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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W36
管理番号 1393378 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-14 
確定日 2022-12-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第6487488号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6487488号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6487488号商標(以下「本件商標」という。)は、「starck」の文字を標準文字で表してなり、令和3年7月2日に登録出願、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」を指定役務として、同年12月6日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「STARCK」の欧文字からなり、世界的に著名なデザイナーである申立人の名称として、申立人がデザインを手掛けた製品の名称として、申立人のハウスマークとして及び申立人の業務に係る役務(建築物のデザインの考案)を表示するものとして、日本及び世界の取引者・需要者において高い周知著名性を有しているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人及び引用商標の周知著名性について
ア 申立人と申立人のデザインした製品
(ア)申立人「フィリップ スタルク(Philippe Starck)」は、建築・インテリア・家具・インダストリアルデザイン等さまざまな分野のデザインを総合的に手がけるフランスのデザイナーである。
申立人は1949年に生まれ、1968年に、パリのカモンド美術工芸学校を卒業後、弱冠18歳にして自らの事務所を設立し、1968年にピエール・カルダンのアートディレクターを務め、インテリアと家具のデザインを担当した。その後、1977年にUBIK社を設立し、1979年にアメリカでスタルク・プロダクト社を設立した。
(イ)1982年に、ミスター・プリスXO社(フランス)のバランスチェアーをデザインし、無駄な支柱を省いた棚や構造の美しさを追及した折りたたみ式テーブル等を発表し頭角を現した。シンプルなフォルムはスタルクデザインの原形と言える。
申立人は、家具のシリーズ、歯ブラシ、耳かき、時計、食器など多様な分野においてデザインを展開した。そして機能性を強調するのではなく、遊びのあるデザインにより、1980年代のポスト・モダン社会において圧倒的に受け入れられた。特に申立人の手掛ける製品は、エイリアンのようなレモン絞り器(1991)や、牛の顔のようなチーズおろし器(1992)など、何かを連想させるような曲線的な造形を特徴としている。
(ウ)a 以下に述べるとおり、申立人がデザインした洗面ボウル・トイレ(便器)等のバスルーム製品・椅子・文房具などは「STARCK(Strack)○○」「○○STARCK(Strack)」「○○ by STARCK(Strack)」などと名付けられて日本を含めて世界中で販売されており、「STARCK」といえば、申立人がデザインした製品であることがバスルーム製品・椅子・文房具などを購入する一般消費者に周知・著名になっているので、「STARCK(Strack)」は、単に申立人の名称というだけでなく申立人がデザインした製品に付されている周知・著名な商標になっていると言える。
b 申立人が、ドイツのセラミックのバスルーム製品のメーカーであるDuravitとコラボレーションしてデザインしたバスルーム製品である洗面ボウル・トイレ・タンクなどは、「STARCK 1」シリーズとして1994年から発売されている(甲2)。その後に発売した「STARCK 2」シリーズは、洗面ボウル・トイレといったセラミックのみのシリーズである(甲3)。
c タオルフック・グラスホルダー・ソープディッシュ等の新バスルームアクセサリーラインは「Starck T」として(甲4)、その後、洗面ボウル・トイレ・小便器は「Starck 3」シリーズとして(甲5)、バスタブは「Starck Tubs」や「Starck X」シリーズとして、ミニマルデザインの洗面ボウル・手洗器・小便器等は「ME by Starck」シリーズとして、キッチンのシンクや調理台は「Starck K」シリーズとして販売されている(甲6〜甲9)。
d また、申立人がイタリアの家具メーカー「Kartell」とコラボレーションしてデザインした椅子は、「Chaise design Starck for Kartell」という名称が付されて人気を博している(甲10)。
e これらのうち、「STARCK 1」は、「Design Prize Switzerland」、「Good Design Award」及び「IF Product Design Award」等の多数の賞を受賞している(甲11〜甲13)。
f 「STARCK 2」は「Red Dot」を、「STARCK 3」は「Red Dot」及び「Good Design Award」等を、「Starck T」は「Red Dot Award Winner」等を、「STARCK K」は「Interior lnnovation Award」、「Plus X Award」及び「Good Design Award」等を、「ME by Starck」は「Red Dot Product」、「iF Product Design」を受賞している(甲13〜甲16)。
g 日本における「Good Design Award」においては、申立人がデザインを手掛けた「Samsonite by STARCK」(鞄)、「STARCK−Tomorrow will be less−Hair Brush」(ヘアーブラシ)、「STARCK−Tomorow will be less−Toothbrush」(歯ブラシ)、「STARCK―Tomorrow will be less−X Acto Knife」(カッターナイフ)、「STRACK−Tomorrow will be less−」(ステープラー)などが受賞している(甲17の1)。
(エ)また、2004年にマイクロソフト株式会社が、申立人がデザインしたコンピュータマウス「Optical Mouse by S+ARCK」を日本で販売したことも話題となった(甲17の2)。
(オ)以上のことから、申立人が手掛けた製品デザインは、「世界3大デザイン賞」と呼ばれる賞など数多くの権威ある賞を受賞しており、クオリティが高く優れていることが認められていることが分かる。
イ 申立人が行う「建築物のデザインの考案」の周知著名性
(ア)世界の建築物のデザイン
申立人は1980年代から建築・インテリアデザインを多く手掛けるようになり、海外においては、1982年に、フランスのミッテラン大統領任期中にフランス大統領官邸の内装を担当し、一躍有名になった。
1984年にカフェ・コスト(パリ)のインテリア担当し、日本でも報じられ話題になった(甲18)。
1989年に高級眼鏡ブランド「アランミクリ」の日本国内外の直営店のインテリアを、1996年にモンドリアン・ホテル(アメリカ・ロサンゼルス)のデザインを、2006年にLAN CLUB 蘭会所(中国・北京)というホテルのデザインを手がけた。
(イ)日本の建築物のデザイン
1986年に神宮前レストラン「マニン」のインテリアを担当し、同年、東京の第二国立劇場のコンペでは共同制作により彫刻的な建築を提案し、1988年にカフェ・ミスティーク(東京・原宿)のインテリア及びエクステリアを担当した。
そして、日本においてスタルクの名を一躍有名にしたのは、1989年に設計したスーパードライホール(旧アサヒビール吾妻橋ビヤホール)であり、屋上の金色のオブジェは開業当時から話題になった(甲19〜甲23)。
その後、申立人は、1989年に全体が緑色の怪獣のようなユーネックスナニナニ(東京・白金台)の複合ビルを、1992年に「バロンヴェール・オフィスコンプレックス」(大阪、中央区)を設計した。
(ウ)建築用語集・住宅用語集・デザイナー解説ウェブサイトヘの掲載
申立人は、日本の建築用語集や住宅用語集・デザイナー解説ウェブサイトでも取り上げられている(甲24〜甲27)。
(エ)申立人が利用しているソーシャルネットワークサービスについて
申立人は、Instagramを利用して、自身の手がけたデザインを発信しており約30万人のフォロワー数を抱えている(甲28)。
(オ)各種ウェブサイト・新聞記事
申立人は、世界的に有名なデザイナーとして、各種ウェブサイトや新聞記事で紹介されている(甲29〜甲32)。
(カ)小括
以上によれば、本件商標の登録出願時において、「STARCK」の語は、建築・インテリア・家具・インダストリアルデザイン等さまざまな分野の世界的に著名なデザイナーである申立人の名称として、申立人がデザインを手掛けた製品の名称として、申立人のハウスマークとして、日本及び世界の取引者・需要者において高い周知著名性を有していたというべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
本号該当性について、最高裁第三小法廷判決(平成10年(行ヒ)第85号)が明確にした判断基準に沿って、以下、検討する。
ア 引用商標の周知著名性
上記のとおり、引用商標「STARCK」は、世界的に著名なデザイナーである申立人の名称として、そして、申立人がデザインを手掛けた製品の名称として、申立人のハウスマークとして、使用してきたものであり、現在において申立人の業務にかかる役務を表すものとして需要者の間に広く知られており、高い周知著名性を維持・向上させている。
イ 商標の類似性の程度
本件商標は、欧文字の標準文字「starck」を横書きしてなる構成よりなり、引用商標は、欧文字の「STARCK」を一行書きした構成からなり、欧文字の綴りが同一であるので、本件商標と引用商標は、同一であるといえ、類似性の程度は極めて高いといえる。
ウ 引用商標の独創性
引用商標「STARCK」は、特に意味は生じない人名であるので造語性は高く、独創性の程度は高いといえる。
エ 本件商標の指定役務と引用商標の使用役務との関連の程度、商品等の取引者及び需要者の共通性
本件商標の指定役務においては「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供」といった建築物に密接に関連する役務が含まれており、申立人が使用し周知著名性を有する引用商標に係る役務「建築物のデザインの考案」とは、両役務が不動産に関する性質の役務であることから関連性があるといえ、建築物をデザインしてその建築物を販売・管理するという関連性があることから役務の取引者及び需要者において、共通性が高いことは明らかである。
また、その取引者及び需要者は、いずれも一般の消費者であることからすれば、取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえない。
特許庁の審決(甲34)において、「デザインの考案」と「被服、眼鏡等のファッション関連商品」が密接不可分の関係にある旨認定している。
当該審決により、引用商標「STARCK」が「建築物のデザインの考案」について周知著名性を獲得しているところ、本件商標の「建物の売買」等の指定役務は、対象物である「建物」が申立人がデザインの対象としてきた主たる商品であることから、「建築物のデザインの考案」と密接不可分の関係にあることがより明確になったといえる。
オ その他取引の実情
本件商標の商標権者のウェブサイトにおいて(甲35)、本件商標「starck」を会社ロゴとして表示しており、これは、当該商標権者の名称「株式会社スタルク」の英語表記を表していることが分かる。当該ウェブサイト(甲35)及び当該商標権者の登記情報(甲36)によると、当該商標権者は、不動産買取、不動産仲介の業務を行っているので、当該商標権者は、申立人の承諾を得ることなく申立人の引用商標「STARCK」と類似性の高い本件商標「starck」を不動産買取・不動産仲介の役務に使用していることが分かる。
また、不動産会社が、建物を購入した顧客に、家具等のインテリアの販売や販売の仲介をすることが行われている実情がある(甲37、甲38)。
実際に、家づくり・インテリアデザインのウェブサイトにおいて、申立人がデザインしたバスルーム製品が紹介されている実情がある(甲39)ので、本件商標の商標権者が建物を販売・販売の仲介をする際に、申立人がデザインし「STARCK」の名称が付されたバスルーム製品・洗面台・家具・椅子を販売・販売の仲介をする可能性は十分に考えられることである。
したがって、本件商標の商標権者が本件商標をその役務について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、申立人が建築物のデザインについて周知著名性を獲得した申立人の引用商標を連想、想起し、本件商標を使用した役務が申立人又申立人と経済的もしくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。
カ 小括
以上述べたとおり、本件商標と引用商標との類似性、申立人の引用商標が周知著名性を獲得していること、申立人が周知著名性を獲得している建築物のデザインの考案と、本件商標が指定役務としている「建物の管理」等が、建築物を取り扱う役務であることの共通性などに照らし、当該商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性
ア 商標権者の「不正の目的
本件商標の指定役務における「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供」は、申立人の業務に係る「建築物のデザインの考案」との関連性が強い役務であることは、既述したとおりである。
また、「STARCK」が、世界的に著名なデザイナーである申立人の名称、そして、申立人がデザインを手掛けた製品の名称、申立人のハウスマークを表すものとして、日本及び世界において周知著名であることからすれば、上記指定役務について使用するものとして本件商標を出願した商標権者が、「starck」の語からなる本件商標を、申立人の業務に係る「STARCK」と無関係に偶然採用したとは到底考えられない。商標権者は、申立人の「STARCK」の周知著名性を知らないはずはなく、申立人の業務に係る「STARCK」の周知著名性に便乗する意思をもって採択したであろうことは、容易に想像されるところである。
そうとすれば、本件商標の商標権者は、日本及び世界において周知著名な「STARCK」を自己の商標として出願・使用する目的をもって出願したものといえ、本件商標は、商標権者の不正の目的によって出願されたものである。
イ 過去の審決
特許庁においても、他人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標と同一又は類似性の高い商標を、不正の利益を得る目的及び高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願し登録を受けた商標は、不正の目的に基づくものであると審決が認定している(甲41、甲42)。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、その出願時において、世界的に著名なデザイナーである申立人の名称であり、申立人がデザインを手掛けた製品の名称であり、申立人のハウスマークである「STARCK」と欧文字の綴りが同一である同一の商標であり、商標権者の不正の目的によって出願されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知性
(ア)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は建築、インテリアなどさまざまな分野のデザインを手がけるフランスのデザイナーであること(甲24、甲25、他)、申立人がデザインしたバスルーム製品は「STARCK 1」「Starck T」「STARCK」「ME BY STARCK」などとして我が国でも販売され、それら製品の広告には当該文字とともに「Design by Philippe Starck」の文字が用いられていること(甲2〜甲9)、同じく椅子は「Chaise design Starck for Kartell」として我が国でも販売されていること(甲10)、申立人がデザインした鞄は2001年度に、同じくヘアーブラシ、歯ブラシ、カッターナイフ及びステープラーは1999年度に、我が国の「GOOD DESIGN AWARD(グッドデザイン賞)」を受賞していること(甲17の1)、申立人は1983年にフランスの大統領室の内装を手がけ(甲25〜甲27、甲30)、1988年ないし2018年にはニューヨークやロンドンなどの多数のホテルなどの設計をしたこと(甲27)、申立人は1989年に完成した東京・浅草のスーパードライホールを設計し、屋上の「フラムドール(金の炎)」は開業当時から話題になったこと(甲19〜甲27、甲31、甲32)、申立人の氏名「Philippe Starck(フィリップ・スタルク)」は我が国の建築用語集、住宅用語大辞典、各種ウェブサイト、新聞などに掲載、紹介等されていること(甲24〜甲27、甲29〜甲32)及び申立人のInstagramのフォロワー数は29.5万人であること(甲28)などが認められる。
しかしながら、申立人がデザインし「STARCK」(大文字と小文字の異なるものを含む。以下同じ。)の文字が使用されている商品(バスルーム製品など)の我が国又は外国における売上高、販売数など販売実績を示す主張はなく、それを示す証左は見いだせない。
また、「STARCK」の文字が単独で申立人の業務に係る役務「建築物のデザインの考案」を表示するものとして使用されていると認め得る証左も見いだせない。
(イ)上記(ア)のとおり、申立人は、建築、インテリアなどさまざまな分野のデザインを手がけ、フランスの大統領室の内装、ニューヨークやロンドンなどの多数のホテルなどの設計や東京・浅草のスーパードライホールを設計したこと及び申立人の氏名「Philippe Starck(フィリップ・スタルク)」が我が国の建築用語集、住宅用語大辞典などに掲載されていることなどから、申立人は、建築物などのデザイナーとして我が国又は外国における需要者の間にある程度知られているということができる。
しかしながら、申立人がデザインした商品に「STARCK」の文字が使用されていることは認められるものの、該文字を使用した商品の我が国又は外国における販売実績を示す証左は見いだせず、また、「STARCK」の文字単独で申立人の業務に係る役務「建築物のデザインの考案」を表示するものとして使用されていると認め得る証左も見いだせないから、「STARCK」の文字及び「STARCK」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る役務(建築物のデザインの考案)を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお、引用商標は申立人の業務に係る商品(バスルーム製品など)を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は上記1のとおり「starck」の欧文字からなり、引用商標は上記2のとおり「STARCK」の欧文字からなるものである。
そして、両商標を比較すると、両者は大文字と小文字の差異を有するものの、つづりを共通にするものであるから、両者の類似性の程度は高いといえる。
ウ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性、需要者の共通性
上記1のとおりの本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務とは、一般に提供の手段、目的、業種、事業者などが異なり、両者の関連性は低く、また、需要者の範囲の共通性も低いと判断するのが相当である。
エ 混同のおそれ
上記イのとおり本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものであるが、上記アのとおり引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記ウのとおり本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性は低く、需要者の範囲の共通性も低いものであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)イのとおり本件商標と引用商標は類似するものであるが、上記(1)アのとおり引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(1)エのとおり本件商標は引用商標を連想又は想起させるものではない。
そうすると、本件商標は、引用商標の周知性に便乗するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-12-05 
出願番号 2021083049 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W36)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
清川 恵子
登録日 2021-12-16 
登録番号 6487488 
権利者 株式会社スタルク
商標の称呼 スタルク、スターク 
代理人 村瀬 純一 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 

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