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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0110
管理番号 1393383 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-24 
確定日 2023-01-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6497007号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6497007号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6497007号商標(以下「本件商標」という。)は、「iSWAB」の欧文字を標準文字により表してなり、令和3年2月4日に登録出願、第1類「医薬品工業用保存剤」及び第10類「医療用試料容器」を指定商品として、同年12月22日に登録査定され、同4年1月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、「eSwab」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)である。
同じく、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する国際登録第1078709号商標(以下「引用商標2」という。引用商標1と引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。)は、「ESWAB」の欧文字を横書きした構成からなり、2011年(平成23年)1月28日にイタリア共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年2月9日に国際商標登録出願、第9類「Apparatus and instruments for scientific research in laboratories, apparatus and instruments for analysis and or measuring; laboratory apparatus and instruments, apparatus and instruments for analysis of biological and chemical substances, laboratory devices for collecting and conserving biological, chemical or diagnostic samples, disposable laboratory devices for collection and conservation of biological, chemical or diagnostic samples, flocked and or absorbent swabs or tampons for collecting biological, chemical or diagnostic samples in laboratory research, rods either clad or having a soft tip for collecting diagnostic samples in laboratory research, consumer material for laboratory analysis, containers for transport and conservation of biological, chemical and diagnostic samples as laboratory apparatus, equipment for laboratory experiments, chemical apparatus and instruments, apparatus and incubators for bacterial culture, manual laboratory tools, laboratory instruments, measuring scoops, diagnostic apparatus not for medical use, microscopes, dissecting instruments (microscopy), dosing apparatus for laboratory use, dosers for laboratory analysis, burners and ovens for laboratory experiments, special laboratory furniture, laboratory trays, special clothing for laboratories, pipettes, spectrographs.」を指定商品として、平成24年8月31日に日本国において設定登録されたものであり、現在、有効に存続しているものである。
そして、申立人は、引用商標を使用した臨床検体採取用のスワブ(綿棒状の検体採取装置)及び保存用の液体培地がセットになった医療用機械器具(医科用捲綿子)(以下「申立人商品」という。)は、本件商標の指定商品の分野の取引者、需要者間において広く認識されていると主張するものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項によって取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。

1 引用商標の周知著名性について
ア 申立人及び引用商標を使用する商品について
申立人であるコパン イタリア エス.ピー.エー.(COPAN ITALIA S.P.A.)は、1979年にイタリアで設立された医療機器メーカーである(甲3)。同社は、分析化学薬品やスワブ等の組織及び体液採取装置を中心に、微生物試料の採取・保存システムを開発・製造しており、1990年代後半よりこれらの製品について世界で高い市場シェアを獲得するに至っている企業である(甲3)。申立人は、同社製品を全ての大陸の販売代理店を通じて世界中に販売している(甲3)。
申立人は、遅くとも2006年には引用商標の申立人商品への使用を開始し、現在に至るまでその使用を継続している(甲3、甲4の1〜甲4の3)。
イ 申立人商品の市場シェア及び販売数量
申立人商品は、前述のとおり販売代理店を通じて世界中に販売されており、その世界市場シェアは80%にのぼる(甲3)。2006年から2021年までの申立人商品の世界における販売数量について、本件商標が出願された2021年2月の前年にあたる2020年には、年間販売数が7,533万個に達し、翌2021年には8,469万個にものぼっている。2006年から2021年までの16年間における申立人商品の世界総販売数量は4億6,452万個である。
また、2014年から2021年までの申立人商品の我が国における販売数量について、本件商標が出願された2021年2月の前年にあたる2020年には、年間販売数が55万8,500個に達し、翌2021年には44万8,000個にものぼっている。2014年から2021年までの8年間における我が国における総販売数量は143万6,950個である。
ウ 申立人商品が使用された研究について
申立人商品は、医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等による、検体採取を必要とする実験・研究に頻繁に用いられることにより、国内外で発表される多数の論文、医学文献、科学出版物等において申立人商品及びその商標である引用商標が言及されている(甲5の1〜甲5の7、甲6の1〜甲6の9)。
エ 引用商標の著名性に関する専門家の証言
引用商標が、申立人商品を表す商標として、その需要者である我が国及び世界の医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間に広く知られていることは、東京医科大学微生物学分野の教授であり臨床微生物学・感染症診断学を専門とする大楠清文博士(甲9)による宣言(甲10)、及び臨床検査技師として30年の経験を有する山下知成氏による宣言(甲11)からも明らかである。
オ 小括
したがって、引用商標は、申立人商品について継続して使用された結果、本件商標の登録出願時には、申立人の業務に係る商品を表す商標として、我が国をはじめとする世界中の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、かつ本件商標の登録査定時にもその周知著名性は継続していたものである。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性及び独創性
引用商標は、申立人商品について継続して使用された結果、本件商標の登録出願時には、申立人の業務に係る商品を表す商標として、その需要者である医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間に広く認識されていたものである。
また、「eSwab」(ESWAB)という語は既成語ではなく、一般の辞書にも載録のない語であって、申立人のオリジナルであり、その独創性の程度は高い。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は、「iSWAB」の欧文字を標準文字で表してなる商標であり、その構成文字に照応して「アイスワブ」又は「イスワブ」との称呼が生じる。「iSWAB」という語は既成語ではなく、一般の辞書にも載録のない造語であるから、ここから特定の観念は生じない。
他方、引用商標「eSwab」(ESWAB)は、「イースワブ」又は「エスワブ」との称呼を生じるものであり、既成語ではなく、一般の辞書にも載録のない造語であって、ここから特定の観念は生じない。
本件商標と引用商標は外観において、いずれも欧文字5文字から構成されるところ、「SWAB」の4文字を共通にするものであるうえ、異なる1文字についても、本件商標の「i」は小文字で表され、引用商標の「e」も小文字で表される場合が多いことから、両者は外観上極めて相紛らわしい商標である。
また、称呼においては、本件商標の「イスワブ」の称呼と引用商標の「イースワブ」の称呼とを比較すると、相違する音が長音の有無にすぎないから、両称呼は類似する。また、本件商標の「イスワブ」の称呼と引用商標の「エスワブ」の称呼とを比較すると、ともに4音からなり、相違する「イ」と「エ」の音が50音図のア行に属するから、両称呼は類似する。
そして、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上は比較することができない
したがって、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、称呼において類似する場合があり、外観上も極めて相紛らわしいものであるから、両商標が類似することは明らかであり、その類似性の程度は極めて高いというべきである。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標の使用商品との関連性及び商品の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定商品のうち、第1類「医薬品工業用保存剤」とは、保存用の液体培地に該当し、第10類「医療用試料容器」とは、検体採取用のスワブと保存用の液体培地が収納されている容器に該当するものであるから、本件商標の指定商品は、引用商標の使用に係る申立人商品を構成するものにほかならない。
なお、本件商標権者が本件商標を使用している商品もまた、申立人商品と同様に、検体採取用のスワブと保存用の液体培地がセットになったものである(甲8の1及び甲8の2)。
以上のとおり、本件商標の指定商品である第1類「医薬品工業用保存剤」及び第10類「医療用試料容器」は、申立人商品を構成する要素にほかならず、したがって本件商標の指定商品と引用商標の使用商品の用途及び目的は当然に一致し、その取引者及び需要者も、医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等で共通するものである。
エ 出所の混同を生ずるおそれ
上記アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る申立人商品を表すものとして、その需要者である医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間に広く認識されていたものであり、その周知著名性の程度は極めて高いものである。また、上記イのとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、称呼において類似する場合があり、外観上も極めて相紛らわしいものであることから、類似性の程度は極めて高いものである。
そして、上記ウのとおり、本件商標の指定商品である第1類「医薬品工業用保存剤」及び第10類「医療用試料容器」は、申立人商品を構成する要素にほかならず、したがって本件商標の指定商品と引用商標の使用商品の用途及び目的は当然に一致し、その取引者及び需要者も、医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等で共通するものである。そして、本件商標権者が本件商標を実際に使用している商品もまた、申立人商品と同様に、検体採取用のスワブと保存用の液体培地がセットになったものである。
これらのことを併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、申立人の引用商標を連想、想起し、本件商標を使用した商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。
オ 小括
以上の事実に基づき総合的に勘案すれば、本件商標をその指定商品について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、申立人が申立人商品について、遅くとも2006年から使用した結果、その需要者である医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間に広く認識されている引用商標を連想、想起し、本件商標を使用した商品があたかも申立人又は申立人と同一の営業主体の業務に係る商品、又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の取り扱う業務に係る商品であると誤認して取引にあたると考えられるから、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。

3 商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の周知性
上記1のとおり、引用商標は、申立人商品について、我が国及び外国において遅くとも2006年から現在に至るまで継続して使用された結果、本件商標の登録出願時である2021年2月には、申立人の業務に係る商品を表す商標として、その需要者である医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間に広く認識されていた周知著名商標である。
したがって、引用商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標に該当するものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性
上記2のイのとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度は極めて高いものである。
ウ 本件商標権者の「不正の目的
引用商標は、本件商標の登録出願時である2021年2月において、既に申立人商品を表す商標として世界的な周知著名性を獲得していたことを考慮すると、本件商標を、申立人商品と同種の製品、すなわち検体採取用のスワブと保存用の液体培地がセットになった商品について、遅くとも2019年1月には使用を開始していた本件商標権者が、引用商標の存在を知らずに本件商標を出願・登録したものとは考え難い。
そうとすれば、本件商標権者が、我が国及び世界において周知著名であった引用商標と外観及び称呼において極めて相紛らわしい「iSWAB」との文字からなる本件商標を、申立人商品と同種の製品の商標として意図的に採択し、出願・登録したことに疑いの余地はなく、引用商標の有する高い名声・信用・評判にただ乗りフリーライド)する目的、すなわち不正の目的をもって、本件商標の登録出願をしたことは明白である。
したがって、本件商標は、他人である申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
エ 小括
以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表す商標として我が国及び外国における需要者、すなわち医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等の間で周知著名な商標となっていたものであり、本件商標は、本件商標権者が、そのような引用商標の周知著名性に便乗し、引用商標と類似する本件商標の独占排他的使用を得ようとする不正の目的に基づいて出願・登録されたものであることは明らかであるから、出所混同のおそれがあるか否かにかかわらず、商標法第4条第1項第19号に該当するものとして、その登録は排除されなければならない。

4 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知、著名性について
(1)申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人及び引用商標を使用する商品について
申立人は、1979年にイタリアで設立された医療機器メーカーであり、また、分析化学薬品やスワブ等の組織及び体液採取装置を中心に、微生物試料の採取・保存システムを開発・製造しており、同社製品を全ての大陸の販売代理店を通じて世界中に販売しているとされる(申立人の主張、甲3)。
申立人は、遅くとも2006年には引用商標の申立人商品への使用を開始し、現在に至るまでその使用を継続しているとされる(申立人の主張、甲3、甲4の1〜甲4の3)。
イ 申立人商品の市場シェア及び販売数量
申立人商品は、上記のとおり販売代理店を通じて世界中に販売されており、申立人商品の2006年から2021年までの世界における概算販売数量については、本件商標が出願された2021年2月の前年にあたる2020年には7,533万個、翌2021年には8,469万個であり、2006年から2021年までの16年間における総販売数量は4億6,452万個であるとされる(申立人の主張、甲3)。
また、申立人商品の2014年から2021年までの我が国における概算販売数量については、本件商標が出願された2021年2月の前年にあたる2020年には、55万8,500個、翌2021年には44万8,000個であり、2014年から2021年までの8年間における我が国における総販売数量は143万6,950個であるとされる(申立人の主張、甲3)。
ウ 申立人商品が使用された研究について
申立人商品は、医師、看護師、臨床検査技師等の医療従事者及び医療系の研究者等による、検体採取を必要とする実験・研究に用いられ、国内外で発表される複数の論文、医学文献、科学出版物等において言及されている(甲5の1〜甲5の7、甲6の1〜甲6の9)。
エ 引用商標の周知性に関する専門家の証言
東京医科大学微生物学分野の教授及び臨床検査技師が宣言したとされる宣言書において、申立人商品は、少なくとも2012年には市場に登場し、申立人の製造に係る輸送システム(好気性菌、嫌気性菌、選好性菌を含む臨床検体を採取し、採取場所から検査室まで輸送するための多目的媒体)についての世界的に有名なブランドであるとされる(甲9〜甲11)。
オ まとめ
上記アないしエからすれば、以下のとおり判断できる。
申立人は、申立人商品の世界及び我が国における販売数量について主張し、当該主張を裏付ける証拠として甲第3号証を提出するが、同号証は申立人の社員が供述した内容に係るものであり、客観的な証拠とはいい難く、また、上記販売数量の多寡について、比較すべき客観的な証拠の提出もされていない。したがって、上記主張は、直ちに引用商標の周知性を基礎付けるものと認めることはできない。
また、申立人は、引用商標が申立人商品を表示するものとして周知、著名であることを立証するものとして、大学教授及び臨床検査技師の宣言書(甲10、甲11)を提出するが、当該宣言書は、いずれも画一的な証明内容を、申立人と取引関係(需要者)にあると推認することができる宣言者が宣言、署名したものと認められるにすぎないものであって、当該宣言者が、宣言内容について何を根拠に証明したのかは明らかではなく、これをもって、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者において広く認識されていることを証明するに足る証拠と認めることはできない。
さらに、甲第5号証及び甲第6号証の研究論文などにしても、申立人商品が、国内外の研究者等により、一定程度実験、研究に用いられていることは推察されるものの、当該論文の頒布数、頒布先、頒布地域等が不明であり、他に引用商標の我が国における使用開始時期、使用地域、営業の規模(店舗数、営業地域等)、広告宣伝の方法、回数及び内容等を証する書面も提出されていないことから、それらを確認することはできない。
そうとすれば、申立人提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
上記1(1)オのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く知られていたと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「iSWAB」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、視覚上、まとまりよく一体的に表されたと看取されるものであって、その構成文字に相応し、「アイスワブ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「eSwab」、「ESWAB」の欧文字を横書きしてなるものであり、その構成文字に相応し、「イースワブ」又は「エスワブ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標とを比較すると、両者の構成は上記ア及びイのとおりであり、外観においては、語頭部分における、「i」と「e」及び「E」の文字の差異を有するところ、商標の識別上、看者の注意を最も強くひく語頭部における相違が、全体で5文字という比較的短い構成において、商標全体の外観に及ぼす影響は少ないとはいえず、「i」と「e」及び「E」の文字の相違によって、両商標は容易に区別することができるものである。
また、本件商標から生じる「アイスワブ」の称呼と引用商標から生じる「イースワブ」又は「エスワブ」の称呼とは、語頭における「アイ」と「イー」又は「エ」の音に差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、明らかに聴別できるものである。
さらに、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念が生じないものであるから、観念上、比較することができない。
したがって、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではないから、その類似性の程度は低いものである。
(3)出所の混同について
以上のとおり、本件商標と引用商標は、その類似性の程度が低く、上記1(1)オのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるから、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというのが相当である。
その他、本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1(1)オのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたということはできないものであり、かつ、本件商標と引用商標は、上記2(2)ウのとおり、非類似の商標である。
そして、申立人は、引用商標の周知著名性を前提として、「引用商標と外観及び称呼において極めて相紛らわしい「iSWAB」との文字からなる本件商標を、申立人商品と同種の製品の商標として意図的に採択し、出願・登録したことに疑いの余地はなく、引用商標の有する高い名声・信用・評判にただ乗りフリーライド)する目的、すなわち不正の目的をもって、本件商標の登録出願をした」旨主張しているが、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせないものであり、上述のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたということはできないものであるから、引用商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願、使用されているものと推認することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-12-26 
出願番号 2021012817 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0110)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
飯田 亜紀
登録日 2022-01-11 
登録番号 6497007 
権利者 マウィ ディーエヌエー テクノロジーズ エルエルシー
商標の称呼 イスワブ、アイスワブ 
代理人 又市 義男 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 小林 奈央 
代理人 田中 克郎 

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