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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X0711 |
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管理番号 | 1393207 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2021-09-14 |
確定日 | 2022-11-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2162753号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2162753号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリスタル」の片仮名を横書きで書してなり、昭和51年12月16日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録されたものである。 そして、本件商標の指定商品は、商標登録の一部取消し審判において、平成10年12月16日に第9類「金属加工機械器具及びこれに類似する商品」及び平成14年5月15日に第9類「遊園地用機械器具」について、それぞれ、その登録を取り消すべき旨の審決の確定登録がされ、平成21年9月2日に、指定商品を第6類、第7類、第9類、第11類、第12類、第16類、第17類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされた。 その後、本件商標の指定商品は、商標登録の一部取消し審判において、令和3年1月8日に第7類「半導体製造装置並びにその部品及び附属品,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具並びにその部品及び附属品,バルブ(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」、第11類「工業用炉並びにその部品及び附属品,原子炉並びにその部品及び附属品,ボイラー並びにその部品及び附属品,暖冷房装置並びにその部品及び附属品,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。)並びにその部品及び附属品,太陽熱利用温水器並びにその部品及び附属品」及び第12類「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),落下傘並びにその部品及び附属品」について、その登録を取り消すべき旨の審決の確定登録がされ、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」及び第11類「乾燥装置並びにその部品及び附属品,熱交換器並びにその部品及び附属品,牛乳殺菌機並びにその部品及び附属品」を含む、その余の指定商品についての商標権は、現に有効に存続しているものである。 なお、本件審判請求の登録日は、令和3年10月6日である。 また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)10月6日ないし令和3年(2021年)10月5日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」及び第11類「乾燥装置並びにその部品及び附属品,熱交換器並びにその部品及び附属品,牛乳殺菌機並びにその部品及び附属品」(以下「本件請求商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、本件請求商品について継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)商標の使用の主張について ア 乙第2号証、乙第7号証及び乙第6号証について 被請求人は、要証期間の指定商品についての本件商標と社会通念上同一の商標の使用を主張し、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。 (ア)乙第2号証について 乙第2号証(被請求人のチラシの写し)において、「クリスタルホースSF型」との商標が使用されている。これについて被請求人は、「ホース」の文言は指定商品を具体的に表記したにすぎない普通名称であり、「SF型」は商品の品番・型番を表した記号・符号であると述べ、要部は「クリスタル」部分であると主張する。 そこで、この使用に係る商標の態様をみると、「クリスタルホースSF型」は、「SF」部分が半角であるほかは、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表記されている。また、当該商標の文字全体が矢印状の略横長長方形の枠で囲まれている。そのため、その商標全体がまとまりよく一体に構成されており、その外観から自然に1つの商標と理解される。 また、「クリスタルホースSF型」の構成文字より生ずる称呼も、一気一連に称呼し得るものである。仮に途中で切るとしても、「クリスタルホース SF型」のように「クリスタルホース」部分は一連に称呼されるものと考える。 さらに、「クリスタルホース」部分からは、「透明なホース」の意味合いが生じると思料する。用語「クリスタル」は、国語辞書において「1.水晶、2.結晶。結晶体、3.「クリスタルガラス」の略」(小学館「デジタル大辞泉」)と説明されているとおり、水晶などを意味する。その一方で、様々な商品の透明なものについて「クリスタル〇〇〇」という表現が見受けられる。この場合、「クリスタル」は形容詞のように用いられ、水晶やクリスタルガラスのイメージからか、「透き通っている、透明な」の意味で使用されている。例えば、「クリスタルボックス」、「クリスタル粘着テープ」、「クリスタルソープ」、「クリスタルパック」、「クリスタルプラケース」、「クリスタルストリング」、「クリスタルスツール」、「クリスタルチェア」、「クリスタルブロック」、「クリスタルトレー」、「クリスタルパズル」などの使用例がある(甲3)。また、透明なパーツを一部に使用した製品について商品名を「クリスタルケース」や「クリスタルトレーキャビネット」としたものもある(甲4)。一方、普通名詞として例えば、「クリスタルシュガー」という透明な粒状の砂糖もある(甲5)。 このような状況を背景として、「クリスタルホースSF型」との商標に接した取引者・需要者は、これより「透明なホース SFタイプ」の意味を看取するものと考える。 「クリスタルホースSF型」は、外観上まとまりよく一体に書されており、一気一連に滑らかに称呼し得るものであって、「透明なホース SFタイプ」の観念を生じる。分析すれば「ホース」の部分が普通名称と判断されるとしても、「クリスタルホースSF型」から「クリスタル」部分が分離観察されるとみるのは適切ではないと思料する。 よって、「クリスタルホースSF型」は、外観・称呼・観念において一体の1つの商標として捉えられるものであり、これと本件商標「クリスタル」とは社会通念上同一の商標とはいえない。 なお、本チラシ(乙2)内には「シューターホース」や「ダクトホース」も紹介されている。該ホースについても略長方形の枠と同書、同大、等間隔の表記が用いられ、「クリスタルホースSF型」と同様の形式で記載されている。そして、「シューターホース」は「何かをシュートする(滑り落とす)ためのホース」の意味、「ダクトホース」は「ダクト用のホース」の意味を生ずるので、両用語とも全体で1つのホースの名前を示すと自然に理解できる。この点も、「クリスタルホースSF型」が、全体としてホースの名前を表している、1商標であるという認識を強めるものと思料する。 (イ)乙第7号証について 乙第7号証(被請求人のカタログの写し)においては、「クリスタルホース 食品F型」との商標が使用されている。これについて被請求人は、「ホース」の文言は指定商品を具体的に表記したにすぎない普通名称、「食品」は商品の用途を表す文言、「F型」商品の品番・型番を表した記号・符号であると述べ、要部は「クリスタル」部分であると主張する。 使用に係る商標「クリスタルホース 食品F型」を検討すると、全体が平行四辺形の枠で囲まれている一方で、「クリスタルホース」と「食品F型」の間にスペースがあり、両部分の文字の書体と大きさは異なる。そのため、被請求人が述べているとおり、「食品F型」部分が商品の用途と記号・符号の組合せであって識別力が弱いこともあって、同部分が捨象され、「クリスタルホース」部分のみが分離抽出され得ると思料する。 そして「クリスタルホース」部分については、構成する8文字が同書、同大、等間隔で表記されており、特に、特徴のある書体を用いて文字幅を詰めて一体的に表されている点が注目される。そのため、使用商標において「クリスタルホース」部分は、外観上まとまりよく一体であるといえる。また、「クリスタルホース」は長音を含めても全8音であり、一気一連に滑らかに称呼することができる。さらに、「クリスタルホース」からは「透明なホース」の観念が生じると考えられる。 こうした外観・称呼・観念における一体性から、「クリスタルホース」部分は、同部全体で自他商品の識別標識として機能し、1つの商標として認識されるものと思料する。 ここで、本件商標「クリスタル」は、片仮名5文字で構成されており、これより「クリスタル」の称呼が生じ、「水晶、結晶・結晶体、クリスタルガラス」の観念が生じる。一方、「クリスタルホース 食品F型」において、特にその「クリスタルホース」部分は、特徴のある書体で一体的に表された片仮名8文字という外観を有し、「クリスタルホース」の称呼と「透明なホース」の観念が生じる。両者を比較すると、「クリスタルホース 食品F型」と本件商標とは、社会通念上同一の商標とはいえない。 (ウ)乙第6号証について 乙第6号証(被請求人発行の請求書の写し)は、乙第2号証掲載の商品「クリスタルホースSF型」の取引が実際にあったことを証明するために提出されている。 請求書という性質上、取引の対象品を明確に示す必要があったとは考えられるものの、「品名」欄には、普通名称「ホース」を含んで一連一体に「クリスタルホースSF型」と記されている。 本件商標が「クリスタル」であることを考慮すると、こちらの表記は「クリスタル」、又は、複数のタイプの「クリスタルホース」があるのであれば「クリスタル SF型」とされるのが自然ではないかと考える。 「クリスタルホースSF型」という表記より、被請求人において「クリスタルホース」全体が一体の商標として認識され、使用されているという印象を受ける。 イ 小括 使用に係る商標「クリスタルホースSF型」及び「クリスタルホース 食品F型」は、いずれも「クリスタルホース」部分全体が外観上まとまりよく一体的に表されており、一気一連に称呼することができ、「透明なホース」の観念を生じる。そのため「クリスタルホース」全体として1つの商標とみるべきと思料する。 よって、使用に係る商標「クリスタルホースSF型」及び「クリスタルホース 食品F型」は、本件商標「クリスタル」と社会通念上同一の商標とはいえない。 (2)結語 使用に係る商標「クリスタルホースSF型」及び「クリスタルホース 食品F型」は、本件商標と社会通念上同一の商標ではないため、被請求人提出の証拠によっては、要証期間に本件商標が本件請求商品について使用されていたとはいえない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。 1 答弁の理由 商標権者である被請求人は、要証期間に、日本国内で、本件商標と社会通念上同一の商標を、指定商品である第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」について使用している。 2 本件商標の使用事実 (1)被請求人(商標の使用者)について 被請求人であるタイガースポリマー株式会社(以下「タイガースポリマー社」という。)は、商標登録原簿(甲2)に記載されているとおり、「豊中市・・・」に所在する法人である。 乙第1号証は、国税庁のウェブサイトのプリントアウトであり、当該資料より、「タイガースポリマー株式会社」という名称の法人は「大阪府豊中市・・・」に所在するもののみであり、当該住所は被請求人住所と実質同一の住所である。 したがって、タイガースポリマー社は、同一名称の法人が存在しないといえるから、住所の表記がなくとも当該法人名のみをもって、被請求人を特定できる。 (2)被請求人の使用に係る商標及び商品について ア 「クリスタルホースSF型」について 乙第2号証は、被請求人が酒造関係メーカー向けに頒布したチラシであり、当該資料には被請求人の名称が記載され、また、「2021年4月26日時点」との記載から要証期間に頒布されたことがうかがえる。なお、当該チラシ記載の住所「大阪市西区・・・」は被請求人の大阪支店の住所である(乙3)。 (ア)商標について 乙第2号証には「クリスタルホースSF型」との記載があるが、このうち「ホース」の文言は本件商標の指定商品に含まれる「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品」を具体的に表記したにすぎないものであり、指定商品の普通名称といえる。また、「SF型」は商品の品番・型番を表した記号・符号にすぎないものであることが明らかである。これらの要素は識別力を欠き、自他商品識別機能を発揮するものではないため、識別機能を発揮する要素、つまり、使用に係る商標「クリスタルホースSF型」の要部は、本件商標と同一の「クリスタル」部分であるというべきである。 したがって、本件商標と使用に係る商標「クリスタルホースSF型」は社会通念上同一の商標である。 (イ)商品について 乙第2号証は、「酒造関係メーカー様向け」及び「貯蔵タンクまでの酒類の輸送用ホース」との記載があることから、当該資料掲載のホースは、酒造メーカー及び酒造設備の製造者を需要者とする商品であり、酒造において使用される酒類及び原料液の輸送用ホースであり、酒造には当然、酒の醸造が含まれる。 上記の記載から、当該資料掲載の商品は、貯蔵タンクと酒造(醸造)設備、すなわち食料加工用又は飲料加工用機械器具を接続するホースであるものと推認される。 また、ホースの附属品である「SF型専用口元」の説明において「SF型と各タンクへの接続用」との記載があることから、接続するタンクは貯蔵タンクに限らないことが分かる。 さらに、一般的に、醸造機械全体の特徴として長期保有できる発酵・熟成タンクを備えるものである事実(乙4)、及び酒類を含む食料加工用又は飲料加工用機械器具の分野においては加工工程で液状の食品や飲料を装置間で移送(例えば、複数のタンクに加工用機械器具から飲料を移送)するための配管・ホース又はチューブを設けるのが一般的であることを考慮すると、当該ホースは酒造(酒の醸造)設備内部の発酵・熟成タンク等と加工機械器具を接続するものであると考えられる。つまり、当該ホースは、「酒造(酒の醸造)用機械器具用ホース状配管具」に該当するものである。 ここで、J−PlatPatの商品・役務名検索によれば、「酒醸造機械器具,醸造機械器具」は、類似群コード09A08が付与され、第7類に区分される商品であることから、「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」に含まれる商品であるといえる。また、「食料加工用又は飲料加工用機械器具用ホース状配管具」も同様に類似群コード09A08が付与され、第7類に区分される商品であることから、「ホース状配管具」は「部品及び附属品」に含まれるといえる。 したがって、「酒造(酒の醸造)機械器具用ホース」は、本件審判請求に係る指定商品「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品」に含まれるものである。 なお、「SF型専用口元」はホースと食料加工用又は飲料加工用の機械器具を接続する箇所の配管部品であることから、「酒造(酒の醸造)機械器具用配管部品」も商品として使用している。 また、乙第2号証には「フタル酸エステル類は使用しておりません。」及び「食品衛生法 食品・添加物等の規格基準に適合。」との記載があり、「フタル酸エステル類」とは塩化ビニル樹脂の可塑剤の一種であるが、人体への有害性の懸念があることから、飲食料品を中心にその使用が規制されている(食品衛生法第18条、昭和34年厚生労働省告示第370号基準、平成14年厚生労働省告示第267号基準)(乙2、乙5)。これらの事情は酒造メーカーを含む食品加工・飲料加工業者及び酒造設備の製造メーカーを含む食品加工・飲料加工機械器具の製造業者にとって自明の取引実情である。また、飲食料品以外の用途、例えば、樹脂ペレット・セメントモルタル又は産業排水の搬送等においては、コストの上昇や柔軟性・耐久性の低下を避けるために、フタル酸エステル類を使用することが一般的である。 したがって、「フタル酸エステル類を使用していない」との表示は、「飲食料品に使用される製品である」ことを示す表示に等しく、需要者たる酒造メーカー等はその意味合いを直ちに認識するといえるから、当該資料掲載の商品が「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」専用のホース状配管具(部品及び附属品)であることが、これらの記載から明らかである。 以上より、乙第2号証に掲載された商品は、「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品」に含まれる、専用部品としての「酒造(醸造)機械器具用ホース状配管具及び配管部品」である。 (ウ)販売の事実について 乙第6号証は、乙第2号証掲載の商品「クリスタルホースSF型」の売買取引に係る請求書であり、日付、被請求人の名称・住所、「クリスタルホースSF型」の記載があり、日付は要証期間のものである。したがって、実際に「クリスタルホースSF型」は要証期間に売買されている。 (エ)まとめ 以上より、被請求人は、要証期間に、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品(ホース状配管具及び配管部品)」との関係で、商標法第2条第3項第8号に規定する使用(「商品若しくは役務に関する広告又は取引書類に標章を付して頒布する行為」)を本件商標と社会通念上同一の商標について行っている。 イ 「クリスタルホース 食品F型」について 乙第7号証は、被請求人の商品カタログであり、当該資料には被請求人の名称が記載されており、「記載内容は2019年9月1日現在のもの」とあるため、要証期間に頒布されたことがうかがえる。 (ア)商標について 「クリスタルホース 食品F型」との記載があるが、このうち「ホース」の文言は本件審判請求に係る指定商品に含まれる「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品」を具体的に表記したにすぎないものであり、指定商品の普通名称といえる。また、「食品」は商品の用途を示した文言、「F型」は商品の品番・型番を表した記号・符号にすぎないものであることが明らかである。これらの要素は識別力を欠き、自他商品識別機能を発揮するものではないため、識別機能を発揮する要素、つまり「クリスタルホース 食品F型」の要部は、本件商標と同一の「クリスタル」部分であるというべきである。 したがって、本件商標と「クリスタルホース 食品F型」は、社会通念上同一の商標である。 (イ)商品について 乙第7号証は、「酒、醤油、清涼飲料水の輸送。」及び「その他の食品輸送。」との記載があることから、当該資料掲載のホースは、専ら飲食料品の輸送を用途としていることが分かり、食料加工用又は飲料加工用機械器具の分野においては加工工程で液状の食品や飲料を装置間で移送(例えば、複数のタンクに加工用機械器具から飲料を移送)するための配管・ホース又はチューブを設けるのが一般的であるから、当該ホースは食料加工用又は飲料加工用機械器具とその他の設備を接続するものであるといえる。つまり、当該ホースは「食料加工用又は飲料加工用機械器具用ホース状配管具」に該当する。 また、「フタル酸エステル類は使用しておりません。」及び食品衛生法及び厚生労働省告示関連の記載、並びに、上記にて説明した取引実情により、乙第7号証掲載の商品が「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」専用のホース状配管具(部品及び附属品)であることが明らかといえる。 したがって、乙第7号証に掲載された商品は、「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品」に含まれる、専用部品としての「食料加工用又は飲料加工用の機械器具用ホース状配管具」である。 (ウ)まとめ 以上より、被請求人は、要証期間に、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具の部品及び附属品(ホース状配管具)」との関係で、商標法第2条第3項第8号に規定する使用(「商品若しくは役務に関する広告又に標章を付して頒布する行為」)を本件商標と社会通念上同一の商標について行なっている。 そして、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件請求商品について、本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していることを証明した。 3 結綸 以上のとおり、被請求人は、本件商標を要証期間において日本国内で本件請求商品中、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」について使用している。 第4 当審の判断 1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第2号証は、商標権者が作成した2021年4月26日時点の内容からなる酒造関係メーカー向けのチラシ(全2葉)である。 当該チラシの1葉目には、「酒造関係メーカー様向け製品のご案内」の表題の下、先頭に「クリスタルホースSF型」と表記したホースが掲載されている。 「クリスタルホースSF型」については、その説明として「貯蔵タンクまでの酒類の輸送用ホース」、「フタル酸エステル類は使用しておりません。」、「食品衛生法、食品・添加物等の規格基準に適合。」及び「油脂、脂肪性食品にも使用可能です!」の記載及び「呼径(φ)」、「許容圧力」、「減圧変形温度」、「許容曲げ半径」、「定尺(M)」からなる表がある。 当該表の「呼径(φ)」が「38」の欄には、「許容圧力 0.4」、「減圧変形温度 70」、「許容曲げ半径 340」、「定尺(M) 20・50」の記載及び「呼径(φ)」が「50」の欄には、「許容圧力 0.35」、「減圧変形温度 65」、「許容曲げ半径 450」、「定尺(M) (20)・50」の記載がある。 上記チラシには、その他に「クリスタルホースSF型」の専用口元、蒸米搬送用ホースである「シューターホース」、シリコーン製品、ダクトホース、打ち抜きパッキン、金型成形品がいずれも画像とともに掲載されている。 (2)乙第6号証は、2021年10月1日付けで商標権者が取引先宛に発行した請求書(全3葉)の写しである。 当該請求書により「品名 クリスタルホースSF型」についての代金が請求されており、その明細として、1葉目には「寸法 38×50M」を同年9月13日及び同月27日にそれぞれ数量2(100M)ずつ、2葉目には「寸法 38×50M」を同月1日に数量1(50M)及び同月13日に数量2(100M)並びに「寸法 50×50M」を同月1日に数量1(50M)が記載されている。 (3)上記(1)及び(2)からすれば、商標権者は、2021年4月頃、酒造関係メーカー向けの製品案内(チラシ)を作成し、そのチラシに「クリスタルホースSF型」(以下「使用商標」という場合がある。)と表記した商品「酒類の輸送用ホース」(以下「使用商品」という。)を掲載したこと、また、使用商品は、「呼径」が「38φ」や「50φ」のものがあり、その「定尺」は「20M」や「50M」といった種類があることが認められる。 そして、同年9月に、商標権者は取引先に対し、上記チラシに掲載された「クリスタルホースSF型」について、「呼径」が「38φ」や「50φ」のものを定尺50Mごとに複数回販売し、それらの代金を請求したことが認められる。 なお、チラシに記載された使用商品の商標(「クリスタルホースSF型」)、「呼径」及び「定尺」と請求書の明細に記載された品名、寸法が一致することから、使用商標を表示した使用商品が商標権者と取引先との間で取引されたと認めて差し支えないものである。 2 判断 (1)使用商標について 本件商標は、「クリスタル」の片仮名を横書きしてなるものである。 そして、使用商標は「クリスタルホースSF型」の文字からなるところ、その構成中、「SF型」の部分は、商品の型式、規格、等級を表すものとして認識されるものであり、また、「ホース」の部分は、商品の品質(「ホース」)を表すものであるから、いずれも商品の出所識別標識としての称呼及び観念を生じるとはいえないものであり、「クリスタル」の部分が商標として機能するといえる。 そうすると、使用商標のうち、商品の出所を識別する標識といえる「クリスタル」の文字部分は、本件商標と同一のつづりからなり、同一の称呼、観念を生じるものであるから、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標といえるものである。 なお、請求人は、「クリスタル」の文字について、形容詞的に「透明な」の意味で使用されている例(甲3〜甲5)を挙げ、そういった状況を背景とすると、使用商標は「クリスタルホース」部分全体が外観上まとまりよく一体的に表されており、一気一連に称呼することができ、「透明なホース」の観念を生じるため「クリスタルホース」全体として1つの商標とみるべきである旨主張する。 しかしながら、使用商標の構成中の「クリスタルホース」の文字は、「ホース」の片仮名が、使用商品との関係において、商品の品質を表す部分であること、また、使用商品を扱う分野において、透明なホースのことを「クリスタルホース」と称している実情はないことを考慮すると、使用商標中の「クリスタルホース」部分を一体としてみなければならない特別な事情は見いだせない。 そうすると、「クリスタル」の部分が商標として機能するものとみるのが自然であって、使用商標については、上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の主張は採用することができない。 (2)使用商品について 使用商品「酒類の輸送用ホース」は、酒造関係メーカー向けに作成されたチラシ(乙2)に掲載された商品であること、同チラシにその商品について「貯蔵タンクまでの酒類の輸送用ホース」と記載があることから、酒の醸造機械と貯蔵タンクとを接続するホースとして使用されるものであり、酒の醸造機械専用の付属品(ホース)であることが推認できる。 したがって、使用商品は、「酒醸造機械器具用ホース」といい得るものであり、本件審判請求に係る指定商品中、第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」の範ちゅうに属する商品である。 (3)使用者、使用時期、使用行為について 使用商標が表記された使用商品に関するチラシを作成したのは商標権者であることから、使用商標の使用者は商標権者であるといえる。 また、上記チラシの作成時期といえる2021年4月は、本件審判の請求の登録前3年以内である。 そして、上記チラシに掲載された商品は、その後、2021年9月に商標権者と取引先との間で取引されたものであるから、上記チラシは商品に関する広告であり、2021年4月以降要証期間である同年9月までには、使用商標を付して頒布したということができる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)からすれば、商標権者は、要証期間に、日本国内において本件請求商品に含まれる第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」の範ちゅうに属する商品「酒醸造機械器具用ホース」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為により使用したといえる。 3 まとめ 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件審判請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品である第7類「食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品」及び第11類「乾燥装置並びにその部品及び附属品,熱交換器並びにその部品及び附属品,牛乳殺菌機並びにその部品及び附属品」について、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 審判長 小松 里美 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-06-29 |
結審通知日 | 2022-07-01 |
審決日 | 2022-07-21 |
出願番号 | 1976085427 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(X0711)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 大山 健 |
登録日 | 1989-08-31 |
登録番号 | 2162753 |
商標の称呼 | クリスタル |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 行田 朋弘 |
代理人 | 小暮 理恵子 |