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審決分類 審判 査定不服 商64条防護標章 取り消して登録 W40
管理番号 1394060 
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-12 
確定日 2023-01-24 
事件の表示 商願2018−154275拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の標章は、登録第5623310号の防護標章として登録をすべきものとする。
理由 第1 本願標章及び手続の経緯
本出願に係る標章(以下「本願標章」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、第40類「プラスチックフィルムの加工」を指定役務とし、登録第5623310号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章登録出願として、平成30年12月17日に登録出願されたものである。
本願は、令和2年2月27日付けで拒絶理由の通知がされ、同年7月15日に意見書が提出されたが、同年12月9日付けで拒絶査定がされた。
これに対して令和3年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原登録商標
登録第5623310号商標は、本願標章と同一の構成からなり、平成25年4月23日に登録出願、第1類ないし第5類、第8類ないし第11類、第14類ないし第22類、第24類ないし第26類、第28類、第35類、第37類、第38類及び第40類ないし第42類を指定商品及び指定役務として、同年10月18日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要点
本願標章は、自己の業務に係る商品を表示するものとして、需要者間に広く認識されているものとは認められない。
したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。

第4 当審の判断
原登録商標は、前記第2のとおり、本願標章と同一の構成からなり、平成25年10月18日に設定登録され、当該商標権は有効に存続するものであること及び当該商標権が請求人の所有に係るものであることは、その標章を表示する書面及び当庁備え付けの商標登録原簿の記載から明らかである。
1 請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲第62号証(枝番号を含む。)により、以下検討する。
(1)原登録商標が需要者の間に広く認識されているかについて
ア 請求人の企業の概要及び規模
請求人は、1918年に設立され、絶縁材料の製造から始まり、基幹技術である粘着技術や塗工技術をベースに、エレクトロニクス業界や、自動車、住宅、インフラ、環境および医療関連などの領域において、さまざまなプラスチックフィルム、テープ製品を提供することで成長し、資本金は267億円、連結による従業員数は29,019名、国内、海外を合わせて92社のグループ会社を有する企業であり(甲1)、2021年時点における、請求人の時価総額は、約1兆4000億円である(甲17)。
2018年度の売上収益は8,064億円に上り(甲1)、プラスチックフィルムのうち、「基盤機能材料」(工業用テープ関係)の売上は、2017年度:約2,095億円、2018年度:1,733億円、2019年度:1,805億円、また、「情報機能材料」(光学フィルム関係)の売上は、2017年度:約4,241億円、2018年度:3,893億円、2019年度:3,556億円であった(甲5)。さらに、「情報機能材料」のうち、「液晶ディスプレイ用の偏光板」についてみると、2017年度:約3,137億円、2018年度:約3,058億円、2019年度:約2,820億円、2020年度:約2,785億円、2021年度(上期):約1,434億円(甲52)、「透明導電性フィルム」についてみると、2017年度:約587億円(うち国内:約444億円)、2018年度:約460億円(同:約390億円)、2019年度:約389億円(同:約348億円)、2020年度:約395億円(同:約372億円)、2021年度(上期):約171億円(同:162億円)の売上高であった(甲59)。
イ 原登録商標を使用した商品及び使用期間
請求人は、1918年より、さまざまなプラスチックフィルム、テープ製品の製造を開始し、遅くとも1975年頃より、原登録商標の指定商品中の第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうの「液晶ディスプレイ用の偏光板」を製造、販売している(甲1)。また、1985年より、原登録商標の指定商品中の第17類の「透明導電性フィルム」を製造、販売している(甲1)(以下、「液晶ディスプレイ用の偏光板」及び「透明導電性フィルム」を「使用商品」という。)。
そして、ハウスマークとしてのロゴは1919年頃から変遷し、2013年より、原登録商標を新たなハウスマークとして採用し(甲3)、使用商品に、原登録商標と同一の標章(以下「使用商標」という。)を使用している(甲23、甲53、甲54、甲58、甲60)。
ウ 使用地域、使用商品等の販売実績等
(ア)使用地域
現在、我が国における請求人のグループ会社は、北海道から九州地方まで全国に20社存在し、原登録商標を使用商品に使用している。
(イ)市場におけるシェア
a 使用商品中「液晶ディスプレイ用の偏光板」の世界市場における請求人のメーカーシェアは、2016年は、21%で、世界で3位、日本のメーカーとして2位(甲19)、2018年は、16.7%で、世界で3位、日本のメーカーとして2位(甲21)、2019年の見込みは、14.3%で、世界4位、日本のメーカーとして2位(甲22)であった。
b 使用商品中「透明導電性フィルム」は、2015年3月期における、世界シェアは70%であり(甲57)、上記アの売上高の国内割合からみれば、近年は9割が国内向けに販売されていることが認められる(甲59〜甲62)。
エ 使用商品等の広告宣伝等
(ア)使用商標による宣伝・広告
a スポーツ大会における協賛等
(a)テニス男子プロツアーを統括する団体ATP主催「ATPツアー・ファイナル」のタイトルスポンサー提供
請求人は、2017年ないし2020年、上記タイトルスポンサー契約を結び、原登録商標が、テニスコート内、大会会場内スクリーン、トロフィー設置台等に表示された(甲7、甲8)。当該大会はイギリスのロンドンで開催されたものであり、大会の様子は我が国においても多数報道された(甲24)。広告代理店によるメディア露出調査報告書によれば、請求人名の露出は、77番組、総放映時間4時間15分6秒であり、これは約48億円の広告料に相当する(甲25)。
(b)大阪国際女子マラソンへの協賛
請求人は、2005年ないし2017年の13年間、同マラソン大会の協賛企業を務め、原登録商標は、大会ポスター、ゼッケン、プログラム、ゴールテープ、バックスタンド広告塔、看板等に表示された(甲9)。2017年1月の大会に係るテレビ放送の最高瞬間視聴率は、関東で15.1%、関西で18.1%、平均視聴率は、関東(フジテレビ)で8.2%、関西(関西テレビ)で12.6%であり(甲9)、高い視聴率であった。
(c)日本陸上競技選手権大会への協賛
請求人は、公益財団法人日本陸上競技連盟のオフィシャルサポーティングカンパニーを務め、2020年10月1日ないし3日に新潟県デンカビックスワンスタジアムにて開催された第104回日本陸上競技選手権大会の協賛企業を務めた。競技場内のトラック周囲に配置された看板2か所に、原登録商標が表示された(甲26)。
(d)体操競技日本代表のオフィシャルサプライヤー契約
請求人は、2018年から公益財団法人日本体操協会と、体操競技日本代表のオフィシャルサプライヤー契約を結び、原登録商標は、第58回NHK杯(2019年5月18日〜19日開催 於:東京都武蔵野の森総合スポーツプラザ)において、会場内の看板に表示された(甲27)。
b テレビCM、新聞・雑誌、街頭における企業広告掲載
(a)テレビCM
請求人は、2005年以降、継続的にテレビCMを用いた広告を行っており、2013年以降から現在までのテレビCMには原登録商標が表示されており、視聴率の高い民放キー局5系列にて放映されている(甲10〜甲12、甲28(33)〜(37)、甲30、甲41)。
(b)インターネット上の広告
2018年10月25日にYouTubeで掲出されたウェブ広告(甲28(8))、2019年3月13日〜4月12日にインターネット上で行われたタイアップ企画(甲28(17))、2020年以降に配信されたPR企画(甲28(23))、ウェブ広告(甲28(29))は、原登録商標が表示されており、数万回ないし数千万回の画像表示回数を記録している(甲31、甲34、甲38、甲39、甲41)。
(c)新聞・雑誌広告
請求人は、2013年ないし2020年に、電子版を含む全国紙に新聞広告を数度行っており、電子版に用いられた広告の表示回数は各30万回を超えている(甲16、甲28、甲36、甲40)。
(d)街頭広告
請求人は、2018年10月22日ないし28日に、東京都品川区の品川駅構内、大阪府大阪市の新大阪駅及び梅田駅構内において、原登録商標が表示されたサイネージ広告を掲出し(甲28、甲29)、また、2019年6月1日から現在に至るまで、東海道新幹線が発着する東京駅の第9ホームの階段に原登録商標が表示された看板広告を掲出しており(甲28(18))、さらに、2020年2月10日ないし16日に、JR東日本、JR西日本、東京メトロの車内にて、同年2月24日ないし3月1日に、小田急電鉄、西武電鉄、東急電鉄、京王電鉄の車内にて、原登録商標が表示された電車内広告を掲出した(甲28(24))。
c 請求人グループレポート等の発行及び配布
請求人は、2014年度ないし2018年度に「Nittoグループレポート」を、2019年度ないし2021年度に「Nittoグループ統合報告書」を作成し、毎年1,000部前後を配布のために印刷した。また、2019年度ないし2021年度の「会社案内」は5,000部ないし400部を配布のために印刷した。その他「製品カタログ」「パンフレット(情報機能材料事業のご案内)」も印刷、配布しており、いずれの印刷物にもその表紙に原登録商標が表示されている(甲1、甲42〜甲49)。
d 請求人のホームページ
2013年から現在に至るまで、請求人のホームページ左上に、原登録商標が表示されており、当該ページには、毎年200万ないし300万のアクセスがあったとされる(甲50、甲51)。
(イ)使用商標を用いたメディアによる紹介
2015年10月15日に、原登録商標が表示された巨大なコロコロが展示された「巨大コロコロイベント」が、東京及び大阪で開催され、述べ8000人が来場し、テレビで7件、新聞\雑誌で18件、インターネット上で221件の露出があり、その広告効果は、広告代理店により、広告換算額として合計1憶8千万円以上とされた(甲6)。
また、2015年ないし2018年には、日経ビジネス、BSジャパン「日経プラス10」、テレビ東京「ビジネスNEO」、BSジャパン「Biz Japan」で、社長インタビューが行われており、原登録商標が表示されていた(甲6)。
オ 小活
以上によれば、請求人は、2013年から現在に至るまで、使用商標を、使用商品に付し、継続的に使用しているものである。
また、使用商品は、請求人の業務に係る主要な商品であって、原登録商標の使用を開始した2013年以降、高い国内外の市場シェアを有し、相当程度の売上高があることが認められる。
さらに、請求人は、スポーツ大会における協賛等を通じて、使用商標を用いた宣伝広告を行い、テレビCM、新聞・雑誌、街頭において企業広告を掲載し、求人グループレポート等を発行及び配布し、請求人のホームページにおいて、使用商標を用いていることが認められる。
そして、使用商標は、原登録商標と同一である。
これらを総合すれば、原登録商標は、それと同一と認められる使用商標の使用商品への使用によって、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
(2)混同を生ずるおそれについて
原登録商標は、前記(1)のとおり、使用商品の分野の取引者、需要者間に広く認識されているものと認められるところ、原登録商標に係る「Nitto」の欧文字は造語であり、請求人のハウスマークとしても使用されていることが認められる。
そして、使用商品は、「情報機能材料」に属するものであり、テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの製品に用いられる半加工のプラスチック製の板(フィルム)であることから、最終製品に装着される前段階において、何らかの加工が行われるものである。
そうすると、本願標章の指定役務である「プラスチックフィルムの加工」は、使用商品の製造から他社による最終製品となるまでの過程に含まれるものであるから、本願標章の指定役務と、原登録商標に係る使用商品とは、取引者、需要者を共通にする場合があるといえる。
以上を踏まえると、原登録商標と同一態様からなる本願標章が他人によって本願標章の指定役務に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、その役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
2 小括
以上によれば、原登録商標は、請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されており、原登録商標に係る指定商品及び指定役務並びにこれに類似する商品及び役務以外の役務である本願標章の指定役務について他人が登録商標の使用をすることにより、その役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるものである。
3 まとめ
したがって、本願標章は、商標法第64条の規定する要件を具備するものである。
よって、結論のとおり審決する。


別掲
別掲 本願標章(色彩については原本参照。)


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審決日 2023-01-10 
出願番号 2018154275 
審決分類 T 1 8・ 8- WY (W40)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 綾 郁奈子
馬場 秀敏
商標の称呼 ニットー 
代理人 勝見 元博 
代理人 山尾 憲人 

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