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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W45 |
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管理番号 | 1393370 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-03 |
確定日 | 2022-12-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6473620号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6473620号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6473620号商標(以下「本件商標」という。)は、「ソライエ」の片仮名を標準文字で表してなり、令和3年7月26日に登録出願、第45類「個人のニーズに合わせて手配や情報提供などを行うコンシェルジュの役務,異性の紹介,結婚式の企画及び手配,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,ファッション情報の提供,衣装の選定,葬儀の執行,埋葬,火葬,墓地又は納骨堂の提供,遺体の防腐処理,個人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,ペットの世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。),家事の代行,施設の警備,衣服の貸与,祭壇の貸与,装身具の貸与,身飾品の貸与,頭飾品の貸与,社会保険に関する手続の代理,消火器の貸与,火災報知機の貸与,着物の着付け,宗教儀式の実施,宗教集会の運営,特別な行事のための放鳩,私信の代筆」を指定役務として、同年10月15日に登録査定、同年11月18日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、次のとおりである。 ア 登録第6254758号(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:「ソライエキッズ」及び「solaie kids」の文字を2段書きしたもの 指定役務 :第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:令和元年7月17日 設定登録日:令和2年5月27日 イ 登録第6366745号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲1のとおり 指定役務 :第36類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:令和2年4月28日 設定登録日:令和3年3月22日 (2)申立人が商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する登録商標は、上記引用商標1及び2のほか、次のとおりである。 ア 登録第5553282号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:「ソライエ」及び「SOLAIE」の文字を2段書きしたもの 指定商品・役務:第9類及び第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 登録出願日:平成24年4月16日 設定登録日:平成25年2月1日 イ 登録第5553284号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品・役務:第9類及び第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 登録出願日:平成24年4月26日 設定登録日:平成25年2月1日 ウ 登録第6100219号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 指定役務 :第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:平成30年3月8日 設定登録日:平成30年11月22日 エ 登録第6281044号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様:別掲4のとおり 指定役務 :第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:令和元年7月29日 設定登録日:令和2年8月17日 オ 登録第6281045号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の態様:別掲5のとおり 指定役務 :第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 登録出願日:令和元年7月29日 設定登録日:令和2年8月17日 (3)引用商標1ないし7に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものであって、これらをまとめて以下「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号違反について ア 商標の類似性について 引用商標3及び4は、「東武鉄道くらしのブランド」を示す申立人の総合ブランド名であり、そのほかの引用商標1、2、5ないし7は、「ソライエ(Solaie)」+「事業に関連する用語」から構成される商標(派生ブランド名)にすぎないため、ここでは、本件商標と引用商標3及び4の類否について述べる。 (ア)本件商標 本件商標は、標準文字商標「ソライエ」であり、「ソライエ」の称呼を生じる。外観上、片仮名のみからなり、また、造語であって特段の観念を生じない。 (イ)引用商標3及び4 引用商標3は、「ソライエ/SOLAIE」からなり、「ソライエ」の称呼を生じる。外観上、上段は片仮名のみ、下段はローマ字(すべて大文字)から構成され、造語であって特段の観念を生じない。 また、引用商標4は、青地のローマ字(語頭は大文字、それ以外は小文字)によりロゴ化された「Solaie」からなり、「ソライエ」の称呼を生じる。 ローマ字のつづりは、いずれも「SOLAIE」と一致し、引用商標4も、引用商標3と同様に造語であって特段の観念は生じない。 (ウ)比較 本件商標及び引用商標3及び4は、いずれも同一の称呼「ソライエ」を生じ、特段の観念を生じない。外観は、片仮名、ローマ字、ロゴなどの相違はあるが、称呼及び観念の同一性を覆すほどの相違点ではない。 両者の外観、称呼、観念を勘案すると、本件商標と引用商標3及び4は全体として極めて類似している。 イ 引用商標の周知性 申立人は、自社の「総合ブランド名」に係る引用商標3及び4や、この「派生ブランド名」に係る引用商標1、2、5ないし7を、全国紙での新聞広告、雑誌の広告、ラジオ番組の提供による広告、チラシ、パンフレット、車内広告、駅の看板により広告的使用を積極的に行っている(甲3ー3、4、6〜10、甲8−2)、申立人自身による広告的使用のみならず、新聞記事、雑誌の記事、テレビ放映、ネットでの記事など申立人以外の者によっても多数取り上げられるようになった(甲3−5、6、11、甲8−1)。 よって、引用商標、特に自社の「総合ブランド名」に係る引用商標3及び4は、(著名又は少なくとも)関東地方で周知である。 ウ 本件商標権者と申立人との関係について 本件商標権者は、自己の「さがみ典礼」の広告(看板)掲載を申立人に対して現在まで長きにわたり依頼しており、「広告の受発注」の関係にある(甲5)が、それ以上の関係(たとえば組織的・経済的な関係など)は、一切なく、本件商標権者は、申立人が中核となる東武グループの関連会社ではない(甲7)。 エ まとめ このような本件商標権者が、申立人の許諾なく引用商標と同一又は類似する本件商標を使用すると、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると、特に東武沿線を中心とした関東地方の需要者が役務の出所を混同するおそれがある。 特に、「ソライエ」「Solaie」の分譲マンションは、現在3313戸存在し、合計で1万人を超える入居者が東武沿線の分譲マンションで生活している。 もし、「ソライエ」「Solaie」の分譲マンションと無関係の本件商標権者が「葬儀の執行」と関連する葬儀場に使用した場合、1万人を超える入居者は、自身の分譲マンションと何らかの関係がある葬儀場であると容易に認識しうるものである。 しかし、「ソライエ」「Solaie」の分譲マンションに係る申立人と本件商標権者とは、経済的・組織的な関係は一切なく、分譲マンションを購入し居住する入居者やその近隣に居住する住民などが、マンションと全く関係のない役務「葬儀の執行」との関係について誤認を引き起こす可能性がある。 もし、本件商標権者により「ソライエ」+「地名」からなる名称の葬儀場が近隣に建設された場合、当該分譲マンションの入居者や近隣住民のみならず我が国でインターネット上の地図を閲覧した者が、当該葬儀場を「分譲マンションのソライエ」の出所である申立人が行う葬儀場であると誤認する可能性は十分にある。 また、本件商標の登録後の2021年11月18日には、全国ネットのテレビ番組「スッキリ」で分譲マンション「ソライエ」が取り上げられたように、現在においてもなお新聞記事、雑誌の記事、ネットでの記事など申立人以外の者によっても多数取り上げられている(甲3−5、6、11、甲8−1)。申立人は、「東武グループ」一丸となって多くの事業を推し進めている中(甲7)で、申立人と無関係の本件商標権者が本件商標を使用すると、申立人と経済的又は組織的に何らの関係がある者の業務に係る役務であると、需要者が役務の出所を混同するおそれが将来的にも十分にあるというべきである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 称呼 本件商標「ソライエ」は、片仮名のみから構成され、上記のとおり、「ソライエ」の称呼を生じる。 引用商標1は、上段が片仮名「ソライエキッズ」、下段がローマ字「solaie kids」からなる2段併記の商標である。上段や下段から「ソライエキッズ」、「ソライエ」、「キッズ」の称呼を生じる。なお、「kids」「キッズ」部分は英語で「こども」の意味を有し、指定役務「保育所における乳幼児の保育」との関係ではその役務の特徴(対象)を表す部分であって識別力がないため、要部は「ソライエ」「solaie」となる。 また、引用商標2は、上段がローマ字「Solaie +Work」、下段が片仮名「ソライエ プラスワーク」からなり、「ソライエプラスワーク」、「ソライエワーク」、「ソライエ」、「プラスワーク」の称呼を生じる。なお、「Work」「ワーク」部分は、英語で「仕事」の意味を有し、指定役務「オフィススペースの貸与並びにこれらに関するコンサルティング及び情報の提供」との関係ではその役務の特徴(態様)を表す部分であって識別力がないものである。「+」「プラス」部分は、「〜を加えて」との意味にすぎず、指定役務との関係で特段識別力がないものである。 また、「ソライエ プラスワーク」との空白の位置や色彩を勘案すると、「ソライエ」部分と「プラスワーク」部分とを明確に分離することができる。よって、要部は「ソライエ」「Solaie」である。 イ 外観 本件商標「ソライエ」は、片仮名のみから構成され、引用商標1及び2の要部である片仮名「ソライエ」と共通する。 ウ 観念 本件商標の「ソライエ」、引用商標1及び2の要部「ソライエ」「Solaie」部分は、すべて造語であり、特定の意味を有しない。商標全体では、引用商標1の観念は、「ソライエ(造語)のこども」、引用商標2の観念は、「ソライエ(造語)足す仕事」である。 エ まとめ 本件商標、引用商標1及び2の要部は、いずれも「ソライエ」との共通の称呼、外観、観念を生じる。引用商標1及び2において、識別力がない部分を勘案しても、造語であって、語頭に位置する「ソライエ」「Solaie」の印象が需要者をして強く認識される。 よって、本件商標、引用商標1及び2は、商標全体において類似する。 オ 指定役務の比較 本件商標の指定役務「ペットの世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。)」は、引用商標1及び2の指定役務「動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育」と同一である。 カ 申立人と本件商標権者の関係 本件商標権者は、申立人の東武グループに所属していないし、申立人と支配関係や協力関係、事業関係などになく、他人にすぎない。 キ 小括 以上より、本件商標は、引用商標1及び2に類似し、指定役務が同一であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第19号違反について ア 上記のとおり、引用商標、特に「総合ブランド名」に係る引用商標3及び4は、(著名又は少なくとも)関東地方において周知であって、上記のとおり、本件商標と引用商標は類似する。 イ 不正の目的について 本件商標権者は、申立人と実際には「広告の受発注」の関係しかなく、申立人が中核となる東武グループの関連会社ではない。 本件商標権者が本件商標を申立人の業務と関係のない役務「葬儀の執行」などに使用した場合、申立人が引用商標3及び4などを「分譲・賃貸マンション、保育施設、サテライトオフィスなど」に使用して商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等をき損させるおそれが否定できない。 また、申立人の分譲マンションを購入し居住する1万人を超える入居者が、マンションと全く関係のない役務「葬儀の執行」との関係を誤認する可能性がある。この場合、本件商標は、「他人に損害を加える目的」、すなわち「その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの」に該当する可能性は否定できない。 ウ まとめ 本件商標は、申立人の業務に係る役務(分譲・賃貸マンション、保育施設、サテライトオフィスなどに係る役務。第36類、第45類など)を表示するものとして日本国内(特に関東地方)における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標である。また、本件商標を指定役務「葬儀の執行」(葬儀場)などに使用することで、申立人の分譲マンションの入居者がその出所を混同するといつた不正の目的がある。 よって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものといえるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 (4)商標法第4条第1項第7号違反について 上記のとおり、引用商標、特に「総合ブランド名」に係る引用商標3及び4は、(著名又は少なくとも)関東地方において周知である。 本件商標権者は、埼玉県や栃木県などの東武線沿線に多数の葬儀場を所有している(甲6)。よって、周知な引用商標3及び4に係る事業(分譲・賃貸マンション、保育施設、テレワーク用のサテライトオフィスの運営など)を知っていたと考えるのが自然である。つまり、本件商標は、周知な引用商標3及び4がなければ選択されなかったというべきである。 してみれば、本件商標は、周知な引用商標3及び4がもつ周知性及び顧客吸引力に便乗する意図のもとで出願されたものと推認され、引用商標3及び4に係る「ソライエ」「Solaie」の事業主体と何ら関係のない一私人に指定役務について独占使用を認めることは、一般的道徳観念に照らして穏当ではなく、公の秩序又は善良の風俗を害するものであるため、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 4 当審の判断 (1)引用商標等の周知性について 申立人主張の全趣旨から、申立人は主に引用商標3及び4のほか、それらに係る標章「ソライエ」及び「Solaie」(以下、前者を「引用標章1」、後者を「引用標章2」ということがあり、両者をまとめて「引用標章」という。)も著名又は少なくとも関東地方において周知である旨主張していると認められるので、引用商標3、4及び引用標章(以下、これらをまとめて「引用標章等」という。)について周知著名性を検討することとする。 ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は「東武グループ」の中核企業であり、鉄道事業、不動産事業のほか、東武線沿線を中心に多角経営を行っていること(甲7)、申立人は引用標章(色彩、書体の異なるものを含む。)を平成24年頃から現在まで、分譲マンション事業、土地分譲事業、賃貸事業、土地賃貸事業、生活サービス支援事業、分譲戸建事業に使用しているほか、分譲マンション事業については地名などに「ソライエ」の文字を冠し「ソライエ○○」のように、賃貸マンション事業については「Solaie I’ll(ソライエアイル)」のように使用していること(甲3、職権調査)、「ソライエ」の文字を冠した分譲マンション(以下「申立人分譲マンション」という。)は、平成24年頃から現在まで、埼玉県の7物件、東京都の4物件、千葉県の4物件の合計15物件(3,642戸)が販売されていること(甲3−1、7、甲8−2)、申立人は申立人分譲マンションなどの広告を新聞、鉄道車両、駅などに掲載し、チラシ、パンフレットを相当数配布したこと(甲3−3、6〜10、甲8−2)、申立人分譲マンションは新聞、テレビ番組、雑誌、インターネットなどで相当数紹介等されていること(甲3−4〜6、11、甲8−1)、賃貸マンションは東京都及び埼玉県に計4物件(236戸)であること(甲3−1)、並びに、商標権者は事業の一つとして葬祭式場(葬儀場)「さがみ典礼」を運営し、当該式場を東武線沿線では埼玉県内に33、栃木県内に21有していること(甲5、甲6)、東武線沿線のいくつかの駅などに葬祭式場「さがみ典礼」の広告が掲載されていること(甲5)などが認められる。 イ 上記アのとおり、申立人は、鉄道事業、不動産事業のほか、東武線沿線を中心に多角経営を行っており、引用標章及びそれらを構成中に含む標章を、平成24年頃から現在まで、分譲マンション事業、賃貸マンション事業などについて使用し、「ソライエ」の文字を冠した分譲マンション(申立人分譲マンション)は平成24年頃から現在まで、埼玉県、東京都、千葉県の合計15物件(3,642戸)が販売され、それら申立人分譲マンションは新聞、テレビ番組、鉄道車両、雑誌、チラシ、パンフレットなどで相当程度広告、紹介等されていたことが認められることから、申立人分譲マンション及び引用標章は、申立人の業務に係る分譲マンションとして及び同分譲マンションを表示するものとして、いずれも需要者の間である程度知られているものということができる。 しかしながら、申立人が事業を展開している地域は東武線沿線を中心とする関東地方に限られており、何より販売された申立人分譲マンションは平成24年頃から現在までの約10年間で首都圏における15物件(3,642戸)にすぎないことからすれば、チラシなどの印刷部数、各駅の乗降者数、賃貸マンションの物件数などを考慮しても、申立人分譲マンション及び引用標章は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る分譲マンションとして及び同分譲マンションを表示するものとして、いずれも全国はもとより、関東地方など一定の地域の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 なお、申立人はチラシ、パンフレットなど引用標章の使用の証拠を追加提出することが可能である旨述べているが、それらによって上記判断が覆るものとは認められないから、当該証拠は求めないこととした。 ウ そうすると、上記2(2)アのとおり「ソライエ」と「SOLAIE」の文字からなる引用商標3及び別掲2のとおり「Solaie」の欧文字を水色で表してなる引用商標4も、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないというのが合理的である。 したがって、引用標章等は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 なお、引用標章等が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されているものと認め得る証左、及び、引用商標1、2、5ないし7が同じく我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認め得る証左はいずれも見いだせない。 (2)商標法第4条第1項第15号について 申立人は、本件商標は主に引用商標3及び4との関係で本号に該当する旨主張しているので、以下、検討する。 ア 本件商標と引用商標3及び4の類否 (ア)本件商標 本件商標は、上記1のとおり、「ソライエ」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「ソライエ」の称呼を生じること明らかである。そして、当該文字は、上記(1)イのとおり、申立人の業務を表示するものとして広く認識されていたものではなく、また、辞書等に載録されているものでもないから、特定の観念を生じない。 (イ)引用商標3及び4 引用商標3は、上記2(2)アのとおり「ソライエ」及び「SOLAIE」の文字を2段に横書きしてなり、引用商標4は別掲2のとおり「Solaie」の文字を水色で表してなり、いずれもその構成文字に相応し「ソライエ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (ウ)本件商標と引用商標3及び4の類否 本件商標と引用商標3及び4の類否を検討すると、外観においては、本件商標が片仮名のみから構成されているのに対し、引用商標は片仮名及び欧文字又は欧文字のみから構成されているから、両者は欧文字表記の有無又は文字種の相違により判然と区別し得るものである。 次に、称呼についてみると、本件商標と引用商標3及び4は「ソライエ」の称呼を共通にするものである。 さらに、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標3及び4とは、称呼を共通にするものの、観念において比較することができないものであり、外観において判然と区別し得るものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 イ 混同のおそれ 上記(1)のとおり引用商標3及び4は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記アのとおり本件商標は、引用商標3及び4と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標3及び4を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、引用標章及び引用商標1、2、5ないし7との関係も含め、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第11号について 申立人は、本件商標は引用商標1及び2との関係で本号に該当する旨主張しているので、以下、検討する。 ア 本件商標と引用商標1及び2の類否 (ア)本件商標 本件商標は、上記(2)ア(ア)のとおりの構成からなり、「ソライエ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (イ)引用商標1及び2 引用商標1は、上記2(1)アのとおり「ソライエキッズ」と「solaie kids」の文字を2段に横書きしてなり、その構成文字に相応し「ソライエキッズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 引用商標2は、別掲1のとおり、上段に「Solaie」の文字を水色で、「+Work」の文字を紫色で表し、下段に小さく「ソライエ プラスワーク」の文字を水色で表してなり、該文字に相応し「ソライエプラスワーク」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (ウ)本件商標と引用商標1及び2の類否 本件商標と引用商標1及び2の類否を検討すると、外観において、両者は、欧文字の有無、構成文字数が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ソライエ」の称呼と引用商標1及び2から生じる「ソライエキッズ」及び「ソライエプラスワーク」の称呼を比較すると、両者は「キッズ」又は「プラスワーク」の音の有無の差異を有し、構成音数、語調語感が明らかに異なるから、相紛れるおそれのないものである。 さらに、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標1及び2は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (エ)申立人の主張について 申立人は、引用商標1の構成中「Kids」「キッズ」の部分は指定役務「保育所における乳幼児の保育」との関係で識別力がない、引用商標1の空白の位置を勘案すると「Solaie」と「Kids」とを明確に分離することができるとして、引用商標1の要部は「ソライエ」「Solaie」となる旨、及び引用商標2の「Work」「ワーク」部分は指定役務「オフィススペースの貸与並びにこれらに関するコンサルティング及び情報の提供」との関係で識別力がない、「+」「プラス」部分は「〜を加えて」との意味にすぎず指定役務との関係で識別力がない、「ソライエ プラスワーク」の空白の位置や色彩を勘案すると「ソライエ」部分と「プラスワーク」部分とを明確に分離することができるとして、引用商標2の要部は「ソライエ」「Solaie」である旨主張している。 しかしながら、引用商標1は、その構成中「ソライエキッズ」及び「solaie kids」の各文字はいずれも同書同大でまとまりよく一体的に表され、その称呼「ソライエキッズ」は無理なく一連に称呼し得るものである。 また、引用商標2は、その構成中「Solaie +Work」の文字は色彩が異なるものの同書同大でまとまりよく一体的に表され、「ソライエ プラスワーク」の文字は同じ色彩で同書同大でまとまりよく一体的に表され、その称呼「ソライエプラスワーク」は無理なく一連に称呼し得るものである。 そうすると、引用商標1及び2は、それらの上記のとおりの構成及び称呼においては、「ソライエキッズ」、「solaie kids」、「Solaie +Work」及び「ソライエ プラスワーク」の各文字はそれぞれが一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。 また、他に、引用商標1及び2の構成中「ソライエ」「Solaie」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。 したがって、申立人のかかる主張は採用できない。 その他、本件商標と引用商標1及び2が類似するというべき事情は見いだせない。 イ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標1及び2は非類似の商標であるから、両商標の指定役務の一部が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について 申立人は、本件商標は、主に引用商標3及び4との関係で本号に該当する旨主張していると認められるので、以下、検討する。 上記(1)のとおり引用商標3及び4は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記(2)アのとおり本件商標と引用商標3及び4は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、上記(2)イのとおり本件商標は、引用商標3及び4を連想又は想起させるものではない。 そうすると、本件商標は、引用商標3及び4の名声等をき損させる、引用商標3及び4の周知性及び顧客吸引力に便乗するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 その他、引用標章及び引用商標1、2、5ないし7との関係も含め、本件商標が不正の目的をもって使用をするものであること、公序良俗に反するものであることなどというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標2:色彩については原本参照。) ![]() 別掲2(引用商標4:色彩については原本参照。) ![]() 別掲3(引用商標5:色彩については原本参照。) ![]() 別掲4(引用商標6) ![]() 別掲5(引用商標7) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-12-08 |
出願番号 | 2021092128 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W45)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
岩崎 安子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2021-11-18 |
登録番号 | 6473620 |
権利者 | アルファクラブ武蔵野株式会社 |
商標の称呼 | ソライエ |
代理人 | 藁科 孝雄 |
代理人 | 齋藤 晴男 |
代理人 | 齋藤 貴広 |
代理人 | 藁科 えりか |