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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W01
管理番号 1393182 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-14 
確定日 2022-11-28 
事件の表示 商願2019−160201拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「長岡炭酸」の文字を標準文字で表してなり、第1類「液化炭酸ガス,ドライアイス,その他の化学品,工業用のり及び接着剤,植物成長調整剤類,肥料,陶磁器用釉薬,塗装用パテ,高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,写真材料,試験紙(医療用のものを除く。),人工甘味料,工業用粉類,原料プラスチック,パルプ」(以下「原審商品」という。)を指定商品として、令和元年12月18日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年1月6日付けで拒絶理由の通知がされ、同年2月24日に意見書が提出されたが、同年6月8日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対し、令和3年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、本願の指定商品は、同4年5月23日付け手続補正書により、第1類「液化炭酸ガス,固体炭酸(ドライアイス)」(以下「当審補正商品」という。)に補正されている。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、要旨以下のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本願商標は、「長岡炭酸」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「長岡」の文字は、「新潟県中部、日本海に面する市。」の意味を有し、また、「炭酸」の文字は、「二酸化炭素が水に溶解したとき水溶液中に生成する弱酸。」等の意味を有する語で、原審商品の関係からは化学品の商品名の一種類を表すものであるから、本願商標は、全体として「長岡市で製造又は販売されている炭酸」ほどの意味合いを認識させるものである。
そうすると、本願商標は、原審商品中、「長岡市で製造又は販売されている炭酸」に使用したときは、これに接する取引者、需要者に上記商品であることを理解させるにすぎないから、商品の品質、産地及び販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと認められる。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、「長岡市で製造又は販売されている炭酸」以外の「液化炭酸ガス,ドライアイス,その他の化学品」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
2 商標法第3条第1項第6号について
本願商標は、「長岡炭酸」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「長岡」の文字は、我が国においてありふれた氏の一つと認められ、また、「炭酸」の文字は、「二酸化炭素が水に溶解したとき水溶液中に生成する弱酸。」等の意味を有する語で、原審商品の関係からは化学品の商品名の一種類を表すものである。
そうすると、本願商標を原審商品中、「液化炭酸ガス,ドライアイス,その他の化学品」に使用したときは、これに接する取引者、需要者に、ありふれた氏である「長岡」の文字と商品の品質を表示する「炭酸」の文字を結合させたものであることを理解させるにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

第3 当審における審尋
当審において、令和4年4月13日付け審尋により、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対し、別掲のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

第4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
請求人は、上記第3の審尋に対し、令和4年5月23日付け回答書(以下「回答書」という。)を提出し、回答書において、要旨、以下、1ないし3のとおりの意見を述べた。
1 当審補正商品の特殊な取引の実情、請求人の知名度を考慮すれば、本願商標「長岡炭酸」の「長岡」が地名であっても、当審補正商品の製造業界における取引者間においては、本願商標「長岡炭酸」が、単に新潟県長岡市で製造販売されている液化炭酸ガス, ドライアイスを表示していると認識されることはなく、請求人が製造販売する当審補正商品と認識されるから、本願商標は出所識別標識として十分に機能している。
2 「長岡炭酸」をWebサイトで検索しても、当審補正商品について、請求人以外に「長岡炭酸」を使用している事実が一切なく、また、当審補正商品は、通常の多数の製造業者により製造販売されている商品とは異なり、特異な商品であり、さらに原料となる炭酸ガスの供給が不足している実情を踏まえれば、本願商標は、将来を含め、「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」に該当することはなく、かつ、「自他商品識別力を欠くもの」に該当しない。
3 過去の登録例は、後の審査を拘束するものではないが、何らかの指針になるべきであり、近似するケースは同様な結論になることが法的安定性からいって望ましいことからすると、本願商標は、登録されるべきである。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「長岡炭酸」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「長岡」の文字は、「新潟県中部、日本海に面する市。」を、「炭酸」の文字は、「二酸化炭素が水に溶解したとき水溶液中に生成する弱酸。」(いずれも「広辞苑 第七版」発行者:株式会社岩波書店)を意味する語である。
そして、別掲のとおり、原審商品中の「化学品」を取り扱う業界において、「液化炭酸ガス,炭酸」が製造、販売されている事実があり、当審補正商品は、液化炭酸ガス及び炭酸に該当する商品である。
そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、各構成文字の意味合いから、「新潟県長岡市で製造、販売される液化炭酸ガス,新潟県長岡市で製造、販売される固体炭酸(ドライアイス)」ほどの意味合いを理解するにとどまるから、本願商標を、当審補正商品に使用しても、単に、商品の産地及び販売地を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
上記第1のとおり、本願の指定商品は、当審補正商品に補正されたことにより、本願商標を当審補正商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、「当審補正商品の特殊な取引の実情、請求人の知名度を考慮すれば、本願商標「長岡炭酸」の「長岡」が地名であっても、当審補正商品の製造業界における取引者間においては、本願商標「長岡炭酸」が、単に新潟県長岡市で製造販売されている液化炭酸ガス, ドライアイスを表示していると認識されることはなく、請求人が製造販売する当審補正商品と認識されるから、本願商標は出所識別標識として十分に機能している。」旨主張する。
しかしながら、請求人が提出した証拠を参照するも、本願商標が、当審補正商品の製造業界における取引者間において、請求人が製造販売する当審補正商品と認識されると判断し得る客観性のある証拠は提出されていないことからすると、上記1のとおり、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標の各構成文字の意味合いから、「新潟県長岡市で製造、販売される液化炭酸ガス,新潟県長岡市で製造、販売される固体炭酸(ドライアイス)」であることを認識するにすぎないと判断するのが相当である。
(2)請求人は、「「長岡炭酸」をWebサイトで検索しても、当審補正商品について、請求人以外に「長岡炭酸」を使用している事実が一切なく、また、当審補正商品は、通常の多数の製造業者により製造販売されている商品とは異なり、特異な商品であり、さらに原料となる炭酸ガスの供給が不足している実情を踏まえれば、本願商標は、将来を含め、「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」に該当することはなく、かつ、「自他商品識別力を欠くもの」に該当しない。」旨主張する。
しかしながら、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁平成12年(行ケ)第76号,同年9月4日判決参照)と判示されていることからすると、仮に、請求人以外に「長岡炭酸」の文字を使用している事実がないとしても、上記1のとおり、本願商標に接する取引者、需要者は、各構成文字の意味合いから、「新潟県長岡市で製造、販売される液化炭酸ガス,新潟県長岡市で製造、販売される固体炭酸(ドライアイス)」ほどの意味合いを理解するにとどまるから、本願商標を、当審補正商品に使用しても、単に、商品の産地及び販売地を普通に用いられる方法で表示するにすぎないと判断するのが相当である。
(3)請求人は、「過去の登録例は、後の審査を拘束するものではないが、何らかの指針になるべきであり、近似するケースは同様な結論になることが法的安定性からいって望ましいことからすると、本願商標は、登録されるべきである。」旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げる登録例は、本願商標とは、構成文字や構成態様が異なるものであって、かつ、具体的事案の判断においては、請求人も述べるとおり、過去の登録例等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから、請求人の挙げる登録例の存在によって、上記1の認定、判断が左右されるものではない。
(4)以上のとおり、請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張は、採用するべき事情はない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲 原審商品中の「化学品」を取り扱う業界において、「液化炭酸ガス,炭酸」が製造、販売されている事実
(1)「昭和電工ガスプロダクツ株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品・商品情報」の見出しの下、「炭酸ガス」との記載及び「炭酸ガスの概要 炭酸ガスの水に溶けやすい物性を利用した炭酸飲料の発泡剤としての利用のような身近な用途はもちろん、半導体・液晶等電子部品洗浄用と炭酸ガスは医療・食品加工・工業・農業とさまざまな産業にわたって幅広く使用されています。」との記載がある。
https://www.sdk.co.jp/gaspro/products/industrial_gas/carbonic_acid_gas.index.html
(2)「日本液炭」のウェブサイトにおいて、「液化炭酸ガス」の見出しの下、「供給荷姿 [一般容器/サイフォン付容器] お客様のもとにお届けする容器製品は、通常は液化炭酸ガスを30kg充填したシームレスの鋼製容器(小型容器はアルミ合金製もあり)です。容器には、炭酸ガスを気体で取り出す一般容器と、液体で取り出すサイフォン付容器を使用しています。また30kg充填以外の容器(10kg、7kgなど)もございます。」との記載がある。
https://www.n-eco.co.jp/company/business/co2/index.html
(3)「小池酸素工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「KOIKE > 製品情報 > ガス関連機器 炭酸ガス」の見出しの下、「炭酸ガスは、溶接用シールドガス・炭酸飲料・消化剤等、様々な分野で使用されているガスです。」との記載及び「<製造方法> 主として石油及び石炭からの水素製造の際の副産物として回収されます。回収した二酸化炭素を完全に脱硫、脱臭した後、圧縮液化することによって液化二酸化炭素(炭酸ガス)が得られます。」との記載がある。
https://www.koike-japan.com/291544
(4)「東京高圧山崎株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品・サービス」の見出しの下、「炭酸ガス」との記載がある。
https://www.tokyo-koatsu.com/products/gases/industrial-gases/post_3.html
(5)「東京ガスケミカル株式会社」のウェブサイトにおいて「液化炭酸・ドライアイス」の見出しの下、「私たちの暮らしを支える”液化炭酸ガス”と”ドライアイス” 私たちの暮らしになくてはならない液化炭酸ガスとドライアイス。その有用性はあまり知られていませんが、実は、食品から原子力、宇宙産業にいたるまで幅広い分野に活躍の場を広げています。東京ガスケミカルのグループ会社である東京炭酸(株)は1982年4月に設立され、LNGの冷熱を利用して環境保全に貢献しながら液化炭酸ガスとドライアイスを製造しています(横浜市磯子区)。スタート以来、省エネ・省資源を追求する高度なテクノロジーを駆使して高品質な製品を生み出しています。」との記載がある。
https://www.tgc.jp/product/co2.html
(6)「丸善石油化学株式会社」のウェブサイトにおいて、「事業と製品」の見出しの下、「液化炭酸ガス 液化炭酸ガスは、無色透明な液体で異臭がなく、水および他の遊離不純物を含まないので、重合溶媒、接着剤等の用途に広く用いられます。」との記載がある。
https://www.chemiway.co.jp/product/data/e_data01.html
(7)「株式会社渡商会」のウェブサイトにおいて、「商品・サービス」の見出しの下、「産業用ガス 酸素・窒素・アルゴン・炭酸ガス・アセチレン・水素をはじめとした産業用各種高圧ガス、燃焼効率のよさで注目されるLPガス、モノシラン・三フッ化窒素をはじめとする数十種類の特殊ガスをご提供いたします。」との記載がある。
http://www.watari.co.jp/products/index.html
(8)「株式会社日本触媒」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の見出しの右に、「液化炭酸ガス」との記載がある。
https://www.shokubai.co.jp/ja/products/detail/liquid-carbon-dioxide.html
(9)「Air Liquide」のウェブサイトにおいて、「炭酸ガス」の見出しの下、「清涼飲料水、ビールなどに入っている炭酸ガスは最も身近な用途といえるでしょう。 また、動物が呼吸する時に発生するガスとしても知られています。溶接用、消火用、 冷却用、バイオテクノロジー用、食品用と幅広い分野で使用されています。」との記載及び「供給方法 バルク供給 シリンダー供給」との記載がある。
https://industry.airliquide.jp/carbon-dioxide
(10)「日本炭酸瓦斯株式会社」のウェブサイトにおいて、「ミニガスカートリッジとは」の見出しの下、「当社のミニガスカートリッジは、手のひらサイズで重さが30gから300g程のコンパクトな製品です。小さなサイズでありながら、その中には内容積に対して、約400倍の量の高圧ガスが充填されています。※(中略) ※炭酸ガスの場合」との記載がある。
https://ntg.co.jp/products/minigas.php


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-09-21 
結審通知日 2022-09-26 
審決日 2022-10-14 
出願番号 2019160201 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W01)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 渡邉 潤
小田 昌子
商標の称呼 ナガオカタンサン 
代理人 吉井 剛 

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