ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3543 |
---|---|
管理番号 | 1394108 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2021-12-15 |
確定日 | 2023-01-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6146126号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第6146126号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6146126号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年2月7日に登録出願、第35類「フランチャイズ加盟店の事業の管理及びそれらに関する指導・助言」及び第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同31年4月15日に登録査定、令和元年5月24日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する商標は、「たこ焼きを主とする飲食物の提供」(以下「使用役務」という場合がある。)に使用していると主張する次のとおりの商標である(以下、これらをまとめて示すときは、「引用商標」という。)。 1 別掲2のとおりの、「O」の文字の上部に突起を2つ有する「AKAONI」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)。 2 別掲3のとおりの、江戸文字の態様で横書きされた「道頓堀赤鬼」の文字のみからなる商標及び「道頓堀赤鬼」の文字を普通に用いられる書体で表した商標(以下、これらをまとめて「引用商標2」という。)。 3 別掲3及び別掲4のとおりの、江戸文字の態様で横書きされた「道頓堀赤鬼」の文字と、その上部又は下部にたこ焼きを持った赤鬼の図形からなる結合商標(以下、これらをまとめて「引用商標3」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書及び回答書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。 2 商標法第4条第1項第10号について (1)本件商標と引用商標の類否について ア 本件商標と引用商標1 本件商標と引用商標1とは相違点が見当たらないほど外観が同一であり、称呼も「アカオニ」で同一、観念も「赤鬼」の観念で同一である。 したがって、本件商標と引用商標1とは、同一商標である。 イ 本件商標と引用商標2 本件商標は、上記第1の構成のとおりである。 これに対し、引用商標2は、江戸文字で書された「道頓堀赤鬼」の文字から「ドウトンボリアカオニ」と「アカオニ」の称呼が生じるとともに、「道頓堀赤鬼」と「赤鬼」の観念が生じ、本件商標と引用商標2とは、「アカオニ」の称呼及び「赤鬼」の観念を共通にする類似の商標である。 イ 本件商標と引用商標3 本件商標は、上記第1の構成のとおりである。 これに対し、引用商標3は、その文字部分から、引用商標2と同様に「アカオニ」の称呼が生じるとともに、「赤鬼」の観念が生じる。 したがって、本件商標と引用商標3とは、「アカオニ」の称呼及び「赤鬼」の観念を共通にする類似の商標である。 ウ 指定役務の類否 (ア)本件商標の指定役務は、第43類「飲食物の提供」であるのに対し、使用役務は「たこ焼きを主とする飲食物の提供」であるから、両役務は同一役務である。 (イ)請求人は主に「たこ焼きを主とする飲食物の提供」(使用役務)を行っているが、使用役務と本件商標の指定役務である「フランチャイズ加盟店の事業の管理及びそれらに関する指導・助言」とは類似する役務である。 飲食店のビジネスの展開として、1店舗又は複数店舗を直営店として展開する方法と、フランチャイズ加盟店を募集して展開する方法とがある。これらは経営者は異なるが、同じブランドのものと、同じ業態の飲食店を展開することがほとんどである。このため、最終的な役務の提供に関する物品は一致する。また、業種も同じであり、需要者の範囲が一致する。 したがって、両役務は類似する。 エ 小括 本件商標と引用商標とは、いずれも同一又は類似の商標であり、その指定役務も同一又は類似の役務である。 (2)引用商標の使用実績、周知・著名性等について 請求人は、商品「たこ焼き」、役務「たこ焼きを主とする飲食物の提供」等について、引用商標を2001年(平成13年)から現在に至るまで継続して使用している(甲3〜甲10)。 ア 国内実績 (ア)「道頓堀赤鬼」は、日本国内において、テレビ番組、書籍、新聞、ウェブサイト等の多数のメディアで取り上げられ続けている(甲4〜甲7)。 (イ)請求人は、イベント運営会社等からオファーを受けて、現在に至るまでに継続して日本全国のグルメに関するイベントに出展してきた(甲8、甲9)。 (ウ)請求人は、2008年から現在に至るまで継続して27都道府県で百貨店、スーパー及びテレビ局などを訪れて実演販売を行った(甲9)。 これらの催事等の際には、毎回「(鬼の絵)たこ焼き、道頓堀赤鬼(鬼の絵)/DOUTONBORI AKAONI」と記載された横型の屋台のれんと、「AKAONI/TAKOYAKI/(たこ焼きの絵)(鬼の絵)道頓堀赤鬼」と記載された縦長ののぼりを利用している(甲12)。 これらの屋台のれんとのぼりは、請求人が2010年頃から現在に至るまで使用しているものであり、上記(イ)のイベント出店、上記(ア)のテレビ番組の際にも使用されていた。 イ 外国実績 引用商標は、国内のみならず、世界的に著名なグルメ本「ミシュランガイド」に2016年から3年連続で掲載されるなど、海外においても、多数の著名なガイドブックや観光雑誌に掲載されている(甲10)。 ウ 特許庁の審査において、「道頓堀赤鬼」の文字商標は、周知性が認められた(甲11)。 エ まとめ 以上の事実に鑑みると、引用商標は、関西地域のみならず、全国的、世界的に周知・著名となっている。 (3)小括 本件商標は、他人である請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務について使用するものである。 よって、本件商標は、その登録が商標法第4条第1項第10号に違反してされたものである。 3 商標法第4条第1項第15号について 引用商標は、上述のとおり、関西地域のみならず、全国的、世界的に周知・著名となっている。 本件商標は、上述のとおり、引用商標と同一又は類似の商標であり、その役務も同一又は類似である。 したがって、本件商標は、請求人の業務に係る役務と出所混同を生ずるおそれがある。 よって、本件商標は、その登録が商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。 4 商標法第4条第1項第19号について (1)周知著名性・類似性 引用商標は、上述のとおり、関西地域のみならず、全国的、世界的に周知著名となっており、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であり、その役務も同一又は類似である。 (2)不正の目的 引用商標は、請求人が考案した造語であり、特に引用商標1の「AKAONI」については、「O」の部分がその上部に鬼の角のような突起を2本有する構成上顕著な特徴を有するものであって、本件商標はこのような引用商標1の顕著な特徴部分を含めて共通する。 このため、本件商標は、日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したものといえるから、本件商標は、不正の目的をもって使用するものと推認される。 (3)小括 本件商標は、他人である請求人の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。 よって、本件商標は、その登録が商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。 5 商標法第4条第1項第7号について 引用商標の構成的な特徴と周知著名性を考慮すると(甲3〜甲11)、本件商標権者(被請求人)は、引用商標が著名であることを知り、意図的に引用商標の構成態様を採用し、本件商標に接する取引者・需要者に引用商標を連想、想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・出願し登録を受けたものといえる。 そして、本件商標をその指定役務「フランチャイズ加盟店の事業の管理及びそれらに関する指導・助言」及び「飲食物の提供」に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。 そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人が何ら答弁していないことから当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 以下、本案に入って審理する。 1 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)引用商標1の周知性について 請求人の提出に係る証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば、以下のとおりである。 ア 請求人のウェブサイトの左側には、引用商標1が表示されており、また他の引用商標も表示されている。さらに、当該ウェブサイトには、「ミシュランガイド/2018・2017・2016/3年連続/道頓堀赤鬼本店がミシュランガイドに掲載されました。」の記載がある(甲3、甲10の1)。 イ 請求人は、2008年8月26日に、読売テレビ「情報ライブミヤネ屋」の担当、2009年4月2日に、三重テレビの旅番組「ええじゃないか」の担当、2012年8月1日に、テレビ東京「レディス4」の担当、2012年8月13日に、NHK大阪放送局の報道部担当、2016年6月20日に、フジテレビ「めざましテレビ」の担当、2016年10月28日に、日本テレビ系列 全国ネット「しゃべりくり007」の担当等と請求人の業務に係るたこ焼きの取材及び番組放送内容について連絡を受けている(甲4)。 ウ(ア)「マップルマガジン/大阪ベストスポット」(昭文社 2005年6月1日発行)、「るるぶFREE春/夏’08」(JTBパブリッシング 2008年2月28日発行)、活・楽・粋/大阪グッドエイジング倶楽部ニュース」(大阪グッドエイジング倶楽部 2009年6月発行)、「大阪人」((財)大阪市都市工学情報センター 平成19年5月1日発行)には、「道頓堀赤鬼」が紹介されている(甲5の1〜5)。 (イ)「大阪コナモン博覧会 2007年公式ガイドブック/おいでやす!コナ博でっせ」(大阪コナモン博覧会実行委員会発行)には、たこ焼きのページに「道頓堀赤鬼」が紹介されているところ、当該博覧会は2007年10月1日ないし12月25日に開催され、期間中延べ10万人参加と推定されている(甲5の4、職権調査)。 (ウ)本誌の情報は2005年2月現在のものです、とする「ARE YOU READY? 名古屋・大阪 2倍楽しむ旅のハンドブック」(近畿日本鉄道発行)には「大阪名物たこ焼き 赤鬼」が紹介されている(甲5の6)。 エ 「YOMIURI ONLINE 関西発」(2008年4月5日)には、「知事公館、コナモン屋台集結」の見出しの下「大阪市中央区の府知事公館で「おこたこスプリングフェスティバルin知事公館」を開催する。・・・お好み焼き5店と「たこばやし」「道頓堀くくる」「道頓堀赤鬼」「会津屋」「甲賀流」のたこ焼き5店が、桜満開の同公館の庭に屋台を並べる。」の記載がある(甲8の1)。 オ(ア)2014年12月31日の日付のある、請求人の店舗の写真には、引用商標1と同じ態様で表された「AKAONI」の文字、「たこ焼き」の文字及び別掲3の鬼の図形と同様の構成からなる鬼の図形、江戸文字の書体で表された「赤鬼」の文字を表示した縦長ののぼりが掲げられている(甲12の1) (イ)2017年8月29日の日付がある、兵庫県の阪急百貨店において開催された催事には、引用商標1と同じ態様で表された「AKAONI」の文字を含む図形及び文字が表示されたのれんが掲げられている(甲12の4)。 (ウ)2018年9月12日及び2017年9月19日の日付がある、群馬県のスズラン百貨店において開催された催事、2017年1月3日の日付がある、山形県の十字屋山形店において開催された催事、2018年10月23日の日付がある、新潟県の伊勢丹新潟において開催された催事、2017年11月17日の日付がある、広島県の広島三越において開催された催事、2019年2月20日の日付がある、青森県の三春屋(百貨店)において開催された催事、に出店した際の請求人の店舗の写真には、引用商標1と同じ態様で表された「AKAONI」の文字を含む図形及び文字が表示されたのれん又はのぼりが掲げられている(甲12の5〜7、9〜11) (エ)2016年3月13日の日付がある、大阪府で開催された「ABC万博たこやきマラソン2016」における請求人の店舗の写真には、引用商標1と同じ態様で表された「AKAONI」の文字を含む図形又は文字が表示されたのぼりが掲げられている(甲12の8) (オ)2016年10月15日の日付がある、大阪府で開催された「たこ焼きマルシェ」における請求人の店舗の写真には、引用商標1と同じ態様で表された「AKAONI」の文字を含む図形又は文字が表示されたのぼりが掲げられている(甲12の12) カ 上記アないしオからすると、請求人は、本件商標の登録出願前から、引用商標1に係る「AKAONI」の文字を請求人の店舗、イベントや催事の時の臨時店舗やウェブサイトにおいて使用している。また、当該請求人の店舗は、大阪の観光スポットとして雑誌に掲載されたり、テレビで取り上げられており、ミシュランガイドにも2016年及び2017年に掲載されるほか、延べ10万人が参加した大阪コナモン博覧会に出店したとして紹介されている。 そうすると、請求人の店舗は、少なくとも関西地域における取引者、需要者の間において広く認識されていたというべきであって、当該店舗及び請求人のウェブサイトに表示されている引用商標1に係る「AKAONI」の文字も、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る「たこ焼きを主とする飲食物の提供」に使用される商標として、少なくとも同地域における取引者、需要者の間において広く認識されていたというべきである。 (2)本件商標と引用商標1の類否 本件商標と引用商標1の類否について検討する。 本件商標は、別掲1のとおり、「AKAONI」の文字をデザイン化して表してなるところ、当該文字は「赤色の鬼」の意味を有する「赤鬼」の文字を欧文字で表したものと理解されるから、当該文字部分に相応した「アカオニ」の称呼及び「赤色の鬼」の観念が生じるものである。 これに対し、引用商標1は、別掲のとおり、「AKAONI」の文字をデザイン化して表してなるところ、当該文字は本件商標とその態様を同じくするものである。 そうすると、引用商標1も構成文字に相応した「アカオニ」の称呼及び「赤色の鬼」の観念が生じるものである。 したがって、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念において同一と見て差し支えないものであるから、同一の商標である。 イ 指定役務の類否 (ア)本件商標の指定役務中、第43類「飲食物の提供」と使用役務の類否について 本件商標の指定役務中、第43類「飲食物の提供」と使用役務は、ともに飲食物を提供し、業種を共通にする類似の役務である。 なお、被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。 (イ)本件商標の指定役務中、第35類「フランチャイズ加盟店の事業の管理及びそれらに関する指導・助言」と使用役務の類否について 本件商標の指定役務中、第35類「フランチャイズ加盟店の事業の管理及びそれらに関する指導・助言」は、「フランチャイザー」と呼ばれる事業者が、他の事業者(「フランチャイジー」)に対し、事業の管理及びそれらに関する指導・助言を行う役務であって、これを規制する直接の法律はないが、中小小売商業振興法や独占禁止法等が関係する。 これに対し、引用商標1の使用役務は「たこ焼きを主とする飲食物の提供」であって、「飲食物の提供」の範ちゅうの役務であるところ、当該「飲食物の提供」は、食堂、レストラン等の事業者が料理及び飲料を飲食させるサービスであって、その需要者は、一般消費者であり、食品衛生法等によって規制されている。 そうすると、両役務は、提供の手段、目的、需要者の範囲、業種、規制する法律等が異なることから非類似の役務というべきである。 なお、請求人は、本件商標の指定役務と引用商標の使用役務とは、類似する役務である旨主張しているが、上記のとおり、非類似の役務とみるのが相当であるから、その主張は採用することができない。 (3)商標法第4条第1項第10号該当性について 以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る「たこ焼きを主とする飲食物の提供」に使用されて需要者の間において広く認識されるに至った引用商標1と同一の商標であって、その役務に類似する役務に使用をするものであるから、本件商標の指定役務中、第43類「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第10号に該当する。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法第4条第1項第7号の意義 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないとしている。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、同18年9月20日判決参照)。 以下、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるかについて、上記判決の観点から検討する。 (2)検討 ア(ア)本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的な印象を与える文字からなるものとはいえない。また、請求人から提出された資料をみても、本件商標を使用することが社会公共の利益や一般道徳観念に反するものとすべき事実は認められず、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められないうえに、特定の国や国民を侮辱し、又は国際信義に反する商標と認めるに足る事実もない。 (イ)一方、引用商標1に係る「AKAONI」の文字は、上記1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る「たこ焼きを主とする飲食物の提供」に使用される商標として、少なくとも関西地域における取引者、需要者の間において広く認識されていたというべきであるから、被請求人は、その住所(大阪府大阪市)より、請求人の引用商標1を使用した請求人の業務を容易に知ることができたものといえる。 イ 本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、引用商標1は、別掲2の構成からなるところ、本件商標と引用商標1は文字つづり及び文字のデザインを同じくする同一のものである。 そして、本件商標と引用商標1を構成する「AKAONI」の文字は、「赤色の鬼」の意味を有する「赤鬼」の文字を欧文字で表したものであって、よく知られた語であるとしても、構成中の「O」の文字に2つの突起を付すようにデザイン化されたものであって、顕著な特徴を有する文字として認識されるものである。 ウ そうとすると、被請求人が引用商標を知り得ることなく、偶然に本件商標を採択、使用したとは想定し難く、むしろ、被請求人は、請求人の業務に係る「たこ焼きを主とする飲食物の提供」に使用される、引用商標1の存在を知った上で、これが我が国において商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、ひょう窃的に出願したものと推認できるものである。 エ 以上よりすれば、このような行為に係る本件商標は、上記(1)中の(a)ないし(d)には該当しないものの、(e)「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」にあたるものであるから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と判断するのが相当である。 なお、被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 なお、請求人は、上記理由のほか、本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当する旨主張しているが、上記1及び2のとおり、本件商標は同項第7号条及び同項第10号に該当するものであるから、上記条項に該当しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(引用商標1) ![]() 別掲3(引用商標2の1:色彩については甲第3号証の1を参照。) ![]() 別掲4(引用商標3の1:色彩については甲第3号証の1を参照。) ![]() 別掲5(引用商標3の2:色彩については甲第3号証の1を参照。) ![]() (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2022-11-30 |
結審通知日 | 2022-12-02 |
審決日 | 2022-12-15 |
出願番号 | 2018015345 |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W3543)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
清川 恵子 大森 友子 |
登録日 | 2019-05-24 |
登録番号 | 6146126 |
商標の称呼 | アカオニ |
代理人 | 杉浦 健文 |
代理人 | 杉浦 健文 |