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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W10 |
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管理番号 | 1393394 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-06-14 |
確定日 | 2023-01-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6542943号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6542943号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6542943号商標(以下「本件商標」という。)は、「吸うやつ」の文字を横書きしてなり、令和3年2月2日に登録出願、第10類「電気式及び電子式マッサージ器,シリコン及び他のプラスチック又は金属からなる身体に直接使用するエンジンの付いた又は付いていない成人用性的刺激用補助具,成人用の性的刺激を補助するための振動マッサージ器,自慰補助器具,性交補助器具,非電動マッサージ器」を指定商品として、同4年1月20日に登録査定、同年4月11日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 引用商標の構成、出所 甲第2号証にある商品は、「吸うやつ」(以下「引用商標」という。)という通称で呼ばれ、Amazonの販売サイトでも現に引用商標が明記されている。また、アダルトグッズ等のレビューサイト「シン・いく夫の備忘録とクソリプ供養」では、甲第2号証に係る商品について「吸うやつ」と明記された上でtwitterにより投稿された、当該商品についての好意的な感想が、令和2年8月23日頃よりまとめられている(甲3)。その前に、当該レビューサイトの管理者である「いく夫」氏も、令和2年8月18日に自身のアカウントにて引用商標にハッシュタグを付した上で投稿し、その結果、甲第2号証にある商品の購買者の多くが「吸うやつ」と呼ぶ状況となった。 当該レビューサイトの管理者「いく夫」氏は、引用商標を、令和2年9月19日より前に、「電気式及び電子式マッサージ器,シリコン及び他のプラスチック又は金属からなる身体に直接使用するエンジンの付いた又は付いていない成人用性的刺激用補助具,成人用の性的刺激を補助するための振動マッサージ器,自慰補助器具,性交補助器具,非電動マッサージ器」を販売する際に、Amazon公式サイトで販売する商品の販売元に対し、引用商標使用の許可をし、販売を促進している(甲4)。 イ 本件商標と引用商標は同一であるということ 本件商標は、「吸うやつ」という文字からなるところ、引用商標と構成文字が完全に一致するため、互いに同一である。 ウ 引用商標の周知性 「いく夫」氏は、甲第2号証に係る商品の販売元に対し、引用商標の使用許可を与え、引用商標を用いて当該商品の販売を促し、日本国内を中心に現在でも販売において当該商標の使用を許可し続けている。その結果、Amazonにて「吸うやつ」と検索すると、甲第2号証に係る商品が上位にヒットするほど、商品と商標とが密接な繋がりを持つに至っている(甲5)。そして、使用を開始してから引用商標のGoogle検索の人気度も向上し、令和3年1月頃には人気度50に到達している(甲6)。 「いく夫」氏が販売元に対して引用商標の使用を許可し、Amazon販売サイトにて当該販売元が引用商標の使用をしたところ、「いく夫」氏が管理するレビューサイトからの商品販売数が、令和2年11月中旬から下旬にかけて顕著に増加しており、令和2年12月からの販売数をみても、「いく夫」氏が使用を許可した引用商標が付されている商品と、そうでない商品とでは、注文された品数が顕著に相違しており、引用商標が「いく夫」氏の管理するレビューサイトから発せられているものとして、当該商品の需要者に広く認識されているといえる(甲7)。 また、Amazonでの同種の商品のうち、「いく夫」氏が引用商標の使用を許可した商品は、令和2年末から同3年を経て現在に至るまで、Amazonの同種商品の中での売り上げランキングで常に1位を維持している(甲8)。 以上のことから、本件商標に接する需要者においては、「いく夫」氏及び甲第2号証に係る商品の販売業者に係る事業であると混同する現実のおそれがある。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品又は役務について使用するものに当たり、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 前述のとおり、「いく夫」氏がその商品について使用している引用商標は、本件商標の登録出願日より前に、この種商品の業界において、「いく夫」氏の出所標識として需要者の間に広く認識されていたものであり、著名となっていたものである。 また、本件商標は、「いく夫」氏の使用に係る商標と同一であって、商標「吸うやつ」はそもそも「いく夫」氏によって、2020年に独自に採択された独創性の高い造語である。 さらに、本件商標に係る指定商品と、「いく夫」氏に係る商品とは極めて密接な関連性があることは、上述したとおりであり、需要者の共通性を有している。 一方、本件商標権者は、現在に至るまで本件商標に係る指定商品について、何ら生産、販売していない。 したがって、本件商標は、「いく夫」氏の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標と評価されるべきものである。 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第19号について 前述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願日より前に、この種の商品の業界において、「いく夫」氏の出所標識として需要者の間に広く認識されていたものであり、著名となっていたものである。 また、本件商標は、引用商標と同一であって、引用商標は、そもそも「いく夫」氏によって、2020年に独自に採択された独創性の高い造語である。 一方、本件商標権者は、現在に至るまで本件商標に係る指定商品について、何ら生産、販売していない。少なくとも、インターネット上の情報からは何ら明らかにされておらず、本件商標には現時点で本件商標権者への顧客吸引力がない状態である。 これにより、本件商標は、既に「いく夫」氏又は甲第2号証にある商品の販売業者が自らの引用商標に蓄積してきた出所表示機能を希釈化させ、あるいは引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力を毀損する目的をもってされる、又は「いく夫」氏が登録出願をしていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取的に出願したもの、すなわち不正の目的が推認される。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について ア 申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、申立人が引用商標として主張する「吸うやつ」の文字は、SNS等でアダルトグッズの通称として記載されていることは認められるが、申立人又は申立人以外の特定の者が、引用商標を当該商品に付して販売し、広告等において使用している事実は見いだすことができない。 そうすると、引用商標は、申立人又は申立人以外の特定の者の業務に係る商品又は役務について使用するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く知られているとはいえないものであって、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 イ 本件商標と引用商標とは、同一の文字からなるものであるから、両者の類似性の程度は高いものである。 ウ 上記ア及びイからすると、本件商標は、引用商標と類似性の程度が高いとしても、引用商標は、申立人又は申立人以外の特定の者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認めることはできないことからすれば、本件商標に接する需要者が、申立人又は申立人以外の特定の者の業務に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人以外の特定の者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。 また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。 そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-12-26 |
出願番号 | 2021018260 |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W10)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 藤村 浩二 |
登録日 | 2022-04-11 |
登録番号 | 6542943 |
権利者 | 有限会社ソフトハンズ |
商標の称呼 | スウヤツ、スーヤツ |
代理人 | 原田 貴史 |