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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1394257 
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-12 
確定日 2023-01-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6511166号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6511166号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6511166号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZARA−FEEDER」の文字を標準文字で表してなり、令和3年5月13日に登録出願、第9類「ネジ・ボルト検査装置,小物部品検査装置,異物品抽出検査器,測定機械器具,電気磁気測定器,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,事故防護用手袋,電子出版物」を指定商品として、同4年1月14日に登録査定、同年2月9日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
国際登録第973064号商標(以下「引用商標」という。)
商標の構成 ZARA
指定商品 第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2010年(平成22年)7月20日(事後指定)
設定登録日 平成24年3月16日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 「ZARA」の周知・著名性について
申立人が使用する「ZARA」(以下「申立人使用商標」という場合がある。)は、世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして、世界各国及び我が国の需要者・取引者に広く知られている。
申立人のファッションブランド「ZARA」は、1975年にスペインにて1号店がオープンして以来、現在では世界で約2,040を超える店舗が展開されており(甲5)、日本においても1997年に日本法人が設立され、翌年に1号店を渋谷に開店した後(甲5)、現時点で国内に約100の店舗が存在する(甲6)。
申立人の主力業態である「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)ブランドに関する2022年1月期の世界全体の売上高は、195億8,600万ユーロ(約2兆5,265億9,400万円:甲7)であって、世界の主なアパレル製造小売業と比較しても規模が大きいものであることが伺える(甲8)。
このような申立人使用商標の世界展開や商業的成功、及びそれに伴うブランド認知度の向上により、米Interbrand社が毎年公表するブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」において、2020年度版で第35位に選出されており、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして認識されている(甲9)。
申立人は、店舗そのものを広告塔とすることで広告宣伝費を抑える戦略を採っていることから、広告宣伝費をもって申立人使用商標の周知著名性を判断することは適切ではない。申立人使用商標の周知著名性は、主要なソーシャルメディアでのフォロワー数で示すことが可能である。ソーシャルメディアでのフォロワー数は、需要者が積極的に、対象のアカウントにアクセスをして、情報を継続的に得るフォロワーの数を示すものであり、客観的な周知著名性を示す有力な資料といえるからである(甲10〜甲12)。
以上のことからすると、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時点には、ファッションの分野において我が国の需要者・取引者の間で広く認識されており、強い顧客吸引力を持つ周知又は著名な商標といえる。
過去の異議申立ての決定及び無効審判の審決においても、商標「ZARA」が少なくとも「被服」の分野において、我が国の需要者・取引者の間で広く認識されている旨が認定されている(甲13、甲14)。さらに、日本国周知・著名商標検索においても「ZARA」(第25類)について、周知・著名商標として認定されていることが確認できる(甲15)。
イ 「被服」と「コンピュータソフトウェア」等の関連性について
昨今、有名ファッションブランドが、顧客との接点を広げるために、スマートフォン用のダウンロード可能な「アプリケーションソフトウェア」(以下「アプリ」という。)を提供することが行われており、例えばAndroid用のアプリがダウロードできる「Google Play Store」において、申立人の「ZARA」をはじめ、「H&M」、「GU」といった有名ファッションブランドのアプリが確認できる(甲16〜甲20)。これらのアプリは、オンラインストアの機能も持つところ、アプリを通じて被服を購入する購買行動が一般的になっている(甲21、甲22)。
したがって、ファッションの中心アイテムである商品「被服」と、ダウンロード可能なアプリを含む「コンピュータソフトウェア」等とは、特にアプリを作成する程の有名ファッションブランドにあっては、需要者、取引者の層が共通し、互いに関連性が強いものというべきである。
そして、上述のとおり、申立人のファッションブランド「ZARA」も、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして知られるものであり、また実際にダウンロード可能なアプリを作成・提供していることから、商品「被服」に関する申立人使用商標の周知・著名性は「アプリケーションソフトウェア」を含む「コンピュータソフトウェア」にも及ぶものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標の「ZARA」、「FEEDER」の各文字は、視覚上、両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難い。「ZARA」の文字部分は、冒頭により顕著に表示されていることから、看者に対して強く支配的な印象を与えるものである。
そして、「FEEDER」の意味は、「物を供給する者」「物の供給装置」を意味する一般名称であることは広く知られていることからすると、指定商品との関係で識別力に乏しいというべきである。
そうすると、本件商標に接する需要者・取引者は、「ZARA」の文字部分を商標の要部として認識するものと考えるのが自然である。
一方、引用商標の構成は上述のとおりであるところ、本件商標の要部「ZARA」と、引用商標は、いずれも辞書等に掲載されていないものであり、一種の造語として認識されることから、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語読みに倣って、それぞれ同一の「ザラ」の称呼が生じるものである。また、本件商標の要部「ZARA」と、引用商標は、互いに外観上も同一であり、本件商標と引用商標は、称呼及び外観において類似する。
特に、引用商標を構成する「ZARA」は、独創性の高い商標であり、このような造語より構成される創造商標については一般に強い識別性が認められ、他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも需要者に対する印象・連想作用等から出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。
さらに、上述のとおり、申立人使用商標は、「被服」の分野で周知・著名であって、その周知・著名性は関連する「コンピュータソフトウェア」「電子応用機械器具及びその部品」の分野にも及ぶことから、本件商標が指定商品に使用された場合には、周知・著名なブランド「ZARA」を想起・連想させるため、互いに観念上の類似性も認められる。
そして、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と互いに同一又は類似の関係にある。
したがって、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標であり、本件商標と引用商標の指定商品も同一又は類似することから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、申立人使用商標は、世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして知られ、申立人のハウスマークと同等に位置づけられるべきものである。それ自体は辞書に掲載のない造語であるが、特に被服の分野においては周知・著名性を獲得しており、本件商標と外観・称呼及び観念において類似する。
また、上述のとおり、有名ファッションブランドによる、スマートフォン用のダウンロード可能なアプリ作成・提供が広く行われており、ユーザーがそのアプリを通じて購買行動をしていることが一般的であることからすると、「被服」とダウンロード可能なアプリを含む「コンピュータソフトウェア」関連の商品とは、密接な関連性を有すると共に、需要者・取引者の層が共通する。
そうすると、「被服」と「コンピュータソフトウェア」関連の商品は、互いの関連性が高く、その需要者等を共通とするので、本件商標が指定商品に使用された場合は、これに接した需要者・取引者は、申立人と経済的又は組織的関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで、非類似の商品であっても商品の出所について混同を生じるおそれが高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が外国及び我が国の需要者・取引者の間で周知・著名な商標であること、さらに、本件商標が引用商標と類似することは、上述のとおりである。
申立人とは無関係の他人である本件商標の権利者が、周知・著名な商標と類似する本件商標を採択することは、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、著名商標に化体した信用にただ乗りすることによって得ようとするものであり、不正の目的が認められる。
また、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招くものであり、またその名声を棄損させるものである。
したがって、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招き、またその信用、名声、顧客吸引力等を毀損させる不正の目的が認められるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)「ZARA」の文字からなる商標の周知性
ア 申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
申立人は、ファッションブランド「ZARA」を使用し、主に被服の製造、販売を行うスペインのアパレルメーカーであり、1975年にスペインで第1号店を開店して以降、世界で2,000以上の店舗を有し(甲5)、「FAST RETAILING CO.,LTD.」による世界の主なアパレル製造小売業の時価総額ランキング(2022年2月28日現在)で1位であること(甲8)、また、我が国においては、1997年に日本法人を設立、1998年に第1号店を開店して以降、現在関東を中心に約100の店舗を有し、2011年10月にはオンラインショップを開設したことが認められる(甲5、甲6)。
また、申立人の2022年1月期業態別売上高は、「ZARA」と「ZARA HOME」を合わせて、195億8,600万ユーロ(約2兆5,265億9,400万円)である(甲7)こと、米国Interbrand社のブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」において、「ZARA」ブランドは第35位である(甲9)こと、申立人の2021年版アニュアルレポートによれば、「ZARA」は、主要なソーシャルメディア全体で約1億1,600万のフォロワーが存在した(甲10)こと、「Google Play Store」において、アンドロイド用のアプリが5000万件以上ダウンロードされたこと(甲16)が認められる。
しかしながら、申立人が提出した甲各号証からは、「ZARA」の文字からなる商標が実際に申立人の業務に係る被服について使用されている具体的な態様や、当該商標を使用した商品の販売実績、広告の実績等を確認することはできない。
イ 上記アによれば、申立人は、ファッションブランドである「ZARA」の商品「被服」を、1975年から継続して世界各国で販売し、我が国においては、1998年から現在まで、店舗、オンラインショップ等を通じて継続して販売されていること、2020年のブランド価値評価ランキングなどをあわせ考慮すれば、当該「ZARA」は、申立人の業務に係る商品「被服」を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に一定程度認識されているものということができる。
しかしながら、我が国又は外国における「ZARA」の文字からなる商標を使用した被服に限定した売上高など販売実績を示す主張はなく、その証左も見いだせないし、また、当該商品に係る広告の実績も確認できないから、「ZARA」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「被服」を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、引用商標は、それがその指定商品に使用されていることが確認できないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標の指定商品(「computer software (recorded); recorded computer operating programs」等)を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることもできない。
ウ なお、申立人は、「ZARA」の文字からなる商標が我が国において周知であることの証左として過去の審決例等を挙げている(甲13、甲14)が、商標の周知性は、事案毎に事実・証拠に基づき個別具体的に判断すべきものであるから、それらをもって上記判断が左右されるものではない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「ZARA−FEEDER」の文字を標準文字で表してなるところ、これらの構成文字全体としては、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ザラフィーダー」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものと判断するのが相当である。
なお、申立人は、本件商標の構成中の「FEEDER」の文字は「物を供給する者」「物の供給装置」を意味する一般名称であることは広く知られているから、本件商標の指定商品との関係で識別力に乏しいというべきである旨主張する。
しかしながら、「FEEDER」の文字が上記意味を有する語であって、本件商標の指定商品との関係で識別力が弱い語といい得るとしても、上記(1)のとおり「ZARA」は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであること、本件商標の構成文字は、同書、同大でまとまりよく一体的に表されていること、及びこれから生じる「ザラフィーダー」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものであることを合わせ考慮すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。
また他に、本件商標は、その構成中「ZARA」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおり、「ZARA」の文字を書してなり、その構成文字に相応して「ザラ」の称呼を生じるものである。そして、該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、特定の観念は生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)外観
本件商標は、上記アのとおり、「ZARA−FEEDER」の文字からなるのに対し、引用商標は、上記イのとおり、「ZARA」の文字からなるものであって、本件商標中の前半に引用商標と同一の文字つづりが含まれているとしても、「−FEEDER」の文字の有無に差異を有し、構成文字数において明らかに相違しているから、両者は、外観において相紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標は、その構成文字に相応して「ザラフィーダー」の称呼を生じ、引用商標は、その構成文字に相応して「ザラ」の称呼を生じる。
そこで、両者の称呼を比較すると、「フィーダー」の音の有無に差異を有するから、それぞれを一連に称呼しても、構成音、構成音数が明らかに異なり、両者は、称呼において相紛れるおそれのない。
(ウ)観念
本件商標と引用商標は、ともに特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念において比較することができない。
(エ)以上からすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、その外観及び称呼において相紛れるおそれがないことから、両者の外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、「ZARA」の文字からなる商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
また、本件商標と、引用商標と構成文字を同じくする「ZARA」の文字からなる商標とは、上記(2)と同様の理由により、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして「ZARA」の文字からなる商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標及び「ZARA」の文字からなる商標(以下「引用商標等」という。)は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されていたものとは認められないものであり、上記(2)及び(3)のとおり、本件商標と引用商標等とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり、また本件商標は引用商標等を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-01-17 
出願番号 2021057922 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小松 里美
鈴木 雅也
登録日 2022-02-09 
登録番号 6511166 
権利者 東京技研工業株式会社
商標の称呼 ザラフィーダー、ザラ、フィーダー 
代理人 弁理士法人BORDERS IP 
代理人 小暮 君平 
代理人 坂倉 夏子 
代理人 福井 孝雄 

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