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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1392373 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-17 |
確定日 | 2022-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6461347号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6461347号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6461347号商標(以下「本件商標」という。)は、「WAYFARER」の欧文字を横書きしてなり、令和3年4月23日に登録出願、第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,キャミソール,ティーシャツ,タンクトップ,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,靴の引き手,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服(「水上スポーツ用特殊衣服」を除く。),水上スポーツ用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」及び「ウインドサーフィン用シューズ」を除く。),乗馬靴,ウインドサーフィン用シューズ」を指定商品として、同年10月4日に登録査定、同月25日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する登録第1971995号商標(以下「引用商標」という。)は、「WAYFARER」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年4月12日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、同62年7月23日に設定登録され、その後、平成20年1月30日に指定商品を第9類「眼鏡」とする指定商品の書換登録がされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 (1)申立人について 申立人は、イタリア・ミラノに本拠を置く、世界最大の眼鏡・アイウェアメーカーであり、ヨーロッパやアメリカ合衆国を中心に多くの有カブランドを保有している(甲3)。 申立人は、欧米の有力眼鏡メーカーを続々と買収し、2010年代に入るとラテンアメリカの眼鏡メーカーも買収、2014年にアメリカのWellPoint,Inc.からアイウェア販売サイトGlasses.comを買収している。1988年にアルマーニ、1992年にブルックス・ブラザーズ、1997年にブルガリ、1999年にシャネル、2003年にプラダ及びヴェルサーチ、2005年にDKNY、2006年にドルチェ&ガッバーナ及びバーバリー、2007年にラルフ・ローレン、2008年にティファニー、2009年にトリーバーチ、2012年にコーチ、2015年にマイケル・コース、2017年にヴァレンティノとそれぞれライセンス契約を結び、ファッションブランドヘの関与も強化している。また、眼鏡型のウエアラブル端末の開発にも関与し、2014年3月にGoogle、同年12月にインテルとの提携を発表している(甲3)。 この結果、申立人は、上記ブランドなど多くの世界的に著名なファッションブランドの下、アイウェア製品・サングラスを世界的に製造・販売するに至っている。それらのブランドのほとんどが、いずれもファッション商品・アパレル商品(衣料品)等の世界においては誰でもが知っている著名な商標である。 (2)申立人の商標「Ray−Ban」と引用商標 ア 「Ray−Ban」(レイバン)ブランドは、アメリカの企業ボシュロム社(Bausch&Lomb)が創立した後、ファッションブランドのアイウェアを扱う申立人に売却され、現在は申立人の主カブランドとなっている。また、「Ray−Ban」(レイバン)は、1986年に、アメリカン・ファッション・デザイナー協議会からThe World’s Finest Sunglasses(世界最高級のサングラス)の称号を得ており(甲3)、世界中のセレブリティをはじめ愛用者が多いため、「Ray−Ban」(レイバン)がサングラスについては世界的に著名なブランドである。 イ 引用商標は、「Ray−Ban」(レイバン)サングラスの人気モデルの名称であるとともに、申立人が所有する商標である。ウィキペディア記事(甲3)では、「WAYFARER」(ウェイファーラー)は、「「ウェイファーラー」(Wayfarer)は、1953年から欧米で発売されていた人気モデル。現在も生産され、クラシックなカラーをはじめ、ポップなレッドやホワイトフレームができ、若者の間で再びブームになっている。1952年の誕生以来、“ロックの象徴”として多くの音楽ファンや映画ファンから愛され、伝説のモデルとなったウェイファーラー。(中略)数多くのロックミュージシャンたちが自由と個性のシンボルとしてウェイファーラーを身につけ、反体制のスピリットの象徴となり、世界中の人々を魅了している。映画(中略)のスクリーンにも登場し、才能あふれるアーティストたちが選ぶサングラスとして絶大な人気を持ち続けている。」のように紹介されている。 また、引用商標は、商品「サングラス」について、1953年3月11日には現実に使用が開始され、同年10年23日に登録出願、1954年9月21日に米国連邦登録第595513号として登録され、今日に至るまで継続して使用され有効に登録が現存し(甲2)、国内では、引用商標が登録され、今日も使用を続けている。 (3)引用商標の周知性について 引用商標が国内において消費者に広く知られている事実を裏付けるため、検索エンジンを用いて「wayfarer レイバン」を検索したところ、Google及びYahooの検索結果として各281万件検出されたことから(甲4)、ネット通販においても申立人の「WAYFARER」(ウェイファーラー)サングラスが広く扱われていることは明らかである。 検索されたインターネット上の記事の一部として、第三者のサイトやブログにおいて紹介された「レイバン・ウェイファーラー・ガイド」、「多くの著名人を虜にしたRay−Ban(レイバン)の看板モデル「ウェイファーラー」とは?」、「サングラスといえばレイバン「ウェイファーラー」!人気の特徴・種類をしっかり解説」、「あのセレブ達も愛したレイバン、その魅力を探る!」、「色褪せない名品。レイバンのウェイファーラーについて知っておくべきこと」及び「レイバンウェイファーラーサングラスをかける芸能人」の記事を提出する(甲4)。 このように、申立人の商標「WAYFARER」(ウェイファーラー)が、サングラスについて国内において広く知られていることは明らかである。 (4)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 商品「サングラス」は、類似商品・役務審査基準においては、いわゆるアパレル商品(衣料品)やファッション商品に該当する本件商標の指定商品とは一般的に類似する関係とはされていない。 しかし、本件商標がその指定商品に使用されると、あたかも申立人の業務に係る商品であるかと誤認し、出所の混同を生ずるおそれがある。 イ 本号に該当するかは、商標審査基準に示されているような諸事実を総合的に勘案して判断されるべきである。本件商標は引用商標と完全同一であり、また、引用商標はサングラスについて周知といえるものである。 さらに、企業における多角経営の可能性という点では、申立人が現実に取り扱っている多くのブランドは単なる「眼鏡」に限られたブランドなどではなく、各種のアパレル商品・ファッション製品について世界的に著名となっているブランドばかりであるから、申立人がアパレル商品やファッション商品も取り扱う多角経営の可能性は極めて強固といえる。 ウ 申立人のグループブランドである「OAKLEY」では既にアパレル製品やファッション商品も取り扱っている(甲4)。 そもそも「眼鏡」とは、目の屈折異常の補正や目の保護のために目の周辺に装着する器具であると理解されている。視力の補正のための眼鏡はそれぞれ個人の視カ・病状に調合して作製されるものであるから、主に眼科医の処方又は眼鏡店での視力検査を経て個別に応じて調整され販売されるという特性を有している。 ところが、「サングラス」にはそのような特性はなく、商品間の関連性と商品等の需要者の共通性という点では、むしろ、アパレル商品(衣料品)・ファッション商品に極めて強く関連する商品であって、その需要者もほぼ重なり合っているといえる。 また、「サングラス」は、「GAP」、「ZARA」、「H&M」、「GU」及び「ユニクロ」といったアパレル商品の大手小売店チェーンにおいて、アパレル商品や他のファッション商品と並んで流通され販売されている社会的事実がある。 エ このような取引の実情からは、「サングラス」について広く知られている申立人の引用商標と完全同一である本件商標が、その指定商品である、いわゆるアパレル商品やファッション商品に使用されてしまうと、申立人の業務に係る商品であると誤認し需要者が商品の出所について混同するおそれがあるだけでなく、申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、需要者が商品の出所について混同するおそれもあることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第16号該当性について 申立人の商標としても知られている「WAYFARER」(ウェイファーラー)と同一の本件商標「WAYFARER」がその指定商品に使用されると、申立人が厳しい品質管理のもと製造販売している商品であるかのごとく誤解を与えることから、品質の誤認を招くため、商標法第4条第1項第16号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について 申立人の商標としても知られている「WAYFARER」(ウェイファーラー)と同一の本件商標は、申立人の商標に化体した信用・名声にフリーライドするために盗用して使用しようとするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとともに、そのような行為は信義誠実を旨とする国際商取引秩序を危うくする行為であるから、同項第7号にも該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人はイタリア・ミラノに本拠を置く眼鏡・アイウェアメーカーであり、「Vogue Eyewear」、「Ray−Ban」など多数のブランドを保有していること、「WAYFARER」は「Ray−Ban」サングラスのモデルの名称の一つであること、同名称のサングラス(以下「申立人商品」という。)は1953年頃から欧米で販売され、我が国においても販売されていること、申立人商品は国内外の著名人に使用されていること及び申立人商品を紹介等するインターネットの記事やブログが相当数あることは認められる(甲2〜甲4)。 しかしながら、申立人商品の我が国及び外国における周知性の度合いを客観的に判断するための証拠、例えば、申立人商品の我が国又は米国、イタリアなど外国における販売数、売上高など販売実績や宣伝広告費等を示す主張はなく、その証左は見いだせないため、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 その他、申立人提出の証拠及び同人の主張によっても、申立人商品及びそれに使用されている引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたと認められないものであり、また、「WAYFARER」の文字(語)は、「(徒歩)旅行者」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)であり独創性の程度が低いものであることからすると、本件商標の指定商品と申立人商品「サングラス」は、いずれも、ファッション関連の商品であり、需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、上記1のとおり、「WAYFARER」の欧文字を横書きしてなるところ、上記(2)のとおり、当該欧文字は「(徒歩)旅行者」の意味を有する英語であるものの、本願指定商品との関係において、当該文字が指定商品の品質を具体的に表したということはできず、また、需要者をして、その指定商品についてなんらかの品質を表示するものと認識させるという事情もない。 そうすると、本件商標は、その指定商品に使用しても、商品の品質を表示するものではなく、それゆえ、商品の誤認を生ずるおそれがあるということもできないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 なお、申立人は、本件商標は申立人が厳しい品質管理のもと製造販売している商品であるかのごとく品質の誤認を招く旨主張しているが、商標法第4条第1項第16号の該当性は、商標が表示していると通常理解される品質と指定商品の有する品質とが異なり、商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるか否かを基準として判断されるべきものであって、実際に商標を使用した商品がどのような品質を有しているかは、商標法第4条第1項第16号への該当性の判断に影響を及ぼすものではない。 (4)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人又は申立人商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたと認められないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標を連想又は想起させるものでもない。 そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用・名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 さらに、本件商標が、国際信義に反する又はその出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-11-29 |
出願番号 | 2021050347 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
豊田 純一 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 杉本 克治 |
登録日 | 2021-10-25 |
登録番号 | 6461347 |
権利者 | 有限会社スロブ |
商標の称呼 | ウエーフェーラー、ウエーフェアラー、ウエーファーラー |
代理人 | 弁理士法人浅村特許事務所 |