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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0203
管理番号 1393367 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-28 
確定日 2023-01-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6457276号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6457276号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6457276号商標(以下「本件商標」という。)は、「kaolink」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月20日に登録出願、第2類「塗料,印刷インキ,絵の具,着色剤」及び第3類「香料,薫料,香水類」を指定商品として、同年9月24日に登録査定、同年10月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、引用する商標は、以下の3件の登録商標(以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。)であり、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3027307号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月28日に登録出願、第3類「植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,塗料用剥離剤」を含む第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同7年2月28日に設定登録されたものである。
(2)登録第3011424号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月28日に登録出願、第2類「塗料,染料,顔料,印刷インキ(「謄写版用インキ」を除く),謄写版用インキ,絵の具」を含む第2類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同6年11月30日に設定登録されたものである。
(3)登録第5300448号商標(以下「引用商標3」という。)は、「KAO」の文字を標準文字で表してなり、平成21年6月10日に登録出願、第3類「香料類,化粧品」を含む第3類、第30類「食品香料(精油のものを除く。)」を含む第30類、第1類、第5類、第10類、第11類、第16類、第21類、第29類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同22年2月12日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、1940年5月に設立され、資本金854億円、従業員数8,112人(連結対象会社合計33,409人)(甲5の1)、本社を含めた国内事業場を4か所、工場10か所、研究所4か所、研修所1か所を有し(甲5の2)、グループ会社は国内に9社存在し、海外においては、アジア・オセアニア地域に30社、北米・中南米地域に8社、ヨーロッパ・アフリカ地域に26社を有しており、日本を代表する大企業の1つであるとともに、海外においても広く事業を行っているグローバル企業である(甲5の3〜甲5の5)。
申立人の英文社名は「Kao Corporation」であって、海外におけるグループ会社の社名は、「Kao(China)Holding Co.,Ltd.」、「Kao Corporation Shanghai」等名称に申立人の商標「Kao」が付されている。
申立人の事業内容は、一般消費者に向けたコンシューマープロダクツ事業と、産業界のニーズにきめ細かく対応した製品のケミカル事業とがあり、コンシューマープログクツ事業では、洗濯用・住居用洗剤や生理用品、おむつなどの「ハイジーン&リビングケア事業」、スキンケア製品及びメイクアップ製品の「化粧品事業」、ハンドソープ、洗顔料、ヘアケア製品、入浴剤及び歯磨きなどの「ヘルス&ビューティケア事業」、飲料や業務用洗剤などの「ライフケア事業」の4つの事業分野を主に展開する(甲5の6)。
なお、2020年12月期における申立人の売上高は、1兆3820億円である(甲5の6)。
(2)「Kao」及び「KAO」の周知・著名性について
ア 申立人商標の独創性及び継続使用
「花王」は、申立人が1890年に販売を開始した石けんに採用した名称であり、顔も洗える高品質の国産石けん誕生への想いを込めて「カオ(顔)石鹸」と名づけ、「花王」という文字をあてることにより創作されたものである(甲6)。これが社名の由来ともなり、申立人は1985年までは「花王石鹸株式会社」、その後は「花王株式会社」の商号で営業を継続し(甲7)、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として使用され続け、「花王」の英字表記である「Kao」及び「KAO」についても、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、長年にわたり使用されている。
申立人の販売する「花王石鹸ホワイト」の歴代パッケージを確認すると、遅くとも1970年には「Kao」の商標が使用され、その後も現在に至るまで「Kao」及び「KAO」の商標が使用されている(甲8)。
また、新聞広告(甲9)によれば、1962年当時、申立人の商品「花王フェザーシャンプー」について、「KAO」の商標が使用されていた。
そして、申立人は2009年までは「花王」と月のマークをコーポレートマークとして使用していたが、2009年からは花王グループを表すロゴを、英文字の「Kao」に、日本及びアジアのコンシューマープロダクツとケミカル事業のロゴを月のマークに英文字の「Kao」を組み合わせたロゴに変更し(甲10の1、甲10の2)、2021年には花王グループを表すすべてのロゴ(日本及びアジアのコンシューマープロダクツとケミカル事業のロゴ)が「Kao」に統一された(甲10の3)。
申立人は、洗剤の「アタック」、洗顔料の「ビオレ」、化粧品の「ソフィーナ」、布製品や空間用の消臭芳香剤の「リセッシュ」、入浴剤の「バブ」、おむつの「メリーズ」及び飲料の「ヘルシア」等々、多様な商品分野において周知・著名なブランドを多数保有しており、申立人はこれら膨大な量の商品の1つ1つに「Kao」の商標を付して販売している(甲11〜甲17)。
また、申立人は「Kao」及び「KAO」の文字よりなる商標をパンフレット、カタログ等にも使用し、それ以前についても、遅くとも1999年度のアニュアルレポートからは、申立人の英文社名「Kao Corporation」及び月のマークに英文字の「Kao」を組み合わせたロゴが使用されている(甲18の12)。
さらに、「花王ケミカルだより」(申立人のケミカル事業部門が企画制作する顧客向け情報冊子であり、申立人の商品に関する情報等が掲載されている。)にも「Kao」の文字が使用され(甲19)、2003年より継続して発行されているパンフレット「Kaoヘルスケアレポート」(申立人が主催する花王健康科学研究会が編集・発行する顧客向け情報冊子であり、健康に関する最新の研究情報等が掲載されている。)にも「KAO」及び「Kao」が使用されている(甲20)。
そのうえ、申請人ホームページに掲載されたケミカル商品のカタログにおいても、「Kao」が使用されている(甲21)。
イ 申立人の広告活動
申立人は「Kao」及び「KAO」ブランドの認知度を高めるべく、積極的な広告活動を行ってきたところ、広告宣伝費は、2013年度は864億600万円、2014年度は924億1000万円、2015年度は944億9600万円、2016年度は974億3700万円、2017年度は899億3500万円、2018年度は802億7400万円、2019年度は775億4500万円及び2020年度は719億8400万円である(甲22)。
申立人は、東洋経済オンラインの「「広告宣伝費」が多いトップ300社ランキング」において、2017年11位(甲23)、日経広告研究所の「有力企業の広告宣伝費 2020年版」において単独決算ベースで2位となるなど(甲24)、広告費用に関するランキングにおいても上位を占めている。
申立人は積極的にテレビCMを流し(甲25〜甲29)、新聞においても、2009年のロゴマーク変更の際には全国42紙に「Kao」を使用した全面広告を出し(甲30)、近年でも、全国紙に「Kao」を使用した全面広告を出す等(甲31〜甲33)広告活動を行い、「日テレCM大賞」等を受賞している(甲34〜甲36)。
ウ 申立人の防護標章登録について
申立人は、登録第3027307号商標の防護標章について登録を受けており、著名商標として認定されている(甲42)。
エ 周知・著名性の認定に関する審決、取消決定例
無効2012−890057号に係る審決、商願平7−65594号異議決定及び平成元年審判第18562号の無効審判の審決(甲43〜甲45)からみても、申立人の商標「Kao」及び「KAO」が周知・著名性を有することは頭著な事実である。
オ また、特許情報プラットフォーム「J−PlatPat」の「日本国周知・著名商標検索」によれば、引用商標1及び引用商標3等が周知・著名商標として検索される(甲46)。
カ 以上述べたとおり、申立人は「せっけん類,化粧品,香料,消臭芳香剤,おむつ,飲料」等、様々な商品について取り扱っており、「Kao」及び「KAO」は申立人の略称及びハウスマークとして長年使用されている。 また、申立人は毎年多額の広告費を投じており、需要者、取引者の広告接触度や評価も高い。
さらには、「Kao」の防護標章登録の存在や特許庁における審決及び異議決定でその周知・著名性が認められていた点を勘案すると、「Kao」及び「KAO」は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品等を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において周知・著名になっていたというべきである。
キ 「kao」に係るインターネット検索の事実実験
申立人の商標「Kao」及び「KAO」が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者間に周知・著名となった結果、「kao」(全て小文字)の表記についても、申立人を表すものとして需要者等に認識されるものとなっている(甲47の2の1〜甲47の4の2)。
このように、「Kao」及び「KAO」のみならず「kao」の文字も、本件商標の登録出願時及び登録査定時において花王株式会社(Kao Corporation)の略称を示すものとして周知・著名であり、申立人の業務内容を示す商標として取引者、需要者に広く認識されるものとなっている。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標との対比
「Kao」及び「KAO」は、申立人の略称を示すものとして周知・著名であると共に、申立人の業務内容を示す商標として取引者、需要者に広く認識されている周知・著名商標である。
したがって、本件商標「kaolink」は、そもそも語頭部分(前半部分)に申立人の周知・著名商標「kao」を含み、後半部は「連結、関連」を意味する一般的な英語である「link」からなるものであるから、前半部分と後半部分とのウェイトが異なり、前半部分の「kao」部分が分離抽出されるものである。
そうすると、本件商標は、「カオリンク」の称呼の他に、前半部分の「kao」から「カオー」単独の称呼が生ずるものである。
他方、引用商標は、「Kao」及び「KAO」の文字からなり、「カオー」の称呼が生ずる。
また、申立人は、我が国及び海外に多数のグループ会社を有し、これら花王グループのコーポレートマークとして「Kao」を使用し、多角経営を行っている(甲5の3〜甲5の6)。
リーダーズ英和辞典第3版の「link」の欄によれば、「・・・連結、関連・・・連結(接続)する、つなぐ、関連づける・・・」との意味があり(甲48の1、甲48の2)、本件商標は「花王グループや各事業のつながり、花王に関連するもの」等を想起させるものであり、本件商標と引用商標は、取引者、需要者をして彼此誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標である。
したがって、本件商標は引用商標と出所の混同が生ずる程に相紛らわしく類似する商標として判断されるものである。
(4)本件商標の取消理由について
ア 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上述のとおり、語頭部分(前半部分)に申立人の周知・著名な「kao」を含み、後半部は「連結・関連」を意味する一般的な語である「link」からなるものである。
また、引用商標は申立人の業務を示す商標として、需要者の間に広く認識されているものである。
そして、事実実験公正証書(甲47の1)によれば、検索条件が小文字の「kao」で「YAHOO!JAPAN」、「Google」及び「MSNサーチ」で検索すると、表示結果から明らかなとおりローマ文字小文字「kao」から申立人が検索される。なお、インターネットアーカイブサイト「Wayback Machine」により、上記事実実験において上位で検索された申立人のURLと同一のURLを有するものが、本件商標の登録出願前から存在することは確認済みである。
特に、上記公証の事実からみれば、本件商標の構成中の「kao」の部分に接する需要者、取引者は、申立人を示す商標「Kao」及び「KAO」であるものとして認識することは明らかであり、商標審査基準からすれば、本件商標についても周知・著名商標である引用商標「KAO」及び「Kao」と類似すると判断されるべきものである。
また、本件商標は、上述のとおり、前半部分と後半部分とのウェイトが異なるものであり、前半部分の「kao」部分が分離抽出されるものである。
そうすると、本件商標は、前半部分の「kao」から「カオー」単独の称呼が生ずるものであるから、引用商標から生ずる「カオー」と同一の称呼が生ずるものであり、類似する商標といわねばならない。
そして、本件商標は引用商標の指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
イ 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の引用商標と類似する商標であるところ、申立人の引用商標の周知・著名性は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において極めて高く、引用商標は造語であり、さらに引用商標は申立人のハウスマークである。
そして、申立人は上述のとおり、多種多様な商品の製造販売及びこれに付随するサービスを行っており、多角経営の可能性があることは明らかである。
したがって、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
ウ 商標法第4条第1項第10号について
「Kao」及び「KAO」が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に周知・著名商標であることは明らかであって、引用商標は、本件商標の指定商品との関係においても、商標法第4条第1項第10号において要求される周知性の要件を十分に満たしていると考えるのが妥当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
エ 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、他人(申立人)の著名な略称である「kao」を含む商標であって、申立人の承諾を得ているものではないため、商標法第4条第1項第8号に該当し、取り消されるべきである。
本件商標は、構成中の「kao」が容易に分離抽出されるものであって、本件商標の構成中の「kao」部分が申立人の名称等として客観的に把握され、申立人を想起、連想させるものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)申立人の商標「Kao」及び「KAO」の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、1940年5月に設立されたコンシューマープロダクツ事業及びケミカル事業を行う会社であり、資本金854億円、従業員数8,112人(連結対象会社合計 3万3,409人)、本社を含めた国内事業所4か所、工場10か所、研究所4か所、研修所1か所及びアジア・オセアニア地域、北米・中南米地域、ヨーロッパ・アフリカ地域にグループ会社を有している。そして、申立人の事業のうちコンシューマープロダクツ事業においては、「ハイジーン&リビングケア事業」(洗濯用・住居用洗剤や生理用品、おむつなど)、「化粧品事業」(スキンケア製品及びメイクアップ製品)、「ヘルス&ビューティケア事業」(ハンドソープ、洗顔料、ヘアケア製品、入浴剤及び歯磨きなど)、「ライフケア事業」(飲料、業務用洗剤など)の4つの事業分野を主に展開し、2020年12月期における売上高は、1兆3820億円であり、その内訳は、ハイジーン&リビングケア事業:36.4%、ヘルス&ビューティケア事業:26.2%、化粧品事業:16
.9%、ケミカル事業:16.7%、ライフケア事業:3.8%であった(甲5)。
(イ)申立人の社名は、1985年に「花王石鹸株式会社」から「花王株式会社」に改称されたところ、その英文社名は「Kao Corporation」であって、海外におけるグループ会社の社名には、「Kao(China)Holding Co.,Ltd.」、「Kao Corporation Shanghai」、「Kao(Hong Kong)Ltd.」、「Kao lndustrial(Thailand)Co.,Ltd.」、「Kao Australia Pty.Limited」、「Kao Canada lnc.」、「Kao USA Inc.」、「Kao Finland Oy」、「Kao Germany GmbH」、「Kao Netherlands B.V.」及び「Kao(UK)Limited」等のように、語頭に「Kao」の文字が付されている(甲5、甲7)。
(ウ)申立人のホームページにおける「デザインヒストリー」(2022年1月26日出力)には、石けんの包装の変遷が掲載され、1970年、1976年、1986年、1999年、2005年及び2008年販売の包装前部にデザイン化した「Kao」の文字の表示(1976年の商品のみ引用商標1及び引用商標2と同様の書体でデザイン化されてなる。)、1993年販売の包装前部にデザイン化した「KAO」の文字の表示、2013年、2015年及び2018年販売の包装前部にデザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されている。また、現在販売されていると推認される石けんの包装前部にデザイン化した「Kao」の文字が表示されている(甲8)。
(エ)1962年6月8日付け読売新聞の「花王フェザーシャンプー」の広告において、容器の前部に「KAO」の文字が表示されている(甲9)。
(オ)申立人のホームページにおける「花王ロゴマークの変遷」(2022年1月26日出力)には、「“美と清浄のシンボル”として使われた「月のマーク」は、形を変えながら社のマークとして受け継がれています。」の記載とともに、ロゴマークの変遷が掲載され、現在までにデザイン化した「花王石鹸」の文字及び「擬人化した右向きの月の図形」(1890年〜)、三種類の「擬人化した左向きの月の図形」(1943年〜)、「花王」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」(1985年〜)、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」(2009年〜)、デザイン化した「Kao」の文字(2021年〜現在)が使用された(甲10)。
(カ)申立人のホームページにおける「アタック」、「リセッシュ」、「Biore」、「ビオレu」、「ハミング」、「FLAIR」及び「バブ」(以下「「アタック」等の商品」という。)の紹介ページにおいて、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されている(甲11〜甲17)。
(キ)申立人の「統合レポート」(2017年〜2020年)及び「Annual Report」(2010年〜2015年)の表紙及び裏表紙に、デザイン化した「Kao」の文字が表示され、1999年の裏表紙には、引用商標1及び引用商標2と同様の書体でデザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されている(甲18)。
また、「花王ケミカルだより」(2015年〜2020年)の裏表紙の企画制作欄及び「KAO HEALTH CARE REPORT」(2009年〜2020年)の裏表紙又は発行者欄に、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されており、2003年の同誌の発行者欄に、引用商標1及び引用商標2と同様の書体でデザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されている(甲19、甲20)。
そして、申立人のケミカル事業案内(2019年)及び商品カタログ(「香粧品・医薬品原料」(2020年)、「高級脂肪酸ルナック/グリセリン」(2019年)、「クリンスルー」(2019年)、「界面活性剤」(2019年)、「脂肪アミン/ファーミン」(2018年)及び「高級アルコール/カルコール」(2017年))の表紙又は裏表紙に、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が表示されている。 また、申立人の商品カタログ中、「プラスチック用滑材」(2020年)には、デザイン化した「Kao」の文字が表示されている(甲21)。
(ク)申立人の有価証券報告書(第108期/2013年〜第115期/2020年)によれば、広告宣伝費は、2013年は864億600万円、2014年は924億1000万円、2015年は944億9600万円、2016年は974億3700万円、2017年は899億3500万円、2018年は802億7400万円、2019年は775億4500万円及び2020年は719億8400万円である(甲22)。
(ケ)申立人は、引用商標1を原登録商標とする第1類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務について防護標章登録を受けている(甲42)。
イ 上記アの事実によれば、申立人は、石けんについて遅くとも1970年に「Kao」の文字を、シャンプーについて1962年に「KAO」の文字を使用していたことがうかがえ、また、申立人が製造販売する「アタック」等の商品や、申立人が発行する「統合レポート」、「花王ケミカルだより」及び「商品カタログ」等の表紙等に、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」を表示していることが認められる。
加えて、引用商標1を原登録商標とする防護標章登録が存在していることなどをあわせ考慮すれば、申立人の商品には、デザイン化した「Kao」の文字及び「擬人化した左向きの月の図形」が共に使用され、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国における需要者の間に一定程度認識されているものということができる。
しかしながら、引用商標1及び引用商標2と同様の書体でデザイン化した「Kao」の文字が単独で商品について使用されている事例はなく、通常の書体で表した「KAO」の文字(引用商標3)や「kao」(全て小文字)の文字が単独で商品について使用されている事例も見受けられず、また、「Kao」及び「KAO」の文字(引用商標を含む。以下「引用商標等」という。)を単独で使用した申立人の業務に係る商品についての販売数量、売上高、市場シェア等の販売実績、広告宣伝費や広告宣伝方法(回数、期間など)等、その周知性を客観的に判断するための具体的な証拠の提出は見当たらないことから、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標等の周知性の程度を推し量ることができない。
また、申立人が製造販売する「アタック」等の商品や、申立人が発行する「統合レポート」、「花王ケミカルだより」及び「商品カタログ」等においては、デザイン化した「Kao」の文字に加えて、「擬人化した左向きの月の図形」が使用されているから、引用商標とは異なる態様であって、引用商標の周知性を基礎づけるものとはいえない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標等が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、申立人の英文社名が「Kao Corporation」であり、海外におけるグループ会社の社名の語頭に「Kao」の文字が付されているとしても、提出された証拠によっては、引用商標等が、我が国において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたと認めることはできないものである。
したがって、「Kao」及び「KAO」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称として著名となっていたということはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「kaolink」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、かつ、本件商標の構成全体に相応して生じる「カオリンク」の称呼もよどみなく一気一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標のかかる構成態様においては、外観上「kao」の文字部分と「link」の文字部分のいずれかが独立して強調されているとみられる態様ではなく、その構成全体をもって「カオリンク」とのみ称呼される一体不可分の造語を表した商標と認識されるとみるべきであるから、その構成中の「kao」の文字部分のみを分離、抽出して観察しなければならない格別の理由は存しない。
さらに、本件商標は、その構成中「kao」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足る事情は見いだせない。
そうすると、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、これに接する取引
者、需要者は、殊更に「kao」の文字部分のみに着目することなく、本件商標の構成全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握するというのが自然である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「カオリンク」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標1及び引用商標2は、別掲のとおりデザイン化した「Kao」の欧文字を横書きしてなり、引用商標3は、「KAO」の文字を標準文字で表してなるところ、これらの文字は一般的な辞書等に掲載がないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
そして、特定の語義を有しない欧文字からなる商標については、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語読み風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから、引用商標はその構成文字に相応して「カオ」の称呼を生じるものである。
この点に関し、申立人は、引用商標からは「カオー」の称呼が生ずる旨主張しているが、引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く知られているものとは認められないものであり、かつ、提出された甲各号証からも「カオー」と称呼されている事実は見いだせない。
そうすると、引用商標は、その構成文字より生ずる自然の称呼は、「カオ」であって、構成全体として特定の意味合いを有するものではないから、造語よりなるものと認める。
したがって、引用商標は「カオ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、外観において、「kao」(「Kao」及び「KAO」)のつづりが共通するとしても、「link」の文字の有無という明らかな差異があることから、外観上、いずれも判然と区別し得るものである。
そして、称呼において、本件商標から生じる「カオリンク」の称呼と、引用商標から生じる「カオ」の称呼とは、後半部における「リンク」の音の有無という明らかな差異を有し、5音と2音という比較的短い音構成において、該差異音が称呼全体に与える影響は大きいから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、いずれも明瞭に聴別し得るものである。
また、観念において、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念は生じないものであるから比較することはできない。
したがって、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観においては判然と区別し得るものであり、称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、これらの商標は、いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定されている。
引用商標等は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり、かつ、上記(2)のとおり本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標等の周知・著名性について
引用商標等は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
イ 本件商標と引用商標等との類似性の程度について
本件商標と引用商標等とは、上記(2)と同様の理由により、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、いずれも別異の商標ということができるものであり、その類似性の程度は高いものとはいえない。
ウ 出所の混同のおそれについて
本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とが関連性を有する場合があるとしても、上記アのとおり、引用商標等は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、また、本件商標と引用商標等とは、いずれも非類似のものであって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は高いものとはいえない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
商標法第4条第1項第8号における「他人の著名な略称」に関して、「人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と解されるものである(最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法廷判決参照)。
しかるところ、申立人は、引用商標が申立人の略称として需要者に広く知られたものであり、また、本件商標は申立人の承諾を得ずに登録されたものである旨述べているが、申立人の提出に係る証拠によれば、上記(1)のとおり、「Kao」及び「KAO」の文字からなる引用商標等が、本件商標の登録出願時に我が国において、申立人の著名な略称を指し示すものとして一般に受け入れられていたとの主張を認めるに足りる証拠はない。
してみれば、本件商標が申立人の著名な略称である引用商標を含むものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものであり、かつ、本件商標に接する我が国の一般世人が、本件商標の構成中に、申立人の略称を含むものと認識することはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲 引用商標1及び引用商標2


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異議決定日 2022-12-22 
出願番号 2021048049 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W0203)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 石塚 利恵
小俣 克巳
登録日 2021-10-15 
登録番号 6457276 
権利者 株式会社松栄堂
商標の称呼 カオリンク 
代理人 大木下 香織 
代理人 仲村 圭代 
代理人 羽切 正治 
代理人 小野 博喜 

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