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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W3542
管理番号 1396429 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-09 
確定日 2023-03-27 
事件の表示 商願2020−145053拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月24日に登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年9月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月10日受付:意見書
令和4年3月8日付け:拒絶査定
令和4年6月9日受付:審判請求書

第2 本願商標
本願商標は、「ピル定期処方」の文字を標準文字で表してなり、第35類及び第42類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として、登録出願されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「ピル定期処方」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は全体として「経口避妊薬について、定まった期間ごとに、服用法を医師が指示すること」ほどの意味合いを容易に理解、認識させる。そして、当該薬についての処方がオンラインで行われている実情が確認できる。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者は、「経口避妊薬について、定まった期間ごとに、服用法を医師が指示することに関する役務」であることを認識するにとどまるから、本願商標は、単に役務の内容、用途、質等を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、「ピル定期処方」の文字を標準文字で表してなり、その構成は、「ピル」、「定期」及び「処方」の文字を横一連に結合したものと容易に認識できるものである。
そして、本願商標の構成中、「定期」の文字は「期間・期限があらかじめ定まっていること」の意味を、「処方」の文字は「医師が患者の病気に応じて医薬品の調合や服用法を指示すること」の意味をそれぞれ有し一般的に親しまれている語であるところ、これらを結合した「定期処方」の文字も、「定まった期間ごとに、医師が患者の病気の症状に応じて医薬品の調合や服用法を指示すること」や「定期的な処方」程度の意味合いにて広く使用されているものである(大辞林第四版(株式会社三省堂) 「定期」及び「処方」の項)。
また、本願商標の構成中、「ピル」の文字は、「経口避妊薬の俗称」であって(前掲書 「ピル」の項)、医薬品の名称として使用されているものである(別掲3)。
そうすると、本願商標は、全体として「定まった期間ごとに、医師がピル(経口避妊薬)の服用法を指示する」や「ピル(経口避妊薬)の定期的な処方」程度の意味合いを容易に理解、認識させるものであり、具体的な医師の行為の一種を表したものとして看取されるものである。
そして、本願商標を構成する各文字(ピル、定期処方、処方等)は、主として、医業の分野における、医療機関の広告のためのウェブサイトや、医療情報の提供をする等に使用されている。
その一方、近年は、同分野の各種診療、診察や処方(以下「診察等」という。)などの医師の行為を行うに際し、その手段として、スマートフォン(略称「スマホ」)やパーソナルコンピュータ(略称「パソコン」)などを通じたインターネット、オンラインの技術が、医師や医療機関において採用され、当該診察等を目的とするソフトウェア(スマートフォン用のアプリ(アプリケーションソフトウェアの略)も含む)の設計、開発がなされている実情があり、これらは、コンピュータソフトウェア、電子計算機用プログラム等のIT分野など、医業とは異なる分野で提供される役務である(別掲2)。
また、同様に、例えば、医療保険(傷害や病気などに対し、医療の保障または医療費の負担を主目的とする社会保険)を提供する役務や、大学の医学部の教育課程において、医療(診察等)に係る知識を教授する役務も、医業と関連性のある事項をその対象とするものの、医業とは異なる、保険又は教育の分野におけるものである。
してみれば、診察等は、医師の行為であり、医業の分野において提供される役務であるものの、異なる分野(例えば、IT、保険、教育の分野など)においても、関連性のある役務の提供がなされているから、本願商標のように、具体的な医師の行為の一種を表したものとして看取される語から構成されるものは、必ずしも医業の分野のみにおいて、提供される役務の特徴等を表示する語にとどまるとはいえないものである。
以上を踏まえると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者に、「定まった期間ごとに、医師がピル(経口避妊薬)の服用法を指示することに関する役務」や「ピル(経口避妊薬)の定期的な処方に関する役務」(例えば、「ピル(経口避妊薬)を定期的に処方することについての広告」、「ピル(経口避妊薬)を定期的に処方する際に用いるコンピュータソフトウェアの設計」)であること、すなわち、役務の特徴、用途、質を表示記述するものとして認識されるにすぎないものであり、かつ、本願商標は、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、自他役務の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
請求人は、(1)原審で挙げられた各文字の使用例はいずれも医業に係るものであり、第35類と第42類に属する本願指定役務に係るものではないから、本願指定役務の業界において、本願商標が使用されていることを示すものではないこと、(2)本願商標から、仮に「経口避妊薬について、定まった期間ごとに、服用法を医師が指示することに関する役務」であることを認識した場合、本願商標は、医業ではない本願指定役務の質、特徴等を間接的に表示するものになり得たとしても、質等を直接的、具体的に表示するものではないこと、(3)本願指定役務の提供に際し、「ピル定期処方」という語が有用又は不可欠な手段として機能するものではないことは明らかであり、別の語を採用する余地は限りなくあるから、本願商標について、請求人に独占的な使用を認めたとしても、公益を害しないことは明らかであること等を述べ、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない旨を主張している。
しかしながら、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審判の審決時において、本願商標がその指定役務との関係で役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の指定役務に係る事業の取引者、需要者によって本願商標がその指定役務に使用された場合に、将来を含め、役務の特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足り、それが取引上現実に使用されていた事実があることまで必要とするものではない。
そして、本願商標は、全体として「定まった期間ごとに、医師がピル(経口避妊薬)の服用法を指示する」や「ピル(経口避妊薬)の定期的な処方」といった具体的な医師の行為の一種を表したものとして看取されるところ、例え、原審で挙げた使用例が、医業に関するものであり、本願指定役務と異なる分野のものであるとしても、上記1のとおり、医業とは異なる分野(例えば、IT、保険、教育の分野など)において、関連性のある役務の提供がされていること等も、本願指定役務との関係において、本願商標に接する取引者、需要者が、これをどのように認識するかを推し量る上で考慮されて然るべきである。
そうすると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、「定まった期間ごとに、医師がピル(経口避妊薬)の服用法を指示する」や「ピル(経口避妊薬)の定期的な処方」といった具体的な医師の行為の一種が、それら広告やソフトウェアの設計等の役務の特徴、用途、質であることを直接的かつ具体的に表示されたものと、これに接する取引者、需要者に認識されるものであり、役務の質等を間接的に表示するにすぎないものとはいえず、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものと認められるから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当ではないとともに、自他役務の識別力を欠くものというべきである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、これを登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
別掲1 本願の指定役務
第35類「企業の広告及び広報活動の企画・代行,商業又は広告のための展示会の企画・運営,広告のための商品展示会・商品見本市の企画又は運営,広告宣伝物の企画及び制作,広告の企画,インターネットによる広告,ダイレクトメールによる広告,交通広告,屋外広告物による広告,広告業,広告用具の貸与,マーケティング,見込み客や顧客に関する情報の提供,市場調査又は分析,市場に関する情報収集,競合企業に関する情報収集,価格比較の調査,商品の販売に関する情報の提供,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」
第42類「クラウドコンピューティング,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),電子計算機用プログラムの提供,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータシステムの設計,コンピュータソフトウェアの設計,ウェブサイトの作成又は保守」

別掲2 オンラインで診療、診察、処方等をするために開発されたアプリケーションソフトウェア等の例
1 2017年11月1日付け日本証券新聞の2ページにおいて、「テックファームS高−遠隔診療サービス開始」との見出しの下、「・・・共同開発した遠隔診療サービス「MediTel」について、11月下旬から医療機関に提供開始する・・・新サービスは、患者がスマートフォン(スマホ)アプリを用いてオンライン診察予約、医師とのテレビ電話による診察、クレジットカードによる診察料の決済のほか、自己管理用に日々の健康データを蓄積することが可能。患者と医師にとってオンライン診療がより身近で簡単にできるようになる。同社はIoT(モノのインターネット)関連やスマホ向けシステム開発などを行う。」との記載がある。
2 「CLIUSクリニック開業マガジン」のウェブサイトにおいて、「処方薬の配送までしっかり手厚い!オンライン診療ツール「SOKUYAKU」」との見出しの下、「「他の医師にも紹介したいと思うオンライン診療システムNo.1」に選ばれたという「SOKUYAKU for クリニック」(以下「SOKUYAKU」と表記)をご紹介します。」、「「SOKUYAKU」はオンライン診療をスムーズに実現し、患者さんが処方された薬を受け取るまでワンストップで行えるツールです。」及び「「SOKUYAKU」はクラウド型のサービスです。・・・導入のためのクリニック側の最小限の準備は、インターネット環境とインターネットに接続できるパソコン、スマホ、タブレットなどだけです。患者さんは専用アプリ(Android/iOS)を使ってオンライン診療を受診します。」との記載がある。
https://clius.jp/mag/2022/04/22/online-tool-sokuyaku/
3 「PRTIMES」のウェブサイトにおいて、「国内初のAGA※管理アプリ「HIX(ヒックス)」を運営する株式会社エムボックスがジェネシア・ベンチャーズ、守屋実氏からシードラウンドでの資金調達を実施 ※男性型脱毛症」との見出しの下、「アプリの機能開発、マーケティングへの投資を行い更なる事業成長を目指します」、「「HIX」は、国内初となるAGA管理アプリで、2020年7月にβ版をリリースしました。」、「「HIX」はスマホアプリで薄毛診断から対策までワンストップで完結する新しいサービスです。」及び「手軽さ ・・・AGAクリニックのオンライン診療を予約することも可能です。」との記載がある。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000054126.html

別掲3 「ピル処方」等の文字の使用例(1〜2は原審の拒絶理由通知書で示した例を含む)
1 「レディースライフbyPillクリニック」のウェブサイトにおいて、「ご自宅から簡単!オンラインピル処方」との見出しの下、「クリニックに来院することなく誰にも知られずにピルのオンライン診察ができます。自宅からLINEで簡単に予約ができ、お薬はご自宅にお届けします。」、「オンラインピル診療の流れ・・・よくある質問・・・ピルは医師の診察なしには処方することができない医薬品です。」との記載がある。
https://www.pillcli.jp/shop/
2 「PRTIMES」のウェブサイトにおいて、「月額1980円〜のオンラインピル処方!AnyPill(エニピル)のサービスをリリース」との見出しの下、「株式会社Next Paradigm・・・は、・・・低用量・中容量ピルが当たり前に使われる社会を目指し、ピル特化のオンライン診療サービスを本日リリースいたします。・・・私たちは、ピルの処方から受け取りまでをオンラインで完結させることでピルの利用がさらに広まる・・・」、「AnyPill(エニピル)について オンラインで医師からの診察、処方、薬の受け取りまでを完結させることができるサービスです。」との記載がある。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000037417.html
3 「渋谷文化村通りレディスクリニック」のウェブサイトにおいて、「専門の医師による低用量ピル処方」との見出しの下、「月に約6,000シート以上を処方しております。ピルの飲み方、効能、副作用を詳しく説明します・・・ピル継続服用患者様専用に「オンラインピル診療」を設置し、受付の利便性、待ち時間の短縮に努めております。」との記載がある。
https://www.shibuya-bunkamuradori-ladies.jp/
4 2022年4月18日付東京新聞朝刊の8ページにおいて、「生理の苦痛軽減「低用量ピル」 働く女性活躍の助けに」との見出しの下、「オンライン処方 最近はオンラインでのピル処方サービスも広まる。大阪市のIT企業「ネクイノ」が運営するアプリ「スマルナ」は五十四万人が登録。最初にテレビ電話やチャットで医師の診察を受け、その後は月に一回、自宅にピルが届く仕組みだ。」との記載がある。
5 2022年9月28日付日本経済新聞朝刊の17ページにおいて、「福利厚生に「フェムテック」 不安を解消、女性人材確保 サーパスは生理痛薬の遠隔処方支援」との見出しの下、「丸紅では21年から社内でオンライン診療による低用量ピルの処方のほか、・・・ピル処方では開始6カ月後の調査で・・・オンラインで低用量ピルを処方するアプリを起点にし、病院での検査などを後押しする」との記載がある。



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2023-01-19 
結審通知日 2023-01-20 
審決日 2023-02-13 
出願番号 2020145053 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W3542)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 馬場 秀敏
山根 まり子
商標の称呼 ピルテーキショホー 
代理人 亀卦川 巧 
代理人 木下 洋平 

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