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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0941
管理番号 1395486 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-21 
確定日 2023-02-02 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1469961号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。  
結論 国際登録第1469961号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件国際登録第1469961号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「MEDABOTS」の欧文字を横書きしてなり、2018年(平成30年)2月28日に国際商標登録出願、第9類及び第41類に属する別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2021年(令和3年)9月14日に登録査定、同年11月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、引用する標章は、別掲3のとおりの構成からなり、「ビデオゲーム、おもちゃ、人形」に使用して広く知られているとするものである(以下「引用標章」という。)。
(2)申立人が、本件商標は商標法第1項第11号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用各商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 登録4273379号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成9年8月1日
設定登録日:平成11年5月21日
指定商品 :第9類及び第16類に属する商標登録原記載のとおりの商品
イ 登録6405031号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:MEDAROT(標準文字)
登録出願日:令和2年5月26日
設定登録日:令和3年6月21日
指定商品及び指定役務:第9類及び第41類に属する商標登録原記載のとおりの商品及び役務
以下、引用標章及び引用各商標をまとめて、「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。以下、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、アルファベット大文字で「MEDABOTS」と横一連に配された商標であり、「メダボッツ」の称呼が生じる。
これに対し、引用標章は、デザイン化された太字で表されたアルファベット大文字で「MEDABOTS」と横一連に配し、背景に金属を思わせる銀色の六角形の図形を組み合わせた標章であり、そこからは「メダボッツ」の称呼が生じる。
申立人は、人工知能を搭載したメダルを装填したロボット同士を対戦させるというゲームを開発し、その商標として「メダル/MEDAL」と「ロボット/ROBOT」を組み合わせた「メダロット/MEDAROT」商標を創作した。申立人は、この商標を付したゲーム、おもちゃ等を、1997年から販売している。
2002年からは、海外においてもゲーム及びおもちゃの販売を開始することとなったが、その際に、「MEDAROT」の「ROT」部分に「腐敗」の意味があることが分かり、海外市場において商品の内容についての誤認や誤解が生じることを回避するために、「MEDAROT」の「R」(「ROBOT」の1文字目)を「B」(「ROBOT」の3文字目)に組み換え、さらに、ゲームの主要キャラクターが複数存在することを踏まえて、複数形の「S」を加えた「MEDABOTS」を創作し、海外向け商品の標章とした。このように、「メダロット/MEDAROT」及び「MEDABOTS」は、「MEDAL」と「ROBOT」を組み合わせた、申立人による造語である。
1997年に使用を開始した「メダロット/MEDAROT」は、2015年までの国内累計出荷本数が330万本のヒット作品である。また、海外における2002年から2004年の2年間の売上げが35万本となったことから、国内においても海外での評価が広く知られることとなり、その結果、「メダロット/MEDAROT」が「MEDABOTS」という標章で海外展開されていることも国内ユーザーに知られるようになった。国内向けゲームを基にして海外版ゲームを輸出するだけでなく、海外版を基にした国内向けの商品を販売したこともあって、「メダロット/MEDAROT」と「MEDABOTS」が同一であるという理解が消費者に浸透している(甲5)。
メダロットの海外版が「MEDABOTS」として消費者に浸透していることは、数は少ないものの、海外版の「MEDABOTS」がメルカリやヤフオク、ヤフーショッピングサイトなどで取り引きされていることからも明らかである(甲6)。
さらに、大手オンライン英語辞書サイトのweblio英和辞典において「メダロット」を検索すると「Medabots」と翻訳されること、逆に「medabots」を検索すると、その意味として「「メダロット」とは、1997年にイマジニアから発売されたゲームソフト「メダロット」を始めとする、コンピュータゲーム、漫画、アニメのシリーズの総称である。」という説明が表示されることや、Google翻訳において「メダロット」を入力すると「medabots」と翻訳されることから、コレクター以外でも「メダロット/MEDAROT」と「MEDABOTS」が同一であると容易に理解できる(甲7)。
本件商標と引用標章とは、文字のデザインが異なるものの、アルファベットで「MEDABOTS」と横一連に表記する構成が一致しており、そこから生ずる称呼も同一である。上述のとおり、「MEDABOTS」は申立人の「メダロット」の海外向けの標章として日本において広く認識されている標章であることから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に抵触するものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、アルファベット大文字で「MEDABOTS」と横一連に配された商標であり、「メダボッツ」という称呼が生じる。
これに対し、引用商標1はデザイン化された文字で表された「メダロット」の「ロ」の部分に「MEDA」「ROT」の二段の文字を組み込んだメダルを模した図形が配されている商標である。引用商標1からは「メダロット」の称呼が生じることから、メダルを模した図形部分の「MEDA」「ROT」が引用商標のアルファベット表記であり、「MEDAROT」と一連に読むものであることは容易に理解できるものである。
また、引用商標2は、アルファベット大文字で「MEDAROT」と横一連に表した商標であり、「メダロット」の称呼が生じる。
本件商標と引用各商標は、第1文字から第4文字の「MEDA」及び第6文字から第7文字の「OT」を共通にするもので、相違点は、第5文字の「B」と「R」及び第8文字「S」の有無が相違するのみである。日本における英語教育の普及により、単語の末尾に配される「S」が複数を意味するものであることは容易に理解できること、また商標を認識する際において最後尾1文字の差が重要ではないことを考慮すると、本件商標と引用商標の相違点は、第5文字だけである。「B」は縦線と縦線の頂点・中間・底辺の3点をつなぐように右側に半楕円を配した構成の文字であり、「R」は「B」と同様に縦線と縦線の頂点・中間点をつなぐ半楕円を右側に配している。「B」との違いは右下部分が縦線につながっているか否かの点だけであることから、両文字は看取した際に誤認しやすい文字である。「MEDAROT」と第1文字から第4文字、第6文字から第7文字が同一の「MEDABOTS」を看取した場合、「MEDAROTS」であると誤認する可能性を否定できない。
また、称呼においても、本件商標と引用各商標は「メダボッツ」「メダロット」の称呼が生じ、どちらも同じ5音で構成されている。第1音、第2音、第4音を共通にしているもので、第3音の「ボ」と「ロ」は母音を共通にするものである。また、第5音の「ツ」と「卜」は同じタ行であり、母音「ウ」と「オ」は近似の音であることから、「ツ」と「卜」についても類似している。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼並びに外観において類似するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標が本邦においても登録されたことがネットに掲載されたことにより、本件商標の存在も国内のユーザーも知るところとなった。既に述べたとおり、「MEDABOTS」が申立人の「メダロット/MEDAROT」の海外版の標章であることは周知となっていることから、本件商標権者と申立人の関係性に関する問合せが申立人に多く届いている。本件商標権者がゲーム内でも使用できると謳う「MEDACOIN」という暗号資産を提供するという情報が流れた際には、「「メダロット/MEDAROT」上でもその暗号資産を使用できるのか」という問合せも届いたほどである。
そのため、申立人は、スペイン商事裁判所において係属中である本件商標権者との係争に関するスペインにおける係争に関するニュースリリースを、2021年1月13日、同年11月9日、同年12月14日の3回にわたって自社のホームページ上に掲載し、業務上の関係がないことを明確にする努力をしている(甲8)。また、申立人のニュースリリースは、株式会社マレの「電ファミニコゲーマー」サイト、あまた株式会社の「オタク産業通信」サイト、株式会社アクティブゲーミングメディアの「オートマトンメディア」サイトなどによっても配信されている(甲9)。
上述のように、本件商標が申立人の業務に係る商品及び役務と出所の混同を生じる商標であることは明らかである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
申立人は、人工知能を搭載したメダルを装填することで起動するロボットが登場するゲームを販売するに当たり、「メダル/MEDAL」と「ロボット/ROBOT」の語を組み合わせることとし、「メダル」の最初の2文字の「メダ」、「ロボット」の1文字目と3文字目及び4文字目から取った「ロット」を組み合わせ、「メダロット/MEDAROT」商標を創作したものである。申立人はこの商標を付した商品の国内販売を1997年から開始している。2002年の海外展開開始に際し、「ROT」について「腐敗」の意味があることが分かったため、「ROT」部分に代わる語として「ROBOT」の「BOT」を使い、「MEDABOTS」という標章に変更したものである。
申立人は、2002年より欧米において「MEDABOTS」の使用を開始し、2002年から2004年までの2年間だけで35万本の売上げとなっている。また「MEDABOTS」のアニメも各国で放送され、DVD又はブルーレイ、登場するロボットのおもちゃなども販売されたことから、現在においてもその認知度は高く、「MEDABOTS」が日本においては「MEDAROT」と称されていることや、欧米では販売されていない日本国内向け商品についてのリリース情報を掲載したサイトも多数存在している(甲10)。
本件商標は、申立人が長年海外で使用してきた商標と同一であることから、申立人の業務と関連性があるかのような印象を与え、申立人が培った事業に対する信頼を奪取するもので、不正の目的をもって使用する商標であるといわざるを得ない。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである
(ア)申立人は、人工知能を搭載したメダルを装填したロボット同士を対戦させるというゲームを開発し、その商標として「メダル/MEDAL」と「ロボット/ROBOT」を組み合わせた「メダロット/MEDAROT」商標を採択した(甲5)。
(イ)申立人は、1997年に「メダロット/MEDAROT」商標を付したゲームソフトを販売した(甲5の1)。
(ウ)申立人は、2002年から、海外においてもゲームの販売を開始することとなったが、海外向け商品の標章として、「MEDAROT」の「R」(「ROBOT」の1文字目)を「B」(「ROBOT」の3文字目)に組み換え、さらに、複数形の「S」を加えた「MEDABOTS」を採択した(甲5)。
(エ)「ウィキペディア」の「メダロット」の記事中に「シリーズ累計出荷本数は330万本(2015年12月時点)」との記載がある(甲5の1)。
(オ)「ニコニコ大百科」の「メダロット」の記事中に、「日本国外においては、同じロボットを指してBotを組み合わせた、「メダボッツ(Medabots)」で知られている。」との記載がある(甲5の3)。
(カ)「ピクシブ百科事典」の「メダロットG」の記事中に「基本的なシステムは海外版メダロット「MEDABOTS AX(メダボッツ)」を元にしている。」との記載がある(甲5の4)。
(カ)「ピクシブ百科事典」の「メダロットG」の記事中に「基本的なシステムは海外版メダロット「MEDABOTS AX(メダボッツ)」を元にしている。」との記載がある(甲5の4)。
(キ)「メルカリ」「ヤフオク」「YAHOO!ショッピング」及び「楽天市場」において、引用標章が付された「Medabots」等の商品が価格と共に掲載されている(甲6)。
(ク)「Weblio和英辞典」「Weblio英和辞典」及び「Google翻訳」によれば、「メダロット」の英語として「Medabots」との記載があり(甲7の1、3)、また、「medabotsとは」の項に、「・・・1997年にイマジニアから発売されたゲームソフト「メダロット」を始めとする、コンピュータゲーム、漫画、アニメのシリーズの総称である。」との記載がある(甲7の2)。
(ケ)申立人は、スペイン商事裁判所において、EU商標登録第17847161号「MEDABOTS」の侵害に係る本件商標権者との係争に関するニュースリリースを、2021年1月13日、同年11月9日、同年12月14日の3回にわたって自社のホームページ上に掲載した(甲8)。
また、申立人の上記ニュースリリースの内容は、「電ファミニコゲーマー」サイト、「オタク産業通信」サイト等にも記載されている(甲9)。
イ 上記アによれば、申立人は、1997年に、我が国において、同人の取扱いに係るゲームソフトについて、「メダロット/MEDAROT」の構成文字からなる商標の使用を開始したことがうかがえるものの(以下、当該ゲームソフトを「申立人商品」という。)、申立人商品について、引用商標の具体的な使用態様は不明であり、また、「ウィキペディア」に「シリーズ累計出荷本数は330万本(2015年12月時点)」との記載があるものの、引用商標が使用された申立人商品について、我が国における販売数、売上高、市場シェアなどの販売実績や、広告宣伝の方法、期間、地域、規模等を示す具体的、客観的な証左はない。
また、申立人は、2002年頃から、海外において申立人商品の販売を開始し、2002年から2004年の海外での売上げは35万本であるなどと述べ、さらに、「メルカリ」「ヤフオク」等のショッピングサイトによれば、当該申立人商品には「MEDABOTS」の構成文字からなる引用標章が付されていたものがあることが確認できる(甲6)ものの、それ以上に、引用標章が使用された申立人商品の販売地域、販売数、売上高、市場シェアなどの販売実績や、広告宣伝の方法、期間、地域、規模等を示す具体的、客観的な証左を見いだすこともできない。
その他、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、周知性を獲得していると認めるに足りる証左は見いだせない。
そうすると、具体的な使用事実に基づいて、申立人の業務に係る商品及び役務の出所表示としての引用商標の使用状況を把握し、その周知性の程度を客観的に推し量ることができないといわざるを得ない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「MEDABOTS」の欧文字を通常の書体で横書きした構成からなるところ、当該文字は一般的な辞書等には掲載された語ではなく、また、上記(1)のとおり、申立人商品を表示する周知商標であるともいえず、他に我が国において特定の意味を表すものとして親しまれている等の事情もないから、特定の意味を認識させることのない造語というのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「メダボッツ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用各商標について
(ア)引用商標1
引用商標1は、別掲4のとおり、二重の枠線を有する角丸横長長方形内に、デザイン化された「メダロット」の片仮名(当該「ロ」の文字内に「MEDA」及び「ROT」の二段の文字を小さく組み込んだ六角形が配されている。)を有してなるものである。
そして、引用商標1を構成する上記図形は、我が国において、特定の事物や意味合いを表すものとして認識されているような事情は見いだせない。
また、引用商標1の「メダロット」及び「MEDAROT」の各文字は一般的な辞書等には掲載された語ではなく、さらに、上記(1)のとおり、申立人商品を表示する周知商標であるともいえず、他に我が国において特定の意味を表すものとして親しまれている等の事情もないから、特定の意味を認識させることのない造語というのが相当である。
したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して「メダロット」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標2
引用商標2は、上記2(2)イのとおり、「MEDAROT」の文字を標準文字で表してなるところ、上記引用商標1と同様に、その構成文字に相応して「メダロット」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用各商標との類否
(ア)外観
本件商標と引用商標1の外観を比較すると、両者は、それぞれ上記ア及びイ(ア)の構成からなり、図形の有無という著しい差異を有することから明確に区別でき、また、本件商標と引用商標1の文字部分との比較においても、通常の書体の欧文字か、デザイン化された片仮名かで相違し、また、欧文字が一段書きか二段書きかにおいても相違することから、判然と区別し得るものである。
さらに、本件商標と引用商標2の外観を比較すると、両者の構成はそれぞれ上記ア及びイ(イ)のとおりであって、全体の構成文字数が相違し、5文字目の「B」の文字と「R」の文字とが相違し、更に語尾「S」の文字の有無でも相違することから、これらの差異により判然と区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用各商標は、外観において相紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標から生じる「メダボッツ」の称呼と、引用各商標から生じる「メダロット」の称呼を比較すると、比較的短い音構成中、3音目において「ボ」の音と「ロ」の音とが相違し、語尾においても「ツ」の音と「ト」の音とが相違するから、全体を称呼するときには、これらの差異により、明瞭に聴別し得るものであって、両者は、称呼において相紛れるおそれはない。
(ウ)観念
本件商標及び引用各商標は、いずれも、特定の観念を生じないものであるから、これらの商標を観念において比較することはできない。
(エ)類否判断
そうすると、本件商標と引用各商標は、観念において比較できないものの、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者が取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、いずれも、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用各商標が類似するというべき事情は見いだせない。
以上のとおり、本件商標と引用各商標は非類似の商標であって、両者の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性
本件商標は、別掲1のとおり、「MEDABOTS」の欧文字を通常の書体で横書きしてなるものであり、一方、引用標章は、別掲3のとおり、太字でデザイン化された「MEDABOTS」の欧文字を、ややグラデーションを付けたオレンジ色で一連に表し、その背景に六角形の銀色の図形を組み合わせた標章である。
そして、本件商標と引用標章を比較すると、両者の構成文字は、書体に差異があるものの、いずれもそのつづりを同じくするものであり、その構成文字に相応して生じる、「メダボッツ」の称呼も同一であることから、両者は類似する商標といい得るものである。
また、本件商標の指定商品及び指定役務中、少なくとも第9類「Game programs for consumer video game apparatus」は、引用標章が付された商品「ゲームソフト」(甲6)と同一又は類似するものと認められる。
しかしながら、上記(1)のとおり、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであって、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するとはいえない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知性
引用商標は、いずれも、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用標章とは、上記(3)のとおり、両者の構成文字は、書体に差異があるものの、いずれもそのつづりを同じくするものであり、その構成文字に相応して生じる「メダボッツ」の称呼も同一であることから、類似性の程度は高いといい得るものである。
また、本件商標と引用各商標は、いずれも、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものである。
ウ 出所混同のおそれ
(ア)引用標章は、(1)ア(ウ)のとおり、海外向けの商品に使用される商標であって、我が国の取引者、需要者が、引用標章に接する機会は少ないものである上に、上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。
してみれば、本件商標は、引用標章とは類似性の程度が高いものの、上記アのとおり、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、我が国の取引者、需要者が、引用標章を連想又は想起するものとはいい難く、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというのが相当である。
(イ)また、引用各商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、かつ、本件商標は、引用各商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、引用各商標との関係においては、商標権者がその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用各商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
なお、申立人は、「本件商標権者と申立人の関係性に関する問合せが申立人に多く届いている」ことを根拠に、本件商標が申立人の業務に係る商品及び役務と出所の混同を生じる商標である旨主張しているが、そのような問合せの内容、問合せの数、頻度等の事実は何ら立証されておらず、かかる主張のみにより、本件商標が申立人の業務に係る商品及び役務と出所の混同を生じさせる商標であると認定することはできない。
また、申立人は、「スペインにおける係争に関するニュースリリースを自社のホームページ上に掲載し、業務上の関係がないことを明確にする努力をしている」(甲8)旨主張しているが、本件商標が申立人の業務に係る商品及び役務と出所の混同生じる商標であるか否かは、我が国の取引者、需要者の認識に基づいて判断すべきところ、「スペインにおける係争」の事実関係は必ずしも明確ではない上、当該係争が我が国の取引者、需要者にどのような影響を与えたのかを示す証左もなく、かかる主張を採用することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また、上記(2)及び(3)のとおり、本件商標と引用標章が類似するとしても、本件商標と引用各商標とは、非類似の商標である。
そして、証拠として提出された外国語の証拠資料(甲10)には、翻訳文の添付がないことから、その内容が明らかとはいえず、その他、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって、本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとはいえない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標

別掲2 本件商標の指定商品及び指定役務
第9類「Game programs for consumer video game apparatus; programs for hand−held game apparatus with liquid crystal displays; game programs for handheld game apparatus with liquid crystal displays; programs for video game machines; game programs for video game machines; downloadable or installable programs and additional data for consumer video game apparatus; downloadable or installable programs and additional data for arcade video game machines; downloadable or installable programs and additional data for hand−held games with liquid crystal displays; downloadable or installable programs and additional data for computers; downloadable or installable programs and additional data for mobile phones; programs for mobile phones; gaming programs for cellular phones.」
第41類「Providing images via telecommunications via handheld game apparatus with liquid crystal displays [not downloadable]; providing images via telecommunication via mobile phone, not downloadable; providing images via telecommunication via handheld game apparatus with liquid crystal displays, not downloadable; providing images via telecommunications via cellular phone, not downloadable; providing images via telecommunications, not downloadable; providing music and sounds via telecommunications via consumer video game apparatus, not downloadable; providing music and sounds via telecommunications via cellular phones, not downloadable; providing music and sounds via telecommunications, not downloadable; providing games via telecommunications via handheld game apparatus with liquid crystal displays; providing games via telecommunications via video game machines; providing games via telecommunications via consumer video game apparatus; providing games via telecommunications via cellular phone; providing games via telecommunications; providing games for video game apparatus; providing games for handheld game apparatus with liquid crystal displays and games for cellular phones; providing games via telecommunication networks; providing games via a telecommunication network.」
別掲3 引用標章(色彩は甲2参照。)

別掲4 引用商標1

異議決定日 2023-01-30 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W0941)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2018-02-28 
権利者 Kevin Comadran De Frutos
商標の称呼 メダボッツ 
代理人 黒田 健二  
代理人 齋藤 宗也 
代理人 青木 篤 
代理人 外川 奈美  

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