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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1393386 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-25 
確定日 2023-01-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6496232号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6496232号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6496232号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和3年2月10日に登録出願、第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務(別掲2)を指定商品及び指定役務として、同年11月12日に登録査定、同4年1月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第1165481号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、2012(平成24)年5月28日にChinaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2012年10月1日国際商標登録出願、第3類、第5類、第8類、第9類、第11類、第12類、第14類、第16類ないし第18類、第20類ないし第22類、第24類ないし第28類、第30類、第34類ないし第36類、第38類、第41類ないし第43類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務(別掲4)を指定商品及び指定役務として、平成26年10月17日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、上記(1)の引用商標並びに申立人の販売に係る商品「スマートフォン」等(以下「申立人商品」という。)について使用され、需要者の間に広く認識されているとする別掲5及び別掲6のとおりの構成よりなる2件の標章(以下「使用標章1」及び「使用標章2」といい、これらをまとめて「使用標章」という。また、引用商標と使用標章を合わせて「申立人商標」という。)である。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとし、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(なお、表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 指定商品及び指定役務の類否について
引用商標に係る指定商品及び指定役務は、本件商標に係る第9類の全ての指定商品及び第42類の指定役務のうち、「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」以外の指定役務と類似している。
イ 商標の類否について
(ア)外観上の類否について
本件商標は、別掲1のとおり、正方形の角が丸みを帯びた橙色の背景の中央部に白色で「I」の欧文字と図案化した「m」の欧文字を有し、文字の回りを白色の正円で囲っている構成よりなる商標であり、最も特徴的な図案化された「m」は、一筆書きで「m」と書ける態様ではなく、2つの線で構成されており、一つは門のように見える形状の曲線と、その曲線の中央部に短い縦線より構成されている。
一方で、引用商標は、別掲3のとおり、図案化した「m」の欧文字と「I」の欧文字よりなる商標であり、最も特徴的な図案化された「m」は、本件商標と同様に、一筆書きで「m」と書ける態様ではなく、2つの線で構成されており、一つは門のように見える形状の曲線と、その曲線の中央部に短い縦線より構成されている。
両商標の最も特徴的な部分である「m」について、本件商標の左上の曲線部は丸みを帯びている一方で、引用商標の左上部分は曲線部が角張って直角に曲がっているという違いは有するものの、共に門のような形状の曲線と、その曲線部の中央部に短い縦線を有しており、いずれも一筆書きで表すことができない、という特徴的な要素がいずれも共通している。さらに、両商標の「m」部分の3本の縦のライン及び「I」の間隔はいずれも等間隔で設けられており、かつ、その間隔は両商標ともに同一の間隔となっている。
そして、本件商標と引用商標は、「I」と「m」の位置が左右逆の配置であるが、引用商標を左右に反転させた場合には、その「m」の特徴や各縦線の間隔を考慮すると、極めて近似するものである。
また、「M、m」を「門のような形状の曲線と、その曲線部の中央部に短い縦線」のような方法で図案化することは一般的ではなく、多くは「M、m」を一筆で書けるような態様で図案化されることを踏まえると、引用商標の「m」の図案化は申立人が創作した極めて特徴的な「m」の図案と認識することができる。
そうすると、仮に本件商標と引用商標の間には、「m」の左上の曲線部の相違や、「I」と「m」の位置が左右逆であるといった違いは有するものの、両商標の文字部分は、図形としての外観上、類似すると判断されるべきものである。
そして、本件商標は、図案化された文字に加えて、文字要素の周りに正円を有し、かつ、正方形の角が丸みを帯びた橙色の背景を有しているものの、いずれの要素も特徴的な図形とはいうことができないことから、例え本件商標は文字以外の付加要素を有しているとしても、全体として引用商標との外観を対比した場合に、文字要素の類似性が覆るものではない。
そのため、本件商標と引用商標は、商標の外観上、出所が混同する程度に類似する。
(イ)称呼上及び観念上の類否について
本件商標からは、その文字の構成上「アイエム」又は「イム」の称呼が生じ、引用商標からは「エムアイ」、「ミ」の称呼がそれぞれ生じるが、我が国の商標法上、英文字2文字は自他商品役務識別力が欠如するとみなされるため(商標法第3条第1項第5号)、文字要素が英文字2文字からなる両商標は、称呼上対比されるべきものではない。
そして、いずれの商標も特段の意味を有するものではないため、観念上対比することはできない。
(ウ)類否判断まとめ
本件商標は、申立人が保有する引用商標との関係で、称呼及び観念において対比することはできないものの、外観上、出所混同が生じる程度に類似するため、全体としても類似する商標に該当する。
ウ 以上述べたとおり、本件商標と申立人が保有する引用商標は、商標が互いに相紛れて、需要者の間に出所が混同する程度に類似する商標であり、かつ、同一又は類似の指定商品及び指定役務について使用をするものであることから、本件商標は、引用商標との関係で商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人商標の著名性について
申立人は、中国の北京に本社を置く総合家電メーカー(甲3)であり、スマートフォン市場においては、2021年現在においては、世界シェアが17%で2位、出荷台数に至っては世界1位に位置しており、2011年の創業以来、累計8億台ものスマートフォンを販売する、世界的に著名な企業である(甲4〜甲6)。
また、2021年は通年で1億9,000万台以上スマートフォンを出荷し、世界14市場で市場シェア1位、62市場でトップ5位以内、欧州市場全体としては2位にランク入りしている(甲7)。
そして、我が国においても、2017年からモバイルバッテリーやステレオイヤホンの販売を開始し、2020年6月からはスマートフォンの販売を開始している(甲8)。
申立人の製品名称の一つに、「Mi」という名称を冠する製品シリーズがあり、スマートフォンは「Mi」、「Redmi」、スマートウォッチは「Miスマードバンド」、スマートカメラには「Mi 360°スマートカメラ」のように、様々な機器に「Mi」を使用している(甲9)。
そして、申立人は、本件商標と類似する申立人商標を、申立人のコーポレートロゴ、いわゆるハウスマークとして申立人のウェブサイト(甲2)や、申立人のスマートフォン用オンラインストアである「Mi Store」に移動させるための二次元コードへのアイコン(甲10)、スマートフォン用のオンラインストアのアプリケーションのアイコン(甲11)、申立人のスマートフォンの起動画面(甲12)といった、様々な場面で使用されている。
そして、我が国においても、wikipedia内の申立人の説明ページに、申立人商標の一つである使用標章1(別掲5)が使用されている(甲8)。
このように、申立人の販売するスマートフォンは世界の様々な国で市場シェアが1位であり、出荷台数も1位であることから、申立人である「Xiaomi」のブランドと、申立人が販売するスマートフォン「Mi」及び「Redmi」は、諸外国において著名である。
そして、申立人商品以外にも、申立人ウェブサイトやオンインストアのアイコンに使用されているハウスマークである申立人商標は、申立人のスマートフォンに接した際のみならず、申立人を検索する場合など、申立人の情報に接する際には必ず「Xiaomi、シャオミ」の名称とともに申立人商標にも接することとなるため、結果として「Xiaomi、シャオミ」や「Mi」、「Redmi」の名称と合わせて、申立人商標についても、需要者に深く結びつきを与えることとなる。
そのため、申立人のハウスマークである申立人商標についても、スマートフォンの「Mi」や「Redmi」の商標と合わせて、需要者の間に広く認識されている商標として認められる。
また、我が国においても、申立人商品に関して、2020年の販売開始以前から申立人商標とともに様々なメディアで継続的に取り上げられており(甲13〜甲15)、それは販売が開始された2020年以降においても同様であることから(甲16、甲17)「Xiaomi」の名称や、そのスマートフォンの名称である「Mi」や「Redmi」に加えて、申立人のハウスマークである申立人商標についても、本件商標の登録出願時である2021年2月10日以前から我が国の需要者の間に広く認識されている商標であると認められるものである。
イ 上述のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願日以前より少なくとも「スマートフォン」との関係で需要者の間に広く認識されている商標である。また、本件商標は、引用商標との関係で類似する商標であるが、特に申立人商標の一つである使用標章との関係においては、文字要素の類似性に加えて、正方形の角に丸みを持たせた橙色の背景、文字が白色であることも共通していることから、本件商標と申立人商標が類似していることがより明確なものとなっている。
そうすると、本件商標は、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている申立人商標と類似する商標であり、少なくとも「スマートフォン」と同一又は類似する商品について使用をするものであることから、本件商標は、引用商標との関係で商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人商標と本件商標との類似性の程度について
本件商標と申立人商標は商標が類似することは上述のとおりであるが、特に使用標章は、本件商標と高い類似性を有している。
イ 申立人商標の著名性及び独創性について
申立人商標は、本件商標の出願日以前から少なくとも「スマートフォン」との関係において需要者の間に広く認識されている商標であることは明白な事実であることは上述のとおりであり、加えて、本件商標は、特段の意味を有していない、申立人が創作した造語であることから、独創性を有している。
ウ 商品の関連性、商品等の取引者及び需要者の共通性について
申立人商標は、少なくとも「スマートフォン」との関係において需要者の間に広く知られている商標であるが、「スマートフォン」は2022年現在で15〜79歳の男女のうち、その所有率が94%にまで達しており、今日の日常生活において欠かすことのできない商品である(甲18)。
スマートフォンは、携帯電話としての機能のみならず、インターネット検索をはじめとした様々な機能を有しており、アプリケーションソフトウェアやウェブブラウジングを通じた動画視聴、音楽試聴、電子書籍リーダーとしても使用することができる。また、スマートフォンを充電する際には充電用ケーブルを使用することが一般的であり、また、スマートフォン用のアプリケーションやウェブブラウザ、そしてセキュリティソフトに至るまでは日々、様々な個人や企業により開発されており、スマートフォンを通じて機械やコンピュータシステムの遠隔監視も可能であるし、オンラインの商取引の際には、個人の認証のためにも使用される。
対して、本件商標の指定商品及び指定役務も、「スマートフォン」と密接に関連性を有しており、また、これらの商品及び役務は、「スマートフォン」の同一の需要者である、一般消費者が含まれる。
そのため、申立人商標に係る「スマートフォン」と本件商標に係る指定商品及び指定役務は、いずれもその商品及び役務の性質や機能を考慮した場合には、強い関連性を有しており、取引者、需要者が共通しているということができる。
エ 上述の諸点を踏まえると、本件商標と申立人商標は類似性を有しており、とりわけ使用標章との関係においては、その背景の色の形状、文字の色を考慮した場合には、高い類似性を有している。
また、世界的に著名な申立人の世界で市場シェア2位を有し、我が国でも著名性を需要者の間に広く認識されている申立人の「Mi」や「Redmi」といった名称のスマートフォンに接した際には必ず目にする、申立人のハウスマークである申立人商標は、申立人の名称である「Xiaomi」やそのスマートフォンの名称である「Mi」や「Redmi」と同様に、需要者の間に広く認識されている。
さらに、申立人商標は、特段の意味を有さない造語であるため、独創性を有している。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務並びに申立人商標に係る商品「スマートフォン」は、その商品及び役務の性質や機能などで強い関連性を有する上に、需要者、取引者が一般消費者で共通する。
これらの点に照らすと、両者は共通点を多く有していることから、本件商標及び申立人商標の需要者である一般消費者が普通に払う注意力を基準として総合的に考慮した場合であっても、本件商標をこれに係る指定商品及び指定役務に使用をする場合には、混同を生ずるおそれを有していると判断されるべきである。とりわけ、申立人商標、特に使用標章に接する需要者が、スマートフォンで本件商標に接した場合には、需要者はその色や形状を考慮した場合には、本件商標を申立人に係る商標であると誤認混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、申立人商標との間で出所を混同するおそれを有しているため、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人商標の外国における著名性について
申立人のスマートフォンは、2019年頃からは既に世界で市場シェア4位であり、中国においても3位、インドでは2019年頃には既に市場シェアが1位となっている。また、様々な国で高い市場シェアを有している。
この点で、本件商標の登録出願前から我が国のみならず外国においても著名であった申立人の名称である「Xiaomi」やスマートフォンの名称である「Mi」、「Redmi」とともに必ず需要者が目にする申立人のハウスマークである申立人商標は、少なくとも「スマートフォン」との関係において、本件商標の登録出願前から我が国のみならず、既に中国やインドといった諸外国において著名な商標であったことは容易に認識することができる。
イ 商標権者の不正の目的について
本件商標は、中国を代表し、2019年頃から少なくとも「スマートフォン」との関係で中国やインドといった諸外国において著名であった申立人のハウスマークである申立人商標、特に使用標章と類似する商標である。また、申立人商標は、我が国以外にも、中国やインドといった諸外国においても全国的に知られている商標であり、特段の意味を有さない造語である。
そのため、本件商標権者は、我が国のみならず、中国やインドといった諸外国における著名な商標である申立人商標と類似する本件商標について、不正の目的を持って使用するものと推認することができる。
このように、本件商標は、世界中で高い市場シェアを有する申立人のハウスマークと文字が逆に配置されるのみで、文字のロゴとして高い類似性を有し、かつ、使用標章との関係に至っては、背景の図形の形状や色、文字の色と、様々な点で共通しており、また、本件商標の指定商品及び指定役務も「スマートフォン」と高い関連性を有していることに鑑みると、本件商標権者は、申立人の著名商標と同一の商標について偶然に想起し、出願をしたとは考え難く、その著名表示へのフリーライドといった不正の目的を有している。
以上より、本件商標は、申立人商標との関係で不正の目的をもって出願がされたことは明らかである。
ウ 以上述べたとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、中国やインドをはじめとした諸外国の需要者の間に極めて広く認識されている商標である。そして、申立人商標は特段の意味を有さない造語であることから、本件商標権者は、我が国のみならず、中国やインドといった諸外国における著名表示に対するフリーライド等といった不正の目的をもって登録出願したものと推認される。また、本件商標の登録を維持し、その使用を認めてしまった場合には、申立人商標に対する出所表示機能が稀釈化され、また、その信用や名声を毀損させる自体が生じることとなる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)申立人商標の周知性について
ア 申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、スマートフォンやハンディクリーナーなどを製造、販売する家電メーカーであり(甲3)、「YAHOO!ニュース(2021年7月16日付け)」において、「シャオミがアップルを抜いて世界2位のスマホメーカーに躍進」の見出しの下、「中国の北京に本社を置くシャオミ(Xiaomi)が初めて市場シェアでアップルを抜いて世界第2位のスマートフォンメーカーになった・・・」(甲4)、「Engadget」のウェブサイト(2021年6月10日付け)において、「サムスンを抜きシャオミがスマホ出荷台数で世界1位に」(甲5)、「ITmediaMobile」のウェブサイト(2021年8月6日付け)において、「Xiaomi、6月の世界スマートフォン出荷で初首位に」(甲6)、「iPhone Mania」のウェブサイトにおいて、「Xiaomi、2021年に世界スマホ14市場で首位に」(甲7)との記載がある。
(イ)「iPhone Mania」のウェブサイトにおいて、「Xiaomiによると、2021年の世界全体でのスマホ出荷台数は、前年比30%増の1億9,000万台でした。この好調は市場シェアにも如実に現れています。・・・Xiaomiは2021年に、世界14市場でシェア首位となりました。62市場ではトップ5位以内、欧州市場全体では2位にランク入りしています。」との記載がある(甲7)。
(ウ)「Wikipedia」のウェブサイトにおいて、申立人の紹介として、「日本での展開」の見出しの下、「2017年4月3日、TJC株式会社が日本での正規代理店となったと発表。同年6月16日、TJCはモバイルバッテリーとステレオイヤホンのオンライン販売を開始した。」及び2020年6月2日に、SIMフリースマートフォンを発表した旨の記載がある(甲8)。
(エ)申立人及びその他のウェブサイトにおいて、「Mi Store」というアプリの名称や「Miスマートバンド6」、「Mi Max3」及び「Miシリーズ」などのスマートフォンなどの商品の紹介とともに使用標章が表示されている(甲9〜甲17)。
イ 判断
上記アによれば、申立人が、スマートフォンなどを製造、販売する家電メーカーであり、2021年に市場シェアでアップルを抜いて世界第2位のスマートフォンメーカーとなり、出荷台数でサムスンを抜き世界第1位になったこと、申立人及び他のウェブサイトに「Mi」を冠したアプリの名称やスマートフォンなどの商品が紹介とともに、使用標章が表示されていることを併せ考慮すれば、申立人及び使用標章は申立人商品を取り扱う業界の取引者、需要者の間に一定程度認識されているものということができる。
そして、我が国においては、2020年6月2日に、SIMフリースマートフォンを発表したことがうかがわれるが、我が国又は外国における申立人商標を使用したスマートフォンに限定した取引実績、当該商品に係る申立人商標の広告宣伝の方法、回数や広告宣伝費等は申立人の提出した証拠によっては確認できない。
以上を踏まえると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章は、申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、橙色の隅丸四角形内に、白抜きで細い円形を配し、円形内に、白抜きで太く欧文字の「I」及び「m」をモチーフにしたと思われる図形(以下「Imモチーフ図形」という。)を配してなるものである。
そして、本件商標は、各構成要素がまとまりよく一体的に表されているものであり、本件商標のImモチーフ図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの、又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、これらは構成全体をもって図形と看取されるというのが相当であるから、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じない。
イ 引用商標
引用商標は、別掲3のとおり、黒色で太く欧文字の「m」及び「I」をモチーフとしたと思われる図形(以下「mIモチーフ図形」という。)を配してなるものである。
そして、引用商標は、各構成要素がまとまりよく一体的に表されているものであり、引用商標は、我が国において特定の事物を表したもの、又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、これらは構成全体をもって図形と看取されるのが相当であるから、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
隅丸四角形、円図形及びImモチーフ図形が組み合わされた構成よりなる本件商標と、mIモチーフ図形のみからなる引用商標とは、その構成態様が明らかに相違するため、外観上区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標は、特定の称呼及び観念を生じないから、称呼及び観念において比較することができない。
したがって、本件商標と引用商標は、非類似の商標である。
なお、申立人は、本件商標の特徴的な部分は「I」と「m」と認識される文字部分であり、引用商標と類似する旨主張するが、本件商標は上記のとおり、構成全体をもって図形と看取されるというのが相当であるから、互いに相紛れるおそれはない。
そして、仮に、申立人主張のとおり、本件商標の構成中の「Imモチーフ部分」を「I」と「m」と認識される文字とし、当該部分と引用商標を比較した場合でも、引用商標は、「m」と「I」と認識される文字よりなること、「m」と認識される文字は、本件商標が上部の両端に丸みを持たせていることにより柔らかな印象を与えるのに対し、引用商標は上部右端のみ丸みを持たせているが、上部左端が直角になっていることにより角張った印象を与えるものであって、両商標が使用される指定商品における需要者の通常有する注意力を基準として考慮すれば、外観において大きく異なるものとして認識され、誤認、混同することは考え難い。
以上によれば、本件商標と引用商標は、外観において相違し、かつ、称呼及び観念においても類似するものではないから、両商標を全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
そのほか、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情も見出せない。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標と使用標章との類否
本件商標は、上記(2)アの認定の構成よりなり、特定の称呼及び観念を生じないものである。
また、使用標章1は、別掲5のとおり、白抜きで太く欧文字の「m」と「I」をモチーフにしたと思われる図形(以下「白抜きmIモチーフ図形」という。)を、橙色の楕円状図形内に配してなるものである。
さらに、使用標章2は、別掲6のとおり、白抜きmIモチーフ図形を、橙色の正方形内に配してなるものである。
そして、使用標章は、各構成要素がまとまりよく一体的に表されているものであり、使用標章の白抜きmIモチーフ図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの、又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、これらは構成全体をもって図形と看取されるというのが相当であるから、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じない。
そうすると、本件商標と使用標章とは、隅丸四角形、円図形及びImモチーフ図形が組み合わされた構成よりなる本件商標と、橙色の楕円状図形内又は橙色の正方形内及び白抜きmIモチーフ図形が組み合わされた構成よりなる使用標章とは、その構成態様が明らかに相違するため、外観上区別し得るものである。
また、本件商標と使用標章は、特定の称呼及び観念を生じないから、称呼及び観念において比較することができない。
したがって、本件商標と使用標章は、非類似の商標である。
イ 申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、同号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、申立人商標は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。
また、本件商標と申立人商標とは、上記(2)及び(3)アのとおり、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、申立人商標を連想、想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように認識することはないから、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているところ、上記(1)のとおり、申立人商標は、申立人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものであり、かつ、上記(2)及び(3)アのとおり、本件商標と申立人商標とは、非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものである。
また、申立人の提出した証拠からは、本件商標権者が我が国及び外国において不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標。色彩は原本参照。)



別掲2(本件商標の指定商品及び指定役務)

第9類「電子応用機械器具及びその部品,電子計算機及びその周辺機器,電子計算機用プログラム,記録された又はダウンロード可能なコンピュータソフトウェアプラットフォーム,コンピュータ操作用プログラム(記憶されたもの),コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),携帯情報端末,携帯情報端末の部品及び附属品,電気通信機械器具,電線及びケーブル,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,アニメーションを内容とする記録済み媒体及び動画ファイル,携帯電話用のダウンロード可能なエモティコン(絵文字),携帯電話用のダウンロード可能な画像,録音済み又は録画済みのコンパクトディスク,電子出版物」
第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,コンピュータハードウェアの設計及び開発に関する助言,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,インターネット経由での個人情報の盗難を検出するための個人識別情報の電子的な監視,インターネットセキュリティに関する指導及び助言,インターネットを介したクレジットカードの不正利用検出のための電子的な監視,ウェブサイトの設計に関する助言,遠隔操作によるデータのバックアップ,携帯電話のSIMロック解除,検索エンジンの提供,故障を検出するためのコンピュータシステムの監視,コンピュータープラットフォームの開発,コンピュータシステムの遠隔監視,コンピュータシステムの設計,コンピュータセキュリティに関する指導及び助言,コンピュータソフトウェアの設計,コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守に関する助言,コンピュータソフトウェアのバージョンアップ,コンピュータソフトウェアの保守,コンピュータデータの回復,コンピュータプログラムのインストール,コンピュータプログラムの複製,コンピュータプログラムの変換及びコンピュータデータの変換(媒体からの変換でないもの),受託によるウェブサイトにおける情報インデックスの作成及び設計(情報技術の提供),シングルサインオンの技術を利用したオンラインソフトウェアアプリケーションのためのユーザー認証,ソフトウェア制作におけるコンピュータソフトウェアの開発,他人のためのウェブサイトの作成及び保守,データセキュリティに関する助言,データの暗号化処理,データ又は文書の物理媒体から電子媒体への変換,電子商取引のための技術を利用したユーザー認証,不正アクセス又はデータ漏洩を検出するためのコンピュータシステムの遠隔監視,文書のデジタル変換(スキャニングによるもの),電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,ウェブサーバーの貸与,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),クラウドコンピューティング,コンピュータサイトのホスティング(ウェブサイト),コンピュータソフトウェアの貸与,コンピュータソフトウェアプラットフォームの提供(PaaS),コンピュータの貸与,サーバーのホスティング,電子データの保存用記憶領域の貸与,ウェブサイト経由によるコンピュータ技術及びコンピュータプログラミングに関する情報の提供,コンピュータ技術に関する助言,情報技術(IT)に関する助言」

別掲3(引用商標)



別掲4(引用商標の指定商品及び指定役務)

第3類「Cleansing emulsion; cakes of toilet soap; cleaning preparations; lavender oil; cosmetics; perfumes; dentifrices; scented wood; aromatics [essential oils].」
第5類「Dietetic substances adapted for medical use.」
第8類「Beard clippers; electric or non-electric nail clippers; flat irons; cutlery.」
第9類「Computer memories; computers; recorded computer programmes; computer keyboards; recorded computer operating programs; computer peripheral devices; recorded computer software; recorded computer software; monitors; mouse; compact discs; printers for use with computers; central processing units; data processing equipment namely readers; scanners; notebook computers; calculators; electronic publications; downloadable software namely computer programs; mouse pads; wrist rests for use with computers; computer game programs; downloadable mobile phone ringtones; downloadable music files; downloadable image files; universal serial bus USB cables; portable computers; counters; photographic, electrostatic and thermic photocopiers; scales; telephone apparatus; video telephones; portable telephones; hands free kits for phones; equipment of GPS; mobile phone strap; loudspeakers; microphones; television apparatus; cabinets for loudspeakers; compact discs; camcorders; facsimile machines; headphones; DVD player; portable media player; cameras; stereoscopes; telescopes; semi-conductors; wafers; integrated circuits; integrated circuit chips; electric theft prevention installations; sunglasses; battery chargers; chargers for electic batteries; galvanic cells.」
第11類「Lamps; electric pocket torches; bread baking machines; refrigerators; electric fans for personal use; water filtering apparatus; electric radiators.」
第12類「Roadsters, cars, automobiles; bicycle stands; cycles; bicycle pumps.」
第14類「Jewellery cases; rings; key rings; watches; electric clocks and watches; alarm clocks.」
第16類「Hygienic paper; towels of paper; albums; pamphlets; note books; cards; postcards; bookmarkers; greeting cards; writing tablets; almanacs; posters; books; comic books; periodicals; pictures; boxes of cardboard or paper; paper knives; folders for papers; stamps; pens; adhesive tapes for stationery or household purposes; compasses for drawing.」
第17類「Bags of rubber, for packaging.」
第18類「Card cases; backpacks; purses; handbags; umbrellas.」
第20類「Furnitures; mirrors; cushions; pillows.」
第21類「Basins, bowls; utensils for household purposes; glassware, porcelain ware; statuettes of porcelain, terra-cotta or glass; tea services; trash bins; combs; electric toothbrushes; toothpicks; cosmetic utensils; vacuum bottles; gloves for household purposes.」
第22類「Bags, envelopes, and pouches, of textile, for packaging.」第24類「Towels of textile; bedspreads; table cloths not of paper; washing mitts.」
第25類「Underwear; sweater, short-sleeved shirts; clothing; belts; babies’pants (innerwear);cyclists' clothing; waterproof clothing; trousers; footwear; shoes; sports shoes; gloves; scarfs; shower caps; headgear for wear; neckties; shirts; socks.」
第26類「Trimmings for clothing.」
第27類「Carpets; mats; carpets for automobiles.」
第28類「Portable apparatus for games with liquid crystal display; toys; radio-controlled toy vehicles; playing cards; skateboards; protective paddings (sports equipment), protective paddings (sports equipment).」
第30類「Chocolate; sweetmeats.」
第34類「Lighters for smokers.」
第35類「Advertising; on-line advertising on a computer network; commercial administration of the licensing of the goods and services of others; sales promotion for others; marketing; sales promotion for others.」
第36類「Financing services.」
第38類「Radio broadcasting; telephone services; communications by telephone; cellular telephone communication; communications by computer terminals; electronic mail; information about telecommunication; providing Internet chat rooms.」
第41類「Instruction services; education information; arranging and conducting of congresses; publication of texts; publication of electronic books and journals on-line.」
第42類「Technical research; industrial design; packaging design services; styling; computer rental; computer programming; computer software design; updating of computer software; consultancy and development in the field of computer hardware; rental of computer software; recovery of computer data; maintenance of computer software; computer systems analysis; computer system design; duplication of computer programs; conversion of data or documents from physical to electronic media; creating and maintaining Web sites for others; hosting computer sites; installation of computer software; data conversion of computer programs and data; computer software consultancy; rental of Web servers; computer virus protection services; providing search engines for the Internet; digitization of files by scanning; remote monitoring of computer.」
第43類「Cafes; canteens.」
第45類「Licencing of intellectual property; licensing of computer software.」

別掲5(使用標章1。色彩は原本参照。)




別掲6(使用標章2。色彩は原本参照。)





(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-12-16 
出願番号 2021022228 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2022-01-07 
登録番号 6496232 
権利者 株式会社ICM
商標の称呼 アイエム 
代理人 本宮 照久 
代理人 宮嶋 学 
代理人 中村 行孝 
代理人 猿山 純平 
代理人 柏 延之 
代理人 高田 泰彦 

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