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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W12
管理番号 1395481 
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-28 
確定日 2022-10-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6374590号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6374590号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6374590号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年12月18日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同3年3月25日に登録査定、同年4月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は次の3件であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4645527号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:「SMART」の欧文字
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品」
登録出願日:平成7年9月28日(優先権主張:1995年(平成7年)3月31日) ドイツ連邦共和国
設定登録日:平成15年2月21日
(2)登録第4356634号の2商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:「SMART」の欧文字及び「スマート」の片仮名の2段書き
指定商品:第9類「消防車,自動車用シガーライター」
登録出願日:平成8年11月20日
設定登録日:平成12年1月28日
(3)登録第4479179号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第12類「自動車並びにその部品及び附属品」
登録出願日:平成10年12月11日
設定登録日:平成13年6月1日
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「登録引用商標」という。
2 申立人が、申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項15号に該当するとして引用する商標は、登録引用商標及び別掲3のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標4」という。)であり、申立人が商品「小型自動車」について使用し、我が国の需要者の間に広く認識されていると主張するものである。
以下、登録引用商標及び引用商標4をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 登録異議申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品について商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって、取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。なお、枝番号のすべてを引用する場合には、枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 具体的理由
(1)申立人について
申立人は、世界的に著名なドイツの自動車メーカー「ダイムラー」と中国の大手自動車メーカー「浙江吉利控股集団」の折半出資により、2020年1月に設立された中国の合弁会社であり、従来、「ダイムラー」が「メルセデス・ベンツ」とともに展開してきた高級小型車ブランド「スマート(smart)」(以下「スマート」という。)を統括している(甲6、甲7)。
「ダイムラー」は世界的に著名なドイツの自動車メーカーであり、「メルセデス・ベンツ」ブランドの乗用車その他各種乗用車・商用車や各種エンジンのメーカーとして世界200以上の国と地域で事業を展開している。
(2)申立人の統括する「スマート」について
申立人の「スマート」は、もともと1994年にスイスの大手時計会社「スウォッチ」と「ダイムラー」の合弁で設立されたマイクロカー事業のブランドであり、「最小限のボディサイズで、最大限の安全性、快適性、環境適合性を」をコンセプトに、メルセデス・ベンツのクルマ製造のノウハウを活かして開発されたマイクロカーを提供しており、マイクロカーのパイオニア的ブランドである。1998年の発売以来、200万台以上の「スマート」のマイクロカーが販売され、それらは世界中の都市を象徴するアイコン的存在にもなっている(甲5)。「スマート」(smart)の名称は、「スウォッチ(Swatch)」の「S」と、「メルセデス・ベンツ(Mercedes−Benz)」の「M」に、「芸術」(art)を組み合わせ、英語の「smart(洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な、などの意味を持つ)」にかけたものである。
また、「スマート」では、引用商標3や引用商標4のブランドロゴが存在し、自社のコンパクトカー、ウェブサイト、看板及びショールームなどに使用されている(甲5、甲8〜甲10の1)。
設立以降、「スマート」は、設立から12年、赤字が続いたが、需要者の間でガソリン価格の高騰と地球環境への配慮から低燃費車志向が高まり、小型車の需要が見込まれる中、2007年度から黒字に転換した。
「スマート」のマイクロカーは、特徴的なデザインと高い燃費性能に加え、ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」の車種と同水準の安全基準が適用され、小型車でありながら大型車と同様の衝突安全性を誇ることから、マイクロカーの分野では国内外で高い人気を得ており、2021年上期の世界新車販売台数は、前年同期比で2倍となる2万253台を記録した(甲10の3)。我が国では、2015年に当時の国民的アイドルグループのメンバーを起用した全国放送のテレビCMを行ったことでも注目を集め(甲10の2)、2018年にはsmart誕生20周年とミッキーマウススクリーンデビュー90周年を合わせたコラボレーションを実現し(甲11)、現在では、京都にカフェを併設した「スマート」専用のショールームも展開している(甲10の1)。
また、我が国では、メルセデス・ベンツ日本株式会社(以下「メルセデス・ベンツ日本社」という。)が、「メルセデス・ベンツ」とともに「スマート」の販売及びプロモーションを行っており、ウェブサイト等では「メルセデス・ベンツ」と「スマート」が一緒に紹介され(甲12)、かつ、「スマート」の動向は「メルセデス・ベンツ」とともに注目され、多くのメディアで取り上げられている(甲10)。2019年の「スマート」の新車販売台数は1990台であり、輸入車ブランド別販売台数では著名な高級車ブランド「マセラティ」や「フェラーリ」よりも上位の第17位、マイクロカーのブランドとしては「フィアット」、「アバルト」に次いで第3位である(甲13)。
なお、兄弟ブランドである「メルセデス・ベンツ」の同年の販売台数は6万6523台であり、輸入車ブランド別販売台数では5年連続で首位を維持し、7年連続でプレミアムブランドNo.1を獲得しており(甲14)、我が国では著名な輸入車ブランドとして認知されている。
このような状況を考えると、「スマート」は、兄弟ブランドである「メルセデス・ベンツ」の周知著名性とも相まって、遅くとも2019年末までには我が国のマイクロカーの分野における取引者、需要者の間で広く認知されており、「スマート」の商標として用いられる引用商標は広く知られていたと推認される。実際、Google及びYahoo!JAPANのインターネット検索エンジンで「車 SMART」を検索すると、申立人の「スマート」に関するウェブサイトが上位に表示される(甲15)。
(3)本件商標について
本件商標は、アルファベット「S」を模した図形の下に、レタリングが施された「SMArT」の文字と「+」の記号を配置した構成から成るところ、上段の図形と下段の文字及び記号とは、大きさの比率が明らかに異なり、かつ、これらが一体となって特定の意味合いを想起させるなど、常に一体不可分のものとしてのみ認識されるとみるべき特段の事情もない。
そうすると、上段の図形と下段の文字及び記号とを分離して観察することが不自然というべき程に密接な関連性があるとは認められず、本件商標は、上段の図形と下段の文字及び記号とを分離して捉えることができる。ここで、本件商標の指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」を取り扱う分野では、「+(プラス)」の記号は、「a トヨタ動車株式会社の「プリウス」と「プリウス+」」(甲16の1)、「b 本田技研工業株式会社の「フリード」と「フリード+」」(甲16の2)、「c 本田技研工業株式会社の「N−BOX」と「N−BOX+」(甲16の3、甲16の4)」、「d 株式会社SUBARUの「PLEO」と「PLEO+」」(甲16の5、甲16の6)、「e 三菱自動車工業株式会社の「コルト」と「コルトプラス」」(甲16の7、甲16の8)、「f ダイハツ工業株式会社の「ココア」と「ココアプラス」」(甲16の9)、「g 日産自動車株式会社の「リーフ」と「リーフe+」」(甲16の10)、「h フェラーリの「Ferrari 375F1」及び「FERRARI 375PLUS」」(甲16の11、甲16の12)のように、シリーズものの商品の種別や型式を表すものとして一般的に使用されている。
そうすると、商品の品番、型番、種別、型式、規格等を表した記号又符号として一般に使用されるものは、自他商品識別力を有しないことにも鑑みれば、本件商標中、「+」の記号部分には自他商品識別力が認められないか、極めて弱いと考えられる。
加えて、本件商標の下段の構成において、「+」の記号は、「SMArT」の文字に比して小さく、「SMArT」の文字部分に付加的に配置されている。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標の登録出願時、登録引用商標は、既に登録されており、本件商標に対して先願先登録の商標である。
また、本件商標は、その構成中、レタリングが施された「SMArT」の文字部分が要部となるところ、当該要部は、登録引用商標と構成文字が実質的に同一であり、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」の観念が共通するため、その称呼及び観念において互いに相紛らわしものであることから、本件商標と登録引用商標は互いに類似の商標である。
さらに、本件商標の指定商品である第12類「自動車並びにその部品及び附属品」は、登録引用商標の指定商品である第12類「自動車並びにその部品及び附属品」又は第9類「消防車,自動車用シガーライター」と同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標は、登録引用商標と類似であり、かつ、その指定商品が同一又は類似であることから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第10号該当性
引用商標は、2019年末までには申立人が統括する「スマート」の商標として広く知られていたことから、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者、需要者の間で、「自動車並びにその部品及び附属品」について申立人の商標として広く知られていたと推認される。
また、本件商標の要部は引用商標と構成文字が実質同一であることから、本件商標と引用商標は互いに類似する。
さらに、本件商標の指定商品である第12類「自動車並びにその部品及び附属品」は、申立人の使用に係る商品「自動車並びにその部品及び附属品」と同一である。
したがって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、我が国で周知性を有する引用商標と類似する商標であって、その指定商品は申立人の業務に係る商品と同一であるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における取引者、需要者の間で引用商標は、「自動車並びにその部品及び附属品」について、申立人の商標として広く知られていたと推認される。
そして、本件商標と引用商標は互いに類似の商標であり、本件商標の指定商品は申立人の使用に係る商品「自動車並びにその部品及び附属品」と同一である。
よって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する取引者、需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その商品が申立人の商品であるとか、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。
したがって、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。
2 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第15号に該当するため、商標登録を受けることができないものであることから、本件商標は同法第43条の2第1項第1号の規定により、その登録が取り消されるべきものである。

第4 当審における取消理由
当審において、商標権者に対して、「本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨の取消理由を令和4年2月16日付けで通知した。

第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由の通知に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と登録引用商標との類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「S」の欧文字を模した図形(以下「図形」という。)の下に、レタリングが施された「SMArT」の欧文字(以下「SMArT」という。)を横書きし、「SMArT」の右側にやや小さく「+」の記号を配置した構成よりなるところ、図形と「SMArT」及び「+」の記号とは、大きさの比率が明らかに異なり、かつ、これらが一体で特定の意味合いを想起させるなど、常に一体不可分のものとしてのみ認識されるとみるべき特段の事情はなく、図形と「SMArT」及び「+」の記号が分離して観察することが不自然というべき事情があるとは認められないため、本件商標は、図形と「SMArT」及び「+」の記号が視覚的に分離して看取されるものである。
そして、本件商標の構成中の「+」の記号は、その指定商品を取り扱う分野では、例えば、「7人乗りのプリウス!その名は『プリウス+(プリウスプラス)』」(公開日2011/03/06:甲16の1)、「新型コンパクトミニバン『FREED(フリード)/FREED+(フリードプラス)』を発売(2016年9月16日:甲16の2)」及び「N−BOX+」(2017年:甲16の4)の記載、「スバル・プレオ」について「PLEO+/PLUS」(甲16の6)、「三菱・コルトプラス」について「2004年登場。コルトをベースにリアを300mm延ばし、荷室を広くしている。」(甲16の8)及び「ダイハツ ミラココア」について「バリエーションを大きく分けると、標準的な『ココア』と、ちょっと豪華な仕様が用意された『ココアプラス』の2つに分けられる。」(甲16の9)の記載、「2019年1月23日、日産の電気自動車『リーフ』のハイパフォーマンスモデルである『リーフe+(イープラス)』が発売される。リーフe+は、リーフの動力性能をさらに高めて航続可能距離を伸ばしたモデルだ。」(甲16の10)、「FERRARI 375 PLUS」について「1953年のワールド・スポーツカー・チャンピョンシップを制したエンツォ・フェラーリは、ふたたびワールドタイトルを奪取する先頭に立つモデルとして、少数のスパイダーを作りました。これが375プラスとして知られるモデルです。」(甲16の12)の記載等があることからすると、本件商標の指定商品を取り扱う分野では、「+」の記号は、シリーズものの商品の種別や型式を表すものとして一般的に使用されているというべきであって、本件商標は、その構成中の「+」の記号部分は、自他商品の識別力が認められないか、極めて弱いものというべきである。
また、本件商標の構成中の図形は、需要者の間に広く知られている等の理由により、これが、特定の称呼及び観念が生じると判断するべき特別な事情はない。
さらに、「SMArT」は、「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等を意味する英語「smart」を表したものと容易に認識し得るものであり、また、「SMArT」は、本件商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特別な事情はない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「SMArT」を要部として抽出し、登録引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきであって、「SMArT」の文字(以下「本件商標の要部」という場合がある。)に相応して、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
イ 登録引用商標
(ア)引用商標1は、上記第2の1(1)のとおり、「SMART」の欧文字を書してなるところ、その構成文字に相応して、「スマート」の称呼を生じ、当該文字は、上記アのとおりの意味を有する語であるから、これより「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
したがって、引用商標1は、「スマート」の称呼を生じ、「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
(イ)引用商標2は、上記第2の2(2)のとおり、「SMART」の欧文字及び「スマート」の片仮名を上下2段に書してなり、下段の「スマート」の片仮名は、上段の「SMART」の欧文字の読みを特定したものと容易に認識されるものであるから、引用商標2は、構成文字に相応して、「スマート」の称呼を生じ、「SMART」の文字は、上記アのとおりの意味を有する語であるから、これより「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
したがって、引用商標2は、「スマート」の称呼を生じ、「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものある。
(ウ)引用商標3は、別掲2のとおり、「smart」(「a」の右側上部に三角図形が付されている。)の欧文字を表したものと容易に認識されるところ、その構成文字に相応して、「スマート」の称呼を生じ、「smart」の文字は、上記アのとおりの意味を有する語であるから、これより「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
したがって、引用商標3は、「スマート」の称呼を生じ、「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と登録引用商標との類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、引用商標1は、上記イ(ア)のとおりの構成よりなるところ、両者は、外観において、その全体は相違するとしても、本件商標の要部である「SMArT」と引用商標1との比較において、両者は、4文字目の「r」の文字と「R」の文字について、小文字と大文字の差異があるとしても、その文字のつづりを同じくするものであるから、近似した印象を与えるものである。
また、称呼において、両者は、「スマート」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念において、両者は、いずれも「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするものである。
したがって、本件商標の要部と引用商標1とは、外観において近似した印象与えるものであり、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするため、これらを総合的に考察すると、両商標は、類似の商標である。
イ 本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、引用商標2は、上記イ(イ)のとおりの構成よりなるところ、両者は、外観において、その全体は相違するとしても、本件商標の要部である「SMArT」と引用商標2との比較において、本件商標の要部と引用商標2の上段の「SMART」は、4文字目の「r」の文字と「R」の文字について、小文字と大文字の差異があるとしても、その文字のつづりを同じくするものであるから、近似した印象を与えるものである。
また、称呼において、両者は、「スマート」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念において、両者は、いずれも「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするものである。
したがって、本件商標の要部と引用商標2とは、外観において近似した印象与えるものであり、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするため、これらを総合的に考察すると、両商標は、類似の商標である。
ウ 本件商標と引用商標3との類否について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、引用商標3は、別掲2のとおりの構成よりなるところ、両者は、外観において、その全体は相違するとしても、本件商標の要部である「SMArT」と引用商標3との比較において、4文字目の「r」の文字を共通にし、その他の文字が大文字と小文字よりなる点において差異があるとしても、その文字のつづりを同じくするものであるから、近似した印象を与えるものである。
また、称呼において、両者は、「スマート」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念において、両者は、いずれも「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするものである。
したがって、本件商標の要部である「SMArT」と引用商標3とは、外観において近似した印象を与えるものであり、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」等の観念を共通にするため、これらを総合的に考察すると、両商標は、類似の商標である。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と登録引用商標は、外観において、その全体は相違するとしても、本件商標の要部である「SMArT」と登録引用商標との比較において、近似した印象を与えるものであり、また、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」の観念を共通にする一方、両者の外観上の相違は、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差違として強い印象を与えるとはいえないから、これらの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に考察すれば、両商標は、互いに類似する商標というべきである。
(2)本件商標の指定商品と登録引用商標の指定商品との類否について
本件商標の指定商品は、引用商標1及び引用商標3の指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」と同一の商品であり、引用商標2の指定商品である「消防車,自動車用シガーライター」と類似する商品である。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、登録引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品も同一又は類似する商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
申立人は、ドイツの自動車メーカー「ダイムラー」と中国の大手自動車メーカー「浙江吉利控股集団」の折半出資により、2020年1月に設立された中国の合弁会社で、「スマート(smart)」の名称の小型車の統括を行っていること、我が国において、メルセデス・ベンツ日本社が、「スマート(smart)」の名称の小型車の販売及びプロモーションを行っていること、2019年の「スマート(smart)」の名称の小型車の新車販売台数は1990台であること等を主張しているが、我が国における「スマート(smart)」の名称の小型車の宣伝広告の手段、頻度等は明らかではなく、2019年の販売台数とする1990台は、我が国における自動車の販売の実情からすると、多数とはいい難いこと、「スマート(smart)」の名称の小型車の市場占有率については、これを明らかにする証拠が提出されていないこと等からすると、申立人が提出した全証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の取り扱いに係る小型自動車を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そうすると、上記1のとおり、本件商標は、登録引用商標と類似する商標であり、本件商標の指定商品と申立人の取り扱いに係る小型自動車や登録引用商標に係る指定商品は、同一又は類似の商品であり、また、本件商標と「smart」の欧文字を有する引用商標4は、本件商標と登録引用商標と同様に、「スマート」の称呼及び「洗練された、気のきいた、賢い、鋭い、活発な」の観念を共通にする類似する商標と判断でき、本件商標の指定商品と申立人の取り扱いに係る小型自動車及び登録引用商標に係る商品は、同一又は類似の商品であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないとしても、同項第11号に該当するものであるから、同項第15号該当性について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、その登録は、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標3


別掲3 引用商標4(甲5など:色彩は原本を参照。)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-09-22 
出願番号 2020156707 
審決分類 T 1 651・ 25- Z (W12)
最終処分 06   取消
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 青野 紀子
小俣 克巳
登録日 2021-04-07 
登録番号 6374590 
権利者 朴 美玉
商標の称呼 スマートプラス、スマート、エス 
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所 

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