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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1392379 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-28 
確定日 2022-12-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6481106号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6481106号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6481106号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和元年11月5日に登録出願、第9類「全地球測位装置(GPS),携帯電話機用ストラップ,スマートフォン,携帯電話機,バッテリーチャージャー,着用可能なアクティビティトラッカー,スマートフォン用のカバー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用保護フィルム,衛星ナビゲーション装置,トランシーバー,電話用ハンズフリーキット,映写用スクリーン,カメラ(写真用のもの),精密測定装置」を指定商品として、同3年10月27日に登録査定、同年12月6日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、引用する商標は、以下の9件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1758671号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「APPLE」の欧文字を横書きしてなる商標(別掲2)
登録出願日:昭和53年4月4日
設定登録日:昭和60年4月23日
最終更新登録日:平成27年4月21日
指定商品:第9類「電子計算機,その他の電子応用機械器具及びその部品」(平成17年6月22日書換登録)
(2)登録第2555518号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「APPLE」の欧文字を横書きしてなる商標(別掲2)
登録出願日:平成元年10月2日
設定登録日:平成5年7月30日
最終更新登録日:平成25年2月19日
指定商品:第9類「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,磁心,抵抗線,電極」(平成16年12月8日書換登録)
(3)登録第5054550号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「APPLE」(標準文字)
登録出願日:平成18年7月31日
設定登録日:平成19年6月15日
更新登録日:平成29年3月21日
指定商品及び指定役務:第9類、第16類、第18類、第35類、第37類及び第40類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(4)登録第5218014号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「APPLE」(標準文字)
登録出願日:平成19年4月13日
設定登録日:平成21年3月27日
更新登録日:平成31年3月5日
指定役務:第35類「コンピュータ・コンピュータソフトウェア・その他の電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。),電子出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。)」
(5)登録第6084698号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「APPLE」(標準文字)
登録出願日:平成29年10月2日(2017年3月30日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張)
設定登録日:平成30年9月28日
指定商品:第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(6)国際登録第1413880号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:「APPLE」の欧文字を横書きしてなる商標(別掲3)
国際商標登録出願日:2018年(平成30年)5月4日
設定登録日:2019年(令和元年)7月12日
指定商品:第9類「Musical sound records; sound records featuring entertainment; sound records featuring music, musicians, documentaries, biographies, interviews, performances, reviews, drama and fiction; musical video records; video records featuring entertainment; video records featuring music, musicians, caricatures, cartoons, animation, documentaries, biographies, interviews, performances, reviews, drama and fiction; cinematographic films; musical sound recordings; musical video recordings; audio and visual recordings featuring or relating to music, entertainment and films; pre-recorded compact discs, gramophone records, video discs, DVDs, CD-ROMs all featuring or relating to music and films; digitally recorded sound and video records.」
(7)国際登録第956402号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:「APPLE」の欧文字を横書きしてなる商標(別掲3)
国際商標登録出願日(事後指定):2016年(平成28年)5月17日
設定登録日:2017年(平成29年)7月14日
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品
(8)登録第5256657号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:「アップル」(標準文字)
登録出願日:平成20年5月15日
設定登録日:平成21年8月14日
更新登録日:平成31年4月16日
指定商品及び指定役務:第9類、第16類、第18類、第35類ないし第38類及び第40類ないし第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(9)登録第5273195号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:「アップル」(標準文字)
登録出願日:平成20年5月15日
設定登録日:平成21年10月16日
更新登録日:令和元年5月7日
指定商品及び指定役務:第9類、第25類、第28類、第35類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
なお、引用商標1ないし引用商標7をまとめて「引用商標A」といい、引用商標8及び引用商標9をまとめて「引用商標B」という。また、引用商標A及び引用商標Bを合わせて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
米国カリフォルニア州に本社を置く申立人、アップル インコーポレイテッド(Apple Inc.)は、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業の4つのうちの一社であり、「MacBook」、「iMac」等のパーソナルコンピュータ、スマートフォン「iPhone」、タブレット型コンピュータ「iPad」、腕時計型コンピュータ「Apple Watch」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「Apple Music」、映画・動画配信サービス「Apple TV」、データ保管サービス「iCloud」等を提供する米国の法人である。
引用商標は、申立人の社名(Apple Inc.(アップル インコーポレイテッド))に係るハウスマークである(甲1)。申立人は、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、高い知名度を誇り、当該ランキングにおいては、2011年から9年連続で首位の座を維持し、ブランド価値が2000億ドルを超えた唯一の企業と評価されている(甲2)。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 日本国周知・著名商標検索
引用商標Aは、「APPLE」の欧文字よりなるところ、特許庁の「日本国周知・著名商標検索」において第9類及び第42類の商品及び役務について周知・著名商標として登録されている事実から(甲3)、引用商標Aの周知著名性が確認できる。
引用商標Bは、「アップル」の片仮名よりなるところ、「アップル」は引用商標Aの片仮名表記であり、各種記事で申立人を表示する表記として用いられているため、引用商標A同様、引用商標Bも申立人を指し示す標章として周知・著名であるといえる。
イ 審決例
引用商標は、特許庁においても周知著名商標と認定されている(異議2018−900165、異議2018−900137、無効2010−890050)。
ウ 新聞記事情報
新聞記事情報については、以下の新聞記事に申立人が「アップル」として表示されていることが確認できる(2005年3月8日付け毎日新聞東京夕刊2頁、2010年2月11日付け日刊工業新聞13頁、2015年6月27日付け朝日新聞東京朝刊13頁、2016年4月4日付け外食レストラン新聞、2016年8月3日付け日本経済新聞朝刊12頁、2019年7月31日付け産経新聞大阪夕刊6頁、2020年7月31日付け日本経済新聞夕刊1頁)。
エ インターネット情報
インターネット情報については、一例として、(ア)「IT用語辞典e−words」のAppleの項目において「Appleとは、アメリカの大手IT企業の一つ。」の記載(甲4)、(イ)「IT用語辞典バイナリ」のAppleの項目において「Appleとは、Apple II、 MacintoshなどのパーソナルコンピュータやiPodなどの発売元として知られるコンピュータメーカーの名称である。」の記載(甲5)、(ウ)「日経ビジネス「世界で勝つブランドのつくりかた」において「世界最強のブランドともいえる「アップル」と「ナイキ」の創業者、スティーブ・ジョブズとフィル・ナイトの共通点は、日本との関係の深さだった。・・・まさに、この2社は、強力な世界ブランドといえるだろう。強いブランドに国境はないということだ。」の記載(甲6)、(エ)「日本経済新聞「企業ブランド調査、アップル3年連続首位」において「3年連続で1位となったアップルは音楽・動画配信サービスの利用が増えているのに加え、在宅勤務やリモート授業の拡大でタブレット端末「iPad」の需要が伸びている。」の記載(甲7)を確認することができる。
オ 小括
上記に示したとおり、引用商標は、申立人の製品・サービスの利用者であれば必ず目にすることのある商標であって、申立人を表す商標として需要者の間において極めて広く知られているものである。
すなわち、引用商標は、本件商標の出願時以前より、申立人の莫大な業務上の信用が化体した著名商標となっていたことは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第11号
ア 本件商標の要部について
本件商標は、黒色の長方形図形の中に皿のような図形及びその下に三本の白色横線を配し、皿状図形の中に「SX」「苹果皮」及び「アップルの皮」の文字を三段で配した構成からなる。
まず、図形部分と「SX」「苹果皮」及び「アップルの皮」の文字部分は、視覚上分離認識される。そして、「SX」は、欧文字2文字から成り識別力がない表示である。また、「苹果皮」は中国語表記であって、我が国一般の需要者・消費者はその意味を理解できないから、文字部分で識別力を発揮する部分は、「アップルの皮」のみである。ちなみに、仮に中国語表記を理解できるとして「苹果皮」の和訳は「りんごの皮」である。
イ 本件商標と引用商標の類否
引用商標は、「APPLE」の欧文字又は「アップル」の片仮名よりなる。
本件商標の構成中、識別力を発揮するのは「アップルの皮」の文字部分(以下「本件商標要部」という。)であるところ、「皮」の語は、「覆って外面となるもの。」(広辞苑第七版)の意味を有する。
上記「皮」の語の意味に照らせば、本件指定商品との関係において、「皮」の文字は、「商品の表面を覆うもの、カバー」といった意味合いを想起させ、その自他商品識別力は極めて弱いと解される。
一方、「アップルの皮」中、「アップル」の語は、引用商標の周知著名性を考慮すれば、当該文字部分が取引者、需要者に強く支配的な印象を与える部分といえる。
そこで、「アップルの皮」中、要部となる「アップル」と引用商標を比較すると、両者はいずれも「アップル」の称呼及び「果物のりんご」の観念を共通にする類似商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号
本件商標要部は、「アップルの皮」の文字部分であるところ、引用商標が、申立人を表すハウスマークとして周知著名であること、及び「皮」が「商品の表面を覆うもの、カバー」を想起させることを考慮すると、「アップルの皮」が、本件指定商品に使用されることにより、本件商標に接する需要者・取引者は、「アップルの皮」より「申立人製品(例えばiPhone)の表面を覆うもの、ケース」を想起し、本件商標について「申立人に関係する何らかのブランド」を表したものと考え、その出所を混同するおそれが高い。
したがって、本件商標が本件指定商品に使用されれば、本件指定商品の分野における需要者は、それらの商品が申立人の業務に係る商品ないし申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
現に、本件指定商品は、例えば「スマートフォン,スマートフォン用のカバー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用保護フィルム」のように申立人が製造・販売する商品と同じものを多数含んでいる(甲8の1、2)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
また、特許庁審査基準において「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。」(「商標審査基準〔改訂第15版〕第3 十三、第4条第1項第15号 2.」)と規定されていることから考えても、申立人の著名な「アップル」商標の語をそのまま構成要素に含む本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品及び同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する企業であって、コンピュータ業界においては、その製品「Macbook」や「iMac」、スマートフォン「iPhone」に加え、タブレットコンピュータ「iPad」や時計型コンピュータ「Apple Watch」を開発した企業として知られている(甲1)。
(イ)申立人は、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、ブランド価値を有する企業として紹介されており、当該ランキングにおいては、2011年から9年連続で首位の座を維持し、ブランド価値が2000億ドルを超えた唯一の企業と記載されている(甲2)。
また、同記事には、引用商標Bとほぼ同一の標章が写った申立人のハウスマークが掲載されている(甲2)。
(ウ)「日本国周知・著名商標」において第9類及び第42類の商品及び役務について周知・著名商標として、引用商標Aとほぼ同一の標章が登録されている(甲3)。
(エ)過去の審決例(異議2018−900165、異議2018−900137、無効2010−890050)では、「商標「APPLE」及び商標「アップル」は,申立人の業務に係る商品(パソコン,その周辺機器,コンピュータソフト,スマートフォン)を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されている商標と認めることができる。」等、引用商標の周知著名性が認められている。
(オ)新聞記事情報及びインターネット情報(甲4〜甲7)において、「Appleとは、アメリカの大手IT企業の一つ。」(甲4)、「世界最強のブランドともいえる「アップル」」(甲6)、「企業ブランド調査、アップル3年連続首位」(甲7)等、申立人及び申立人の業務に係る引用商標が需要者の間で広く知られていることがうかがえる記事が多数ある。
イ 周知著名性の判断
以上によれば、引用商標Aは、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、時計型コンピュータについて使用され、上記申立人の商品は、世界中で多くの人の目に触れているものということができる。
さらに、引用商標Bとほぼ同一の標章は、申立人が高いブランド価値を有する企業として「2011年から9年連続で首位の座を維持している」ことを紹介する「Forbes JAPAN」のインターネット記事「世界の最も価値あるブランドランキング」100社(2019年5月)に掲載されており、2005年から2020年にかけて、複数の新聞記事情報や複数のウェブサイトにおいて、引用商標が有名商標として紹介されているものである。
してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時(令和元年11月5日)及び登録査定時(同3年10月27日)において、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、腕時計型コンピュータを表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたといい得るものである。
しかしながら、上記商品以外の商品及び役務については、引用商標の使用の態様、引用商標を使用した商品の販売数、提供数、市場占有率、広告宣伝の方法、頒布範囲、回数等、周知著名性を判断する客観的な事実を証明する資料の提出もないことから、申立人の提出した証拠からは、引用商標が上記商品以外の商品及び役務について、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、黒色の長方形図形の中に湾曲した2本の白色線とその下に3本の白色横線を配し(以下「本件図形部分」という。)、本件図形部分の湾曲中に「SX」「苹果皮」及び「アップルの皮」の文字を三段に配した構成からなるところ、本件図形部分と文字部分とが常に不可分一体のものとしてのみ認識し把握されるべき格別の理由はなく、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであり、そして、読みやすい文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が少なくないものといえる。
しかして、本件図形部分から特別の称呼及び観念を生ずるものとも認められないことに加え、本件商標の構成態様において、識別力がないか、極めて弱いといえる欧文字2字の「SX」の文字部分のみをもって殊更に強く印象付けられ記憶されるということはできないから、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「苹果皮」及び「アップルの皮」の文字部分に印象付けられ、記憶し、これをもって自他商品を識別する標識として捉えて商品の取引に当たるとみるのが相当である。
また、本件商標の構成中の「苹果皮」の文字は、我が国においては一般の辞書等に載録されていないものであり、特定の意味を有しない一種の造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。
そして、特定の意味又は特定の読みを有しない漢字からなる造語にあっては、一般的には音読み又は訓読みによって読みやすい称呼が生じると考えられるところ、当該文字の構成中の「苹果」の文字は、「ヘイカ」の称呼(広辞苑第七版、デジタル大辞泉)を生じるものというのが相当である。また、該構成中の「皮」の文字は、音読みによる読みやすい「ヒ」の称呼を生じると考えられることから、「苹果皮」の文字は、「ヘイカヒ」の称呼を生じるものというのが相当である。そして、「苹果」の文字は、「りんご(林檎)」の意味を有する語として、明治初期から昭和前半において、普通に使用されていたものの、現在において親しまれた語とはいえないことから、特定の観念を生じない一種の造語として認識されるのが相当である。
次に、「アップルの皮」の文字部分からは、その構成文字に相応して、「アップルノカワ」の称呼を生じ、「りんごの皮」程の観念を生じるものである。
イ 引用商標
引用商標Aは、上記2のとおり「APPLE」の文字を書した構成よりなるものであり、これよりは「アップル」の称呼を生じ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、腕時計型コンピュータとの関係では、上記(1)のとおり、需要者の間に広く知られた申立人のブランドとしての「APPLE」の観念を想起し得るものの、上記商品以外の商品(役務)を取り扱う分野においては、その構成文字に相応して「りんご」の観念を生じるとみるのが相当である。
また、引用商標Bは、上記2のとおり「アップル」の文字を標準文字で表した構成よりなるものであり、引用商標Aと同様に、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、腕時計型コンピュータとの関係では、上記(1)のとおり、需要者の間に広く知られた申立人のブランドとしての「アップル」の観念を想起し得るものの、上記商品以外の商品(役務)を取り扱う分野においては、その構成文字に相応して「りんご」の観念を生じるとみるのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標及び引用商標は、上記ア(別掲1)及びイ(別掲2、別掲3)のとおりの構成からなるものであり、本件商標と引用商標とは、その構成全体において、図形の有無や全体の文字構成の相違などからすれば、相紛れるおそれのないものである。
また、その構成文字においても、漢字(片仮名、平仮名を含む。)と欧文字(標準文字を含む。)という書体の相違及び構成文字数の相違という差異があるから、外観上、明確に区別し得るものである。
さらに、本件商標からは、「ヘイカヒ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないか、若しくは「アップルノカワ」の称呼を生じ、「りんごの皮」の観念を生じるのに対し、引用商標からは、「アップル」の称呼を生じ、需要者の間に広く知られた申立人のブランドとしての「APPLE」又は「アップル」の観念、若しくは「りんご」の観念が生ずるものであるから、称呼上及び観念上紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
なお、申立人は、本件商標構成中の「アップル」の語は、引用商標の周知著名性を考慮すれば、当該文字部分が取引者、需要者に強く支配的な印象を与える部分(要部)といえるから、「アップル」の称呼及び「果物のりんご」の観念を共通にする類似の商標である旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない、非類似の商標であり、両商標はその印象が明らかに異なる別異の商標であると判断するのが相当である。
加えて、本件商標の構成上、「アップル」の文字部分は、他の文字部分に比して、強く支配的な印象を与える部分であるとはいえず、殊更「アップル」の文字部分のみを分離、抽出し、それをもって他人の商標と比較し、類否を判断すべきではないから、本件商標からは、「アップル」の称呼及び「果物のりんご」の観念は生じないものといわなければならない。
よって、申立人の主張は採用することができない。
エ 小括
したがって、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、指定商品及び指定役務の類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知著名性
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、腕時計型コンピュータを表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されているといい得るものである。
しかしながら、上記商品以外の商品及び役務については、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
イ 商品の関連性、需要者の共通性
引用商標が使用されている上記商品と、本件商標の指定商品とを比較してみると、本件商標は、その指定商品中の第9類「スマートフォン,スマートフォン用のカバー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用保護フィルム」の分野では、取扱業者が一致する等の関連性を有するものであり、その取引者、需要者を共通にするものといえる。
しかしながら、本件商標は、指定商品中に上記以外の指定商品をも含むものであるところ、これらに係る取引者又は需要者、流通経路及び販売場所等は、上記指定商品に係るそれと少なからず差異があるものであって、両者間における関連性が高いとはいい難いものであり、需要者の範囲も一致するとはいえないものである。
ウ 引用商標の独創性
引用商標を構成する「APPLE」及び「アップル」の文字は、申立人のハウスマークといい得るものの、本来、「りんご」の意味を有する英語(APPLE)及びその表音として知られる外来語として我が国において一般に知られ、使用されている既成の語であって、創作された造語ではないから、独創性が高いとはいえない。
エ 本件商標と引用商標の類似性の程度
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、図形部分の有無、構成文字の態様において差異を有し、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない、非類似の商標であって、その印象が明らかに異なる別異の商標というべきものである。
オ 出所混同のおそれ
上記アないしエによれば、引用商標は、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、腕時計型コンピュータについて周知著名性を有するものの、それ以外の商品及び役務については、周知著名性を有するとはいえないものであり、また、本件商標と引用商標は、前記のとおり、明らかな差異を有する別異の商標である。
そして、本件商標の指定商品中の「スマートフォン,スマートフォン用のカバー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用保護フィルム」以外の商品については、両者間における商品の関連性や需要者の共通性が高いとはいい難いこと、また、本件商標に含まれる「アップル」の文字は、申立人のハウスマークといい得るものの、本来、「りんご」等の意味を有する英語(APPLE)及びその表音として知られる既成語であること、さらに、申立人は、創設以来35年余を経過しているところ、その間に商品「コンピュータ及びその周辺機器」、「コンピュータ用ソフトウェア」及び「携帯型デジタル音楽プレーヤー」並びにこれらと密接な関連を有するインターネットを通じて行う音楽配信といった事業展開は行ってきたものの、それ以外の事業分野への大きな展開が図られた事実は見いだせず、その事業の多角化の可能性の範囲はさほど広いものとはいえないことを総合勘案すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を想起、連想して、当該商品を申立人の業務に係る商品又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというのが相当である。
カ 申立人の主張について
申立人は、「皮」が「商品の表面を覆うもの、カバー」を想起させることを考慮すると、「アップルの皮」が、本件指定商品に使用されることにより、本件商標に接する需要者・取引者は、「アップルの皮」より「申立人製品(例えばiPhone)の表面を覆うもの、ケース」を想起し、本件商標について「申立人に関係する何らかのブランド」を表したものと考え、その出所を混同するおそれが高い」旨主張している。
しかしながら、本件商標の構成中に一連一体に表された「アップルの皮」の文字部分は、全体として果実としてのりんごの外皮の意味合いを認識させる語というのが自然であって、該文字部分が「申立人製品の表面を覆うもの、ケース」を需要者に容易に想起させ、出所の混同を生じるというべき特段の理由を見いだすことはできない。
してみれば、本件商標の構成中に「アップルの皮」の文字を有することをもって、本件商標が申立人に関係する何らかのブランドを想起させるものであると認めることはできない。
よって、申立人のかかる主張は採用できない。
キ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1、引用商標2)



別掲3(引用商標6、引用商標7)



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異議決定日 2022-11-22 
出願番号 2019141031 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 青野 紀子
鈴木 雅也
登録日 2021-12-06 
登録番号 6481106 
権利者 天津津晨順項科技発展有限公司
商標の称呼 エスエックスヘーカヒアップルノカワ、エスエックスヒョーカヒアップルノカワ、ヘーカヒアップルノカワ、ヒョーカヒアップルノカワ、ヘーカヒ、ヒョーカヒ、アップルノカワ 
代理人 中澤 昭彦 
代理人 弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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