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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1393368 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-28 |
確定日 | 2022-12-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6467822号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6467822号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6467822号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、令和3年5月6日に登録出願、第25類「ガロッシュ,ベレー帽,ブーツ,履物,カフス,装飾用袖口,靴類,運動靴及び運動用特殊靴,木靴,ティーシャツ,被服」を指定商品として、同年10月5日に登録査定、同年11月8日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、別掲2に示すとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)であって、申立人が、欧州連合商標登録第18234460号(第25類「Footwear; Clogs; Slippers.」(履物,クロッグ,スリッパ))として保有するもの、及び、別掲3に示すとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)であって、申立人の販売に係る商品「履物」(以下「申立人商品」という。)に使用して周知著名であると主張するものである。 なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていう場合は、「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第148号証(なお、表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)申立人は、「XOCOI」の欧文字を横書きしてなる引用商標1(決定注:2文字目の「O」には、アクサンシルコンフレックス記号が付されている。以下同じ。)を所有している商標権者であるが、この引用商標1は、本件商標が出願されるよりも前の、2020年5月4日に欧州連合知的財産庁に出願され、同年9月22日に登録されて、現に商標権が有効に存続しているものである(甲3)。 なお、引用商標1の指定商品中の「Clogs」は、元々は名詞で「木靴」を意味するものであるが(甲4、甲5)、現在では材質が木でなくても形状が似たものは「clog(クロッグ)」と呼ばれていることは、インターネットで「clog」や「クロッグ」で検索すると、木靴に似た形状であるが木を全く使用していない履物が数多く見られることからも明らかである。 申立人は、そのようなクロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物の製造業者で、イタリア国に所在するものである。申立人は引用商標1を保有し、この商標は、申立人によって、実際に履物について使用されているのであるが、その態様は、両端の「X」と「I」が直線的なのに対し、これら2文字に挟まれた「OCO」の3文字が円弧を含む真円からなる書体であり、さらに2文字目の文字を構成する「O」については、中央縦に切れ込みが入った独特の書体であり、正に本件商標と同じものである。しかしながら、申立人は、申立人の名称「XOCOI S.R.L.」の略称でもある、この態様の商標を、本件商標の登録出願日より前から公正かつ誠実に使用して、積極的に営業活動を行ってきたものである。 すなわち、申立人は、クロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物の製造業者であるが、単なる製造業者として小売店等の販売者に卸しているだけではなく、自社のオンラインショップを使って、イタリア国をはじめとするヨーロッパのみならず世界中の消費者を相手にした小売業も手掛けており(甲6、甲7、甲8〜甲24)、オンライン販売実績(甲7)のまとめにあるように、販売先は、オーストラリア国、オーストリア国、カナダ国、中国、フィンランド国、フランス国、ドイツ国、ギリシア国、アイルランド国、イタリア国、ルクセンブルク国、メキシコ国、オランダ国、ポルトガル国、イギリス国、ルーマニア国、スペイン国、アメリカ合衆国、スイス国、トルコ国にわたっている。 さらに、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)といったSNSを駆使して広報活動も行っている(甲25〜甲28)。そして、これらのうち、2021年2月に投稿したもの(甲27)、2021年4月に投稿したもの(甲28)は、いずれも本件商標が登録出願される前である。 また、バイヤー向けには、LineSheet(ラインシート)と呼ばれる展示会などで配布する商品の写真、商品番号、価格等を記載した冊子や、LookBook(ルックブック)と呼ばれるSS(春夏)、AW(秋冬)の各シーズンに向けた新商品の写真集を作成して積極的に営業活動を行っている(甲29〜甲32)。 小売店等の販売者としては、国別販売実績にあるように、アンドラ国、ベルギー国、ブルガリア国、フランス国、ドイツ国、ギリシア国、イタリア国、モンテネグロ国、オランダ国、サンマリノ国、スイス国、スペイン国にわたっており(甲33)、実際に販売した際の発注請書(甲34〜甲44)、請求書(甲45〜甲55)及び商品を配達した配送業者の配達証明書(甲56〜甲66)が存する。 その他、本件商標の登録出願日より前である2021年4月の請求書の写しのとおり、申立人は本件商標の登録出願前から本件商標と同一の態様の引用商標2を使用して公正かつ誠実に営業活動を行ってきた(甲67〜甲134)。 また、このようにインターネットを駆使して積極的に営業活動を行っていることから、ドメイン名「xocoi.it」、「xocoi.net」及び「xocoistore.it」について登録を受けており(甲135〜甲137)、そのトラフィク分析結果からは、数多くの国から当該ウェブサイトが閲覧されていることがわかり(甲138)、これらの管理等は、専門業者であるCROSSTOWN社に任せており、同社からの請求書からも申立人のインターネットを活用した営業活動が事実であることの裏付けとなっている(甲139〜甲141)。 さらに、小売店等の販売者などが、インターネットのオンラインショップで申立人の商品を販売し、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)といったSNSを使って申立人の商品を盛んに紹介している事実があり(甲142〜甲148)、これらのうち、特にアジア圏を対象にしたものとしては、日本語のものや韓国語のものも存在する(甲142,甲143)。 このような事情の中で、申立人は最近になって、申立人の使用してきた商標「XOCOI」と全く同一の商標が、申立人とは無関係の「ルビン カンパニー リミテッド」なる香港の会社によって、本件商標として商標登録されている事実を確認した(甲1、甲2)。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、本件商標と同一の態様の商標である引用商標を、本件商標の登録出願日より前からクロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物について使用してきた。そして、この商標は申立人の積極的な営業活動により、イタリア国をはじめとするヨーロッパのみならず世界中で良く知られる存在となっていることから、本件商標は、申立人の商標を剽窃するものであり、仮に本件商標の登録が維持され、申立人とは無関係である本件商標の商標権者によって、履物等に使用されれば、取引者や消費者を欺くことになるから、詐欺行為に値するものであって、社会公共の利益を害するものである。 また、このような本件商標の登録を維持することは国際信義にもとるものであり、我が国の信用を毀損するものでもある。 なお、本件商標の指定商品には、履物類以外のものも含まれているが、すべて被服等ファッションやアパレル関係のものであり、現在のように企業の多角経営化が進んでいる現代にあっては、履物以外の指定商品について使用しても社会的妥当性を欠くものであり、公正な取引秩序を乱すものとなる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 仮に、異議申立てに係る本件商標の全指定商品について、商標法第4条第1項第7号に該当しないとしても、少なくとも、その指定商品中、「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」については、該当する。 (3)商標法第4条第1項第8号該当性について 「XOCOI」の欧文字から構成される本件商標は、申立人の名称である「XOCOI S.R.L.」の略称とみなし得るものであるところ、申立人の名称は、申立人の所有に係る商標「XOCOI」を盛大に使用してきた結果、申立人の略称として著名性を獲得したものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 仮に、異議申立てに係る本件商標の全指定商品について、商標法第4条第1項第8号に該当しないとしても、少なくとも、その指定商品中、「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」については、該当する。 (4)商標法第4条第1項第10号該当性について 申立人は、申立人の所有に係る商標「XOCOI」をクロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物について使用してきた結果、周知性を獲得したものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 仮に、異議申立てに係る本件商標の全指定商品について、商標法第4条第1項第10号に該当しないとしても、少なくとも、その指定商品中、「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」については、該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人は、申立人の所有に係る商標「XOCOI」をクロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物について使用してきた結果、著名性を獲得したものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 仮に、異議申立てに係る本件商標の全指定商品について、商標法第4条第1項第15号に該当しないとしても、少なくとも、その指定商品中、「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」については、該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標と全く同一の商標「XOCOI」は、申立人が、本件商標の登録出願日前からクロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心にした履物について盛大に使用してきたものであり、イタリア国をはじめとするヨーロッパのみならず、世界中の需要者の間に広く認識されている商標となっている。 しかも、申立人の所有に係る商標「XOCOI」は、申立人の略称である以外は造語であることから、申立人の商標「XOCOI」と全く同一のつづりの商標を申立人とは一切関わりのない本件商標の商標権者が商標として選択することは考え難く、しかも、その態様まで完全一致しているとなれば、不正の目的をもって出願し登録を得たものとみなさざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 仮に、異議申立てに係る本件商標の全指定商品について、商標法第4条第1項第19号に該当しないとしても、少なくとも、その指定商品中、「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」については、該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の主張及び同人提出の証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、第25類「Footwear; Clogs; Slippers.」を指定商品とする、別掲2のとおりの構成からなる商標(欧州連合商標登録第18234460号)の、商標権者である(甲3)。 (イ)申立人は、社名を「XOCOI S.R.L.(ゾーコイ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ)」とするイタリア国に所在する、クロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心とした履物の製造業者であり、小売店等における販売の他、自社のオンラインショップでも小売を行っており、2020年から2021年の顧客は20か国に及び(甲7)、オンラインショップでの販売(2022年5月1日〜2022年2月28日)は、販売請求書によれば、イタリア、スペイン、フランス、イギリス、アメリカ、カナダ、トルコ及びルーマニアの8か国への販売が確認できる(甲8〜甲24)。 (ウ)申立人は、FacebookやInstagramでの広報活動(甲25〜甲28)及びバイヤー向けの商品カタログを作成しての営業活動(甲29〜甲32)を行っており、当該カタログ及びカタログ掲載商品には引用商標2と同一と認められる標章(以下「使用標章」という。)が表示されている。 (エ)2021年4月〜2022年3月における申立人の国別販売実績によれば、アンドラ国、ベルギー国、ブルガリア国、フランス国、ドイツ国、ギリシア国、イタリア国、モンテネグロ国、オランダ国、サンマリノ国、スイス国、スペイン国において、合計14,631足、815,816.4ユーロの販売実績がみられる(甲33)。 (オ)申立人の2021年4月の請求書によれば、アンドラ、スペイン、フランス、ドイツ、オランダ及びイタリアにおける販売実績の記載があるが、そのうちのほとんどはイタリアにおける販売である。また、当該請求書に使用標章の表示がされている(甲67〜甲134)。 (カ)インターネットのウェブサイトにおいて、使用標章が表示された履物が販売されていることはうかがえるが、これらは外国語で表示されたものであり、我が国におけるものとはいえない。なお、日本語で表示されたサイトが1件(甲142)見られるが、申立人のウェブサイトであるのかは確認できない。 イ 判断 上記アの事実からすれば、申立人が、イタリア国に所在し、クロッグと呼ばれる木靴に似た形状の靴を中心とした履物の製造業者であり、イタリアを中心に欧州各国に履物の販売実績があること、また、履物や商品カタログ、請求書等に使用標章が表示されていることから、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間にある程度認識されていることはうかがえる。 しかしながら、申立人が履物を実際に販売している事実は、申立人の2021年4月から2022年3月における国別販売実績(甲33)において、我が国が含まれない欧州の12か国に限られる上、当該期間における販売数量及び売上高を示す証拠も申立人作成の資料であって、その事実を裏付ける証拠の提出もないことから、その販売実績が明らかとはいえず、使用標章の周知性を推し量ることができない。 仮に、申立人が主張する上記金額等が事実であるとしても、かかる金額等が申立人商品の販売実績として、その周知性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証左は見いだせない。 また、申立人商品の我が国における売上高、販売数量、シェアなどの販売実績及び広告宣伝の期間・規模・頻度・金額等など、使用標章の周知・著名性を数量的に判断し得る具体的な証拠は提出されていないから、直ちに我が国において使用標章が、一般需要者に認識されるに至ったかは、うかがい知ることができない。 その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、使用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 そうすると、使用標章を付した申立人商品における販売について、申立人が提出した証拠のみによっては、我が国及び外国における申立人商品の需要者等の使用標章についての認識を把握することはできないばかりでなく、その事実のみにより申立人商品に係る使用標章の周知性の認定を基礎付けることもできない。 したがって、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章が、申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。 ウ 「XOCOI」が申立人の著名な略称であるかについて 上記アの事実によれば、申立人の社名は「XOCOI S.R.L.(ゾーコイ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ)」であり、使用標章が申立人の販売に係る商品(履物)に付され(型押し等)、かつ、商品カタログや請求書等に表示されていることはうかがえるものの、申立人の略称を表示したものとして、「XOCOI」の文字のみが単独で使用され、一般に認識されていることを認め得る証左は見いだせない(請求書等の申立人の名称は「XOCOI SRL」又は「XOCOI S.R.L.」と記載されている。)。 そうすると、「XOCOI」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称として著名となっていたということはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性について ア 本件商標と引用商標の類否及び本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人商品の類否について (ア)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、欧文字「X」、その右側に、上部に円弧状の半円線、並びにその下部に、左右に対称的に対となる円弧状の半円線を配した図形、さらにその右側に「COI」を配した構成からなる商標である。 ところで、本件商標の構成中の円弧状の半円線の組み合わせ図形は、近時の商標におけるレタリングの手法として、その構成中の一部の文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種の変換をすること、又は、一部の文字をデザイン化することが、一般に行われており、当該図形は、格別特異な態様ともいえず、さらに、「X」の欧文字と「COI」の欧文字の間に配されていることからすると、これは、フランス語の発音記号の一であるアクサン・シルコンフレックス記号を付した欧文字「O」をデザイン化したものと容易に看取し得るものといえることから、本件商標は、「XOCOI」(2文字目の「O」はアクサン・シルコンフレックス記号が付されている。以下同じ。)の欧文字を表し、その構成全体をもって一体不可分の特定の意味合いを想起することのない造語として認識されるものであり、その構成文字に相応する「ゾーコイ」の一連の称呼のみを生じ、親しまれた既成の観念を生じることのないものというべきである。 よって、本件商標は、「ゾーコイ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (イ)引用商標について 引用商標1は、別掲2に示すとおり、「XOCOI」(2文字目の「O」はアクサン・シルコンフレックス記号が付されている。以下同じ。)の欧文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、「XOCOI」の欧文字は、辞書等に載録されているものではなく、また、特定の意味を有しない欧文字は、一般的に、我が国において親しまれた英語の読みにならって称呼されるものであるから、引用商標1は、その構成文字に相応して、「ゾーコイ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 また、引用商標2は、別掲3に示すとおり、欧文字「X」、その右側に、上部に円弧状の半円線、並びにその下部に、左右に対称的に対となる円弧状の半円線を配した図形、さらにその右側に「COI」を配した構成からなる商標である。 ところで、引用商標2の構成中の円弧状の半円線の組み合わせ図形は、近時の商標におけるレタリングの手法として、その構成中の一部の文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種の変換をすること、又は、一部の文字をデザイン化することが、一般に行われており、当該図形は、格別特異な態様ともいえず、さらに、「X」の欧文字と「COI」の欧文字の間に配されていることからすると、これは、フランス語の発音記号の一であるアクサン・シルコンフレックス記号を付した欧文字「O」をデザイン化したものと容易に看取し得るものといえることから、引用商標2は、「XOCOI」(2文字目の「O」はアクサン・シルコンフレックス記号が付されている。以下同じ。)の欧文字を表し、その構成全体をもって一体不可分の特定の意味合いを想起することのない造語として認識されるものであり、その構成文字に相応する「ゾーコイ」の一連の称呼のみを生じ、親しまれた既成の観念を生じることのないものというべきである。 (ウ)本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標1は、そのつづりを同じくすることから、外観上、類似するといえ、本件商標と引用商標2は、両商標の構成文字中1文字目、及び3文字目ないし5文字目のつづりを同じくし、2文字目のデザイン化した「O」の文字も同様のデザインがなされたものであることから、両商標は、外観上、類似するといえる。 また、両商標は、いずれも、「ゾーコイ」の称呼を生じることから、称呼を共通にするものと認められる。 そうすると、本件商標と引用商標とは、互いに特定の観念が生じないため、観念において比較することができないとしても、これらの外観が類似し、「ゾーコイ」の称呼を共通にすることから、本件商標と引用商標とは類似の商標である。 (エ)本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人商品の類否について 本件商標の指定商品中「ガロッシュ,ブーツ,履物,靴類,運動靴,木靴」(以下、「履物類」という。)と引用商標を使用する申立人商品は、同一又は類似するものである。 また、本件の指定商品中、履物類以外の商品は、ファッションに関係するものといえるとしても、それぞれの品質、用途、使用場所等は異なるものといわざるを得ない。 そうすると、本件商標の指定商品中、履物類の指定商品と申立人商品とは、関連性が高いものの、履物類以外の指定商品は、その目的、用途又は使用場所等において異なるものであるから、両者の関連性はそれ程高いものではなく、その取引者、需要者の共通性が高いともいえない。 (オ)小括 上記(ウ)及び(エ)のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件商標の指定商品中、履物類と引用商標を使用する申立人商品は、同一又は類似する商品であるが、履物類以外の指定商品は、その目的、用途又は使用場所等において異なるものであるから、両者の関連性はそれ程高いものではなく、その取引者、需要者の共通性が高いともいえない。 イ 引用商標の周知著名性について 商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定されている。 そして、引用商標は、上記(1)イのとおり、申立人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 ウ まとめ 以上のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件商標の指定商品中、履物類の商品と申立人商品が同一又は類似する商品であるとしても、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知著名性について 上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。 イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について 上記(2)ア(ウ)のとおり、本件商標は、引用商標と類似の商標であるから、類似性の程度は高いものである。 ウ 本件商標の指定商品と申立人商品の関連性、需要者の共通性について 上記(2)ア(エ)のとおり、本件商標の指定商品中、履物類と引用商標を使用する申立人商品は、同一又は類似するものである。 また、本件の指定商品中、履物類以外の商品は、ファッションに関係するものといえるとしても、それぞれの品質、用途、使用場所等は異なるものといわざるを得ない。 そうすると、本件商標の指定商品中、履物類の指定商品と申立人商品とは、関連性が高いものの、履物類以外の指定商品は、その目的、用途又は使用場所等において異なるものであるから、両者の関連性はそれ程高いものではなく、その取引者、需要者の共通性が高いともいえない。 エ 出所混同のおそれについて 上記イのとおり、本件商標は引用商標と類似の商標であり、上記ウのとおり、本件商標の指定商品中、履物類と申立人商品とは、同一又は類似する商品であり、密接な関連性を有し、需要者の範囲も共通にするものであるとしても、上記アのとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとはいえないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者が、これをその指定商品中、履物類について使用しても、また、本件商標をその指定商品中、履物類以外の指定商品について使用しても、いずれも、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標と使用標章とは類似の商標であるとしても、使用標章は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。 また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章の信用、名声などにただ乗りするとか、毀損するとか、あるいは出所識別機能を希釈化するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできないし、かつ、そのような証左は何ら示されていない。 そうすると、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を登録出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできないから、本件商標は、不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第8号該当性について 商標法第4条第1項第8号における「他人の著名な略称」に関して、「人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と解されるものである(最高裁判所平成16年(行ヒ)第343号、平成17年7月22日判決参照)。 しかるところ、申立人は、使用標章が申立人の略称として需要者に広く知られたものである旨述べているが、申立人の提出に係る証拠によれば、上記(1)ウのとおり、「XOCOI」の文字が、本件商標の登録出願時に我が国において、申立人の著名な略称を指し示すものとして一般に認識されていることを認め得る証左は見いだせない。 してみれば、本件商標が申立人の著名な略称を含むものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものであり、かつ、本件商標に接する我が国の一般世人が、本件商標の構成中に、申立人の略称を含むものと認識することはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 (6)商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号の規定は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ、同号は、商標自体の性質に着目したものとなっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高等裁判所平成14年(行ケ)第616号、平成15年5月8日判決参照)。 なお、申立人は、本件商標は申立人の使用に係る使用標章を剽窃するものであり、取引者や消費者を欺くことになるから、詐欺行為に値するものであって、社会公共の利益を害するものであり、また、国際信義にもとるものである旨主張している。 しかしながら、上記(1)イのとおり、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであるから、本件商標が、使用標章の名声、信用、顧客吸引力等に便乗し、不正の利益を得るために剽窃的に登録出願し、登録を受けたものということはできない。その他、本件商標が不正の目的で剽窃的に登録されたものであることを具体的に示す証左は見いだせない。 そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、きょう激、若しくは差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、その指定商品について使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものでもない。また、本件商標の使用は、他の法律によって禁止されているものではなく、国際信義に反するものでもない。 してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (7)まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(引用商標1) ![]() 別掲3(引用商標2及び使用標章) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-12-08 |
出願番号 | 2021054683 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W25)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
杉本 克治 小田 昌子 |
登録日 | 2021-11-08 |
登録番号 | 6467822 |
権利者 | ルピン カンパニー リミテッド |
商標の称呼 | ゾーコイ |
代理人 | 浜田 治雄 |
代理人 | 板谷 康夫 |