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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W023740 |
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管理番号 | 1395492 |
総通号数 | 15 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-03-08 |
確定日 | 2023-03-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6485824号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6485824号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6485824号商標(以下「本件商標」という。)は,「ナノディフェンダー」の文字を標準文字で表してなり,令和3年4月16日に登録出願,第2類「金属を含有してなる抗菌用コーティング塗料」,第37類「建築物の抗菌又は防かび工事,建築物の内外の消臭処理,自動車の車内の消臭・抗菌処理,自動車内部の清掃及び除菌消臭処理,建設工事」及び第40類「金属・ガラス・セラミック・プラスチックの表面への光触媒によるコーティング加工・処理,カーペットの抗菌加工」を指定商品及び指定役務として,同年12月3日に登録査定され,同月14日に設定登録されたものである。 第2 引用商標及び申立人商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第6466038号商標(以下「引用商標」という。)は,「ナノディフェンダー」の文字を標準文字で表してなり,令和3年2月5日登録出願,第1類「防汚剤,酸化チタン,工業用二酸化チタン,光触媒,スプレー式酸化チタン,スプレー式工業用二酸化チタン,スプレー式光触媒」及び第5類「抗菌剤,殺菌剤,消臭剤,防臭剤(身体用及び動物用のものを除く。),スプレー式抗菌剤,スプレー式殺菌剤,スプレー式消臭剤,スプレー式防臭剤(身体用及び動物用のものを除く。),その他の薬剤」を指定商品として,同年11月4日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。 2 申立人が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において,商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は,申立人主張の全趣旨により「ナノディフェンダー」の片仮名からなるものであると当合議体で認める(以下「申立人商標」という。)。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て,その理由を以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番含む。以下,枝番号のすべてを示すときは,枝番号を省略する。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第7号について (1)申立人の被申立人との関係 申立人は,甲第5号証(決定注:「甲第3号証」の誤記と認める。)に示すように,令和2年7月3日に代表取締役をM(以下,「M氏」という。)として,設立された。 事業内容は,「1.光触媒酸化チタンコーティング剤とそれを利用した製品の販売と施工」「2.空気触媒剤とそれを利用した製品の販売と施工」「3.消毒・殺菌・消臭剤とそれを利用した製品の販売と施工」「4.光触媒製品の開発及び開発支援」「5.光触媒コーティング工事請負」「6.光触媒コーティング剤・可視光応答型光触媒コーティング剤の研究・開発・製造」「7.代理店制度の企画及び運営」「8.前各号に附帯する一切の業務」を目的とする企業である(甲3)。 一方,被申立人は,令和2年7月7日に,代表取締役をT(以下,「T氏」という。)とし,代表取締役専務をM氏として,テックメディカルnano株式会社(以下「被申立人」という。)を設立した(甲4)。 事業内容は,「1.光触媒,空気触媒に関する製品の販売,施工及びメンテナンス」「2.建物の外装,内装,車両等に対する光触媒溶液の塗布業務」「3.建物及びそれらの付属設備の安全点検,保守,管理並びに除菌及び抗菌施工」「4.殺菌・除菌・抗菌・消毒等各種環境衛生に関する製品の企画,製造,販売及び輸出入」「5.各種環境衛生に関するサービスの提供,仲介及び輸出」「6.各種環境衛生に関する講座,講演会,セミナー,その他イベントの企画,開催及び運営並びに教育機関等への講師の紹介及び派遣」「7.民間資格の認定事業」「8.民間資格の付与を受けた者への活動支援事業」「9.書籍,雑誌,その他情報媒体の企画,編集,執筆,出版及び販売」「10.著作権,商標権,意匠権等の知的財産権の取得,管理,使用許諾及び売買」「11.代理店制度の企画及び運営」「12.会員組織の運営」「13.前各号に関連するコンサルティング事業」「14.前各号に附帯する一切の業務」を目的とする企業である。なお,M氏は2021年2月5日に退任している(甲4)。 そして,本件商標に係る商品とは別の商品である「ナノソリューションAg+」(「+」の記号は「g」の欧文字の右上に小さく表されている。以下同じ。)(以下「件外商品」という。)に関して,申立人の代表者であるM氏の人柄や営業努力によって,光触媒メーカーTが,申立人に対して,本件商品(決定注:「件外商品」の誤記と認める。以下,(1)において同じ)を納品し,申立人が「ナノソリューションAg+」という商品名(OEM商品)で被申立人に安価な価格で卸していた。 具体的には,M氏が本件商品の光触媒の効果に惚れ込んで,本件商品の名称を申立人の会社名からとって「ナノソリューションAg+」とし,申立人から被申立人に本件商品を卸し,被申立人が受注した依頼は,申立人によって光触媒のコーティング施工をしていた(ほとんどはM氏経由の施工依頼であり,直接申立人が受注してもよかったが,被申立人の収入になるように,M氏があえて被申立人を通して受注していた。)。 甲第5号証は,申立人から被申立人への請求書である。当該請求書の項目には「ナノソリューションAg+」と記載されており,件外商品が遅くとも令和2年8月31日時点において,申立人の業務に係る商品(以下「申立人商品」ということがある。)の一として被申立人に卸していたことがわかる。 なお,申立人は,被申立人の加盟店ではなかったが,被申立人の加盟店への技術指導等の研修は,M氏の厚意により,申立人が無償で行っていた。 また,M氏とT氏が被申立人を設立した理由は,もともとM氏とT氏は知り合いであり,M氏は当初代理店展開を考えておらず,知り合いにだけ本件商品等を卸して,関西一円に本件商品を広げていくことを考えていたものの,T氏が「代理店を拡張する知識や能力がある」と自ら述べたことから,T氏を代表取締役社長とし,M氏を代表取締役専務として被申立人を設立した。 なお,M氏は申立人で代表をしていることもあって,被申立人では代理店の全国展開をT氏に指揮してもらおうと,加盟店第一という理念を掲げ,T氏を代表取締役社長とし,自らは代表取締役専務とした。 そして,被申立人での売り上げの取り分は,被申立人4割,申立人が6割とした。 なお,被申立人は,M氏とT氏の2人だけで経営しており,他に社員は非正規やアルバイトも含めていなかった。そして,業務の役割としては,M氏が本件商品等の商品の仕入れ,施工等の技術的な内容,広報,法人営業とし,T氏が加盟店とのやり取り,経理という内容であり,収支関係等の財務関係は常に両者で情報共有し,他方の同意が必要とした。 (2)T氏の問題行動及び職務放棄 2020年10月にタクシー業界の大手グループ等の光触媒コーティングを行うなど事業は順調に伸びていたが,このあたりからT氏が問題行動を起こすようになってきた。 T氏は被申立人において,代表取締役社長という立場であると共に,経理関係を任されていたが,2020年11月以降から経理内容を共同経営者のM氏に経理情報を見せないようになった。 2020年12月,M氏の反対があったにも関わらず,T氏は大規模な展示会に出展することを強行し,M氏の同意なく勝手に契約をしてきた。展示会場では,T氏は代表取締役としてはふさわしくない行動をし,一部の加盟店はT氏の行動に激怒し,複数の加盟店からM氏に対し「代表取締役をT氏からM氏に交代してほしい。」と言われるほどであった。 そして,加盟店からのクレームに対して,M氏は,自分が代表取締役になれば,今自分が行っている業務の遂行できないと考え,T氏にその内容を伝え,T氏に改善を要求した。 その後,2021年1月20日,T氏はM氏にLINE(登録商標)で覚書(甲6)を送り,「これ(覚書)に同意しないと私(T氏)は仕事しないから。」と言い,その後携帯電話に何度も連絡するも繋がらない状態となり音信不通となった。 そして,覚書(甲6)の内容は,一切正当性もなく,T氏及び被申立人にしか利のない内容であり,真の狙いとしては,M氏を被申立人から追い出し,被申立人が,商品元である光触媒メーカーTと直接取引を行い,申立人を下請け企業として利用したいという思惑が読み取れるものであり,M氏が到底同意できるような内容の覚書ではなかった。 (3)M氏の被申立人からの退任 上記(2)で述べたように,T氏はM氏との連絡を遮断し,M氏はT氏と連絡が取れない状態であったため,被申立人の顧問弁護士が間に入り,顧問弁護士がT氏に対してM氏と協議するように促したが,顧問弁護士の提案を無視し,T氏は一向にM氏と協議しようとしなかった。 そこで,M氏は株主総会を開き,T氏の代表取締役の解職をしようとしたが,株式の割合は,M氏50%,T氏50%であったため,T氏本人の意思がなければ解職できなかった。 また,T氏が株主総会に出席するかどうかも不明であり,M氏はT氏との協議は不可能と考え,また,これ以上T氏の業務の妨害が続くと,加盟店からの陳述書(甲7~甲9)のとおり,加盟店が営業できなくなり,また,既に「受注する」として進んでいる話も消えてしまう可能性があり,また,「フリーダイヤルが繋がらない」というクレームも加盟店が受けることになってしまい,加盟店への影響が取り返しのつかないことになってしまうため,M氏は,「加盟店第一」という信念のもと,T氏とのトラブルを終了させるため,自ら被申立人を辞意することにした。 (4)T氏と加盟店とのトラブル T氏は,M氏との連絡を遮断しただけでなく,フリーダイヤルを止め,また,加盟店からの連絡にも応じなかったため,加盟店ともトラブルになっていた(甲7~甲9)。 (5)本件商標と同一の標章の使用 甲第10号証及び甲第11号証から,少なくとも2021年3月24日の時点で,申立人は,本件商標と同一の標章である「ナノディフェンダー」の標章を使用していたことがわかる。 また,甲第12号証から,本件商標と同一又は類似の標章を使用していることがわかる。 なお,申立人は,「NanoDefender」と表示された関連商品のラベルを,2021年2月24日には発注している。 申立人は,第1類及び第5類において,引用商標を有しているが(出願日は2021年2月5日),第2類,第37類及び第40類において商標登録をしておらず,被申立人は,申立人が第2類,第37類及び第40類において商標登録出願をしていないことを奇貨して剽窃的に商標登録を行っている。 また,「ナノディフェンダー」という文字は造語であり,また,被申立人と申立人との上述した関係から,被申立人が申立人の商品を知らずに本件商標を出願及び登録したとは考え難い。 申立人が第5類のみ「ナノディフェンダー」を商標登録出願していることを知っていながら,被申立人は,第5類とは類似しないと想定した第1類,第2類,第37類及び第40類において本件商標の出願をしている。 甲第13号証及び甲第14号証の記事からも本件商標と同一の標章の「ナノディフェンダー」が,被申立人よりも密接な関係を有する者であることがわかる。 (6)小括 以上のことから,被申立人が本件商標を取得する行為は,社会の一般道徳観念に反する行為であり,本件商標や「ナノディフェンダー」に関して,被申立人よりもより密接な関係を有する者である申立人の利益を害する行為であり,被申立人の行為は剽窃的行為である。 そして,被申立人が申立人の業務を阻害しようとして本件商標を出願及び登録したこと,又は,申立人と何等かの業務上の関係があるように需要者に思わせることを目的として出願及び登録したことは明らかであり,上述した経緯から被申立人が本件商標を取得する行為は,著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。 したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)標章の比較 本件商標は標準文字から構成される「ナノディフェンダー」であり,引用商標も標準文字から構成される「ナノディフェンダー」であり,標章は同一である。 (2)指定商品及び指定役務の比較 本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品は,同一の製造者,販売者,営業主又は施工業者により取り扱われる場合があり,また,需要者も共通するといえる。そうすると,これらの商品及び役務につき,同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造若しくは販売に係る商品又は同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあり,本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品とは類似する。 (3)小括 以上のことから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)標章について 本件商標は標準文字からなる「ナノディフェンダー」であり,申立人商標も「ナノディフェンダー」であり,標章は同一である。 また,「ナノディフェンダー」という文字は造語であって独創性は高く,明らかに被申立人は,申立人商品の「ナノディフェンダー」に便乗しようとしている。 (2)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の業務に係る商品について 申立人の「ナノディフェンダー」に係る商品は,光触媒を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても効果のある抗菌・殺菌・除菌・消臭・防臭・防汚効果のある商品であり,その商品の代理店への販売だけでなく,コーティング施工も行っている。 そして,申立人は,本件商標の出願前から「ナノディフェンダー」の商標を用いた商品を販売及びコーティング施工のサービスを提供しており,「ナノディフェンダー」の標章を使用している。 したがって,本件商標の指定商品及び指定役務における「抗菌用コーティング,抗菌又は防カビ工事,消臭処理,消臭・抗菌処理,除菌消臭処理」という点で申立人業務に係る商品又は役務との間において,性質,用途及び目的が共通しており,関連性が非常に高い。 また,上記1の経緯のとおり,被申立人と申立人との関係は,申立人が被申立人に,件外商品等の商品を卸していたという関係である(現在は被申立人へは商品を卸しておらず,また,「ナノディフェンダー」に関しては被申立人に卸したことは一度もない。)。 したがって,本件商標の指定商品及び指定役務と,申立人の業務に係る商品又は申立人の業務内容との間の性質,用途又は目的における関連性の程度は高いといえる。 (3)取引者及び需要者の共通性並びに取引の実情について 申立人商品は,酸化チタンを含む光触媒だけでなく,銀イオンも混在させて,光が弱い又は光がない状態であっても除菌・殺菌等することができる商品であり,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも効果のある商品であって,申立人商品は,申立人が光触媒メーカーTと共同開発した商品である。 また,申立人は,ナノディフェンダーの商品に関して,被申立人に卸したことは一度もないが,過去には件外商品等の商品を被申立人に卸していた。 したがって,被申立人が本件商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が申立人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれが非常に高く,いわゆる狭義の混同が生じるおそれがある. また,申立人の代表者であるM氏は,現在は退任しているが,以前は被申立人の代表取締役専務をしており,被申立人の実質的な代表者であったこと,また,申立人が件外商品等の商品を被申立人に卸していたということ,から考慮すると,指定商品又は指定役務に係る商品又は役務が,申立人との間に系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれが非常に高く,いわゆる広義の混同が生じるおそれがある。 (4)まとめ 以上のことから,本件商標と申立人商標とは標章が同一であり,また,その指定商品及び指定役務の類似性の程度が非常に高いこと,申立人商標の識別力及び独創性が高いこと,需要者が共通することに照らすと,本件商標をその指定商品又は指定役務に使用したときは,その商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤信されるおそれが非常に高い。 したがって,本件商標は,申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるといえるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 申立人商標の周知性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 (1)申立人は,令和2年7月3日に設立され,「1.光触媒酸化チタンコーティング剤とそれを利用した製品の販売及び施工,2.空気触媒剤とそれを利用した製品の販売及び施工,3.消毒・殺菌・消臭剤とそれを利用した製品の販売及び施工,4.光触媒製品の開発及び開発支援事業,5,光触媒コーティング工事請負業」などを行っている大阪府に所在する企業であり,代表取締役はM氏である(甲3)。 (2)申立人は,SNSにおける申立人のページにおいて,2021年(令和3年)3月24日付けで,申立人商標と同一の文字又はその欧文字表記と認められる「Nano Defender」の文字をその構成中に含む「ナノディフェンダーAG+」「ナノディフェンダーAG-t」「Nano Defender Ag+ Coat」,及び「Nano Defender」の文字を,申立人商品について使用している(甲10,甲11,申立人の主張)。 (3)申立人は,SNSにおける申立人のページの,2021年(令和3年)7月12日付けで「いいね!」がされている記事において,掲載されている新聞記事の写しと思われるものには,申立人が「ナノディフェンダーAG+シリーズの販売を開始した」旨の記載がある(甲13の1)。 (4)リフォーム産業新聞のウェブサイトにおける2021年(令和3年)7月12日付けで発行された「ナノソリューション,光触媒の新シリーズを発売」というタイトルの記事には,「光触媒酸化チタンコーティング剤の製造・販売・施工を行うナノソリューション(大阪府枚方市)はこのほど,ナノディフェンダーAG+シリーズの販売を開始した。」の記載とともに,「Nano Defender Ag+ Coat」の文字がパッケージに表示された商品の写真が掲載されている(甲13の2)。 (5)Dream Newsのウェブサイトにおいて,2021年(令和3年)8月5日付けで「京都府|トミーゴルフファクトリーに新製品の銀系光触媒コーティング『ナノディフェンダーAG+』を施工。新型コロナウイルスの不活化効果実証実験エビデンス取得済み活用で抗ウイルス・抗菌効果持続。」というタイトルの記事が掲載され,「光触媒コーティングメーカーのナノソリューション株式会社・・・と加盟代理店ストライクファースト株式会社・・・は共同施工実施したことを採用事例として8月5日に発表します。トミーゴルフファクトリー・・・に新製品の銀系光触媒コーティング『ナノディフェンダーAG+(ナノディフェンダーエージープラス)』を実施しました。」の記載がされている(甲14)。 (6)以上によれば,申立人は,遅くとも令和3年3月24日までには,申立人商標又はその欧文字表記と認められる「Nano Defender」の文字をその構成中に含む商標の申立人商品への使用を開始し,少なくとも同年7月12日には「ナノディフェンダーAG+」というシリーズ商品を販売し,また,同年8月5日までには,「トミーゴルフファクトリー」という会社に対し,申立人が,銀系光触媒コーティングである「ナノディフェンダーAG+」を施工している。 しかしながら,申立人商標を使用した商品及び役務についての販売数量,売上高,市場シェアなどの販売実績や広告宣伝の方法等,その周知性を客観的に判断するための具体的な証拠の提出はないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における申立人商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 そのほか,申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても,申立人商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 したがって,申立人から提出された証拠によっては,申立人商標が,我が国において,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認めることができない。 2 申立人と被申立人の関係について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 (1)被申立人は,申立人と共に件外商品の販売及び当該商品を用いた役務を行っていたことはうかがえるものの,業務の行い方等に関し,T氏とM氏は互いに不満があり,被申立人は,被申立人の業務運営について,申立人との間で合意するための覚書を2021年(令和3年)1月付けで作成し,申立人に送付したものの,合意には至っていない(甲6,申立人の主張)。 (2)申立人の代表取締役であるM氏は,被申立人の取締役専務でもあり,一部業務を協働して行うような関係にあったが,互いに不満を募らせ,令和3年2月5日に被申立人の取締役専務を退任している(甲4,申立人の主張)。 (3)T氏に対して不満を持っているという取引業者が3者おり,当該取引業者は2021年(令和3年)6月24日付けで,それぞれの不満の内容を記載した陳述書を作成している(甲7~甲9)。 (4)以上によれば,申立人と被申立人は,申立人が件外商品を被申立人に卸し,一部業務について協働で行うような関係にもあったことはうかがえるものの,その業務遂行の過程で,考え方の違い等から,T氏とM氏は互いに不満を募らせ,M氏が被申立人における取締役専務を退任するなど,申立人と被申立人の関係は業務を共に行うことが困難な程度に悪化していたことが認められる。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものであるから,本件商標と申立人商標とが,同一又は類似するものであるとしても,商標権者が本件商標をその指定商品又は指定役務について使用したときに,取引者,需要者をして申立人商標を連想又は想起させることはなく,その商品又は役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。 その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標と引用商標について 本件商標と引用商標は,ともに「ナノディフェンダー」の文字を標準文字で表してなるものであるから,両者は同一の商標である。 (2)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品について ア 本件商標の指定商品及び指定役務中,第2類「金属を含有してなる抗菌用コーティング塗料」と引用商標の指定商品の類否 本件商標の指定商品及び指定役務中,第2類「金属を含有してなる抗菌用コーティング塗料」は,塗料の範ちゅうに属する商品であるのに対し,引用商標の指定商品のすべては,化学品及び薬剤の範ちゅうに属する商品であるから,その生産部門,販売部門,原材料及び品質,需要者の範囲を異にし,また,完成品と部品の関係にあるものでもない。 そして,申立人は,両者が類似すると主張しているものの,その裏付けとなる証拠の提出はなく,当審において職権で調査するも,両者が類似するというべき事情も見いだせなかった。 そうすると,両者は,同一営業主の製造・販売に係る商品と誤認混同するおそれのない非類似の商品といわざるを得ない。 イ 本件商標の指定商品及び指定役務中,第37類「建築物の抗菌又は防かび工事,建築物の内外の消臭処理,自動車の車内の消臭・抗菌処理,自動車内部の清掃及び除菌消臭処理,建設工事」及び第40類「金属・ガラス・セラミック・プラスチックの表面への光触媒によるコーティング加工・処理,カーペットの抗菌加工」と引用商標の指定商品の類否 本件商標の指定商品及び指定役務中,第37類「建築物の抗菌又は防かび工事,建築物の内外の消臭処理,自動車の車内の消臭・抗菌処理,自動車内部の清掃及び除菌消臭処理,建設工事」及び第40類「金属・ガラス・セラミック・プラスチックの表面への光触媒によるコーティング加工・処理,カーペットの抗菌加工」は,建設工事,乗物の洗浄等処理及び加工処理の範ちゅうに属する役務であるのに対し,引用商標の指定商品のすべては,化学品及び薬剤の範ちゅうに属する商品であるから,その用途,商品の販売場所と役務の提供場所,需要者の範囲を異にし,また,商品の製造・販売と役務の提供が同一営業主によって行われているのが一般的であるものでもない。 そして,申立人は,両者が類似すると主張しているものの,その裏付けとなる証拠の提出はなく,当審において職権で調査するも,両者が類似するというべき事情も見いだせなかった。 そうすると,両者は,同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認混同するおそれのない非類似の商品及び役務といわざるを得ない。 (3)小括 したがって,本件商標と引用商標が同一の商標であるとしても,本件商標の指定商品及び指定役務は引用商標の指定商品とは非類似の商品及び役務であるから,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法第4条第1項第7号の趣旨 ア 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高裁 平成14年(行ケ)第616号 平成15年5月8日判決言渡)。 イ 当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して,先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や,国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば,それらの趣旨から離れて,同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。 そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても,出願人と,本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して,例えば,本来商標登録を受けるべきであると主張する者(中略)が,自ら速やかに出願することが可能であったにもかかわらず,出願を怠っていたような場合や,契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず,適切な措置を怠っていたような場合(中略)は,出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(知財高裁 平成19年(行ケ)第10391号 平成20年6月26日判決言渡)。 (2)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性 本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもなく,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが,公正な取引秩序を乱し,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するということもできないし,特定の国,若しくはその国民を侮辱し,又は,国際信義に反するということもできず,他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。 また,申立人商標は,上記1のとおり,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできないから,本件商標は,これをその指定商品及び指定役務に使用することが,申立人商標の周知性による信用及び顧客吸引力に便乗するものということはできないし,ひょう窃的な行為ということもできない。 そして,上記2の認定事実は件外商品に係るものであって本件とは直接的に関連しないものであり,また,上記4のとおり,本件商標の指定商品及び指定役務は申立人商品とは類似しないものである。 そうすると,被申立人が本件商標を登録することが,社会の一般的道徳観念に反する行為であるということはできないし,また,このような申立人と商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,上記(1)イにいう「「公の秩序や善良の風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合」には該当しないというべきである。 そのほか,本件商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる具体的事実や特段の事情は見いだせない。 以上のとおり,申立人商標が申立人の業務に係る商品又は役務について周知性を獲得していたと認めるに足りる証拠はなく,かつ,本件商標がその商標登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあったと認めることは困難というべきである。 したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2023-02-21 |
出願番号 | 2021046773 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W023740)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
豊瀬 京太郎 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 須田 亮一 |
登録日 | 2021-12-14 |
登録番号 | 6485824 |
権利者 | テックメディカルnano株式会社 |
商標の称呼 | ナノディフェンダー |
代理人 | 椿 豊 |
代理人 | 本田 史樹 |