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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3544
管理番号 1393385 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-24 
確定日 2023-01-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6503666号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6503666号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6503666号商標(以下「本件商標」という。)は、「Lipsy」の欧文字を標準文字で表してなり、令和3年7月1日に登録出願、「フランチャイズの事業の運営及び管理」を含む第35類及び「歯のホワイトニング,エステティックサロンにおける美容,美容,理容」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同4年1月17日に登録査定され、同月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標及び引用標章
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次のとおりであり(以下、まとめて「引用商標」という。)、同人の業務に係る商品(被服、履物、身飾品など)及びこれらの小売等役務の出所表示として使用され、イギリス及び日本国内で著名に至っているとするものである。
ア 「LIPSY」の欧文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)
イ 「LIPSY」と「LONDON」の欧文字を2段に横書きしてなるもの(以下「引用商標2」という。)
ウ 登録第5384425号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 LIPSY(標準文字)
指定商品 第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
優先権主張 2007年(平成19年)2月12日(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)
登録出願日 平成19年8月1日
設定登録日 平成23年1月21日
エ 国際登録第1008462号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 LIPSY
指定商品 第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
優先権主張 2008年(平成20年)9月24日(United Kingdom)
国際商標登録出願日 2009年(平成21年)3月23日
設定登録日 平成23年6月3日
オ 国際登録第1428535号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 LIPSY
指定商品及び指定役務 第25類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
国際商標登録出願日 2020年(令和2年)2月12日(事後指定)
設定登録日 令和4年1月7日
なお、引用商標3ないし5に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が引用する標章(以下「引用標章」という。)は、「LISPY」の欧文字からなり、同人の略称として著名であるとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであり、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第162号証を提出した。
(1)申立人の事業内容及び引用商標の著名性等
ア 申立人の歴史
申立人は、イギリスのロンドンを拠点とし、特に若い女性から絶大の人気を誇るファッションブランドである(甲5)。申立人は、女性用衣類を中心に、履物、かばん類、アクセサリー、化粧品及び化粧用具等、ベビー及び子供用衣類、ペットウェア、スポーツウェア及びスイムウェア、インテリアや寝具等、ファッションや美容に関する商品を幅広く展開するとともに、これらの商品を取り扱う小売業を展開している(以下、これらをまとめて「申立人商品」及び「申立人役務」といい、さらに両者をまとめて「申立人商品等」という場合がある。甲5〜甲13)。
申立人は1988年に設立され、設立当初、申立人商品はイギリス国内の老舗百貨店や大手ファッション小売店を通じて販売されていた(甲14)。2006年には申立人独自のECサイトを開設、これにより、百貨店やファッション小売店等の実店舗以外でも申立人商品の購入ができるようになった(甲15。2018年1月以降、ネクスト・ピーエルシーの公式ECサイトヘ切り替えがなされている)。さらに、2008年に世界中に事業を展開するイギリス最大級のファッションブランド事業者であるネクスト・ピーエルシー(Next Plc.)の傘下に入ったことを機に、同年にイギリスのロンドン北部の大型ショッピングセンター内に第一号店をオープンし、これを皮切りに次々と実店舗を新規オープンし、また、ネクスト・ピーエルシーの店舗や同社の公式ECサイトにおいても申立人商品が取り扱われるようになり、申立人商品の販路は、ますます拡大していくこととなった(甲16)。
イ 申立人の事業内容等
引用商標は、ファッションアイテムを中核とする申立人商品を中心に非常に多岐に渡る商品群、及び、これらの商品に係る小売等役務に使用されてきた(甲5〜甲13)。「LIPSY」ブランドの発足当初は、申立人のファッション関連商品の主な需要者層は10代後半から30代位の女性であったが、商品群の拡充と「LIPSY」ブランドの事業の多角化に伴い、その需要者層は、若い女性のみならず、子供や子供を持つ世代の女性、ペット愛好家等、幅広い層に広がり、これに伴い、引用商標も、性別を問わず、幅広い年齢層の需要者間で広く知られるようになった。
具体的には、申立人は、主たる拠点であるイギリス国内だけでも81もの小売実店舗(クリアランスストアも含む。)を構え(甲17)、イギリス国外でも、エジプト・アラブ共和国、ヨルダン・ハシミテ王国、クウェート国など世界各国に小売店舗又はフランチャイズパートナー店を有する(甲18)。
日本においては、直営の小売実店舗は持たないものの、ネクスト・ピーエルシー公式ECサイトを通じて申立人商品を購入することができる。同ECサイトでは、アカウント作成から購入、問い合わせ等全ての手続きが、日本語・日本円を含む複数の言語・通貨に対応している(甲19、甲20)。その他、日本国内においては、申立人の輸入販売代理店やセレクトショップを通じて輸入販売がなされているほか、外国在住者が現地で購入を代行し日本国内に発送する各種通信販売サイトを通じても入手可能となっている(甲21〜甲26)。申立人商品の日本への輸出を担う販売代理店の一であるヴィヴォ・イタリア・エスアールエル(VIVO ITALIA SRL)の例をとっても、取引のある日本の卸売業者は関東圏、関西圏はもちろんのこと、北海道、愛知県、静岡県、岐阜県、福岡県と日本全国に20以上存在する(甲27、甲28)。
ウ 引用商標の著名性
(ア)申立人の略称及び代表的出所表示としての「LIPSY」の使用
申立人はその設立以来、「LIPSY」の欧文字からなる標章を商号として使用し、かつ、該欧文字からなる商標(引用商標1、3〜5)、並びに、「LIPSY」及び「LONDON」の欧文字を二段に書した構成からなる商標(引用商標2)を、申立人商品の出所識別標識として継続的に使用してきた。これらの商標は、申立人商品のタグや値札に付されることはもちろん、申立人が展開する店舗の看板、申立人商品等の広告宣伝媒体、ネクスト・ピーエルシーの公式ECサイト内に設けられたブランドサイトに加え、ツイッターやインスタグラム等の各種SNS等や申立人の保有する公式YouTubeアカウント等、各種広告宣伝媒体においても共通かつ継続的に使用されてきた(甲29、甲33)。また、申立人商品等に使用される引用商標は、日本国内のメディアでも、これらの商品や役務と共に度々紹介されている(甲34、甲35)。
(イ)売上高
申立人の全世界における2014年から2020年まで年間売上高は、62.9百万英ポンドないし155.2百万英ポンドである(甲36〜甲41)。
(ウ)メディア掲載及び宣伝広告活動等
申立人商品はイギリスにおいて、主要な雑誌・週刊誌に掲載され、また、イギリスの人気情報番組でも紹介される等、様々なメディア媒体を通じて多くの取引者及び需要者を対象に宣伝広告され、申立人商品に付された引用商標は、これらの宣伝広告活動を通じ、広く一般大衆の目に触れ、記憶されてきた(甲42)。
これらのメディア掲載実績に加え、申立人商品は、多くの著名人やセレブリティからも愛用されていることでも広く知られている(甲43〜甲45)。また、申立人は申立人商品の展開に際し、毎年のように、特に若い年代の女性から絶大な人気を誇る著名人をデザイナーとして起用するなどしたコラボレーションラインを発表、イギリス国内のみならず、日本を含む世界各国のメディアで大きく報道され、紹介されている(甲46〜甲52)。
その他にも、申立人は、デジタルマーケティングを駆使した商品の宣伝広告を精力的に行うほか、ツイッターやインスタグラム等の各種SNS、申立人の保有する公式Youtubeアカウントといった、世界中からアクセスが可能でありかつ拡散性の高いメディアを通じて、申立人商品の新商品やトレンド、コーディネート提案等の情報発信を継続的に行っている(甲31〜甲33)。申立人が運営するツイッター及びインスタグラムの公式アカウントのフォロワー数は、2022年5月現在、それぞれ8万人及び47万人を超えており、申立人商品が非常に多くの需要者に支持され、愛好されていることが窺える(甲31、甲32)。
エ 諸外国における商標登録について
申立人は、イギリスをはじめとして、日本、欧州連合、オーストラリア連邦、バングラデシュ人民共和国、バーレーン王国など世界各国において「LIPSY」の欧文字を含む商標を登録しており、申立人が使用するロゴ商標をも含めると、その数は100を超える(甲53〜甲153)。このように、申立人は、「LIPSY」ブランドに関係する商標について世界各国において多数商標登録を取得し、他者との混同防止に努めるなどの企業努力とあわせて商標の保護に膨大な労力と資金を投入してきた。
オ 小括
以上述べたとおり、申立人は、「LIPSY」の文字からなり、又は同文字を要部とする引用商標を、申立人商品等の出所表示として全世界的規模で継続的に使用してきたのであり、引用商標が、特にこれらの商品及び役務の分野において世界的規模で著名に至っていることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性
本件商標は、「Lipsy」の欧文字からなる商標であるところ、該欧文字は、申立人の名称(商号)である「Lipsy Limited」の略称と同一である。申立人は、「Lipsy」を商号の略称として申立人の設立以降継続して使用してきたことに加え、当該略称は、申立人商品の出所表示としても使用されてきたことから、本件商標の出願時はもとより、その査定時においても、イギリスをはじめとする諸外国はもちろん、日本国内においても著名に至っていたというべきである。
しかるに、本件商標権者は、申立人の名称(商号)の著名な略称と同一の文字からなる本件商標を申立人の承諾を得ず出願したものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標が本号に該当することについて、最高裁判決(平成10年(行ヒ)85号)が示した判断基準に沿って、以下に詳述する。
ア 本件商標と引用商標との類似性
本件商標は、前記のとおり「Lipsy」の欧文字を標準文字で表した商標であるところ、申立人の引用商標1、3ないし5も「LIPSY」の欧文字から構成されるものであるから、これらの商標は同一の文字列からなり、外観、称呼、観念の全てが共通するため極めて類似性が高い。
また、本件商標と引用商標2について検討すると、引用商標2は「LIPSY」及び「LONDON」の欧文字を二段に書した構成からなる商標であるところ、「LONDON」の文字部分はイギリスの地名として広く知られているため、当該部分は自他商品の識別標識としての機能を有しないか、又は、極めて弱いものである。してみれば、引用商標2の構成中、出所識別標識として取引者及び需要者に対し強く支配的な印象を与えるのは「LIPSY」の文字部分であるから、本件商標と引用商標2も、その要部において、外観、称呼、観念の全てにおいて共通し、類似する。
イ 引用商標の著名性及び独創性
上記(1)のとおり、引用商標は、若い女性のみならず、子供や子供を持つ世代の女性、ペット愛好家と、非常に幅広い層の需要者の間で、我が国を含む世界各国において広く知られるに至っている商標であり、日本国内においても、全国的な著名性を獲得するに至っている。
また、引用商標を構成する「LIPSY」の欧文字は一般の辞書には採録のない申立人が独自に創作した造語であり、極めて独創性の高いものである。
ウ 用途又は目的における関連性の程度
本件商標の指定役務中、第35類の指定役務は、商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助を主たる目的とする各役務であり、第44類の指定役務は、衛生、美容、理容及び健康管理の分野に関連する各役務である。
引用商標は、上記のとおり、被服、履物、身飾品等の商品及びこれらの小売等役務の出所表示として使用されており、また、引用商標5においては、ファッションに関連する各種商品に係る小売等役務(第35類)が指定されているところ、本件商標の指定役務は、いずれも、引用商標が使用されている申立人商品等と関連性を有するものである。具体的には、例えば、本件商標の指定役務中、第35類の指定役務には「フランチャイズの事業の運営及び管理」等のフランチャイズ事業に関係する役務が含まれているところ、フランチャイズはアパレルショップや美容院、エステサロンを展開する際に多く採用されている事業形態であり、これらの役務の提供を受ける需要者と、申立人商品等の取引者及び需要者は共通する。そして、本件商標の指定役務中、第44類「歯のホワイトニング,エステティックサロンにおける美容,美容,理容」等の役務は、いずれも容姿の向上等を目的として提供される役務であり、申立人商品等の中核をなす「ファッション」関連の商品・役務とは、いずれも外見上の身だしなみを整えることを目的として販売又は提供されるものであるため、その目的及び用途が共通し、関連性は非常に高いというべきである。特に、近年では、アパレルブランドやファッション誌がエステ事業やヘアサロンを立ち上げたり、アパレルショップとヘア・ネイルサロンとが併設された複合ショップがオープンする例も多く見受けられており、申立人商品等と本件指定役務中、第44類の前記各役務については、商品及び役務の提供者も共通するに至っているという実情がある(甲154〜甲160)。また、女性用雑誌を例にとると、その目次には「ファッション」「美容(ビューティー)」の見出しが並んでおり、同一雑誌の中で最新のファッションや美容に関する情報がまとめて紹介されている。そのため、同一の媒体(雑誌)上で、アパレルブランドや化粧品メーカー、エステティックサロン、美容クリニック等、当該雑誌がターゲットとする年代層・性別の需要者に向けた広告が並存し、掲載されていることも常である。
このように、「ファッション」と「美容」とは互いに密接に関連し、切っても切れない関係にあり、この点からしても、申立人商品等と本件商標の指定役務(特に、第44類の指定役務)との関連性は高いというべきである。
エ 需要者の共通性
上記のとおり、本件商標の指定役務は、第35類における商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助を主たる目的とする各役務、及び第44類における衛生及び美容ケアの分野に関連する役務であるところ、その多くの役務は、一般的な消費者を主たる需要者とするものであり、その需要者には、申立人商品等の需要者が含まれることは明らかである。
また、上記のとおり、本件商標の指定役務中、第44類の役務については主に女性を需要者とする役務が多く含まれるところ、これらの役務の需要者は、申立人商品等の需要者と共通するものである。特に、本件商標権者が既に本件商標の使用を開始している第44類「歯のホワイトニング」に係る主要な需要者層は広く見積もっても10代後半から30代までの女性であることが伺える(甲161、甲162)。これに対して、申立人商品等の中核をなすファッション関連商品の製造販売事業も、取り扱い商品のうち多くを占める女性用衣類等のファッション関連商品は、10代後半から30代の若い女性を主な需要者層として位置付け販売されているため、本件商標の指定役務中、特に第44類の指定役務については、申立人商品等と、その需要者の共通性が高いというべきである。
このように、本件商標権者の事業に係る需要者層と申立人の事業に係る需要者層は共通しており、これらの需要者層の目に触れる雑誌や記事、広告媒体が共通するものであることは容易に想像できる。
オ 小括
以上の点に加え、申立人の事業範囲が年々広がりを見せていること、また、申立人商品等に係るファッション関連分野においては、前記ウのとおり、商品の販売と各種サービスを結び付けた新たな事業形態が生まれているという実情があることに鑑みれば、本件商標がその指定役務に使用された場合、需要者は、その役務の出所につき、これがあたかも申立人の業務に係る役務であるかの如く、又は、申立人と経済的若しくは組織的に関係性を有する者が提供する役務であるかのごとく、その出所につき混同するおそれがあることは自明であるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性
本号に係る商標審査基準(商標審査基準 改訂第15版 第3 十七、第4条第1項第19号)を本件にあてはめて検討する。
まず、引用商標が申立人の業務に係る商品及び役務の出所表示として日本国内はもとよりイギリスをはじめとした諸外国においても著名に至っていることは上記のとおりである。特に、申立人の本拠地であるイギリスでは申立人は大規模に事業展開を行っており、引用商標の著名性の程度も一層高い。
また、本件商標と引用商標とが外観、称呼、観念の全てにおいて相紛らわしい類似商標であることも、上記(3)アのとおりである。
さらに、引用商標は申立人が独自に創作した造語であり、申立人商品との関係では極めて独創的な標章として看取されるものである。これらの点に加え、本件商標の指定役務と申立人商品等とが主たる需要者層を共通にし、かつ、本件商標の指定役務中、とりわけ第44類の役務については、申立人商品等とその提供者や広告宣伝媒体等も共通することを考慮すれば、本件商標の商標権者が申立人の著名な引用商標の存在を知らずに本件商標を採択したとは到底考えにくい。
これらの事情を考慮すると、本件商標権者は、既に著名である申立人の商標に化体した業務上の信用及び莫大な顧客吸引力にフリーライドし、不正の利益を得るという不正の目的をもって本件商標の出願に及んだものであると言わざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、著名な引用商標と類似する商標を不正の目的をもって出願したものといわざるをえず、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、1988年に設立され、イギリスのロンドンを拠点として、衣類、履物、かばん類などの商品(申立人商品)を幅広く展開するとともに、これら商品を取り扱う小売業(申立人役務(小売役務))を展開していること(甲5、甲8、甲10、甲11、甲34、甲35、他)。
(イ)申立人は、2006年にECサイトを開設、2008年にイギリスのロンドンに最初の小売店をオープンしたこと(甲16、甲34)。
(ウ)申立人は、「LIPSY」の欧文字からなる商標(引用商標1、3〜5)及び「LIPSY」及び「LONDON」の欧文字を2段に横書きした構成からなる商標(引用商標2)を、申立人商品等に使用していること(甲5、甲8、甲10、甲11、甲34、甲35、他)。
(エ)申立人の全世界における2014年から2020年まで年間売上高は、62.9百万英ポンドないし155.2百万英ポンドであること(甲36〜甲41)。
(オ)申立人が運営するツイッター及びインスタグラムの公式アカウントのフォロワー数は、2022年5月現在、8.3万人及び47万人であること(甲31、甲32)。
(カ)申立人が2016年に米国の歌手アリアナ・グランデとコラボした商品を販売したことなどが、日本でも紹介されたこと(甲51、甲52)。
(キ)日本に直営の小売店はないが、申立人商品は複数のECサイトを通じて販売されていること(甲5、甲10、甲11、甲19〜甲22、甲26、甲34、ほか)。
なお、申立人はイギリス国内に小売店を70数店舗有していること(甲17)及び申立人商品は引用商標とともにイギリスの雑誌などに相当数掲載等されたこと(甲42)がうかがえる。
イ しかしながら、引用商標を使用した申立人商品等(以下「引用使用商品等」という。)の我が国及びイギリス等各国における売上高、シェアなど販売実績を示す主張はなく、その証左は見いだせない。
ウ 上記(1)からすれば、申立人商品等は1988年頃から現在までイギリスや我が国などで販売され、2006年頃から現在まで提供されていることは認め得るものの、引用使用商品等の我が国及びイギリス等各国における販売実績を示す証左は見いだせないから、引用使用商品等に使用されている引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
エ なお、申立人の全世界における2014年から2020年までの年間売上高は62.9百万英ポンドないし155.2百万英ポンド(約101億円〜約250億円、1英ポンド=161円)であることが認められるものの、アパレル業界においては世界の売上が1兆円を超える事業者が複数あることからすれば、かかる売上をもってしては、上記判断を覆し得ない。
また、申立人は、外国における商標登録の事情などを主張、立証して、引用商標が著名である旨主張しているが、外国における商標登録の事情が需要者の認識に直接反映されるとは言い難く、かかる事情によっても上記判断を覆し得ない。
(2)引用標章の著名性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、同人の名称中に「Lipsy」の文字が用いられていることが認められ(甲3、甲4)、「Lipsy」の文字が申立人の略称として用いられていることを否定できない証左(甲29)も見受けられるところ、提出された証左は引用商標に係るものとみるのが自然であるが、該「Lipsy」の文字からなる又は該文字を含む引用商標は、上記1のとおり我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また他に、引用標章が申立人の略称として著名であるというべき事情は見いだせないから、引用標章は、申立人の著名な略称と認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は上記1のとおり「Lipsy」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、引用標章は上記2(2)のとおり「LISPY」の欧文字からなるものであるから、本件商標は引用標章と同じつづりからなるものといえる。
しかしながら、上記(2)のとおり引用標章は申立人の著名な略称と認められないものであるから、本件商標は、他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は、上記1のとおり「Lipsy」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標は、上記(1)のとおり「LISPY」の欧文字からなるもの又は該文字を要部とするといえるものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、構成文字のつづりを共通にするといえるから、両者の類似性の程度は高い。
イ 引用商標の周知性の程度
上記(1)のとおり引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
ウ 本件商標の指定役務と引用使用商品等との間の関連性の程度など
本件商標の指定役務は、上記1のとおり第35類「フランチャイズの事業の運営及び管理」及び第44類「歯のホワイトニング,エステティックサロンにおける美容,美容,理容」など第35類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務であり、引用使用商品等は、上記(1)ア(ア)及びイのとおり衣類、履物、かばん類などの商品及びこれら商品を取り扱う小売業(小売役務)である。
そこで、本件商標の指定役務と引用使用商品等の関連性を検討すると、両者の一般的、恒常的な取引の実情において、役務の提供の手段、目的又は場所、役務の提供に関連する物品、商品と役務の用途が一致するとはいえず、また、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているともいえないから、両者の関連性の程度は低く、その取引者・需要者の共通性の程度も低いというのが相当である。
エ 混同のおそれ
上記アのとおり本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものの、上記イのとおり引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記ウのとおり本件商標の指定役務と引用使用商品等の関連性の程度は低く、その取引者・需要者の共通性の程度も低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(5)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、本件商標は、上記(4)エのとおり引用商標を連想又は想起させるものではないから、引用商標の信用や顧客吸引力にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認められないものである。
したがって、本件商標は、上記(4)アのとおり引用商標と類似するものであるが、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(6)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-12-22 
出願番号 2021082649 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W3544)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 清川 恵子
大森 友子
登録日 2022-01-24 
登録番号 6503666 
権利者 Rips株式会社
商標の称呼 リプシー 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 藤倉 大作 
代理人 相良 由里子 
代理人 中村 稔 
代理人 北原 絵梨子 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 田中 伸一郎 
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