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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 取り消して登録 W43
管理番号 1396408 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-19 
確定日 2023-04-05 
事件の表示 商願2021− 79930拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、令和3年6月27日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年9月16日付けで拒絶理由の通知がされ、同年11月3日に意見書が提出されたが、同4年1月14日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して令和4年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、上下2段の構成からなるところ、その下段部分の左から2番目の文字は、図案化して表してなるが、その前後に、欧文字の大文字「M」、「ET」が配されていること、欧文字の大文字「O」の字形の特徴を備えていることからすると、欧文字の大文字「O」を表したと理解されるものであって、本願商標下段部分は、「MOET」の文字を表したと容易に認識される。そして、本願商標下段部分は、「フランス国 51200 エペルネ アヴニュ ド シャンパーニュ 9」所在の「エムアッシュセーエス」が、本願商標の登録出願前から商品「アルコール飲料(ビールを除く。)」等に使用して著名な商標「MOET(「E」の上部にトレマが付されている)」と類似するものである。そうすると、本願商標をその指定役務に使用するときは、その役務があたかも前記会社の業務に係る役務であるかのように、あるいは前記会社と、組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)引用標章について
ア 原審は、引用標章である「MOET(「E」の上部にトレマが付されている。以下同じ。)」は、フランス国 51200 エペルネ アヴニュ ド シャンパーニュ 9所在の「エムアッシュセーエス」の、商品「アルコール飲料(ビールを除く。)」等を表示するものとして、周知著名性の程度が高い旨を認定しているものの、具体的な証拠を明らかにしていない。
イ 当審において職権調査をしたところ、以下のような事実を見いだすことができた。
(ア)「世界酒大辞典」(株式会社柴田書店)の「モエ Moet」の項には、「シャンパンの商標。フランスのエペルネーで1743年からつくられており、正式には、モエ・エ・シャンドン(Moet et Chandon)という。わが国にも古くから輸入されている。」の記載がある。
(イ)Wikipediaの「モエ・エ・シャンドン」の項には、「モエ・エ・シャンドン(仏:Moet&Chandon)は、フランスのエペルネーに本社を置く世界有数の規模を誇るシャンパン製造会社、あるいは同社が製造するシャンパンのブランド名。\創業年は1743年。LVMHグループに属し、傘下に最高級シャンパンで有名なドン・ペリニヨンを有する。1200ヘクタールほどの自社ブドウ畑と3000ヘクタール相当の買いブドウから、毎年200万ケース以上のシャンパンを出荷する。」の記載がある。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3)
(ウ)「LVMH」のウェブサイトにおいて、「モエ・エ・シャンドンはパイオニア精神を誇りとし、比類のない独自性を持ったシャンパン造りを続けています。」の記載とともに、モエ・エ・シャンドンは、270年の歴史があること、1,190ヘクタールのブドウ畑の面積を保有すること、150の国で販売されていることが記載されている。(https://www.lvmh.co.jp/%E3%83%A1%E3%82%BE%E3%83%B3/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3-%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84/moet-chandon/)
(エ)「美味しいワイン」のウェブサイトにおいて、「有名なシャンパンはこれ!おすすめ銘柄12選と飲み方や選び方を紹介」の見出しの下、「6.いわずとしれた王道のシャンパン『モエ・エ・シャンドン』」、「年間の出荷量は3000万本(!)ともいわれ、世界中にファンを抱える超有名シャンパン。」として紹介されている。(https://wine-good.jp/sparkling-wine/affordable-champagne-as-gifts/)
(オ)「Oh my Wine!」のウェブサイトにおいて、「モエ・エ・シャンドン全ラインナップをご紹介|世界売上No.1メゾンを詳しく解説」の見出しの下、「1秒に1本、世界中のどこかでボトルが開けられているシャンパーニュ」、「世界でいちばん飲まれているシャンパーニュ」、「シャンパーニュの代名詞ともいえるモエ・エ・シャンドン」等の記載がある。(https://rest-reverence.jp/media/moet-et-chandon/)
(カ)以下aないしeのとおり、「Moet et Chandon」は、「MOET(Moet)」と略称されている実情がある。
a 「MOETの注がれたグラス片手に、心のままに弾けてみてください」(https://yukatabunka.com/archives/4100)
b 「「MOET」のラベルに高級感あふれる彫刻を」
(https://www.novelty-goods.net/?pid=145419585)
c 「Moetはグレースマーケットで常に人気ランキング上位で大人気のロゼシャンパンです。」(https://www.gracemarket.net/shop/products/detail.php?product_id=32)
d 「シャンパン MOETの商品一覧」(https://aucfan.com/search2/q-~a5b7a5e3a5f3a5d1a5f3204d4f4554/)
e 「まずは、一番スタンダードなMOETのシャンパーニュ。」(https://foryou-joshi.com/archives/1539)
ウ 上記の認定事実によると、「MOET」の語は、「LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパン」として、我が国でも人気が高い「Moet et Chandon」に通じる略称であり、引用標章は、当該略称として、本件商標の登録出願日には、我が国のシャンパンを取り扱う業界の取引者、需要者の間において、相当程度知られていたといえる。
(2)本願商標と引用標章の類似性の程度
本願商標は、別掲のとおり、上段に「CLUB」の欧文字、下段に上段の文字と比べ4倍程度の大きさで、花と思しき図形(以下「図形部分」という。)と、当該図形の左側に「M」の欧文字及び右側に「ET」の欧文字を表してなるところ、下段の文字部分の一文字分と図形部分は大きさが同程度あり、まとまりよく表されており、一体のものとして認識し得るものであるとしても、図形部分からは特定の称呼及び観念を生ずるものではない。
そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して「クラブエムイイテイ」又は大きく表された下段部分から「エムイイテイ」の称呼が生じ、全体として、辞書に載録のある既成語ではないことから、特定の観念は生じない。
他方、引用標章は、「MOET」の欧文字よりなるところ、その構成文字に相応して「モエ」の称呼が生じ、「LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパンのモエ」の観念が生じる。
本願商標と引用標章を比較すると、その外観については、2段か1段かという点の相違、「CLUB」の文字の有無、花と思しき図形と「O」の文字の相違、及びトレマの有無から、明確に区別できる。
また、称呼については、「クラブエムイイテイ」又は「エムイイテイ」の称呼と「モエ」の称呼は、全体の構成音及びその音数の差異により、明瞭に聴別できる。
さらに、観念については、本願商標からは特定の観念は生じず、引用標章からは「LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパンのモエ」の観念が生じるため、相紛れるものではない。
そうすると、本願商標と引用標章は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しないから、互い相紛れるおそれのない非類似のものであり、その類似性の程度は低い。
なお、「MOET」の欧文字が、LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパンである「Moet et Chandon」の略称として、我が国において、相当程度知られていたことを考慮しても、当該シャンパンの略称として知られている「MOET」の文字には「E」の上部にトレマがあるところ、本願商標の下段の「E」の上部にはトレマがないこと、また、「MOET」の語はそもそも既成語ではないことからすると、「M」と「ET」の間に「O」が配される必然性に乏しく、さらに、図形部分は、外側の輪郭が明らかに五角形を成しており、「O」の字形の特徴を備えるものともいえないから、これに接する取引者、需要者が、本願商標の下段を「MOET」の文字を表したと認識するとはいい難い。
(3)本願の指定役務と引用標章の使用に係る商品の関連性の程度及び需要者の共通性
本願の指定役務は、上記1のとおり、「飲食物の提供」であるから、引用標章の使用に係る商品である「シャンパン」は、本願の指定役務の提供の用に供する物に当たるという点において、一定程度関連性があり、またその需要者の範囲は一致する場合があるものといえる。
(4)本願商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
本願商標は、上記(2)のとおり、引用標章とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり、その類似性の程度は低いものであるから、上記(1)のとおり、引用標章が、「LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパン」の略称として相当程度知られており、かつ、上記(3)のとおり、本願の指定役務と引用標章の使用に係る商品は、一定程度関連性があり、需要者の範囲も一致する場合があるとしても、本願商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本願商標に接する取引者、需要者が、本願商標の構成中、下段の「M」の文字、図形部分及び「ET」の文字に注目して「LVMHグループに属するモエ・エ・シャンドンのシャンパン」に係る業務と関連付けて認識するおそれは極めて低く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるということはできない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
別掲 本願商標


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審決日 2023-03-16 
出願番号 2021079930 
審決分類 T 1 8・ 271- WY (W43)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 豊瀬 京太郎
特許庁審判官 小俣 克巳
綾 郁奈子
商標の称呼 クラブモエ、クラブ、モエ、モエット、エムイイテイ 
代理人 本田 史樹 

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