として、毎日デザイン賞を2014年に受賞している(甲17)。 さらに、「MUJI」は2020年には日本ネーミング大賞の優秀賞を受賞している(甲18)。 エ 「MUJI」に関する書籍や紹介記事 「MUJI」が申立人の業務に係る商標であり、我が国で広く認識されているものであることは、これをタイトルとする書籍や雑誌が多数あることからも理解され、大手書籍通販サイトのamazonでは、「MUJI」をキーワードにして検索すると、7000件以上もの検索結果が得られる(甲19)。また、「MUJI」に関する雑誌記事も多数あり、例えば、国立国会図書館のデータベースでは363件が検出される(甲20)。そのいずれもが「MUJI」を見出しとして、申立人のブランドや事業活動を紹介、考察する内容となっている。 「MUJI」は新聞記事にもしばしば登場し、その動向が常に注目されている様子もうかがえる(甲21〜29)。 (3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すること ア 引用商標の周知著名度 上に述べるように、「MUJI」により表される引用商標、より端的にいえば、申立人の生活雑貨を中心とした各種商品の小売事業に係る引用商標1は、本件商標の登録出願時(2021年2月4日)にはすでに我が国の需要者らの間で広く知られており、優にその周知著名性を認めることができる。あわせて使用される引用商標2についても同様で、「MUJI/無印良品」として、また「MUJI」の部分のみに着目したとしても、これは申立人の業務を表す表示として広く知られている。 「MUJI com」よりなる引用商標3も、各所で展開されよく知られるところとなっており、申立人の業務と直結する「MUJI」の表示より、これは唯一申立人の商標として理解されるものである。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標は、「mujicon」の文字よりなり(「i」は白抜き)、全部で7文字中の初めの4文字は、大文字・小文字の違いこそあれ、引用商標と同一の「muji」の文字よりなる。文字商標は、その先頭から読むのが自然であるので、本件商標ではまず「muji」の文字に着目することとなり、この部分は本件商標にあって重要な識別要素である。「i」の文字は白抜きであるが、人は文字があれば読もうとするため、容易に読むことのできる「muji」のまとまりは、「muj」と「i」の結合のように不自然にとらえられることはない。 全体の称呼「ムジコン」についても、自然な区切りをもって発音すれば「ムジ・コン」となるのであり、冒頭で目立つ「muji(ムジ)」と比較すると、後半の「con(コン)」はその印象が薄い。我が国では、「○○コン」という言い方が多数あり、例えば、「エアコン」「ミスコン」「ネオコン」「シネコン」「ゼネコン」「生コン」「ノーコン」「ラジコン」「リモコン」などといった言葉は、いずれも「○○+コン」という構成よりなり、意味も発音も「コン」の前に区切りがある。すると、本件商標も「muji」と「con」とで区切るのが自然となり、このように多用される「コン(con)」よりも、冒頭で目立つ「muji」の印象が強く残る。なお、上記の「○○コン」よりなることばのうち、この部分が本件商標と同じ「con」に由来する例は多い(「conditioner」「contest」「conservatism」「construction」「concrete」「control」など)。 本件商標は、このように「muji」の部分が意識される構成であり、この部分が同一の引用商標の「MUJI」とは類似性の程度が高い。 ウ 引用商標の造語性及び特徴 引用商標の「MUJI」は、これと同じ位置付けの申立人の業務に係る店舗名でありブランドである「無印良品」のはじめの読みに由来する(甲18)。既成語の「無地」の意味にも通じるが、もともとは「無印良品」のはじめの2音に由来するものであり、申立人による一種の造語である。 エ 引用商標がハウスマークであること 引用商標の「MUJI」は、申立人の店舗の名称であり、「無印良品」と並んで申立人そのものともいえるもので、その取扱いに係る商品やサービスに広く使用されるハウスマークである。 オ 申立人の業務の多角化 申立人は、生活雑貨などの商品を取り扱う店舗の営業を主たる業務内容としているが、現在は様々な業務をおこなっており、「MUJI」が展開される範囲も幅広く、バラエティに富んだものとなっている。 申立人は、「広がっている無印良品の活動」として、そのような活動を各種紹介している(甲32)。以上に加えて、申立人の活動分野は多岐にわたる(甲57〜62)。 もちろん、ここに示すものだけが全てではなく、これらの他にも申立人は様々な事業を展開している。そして、これらは単に多角化経営の事実を示すだけではなく、いずれもブランド名に「MUJI」が用いられている点で統一がなされている。申立人は生活雑貨等を販売する店舗の「MUJI」を中心に、主として「MUJI ○○」という多様な商品やサービスを展開しており、造語としての独自性を有する「MUJI」は他には見られないものであるから、このような表示を見た需要者らは、それが申立人の業務に係るものと直感する。 このように、申立人の業務を表す「MUJI」という表示は、申立人の多角化経営にもかかわらず、その多くの分野において統一的に用いられており、同時にそのような多角化を背景に、多くの分野で申立人の業務を表すものとして浸透している。 カ 本件商標と引用商標の商品・役務間の関連性 本件商標は、第39類「自動販売機の補充」及び第43類「飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」を指定役務とする。他方、引用商標自体は、第35類の各種商品の小売において周知著名な商標であるが、ここには上に述べるように、対象商品に食品や食材も多く含まれている。 本件商標の第39類の指定役務はやや分かり難いが、出願の経過を見るに、これは自動販売機に、その中身である食べ物や飲み物を補充するサービスであることが分かる。そして、その自動販売機の周辺に椅子やテーブルを置き、そのスペースでの利用者が飲食することが、第42類の飲食物の提供にあたる。このうち、自動販売機はまさにその中身、本件でいえば飲食物を販売する機械であるので、これは申立人のおこなう飲食料品の販売(甲21、26、32等)と密接に関連する。また、飲食物の提供についても、結局は自動販売機で購入したものをその場で飲食するということなので、やはり申立人のおこなう飲食料品の販売と密接に関連する。 自動販売機は普通は飲食料品を販売することが多いが、仮にその他の商品を販売する場合でも、申立人は様々な商品を取り扱う小売事業をおこなっているため、いずれにせよ本件商標が、引用商標の商品と密接な関連を有する商品の販売をおこなうことに変わりはない。 本件商標と引用商標の商品・役務間の関連性は、本件商標の指定役務が対象とする商品が、引用商標の指定役務が対象とする商品と共通することから、互いに密接に関連を有するものである。 キ 需要者の共通性その他取引の実情 自動販売機の補充自体は、当該自動販売機の所有者に対して行われるサービスであろうが、本件商標が自動販売機に付されるのであれば、需要者は一般消費者となり、自動販売機の所有者も一般消費者として生活していることに変わりはないので、結局当該サービスは一般消費者を需要者とするといえる。飲食物の提供が一般消費者を対象とすることには、特に疑問はない。 他方、引用商標の「MUJI」は生活雑貨等の小売サービスに使用されるものであり、その需要者が一般消費者であることにもやはり疑問はないから、それぞれの需要者には共通性がある。 申立人は、「Cafe&Meal MUJI」の商標のもと、実店舗において飲食物の提供をおこなっており(甲53〜55)、質の高い肉を提供していることなども紹介されている(甲56)。他方、本件商標も飲食物の提供や販売をおこなう点で共通性があり、このような取引の実情が両者をさらに混乱させる。すなわち、申立人の「Cafe&Meal MUJI」が、一連の「MUJI」ブランドのひとつであることは一見して分かるが、多くの「MUJI ○○」という申立人ブランドと同じ構成よりなる本件商標は、その取扱いに係る対象(飲食料品)が申立人業務と共通するため、これがあたかも「MUJI」ブランドのひとつであるかのような誤解を需要者らに与える。 さらに、申立人は引用商標3「MUJI com」を遅くとも2010年から使用しているが(甲67)、その構成が本件商標に極めて近いため、この点においても両者は混同を生ずる。申立人の「MUJI com」は、「MUJI/無印良品」の中でも駅ビル立地を中心とする小型店で、現在は大都市を中心に31店舗存在し、10年以上の歴史を有している(甲37、63〜67)。例えば、「MUJIcomアトレ大森」「MUJIcom川崎アゼリア」など、駅ビル内の店舗に「MUJI com」は多いが(甲64)、このうち京阪ザ・ストア店に見られるように、前記「MUJI」の店舗と同様、「MUJI com」の表示は、店舗の入り口などに大きく看板として表示される(甲65)。 このように、申立人は、本件商標とは語尾が「m」と「n」とで異なるにすぎない、極めて近い構成の「MUJI com」という商標を実際に使用しているのであり、これは「MUJI」の表示により申立人の業務に係る商標であると需要者らには容易に理解されるから、同様に本件商標も申立人の業務に係る商標であるかのように誤解される。一方で周知著名な「MUJI」の表示を含む「MUJI com」が使用され、あるいは「MUJI」の名声を受けてそれ自体周知著名とも考えられる「MUJI com」が使用される状況で、他方でこれと構成が極めて近い「mujicon」なる本件商標が使用されれば、やはり引用商標との間で混同を生ずるおそれが高い。 ク まとめ 以上、周知著名な一種の造語商標である引用商標「MUJI」は、申立人の業務に関連して幅広く使用されるハウスマークであり、「MUJI ○○」という一貫した表示のもと申立人の業務の多角化が進む状況においては、「MUJI」が共通する本件商標は、その出願時において申立人の業務との間で混同を生ずるものといえる。また、それぞれの商品・役務が密接に関連し、さらに本件商標と近似する「MUJI com」の商標を申立人が実際に使用する状況においては、ますます本件商標は申立人の業務に係る商品・役務との間で混同を生ずる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、その登録を取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。 (ア)申立人である株式会社良品計画は、1980年より「無印良品/MUJI」のブランドのもと、日本全国及び外国において、衣類、雑貨、生活雑貨、食品などの各種商品の小売店舗を広く展開し(甲6)、我が国における店舗数は2020年で437ないし438店存在し、直近の2021年5月の時点では453店が存在する(申立人の主張)。 (イ)飲食店である「Cafe&Meal MUJI」の店舗も2021年5月の時点で31店存在し、上記(ア)の店舗と合わせると484店もの多くの店舗が我が国で展開されており(甲7、申立人の主張)、これらの店舗は、日本全国に及び、各都道府県すべてを網羅する(甲8、申立人の主張)。 (ウ)「無印良品/MUJI」の店舗は、入り口などに大きく「MUJI」及び「無印良品」の文字が上下二段あるいは横に並べて表示されている(甲9)。 (エ)商品を持ち帰る際の買い物袋に「MUJI」及び「無印良品」の文字が上下二段に表示されており、商品タグにも「MUJI」及び「無印良品」の文字が横に並べて表示されている(甲10)。 また、申立人の通販ウエブサイトには、左上に「MUJI」及び「無印良品」の文字が横に並べて表示されており、また、「便利な機能のMUJIPassportアプリ」の表示がある(甲11)。 (オ)申立人作成のDatabook(令和2年9月1日〜令和3年5月31日)によれば、店舗全体の売り上げ営業収益は、日本国内では、2019年9月〜2020年5月で1877億3100万円であり、直近の2020年9月〜2021年5月では2266億500万円であること、及び宣伝費は、2019年9月〜2020年5月で52億1500万円であること、直近の2020年9月〜2021年5月で48億5500万円であるとの記載がある(甲7)。 (カ)申立人が行ったブランド調査(「無印良品低関与ユーザ8カ国調査 国別比較レポート 2018年10月1日 株式会社モニタス」)によれば、「MUJI」の認知度において、「MUJI」の「名前を知っている」「商品や店内のイメージができる」といった回答をおこなった者が、合わせて95.8パーセントとの報告がされている(甲13)。 (キ)2004年の「日本有名商標集 AIPPI・JAPAN」に、「MUJI」及び「無印良品/MUJI」が掲載され(甲14)、Interbrand(株式会社インターブランドジャパン)には、2021年の我が国のブランドランキングTop100において「MUJI」は第32位にランクされている(甲15)。 (ク)申立人は、「MUJI」の活動の成果として、2014年に毎日デザイン賞・特別賞を受賞し(甲17)、2020年には日本ネーミング大賞の優秀賞を受賞している(甲18)。 (ケ)大手書籍通販サイトのamazonでは、「MUJI」をキーワードにして検索すると、7000件以上の検索結果が得られ(甲19)、2000年の雑誌「MUJI Walker」をはじめ、「MUJI」のブランドに関する書籍などが見られる。また、「MUJI」に関する雑誌記事は、例えば、国立国会図書館のデータベースでは363件が検出され(甲20)、「MUJI」を見出しとして、「日本の無印良品はなぜ世界のMUJIになれたのか」「フラッグシップショップ戦略によるブランド構築MUJI(無印良品)の事例」「ネットとリアルを融合するMUJI DIGITAL Marketingの展望」などの記事がある。 (コ)「MUJI」に関する新聞記事として、日本経済新聞(2018.6.17付)に、「肉・魚の高級路線として「MUJI」ブランドが展開されている」等が掲載されている(甲21〜28、33〜39)。 (サ)申立人は、申立人の店舗のうち、面積80坪〜150坪の駅ビル立地を中心とする小型店31店舗において、「MUJIcom」の文字を店舗名として使用しており、日常生活に必要な商品を販売していることがうかがえる(甲63〜67)。 イ 上記アによれば、引用商標1及び引用商標2を構成する「MUJI」及び「無印良品」の文字は、1980年の申立人の店舗の立ち上げ以来、申立人が提供する衣類、雑貨、生活雑貨、食品などの各種商品の企画から小売りや店舗名及び買物袋に使用している商標(ブランド)であり、日本全国に相当数の店舗を有し、店舗の入り口や看板に表示され、我が国において利用者が多いことがうかがわれる。また、営業収益や広告宣伝費の金額については、申立人作成の証拠(甲7)の提出のみであり、これらの金額を客観的に裏付ける資料の提出は見当たらないものの、申立人の業務に係る役務における売上高、宣伝広告費はかなりの額に達しているものと推認される。 また、「MUJI」及び「無印良品」の語は、我が国において多数の書籍・新聞等で取り上げられて紹介されていること、申立人のブランド調査の消費者の評価において、「MUJI」の我が国での需要者の認知度は、相当数にのぼることが伺える。 上記の事実を総合勘案すると、申立人が使用する「MUJI」及び「無印良品」の文字からなる引用商標1及び引用商標2は、申立人が提供する衣類、雑貨、生活雑貨、食品などの各種商品の小売役務(以下「申立人の業務に係る役務」という。)を表すものとして、少なくとも、本件商標の登録出願時には、我が国において需要者の間で広く知られていたものと推認し得るものである。 しかしながら、引用商標3を構成する「MUJI com」については、申立人の店舗のうち、駅ビル立地を中心に展開する小型店において使用されていることはうかがえるものの(甲63)、当該店舗は、大都市の一部に展開されているものであって、これらの事実のみからは、申立人の業務に係る役務を表示するものとして使用され、我が国の需要者の間で広く知られていたと推認し得る事実を見出すことができない。 そうすると、引用商標3が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く知られていたものとはいうことができない。 ウ 小括 以上のとおり、引用商標1及び引用商標2は、申立人の業務に係る役務を表すものとして、少なくとも、本件商標の登録出願時には、我が国の需要者の間で広く知られていたものと推認し得るものであるが、引用商標3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く知られていたものとはいうことができない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、「mujicon」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成の中央の文字である「i」の文字が白抜き文字で表わされているものの、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさで、外観上まとまりよく一体的に表わされているものであり、本件商標の構成全体から生ずる「ムジコン」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 また、「mujicon」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、さらに、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないから、特定の観念の生じない一種の造語といえる。 そして、本件商標は、その構成文字が、その中央に配された白抜き文字の「i」を中心に左右バランス良く一体的に表されており、構成前半の「muji」の文字部分が後半の「con」の文字部分より格別目立つように表現されているものではなく、前半部分と後半部分のいずれかの部分で軽重や主従の関係を見出すこともできないものである。 その他、前半部分の「muji」の文字部分が、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、それ以外の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせない。 そうすると、本件商標は、その構成に相応して「ムジコン」の称呼のみが生じ、特定の観念の生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標1は、太字の濃い赤紫色で「MUJI」の欧文字を横書きしてなるところ、上記(1)イのとおり、需要者の間で広く知られているものであるから、その構成文字全体に相応して「ムジ」の称呼及び「申立人のブランド」程の観念を生じる。 次に、引用商標2は、太字の黒色で「MUJI」の欧文字と、該文字よりもやや小さく、かつ細字で「無印良品」の文字を上下二段に横書きしてなるところ、両文字部分は文字の書体及び大きさが異なることから、視覚的に分離して看守されるものであり、また、両文字間には称呼上及び観念上の関連性は認められないことから、常に一体不可分のものとしてみるべき理由もない。 また、上記(1)イのとおり、「MUJI」の欧文字部分は、需要者の間で広く知られているものである。 そうすると、引用商標2は、その構成文字全体に相応して「ムジムジルシリョウヒン」の称呼を生じるほか、「MUJI」及び「無印良品」の文字部分のそれぞれに相応して、「ムジ」及び「ムジルシリョウヒン」の称呼を生じ、上記(1)イのとおり、引用商標2は、需要者の間で広く知られているものであることから、「申立人のブランド」程の観念を生じるものである。 さらに、引用商標3は、濃い赤紫色の色彩を配した長方形内に、「MUJI com」の欧文字を太字の白抜きで表してなるところ、その構成中の濃い赤紫色を配した長方形は背景図形であると無理なく看取されるもので、欧文字部分については、大文字と小文字との差はあるものの、背景の長方形内に同じ書体でまとまりよく一連に表されていることから、引用商標3に接する取引者、需要者は、「MUJI com」の構成文字全体を捉えて役務の取引にあたるとみるのが相当である。 そして、引用商標3を構成する「MUJIcom」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないから、特定の観念の生じない一種の造語といえる。 また、構成文字全体に相応して生じる、「ムジコム」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 したがって、引用商標3は、その構成文字に相応して「ムジコム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類似性の程度について (ア)本件商標と引用商標1の類否について 本件商標は上記アのとおりの構成よりなり、引用商標1は上記イのとおりの構成よりなるところ、両者は、「muji」と「MUJI」の欧文字を共通にするものの、両者は大文字と小文字の差異があること、本件商標における「con」の文字の有無に顕著な差異があること、本件商標は「i」の文字が白抜き文字でその他の文字が黒色で表されているのに対し、引用商標1は全体が濃い赤紫に表されており、文字の色彩が異なることからすれば、外観上は、十分に区別することができる。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ムジコン」の称呼と、引用商標1から生じる「ムジ」の称呼とは、語頭における「ムジ」の2音を共通にするとしても、「コン」の2音の有無より、構成音数が2音と4音とで相違するから、それぞれ一連に称呼するときは、明瞭に聴別することができるものである。 さらに、観念においては、本件商標からは観念が生じないのに対し、引用商標1は「申立人のブランド」程の観念が生じるものであるから、相紛れるおそれはない。 以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのない非類似の商標であり、類似性の程度は低いものである。 (イ)本件商標と引用商標2の類否について 本件商標は上記アのとおりの構成よりなり、引用商標2は上記イのとおりの構成よりなるところ、構成全体を比較すると、本件商標には後半部分に「con」の文字がある一方、引用商標2には下段に「無印良品」の漢字があることから、外観上、十分に区別することができる。 そして、本件商標と引用商標2の「MUJI」の文字部分についても、「con」の文字の有無に顕著な差異があることから、外観上、十分に区別することができる。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ムジコン」の称呼と、引用商標2から生じる「ムジ」の称呼とは、語頭における「ムジ」の2音を共通にするとしても、「コン」の2音の有無より構成音数が2音と4音とで相違し、それぞれ一連に称呼するときは、明瞭に聴別することができるものであり、また、本件商標から生じる「ムジコン」の称呼と引用商標2の構成文字全体及び下段の文字から生じる「ムジムジルシリョウヒン」及び「ムジルシリョウヒン」の称呼とは、音構成及び音数に顕著な差異があることから、明瞭に聴別することができる。 さらに、観念においては、本件商標からは観念が生じないのに対し、引用商標2は「申立人のブランド」程の観念が生じるものであるから、相紛れるおそれはない。 以上のとおり、本件商標と引用商標2とは、その外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのない非類似の商標の別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。 (ウ)本件商標と引用商標3の類否について 本件商標は上記アのとおりの構成よりなり、引用商標3は上記イのとおりの構成よりなるところ、その構成文字を比較すると、大文字と小文字の差異はあるものの、「mujico」と「MUJIco」の文字を共通にし、その差異は語尾における「n」と「m」の差異を有するにすぎないものである。 また、本件商標は「i」の文字が白抜きで、その他の文字が黒色で表されているのに対し、引用商標3は、濃い赤紫色の色彩を配した長方形内に欧文字を太字の白抜きで表してなるという差異を有するものの、語尾における「n」と「m」とは外観上近似するといえるから、時と場所とを異にしてみた場合には、外観上、彼此相紛れるおそれのあるものといえる。 次に、称呼については、本件商標から生じる「ムジコン」の称呼と引用商標3から生じる「ムジコム」の称呼とは、共に4音という短い構成音からなり、語頭から「ム」「ジ」「コ」の3音を共通にし、その語尾において「ン」と「ム」の音の差異を有するところ、「ン」は母音を伴わない歯茎音であり、「ム」は母音「u」を伴う両唇音であるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、語尾の該差異は明瞭に聴取されにくく、聞き誤るおそれのあるものである。 さらに、観念においては、本件商標及び引用商標3からは、特定の観念が生じないものであるから、比較することはできない。 したがって、本件商標と引用商標3とは、観念においては比較することはできないものの、外観及び称呼において相紛らわしい類似の商標といえるから類似性の程度は高いものといえる。 (エ)本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性について 本件商標の指定役務中、第39類「自動販売機の補充」と申立人の業務に係る役務とは、役務の提供の手段、提供場所、目的、需要者が異なり、両者の関連性は低いといえる。 本件商標の指定役務中、第43類「飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」と申立人の業務に係る役務とは、需要者の範囲が一致する場合があり、両者の関連性は比較的高いものといえる。 (オ)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、非類似の商標で別異のものであり、類似性の程度は低いといえるが、本件商標と引用商標3とは類似する商標であり、類似性の程度は高いものといえる。 また、本件商標の指定役務中、「飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」は、申立人の業務に係る役務との関連性は高いものといえる。 (カ)出所の混同のおそれについて 上記(1)イのとおり、引用商標1及び引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められるものの、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは相紛れるおそれのない非類似の商標であることから類似性の程度は低いものであり、本件商標の指定役務中、第43類「飲食物の提供、軽食堂における飲食物の提供」と申立人の業務に係る役務とはその一部において需要者を共通にする場合があるとしても、第39類「自動販売機の補充」については、役務の提供の目的・手段及び役務の提供者が異なり、需要者の範囲も一致しないものであるから、役務の関連性や需要者の共通性は低いものであることからすると、本件商標の指定役務の取引者、需要者の普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、これをその指定役務について使用をしても、引用商標1及び引用商標2を連想、想起することはなく、当該指定役務が申立人又は同人と組織的もしくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 次に、引用商標3は、上記(1)イのとおり、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。そして上記(ウ)のとおり、本件商標と引用商標3とが類似する商標であって、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)![]() 別掲2(引用商標1)(色彩は、原本を参照。) ![]() 別掲3(引用商標2) ![]() 別掲4(引用商標3)(色彩は、原本を参照。) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2023-03-30 |
出願番号 | 2021013455 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W3943)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
小俣 克巳 佐藤 淳 |
登録日 | 2021-04-30 |
登録番号 | 6384894 |
権利者 | アサヒフード株式会社 |
商標の称呼 | ムジコン、ミュジコン |
代理人 | 伊東 美穂 |
代理人 | 木村 吉宏 |
代理人 | 弁理士法人不二商標綜合事務所 |