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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W0918 |
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管理番号 | 1392365 |
総通号数 | 12 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-09-10 |
確定日 | 2022-11-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6417055号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6417055号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6417055号商標(以下「本件商標」という。)は、「RePLAYER」の文字を標準文字で表してなり、令和3年1月26日に登録出願、第9類、第18類及び第20類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年7月1日に登録査定され、同月15日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2628459号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 REPLAY 指定商品 第3類、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成4年1月10日 設定登録日 平成6年2月28日 書換登録日 平成16年10月13日 (2)国際登録第578983号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 REPLAY 指定商品 第3類、第9類及び第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品 国際商標登録出願日 2007年(平成19年)7月6日(事後指定) 設定登録日 平成21年5月1日 (3)国際登録第1145990号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様 REPLAY 指定商品 第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品 国際商標登録出願日 2012年(平成24年)11月20日 設定登録日 平成25年8月30日 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品中、第9類「全指定商品」及び第18類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)本件商標と引用商標について ア 本件商標の称呼 本件商標は、ローマ文字「RePLAYER」と標準文字で横書きしてなる商標である。 本件商標の前半部「RePLAY」は、「〜を再演(生)する、再生」(甲3)などの一般的な意味で知られている既成語であり、「RePLAYER」は既成語「replay」に「er」を加えた語であり、本件商標に接する需要者・取引者は、自然と前半を占める既成語「replay」を基に、これに「er」を加えて発音を特定するものである。 したがって、語末の「ER」は、通常、「ア[●r]」(決定注:「[●r]」は発音記号であり、「●」は「e」の文字を180度回転させたような記号。)と発音されることから(甲4)、「RePLAYER」の発音は、「RePLAY(リプレイ)」と「ER(ア)」となり、ここから「リプレイア」という称呼が生ずるものである。 イ 引用商標の称呼 引用商標は、ローマ文字大文字で「REPLAY」と横書きしてなり、当該文字に相応して「リプレイ」の称呼が生ずる。 ウ 「リプレイア」と「リプレイ」の類否について 本件商標からは「リプレイア」の称呼が生じ、引用商標から生ずる「リプレイ」との差異は、聴取され難い語末における「ア」の有無のみである。 本件商標は、前述のとおり「リプレイア」の発音であり、語頭の「リ」の音にアクセントがあり、強く発音され、それに続く「プレイ」は、やや間延びして発音され、語末の「ER」は、「ア」と表され、口をわずかに開き、短く弱く発音される弱音(甲4)となるため、引用商標と共通する「リプレイ」部分が強く発せられる。 商標の類否は、時と場所を異にする離隔的観察により判断されるのが原則であることを考慮すると、本件商標は構成中の強く発音される「リプレイ」部分が引用商標と共通するものであって、語末の弱音「ア」の有無のみでは両商標を聴別することは難しく、本件商標と引用商標は称呼上類似する商標として判断されるのが相当である。 エ 小括 よって、本件商標は、引用商標とは需要者・取引者をして彼此誤認混同を生ずるおそれがある類似する商標である。 特に以下に示すように、引用商標は、ファッションブランドとして40年前から現在に至るまで継続して、世界中で使用されているものであり、本件商標がスタイリングを決めるファッションアイテムである第9類や第18類の指定商品に使用された場合、引用商標との間で取引上誤認混同が生ずるおそれがある。 (2)申立人による「REPLAY」の使用について ア 申立人について 申立人は、クラウディア・ブジオール氏によって、1981年に北イタリアのトレビゾ州アソロに設立された(甲5の1)。申立人は、創業当時から「REPLAY」をブランド名として用いており、約40年もの間、デニム製品等を製造・販売し続けている。 イ 「REPLAY」の商品への使用態様について 申立人は、被服においてはメンズ、レディース向け商品や子供服、バッグ、アクセサリー、シューズ、アイウェア、香水などファッションに関する幅広い商品を展開している(甲5の2)。ファッションは、服以外に、かばん、財布、スマートフォン用ケース、アイウェア等のアクセサリーも含め、トータルでその統一的なスタイリングが提案されるものだからである。 日本における引用商標「REPLAY」の公式通販サイト(甲6)には、引用商標が使用されている商品のごく一部、例えば「カードホルダー」、「ショルダーバッグ」、「デニム」などが示されている。 かばんや服等のファッションアイテムは、外観上のデザインが優先されることから、通常ブランド名は背面のタグや商品の隅等、小さく目立たない箇所に表示されることが普通であり、そのような表示方法において、引用商標「REPLAY」と本件商標「RePLAYER」とでは、語末における「ER」の差異のみであるため、時と場所を異にする離隔的観察では、取引上誤認混同が生ずるおそれがある。 ウ 「REPLAY」を展開する地域及び世界における店舗数等 申立人は、1981年にイタリアにおいて設立されたが、現在では、ヨーロッパ、中東、アジア、アメリカ、アフリカなど50か国以上で「REPLAY」ブランドを展開しており、全世界で「REPLAY」の単独店舗は110店舗、セレクトショップ等は5000店舗以上である(甲5の2)。 エ 「REPLAY」の日本における展開 日本においては、2011年に申立人の日本法人が設立されている(甲5の3、4)。 そして、「REPLAY」の店舖は日本全国に39店(甲7)、そのほか約100店舗近くの専門店やセレクトショップでの取扱いがある(甲7の1〜39)。甲第12号証の2の1に示された記事によると「百貨店約25、専門店やセレクトショップ約100、直営店8の計約130店舗で展開している。」とある。 直営店の第一店である代官山店が出店した際には、ウェブサイト「FASHIONSNAP.COM」において、「REPLAY」の国内初の旗艦店がオープンする旨の記事が掲載されており、「REPLAY」が日本での出店当初から注目されていたことを示すものである(甲7の1)。 また、「REPLAY」の商品は、自社サイトのみならず、ZOZOTOWN、SAFARI、マルイ等の著名サイト(甲7の40〜45)、バーニーズニューヨーク各ストア(4店舗)、オンラインストアにおいても販売されている(甲7の46)。 オ 「REPLAY」の広告宣伝活動 (ア)有名スポーツチームとのスポンサー契約 申立人は、世界的に著名なサッカーチームやラグビーチーム等のスポンサーとして契約し、また、コラボ商品を開発・発売するなど「REPLAY」がファッションブランドとして世界中で広く知られるよう努めている。 ・2013年〜2017年 サッカーチーム「FCバルセロナ」とのスポンサー契約を締結(甲8の1) ・2019年〜現在 サッカークラブ「パリ・サン=ジェルマン」の「公式デニムパートナー」を締結(甲8の2) ・2020年〜現在 ニュージーランドのラグビーチーム「オールブラックス」とファッションで新規のパートナーシップを締結(甲8の3) ・2020年〜現在 サッカーチーム「アタランタBC」との間で「公式デニムパートナー」を締結(甲8の4) ・2021年〜現在 アストンマーティンF1と「公式デニムパートナー」を締結(甲8の5) ・2020年〜現在 バイクメーカー「ハスクバーナ・モーターサイクルズ」とパートナーシップ協定を締結(甲8の6) ・2020年〜 サッカークラブ「アヤックス・アムステルダム」と「公式フォーマルウェアアンドデニムパートナー」を締結(甲8の7、甲5の4) (イ)有名人を「REPLAY」の広告塔とする効果的な広告戦術 世界的に知られるサッカー選手ネイマール氏が2015年から現在まで「REPLAY」の広告塔(ブランドアンバサダー)となっている。日本においてもこのことがネット記事となっている(甲9の1)。 有名サッカー選手は、ファッションも注目されるものであり、ネイマール氏が「REPLAY」の商品を身に着けることは、大きな広告的効果がある。現在はネイマール氏とのコラボ商品を売り出し、「REPLAY」のさらなる周知性の向上を図っている。 さらに、2021年10月より、申立人はウサイン・ボルト氏とパートナーシップを締結し、新たなコラボ商品の開発を始めた(甲9の2)。 (ウ)有名ブランドとのコラボ ・「プーマ(puma)」とのコラボ(甲10の1) ・「BATMAN」とのコラボ(甲10の2) (エ)日本におけるイベント開催を紹介する記事 ・2019年10月20日には、元サッカー日本代表の前園真聖氏をゲストに迎え、東京、銀座三越6階にてトークイベントが開催された旨の記事がある(甲11の1)。 ・2020年8月11日の記事によると、伊勢丹メンズ館誕生15周年を祝う限定コレクションのお披露目に合わせ、イベントを開催。浦和レッズの槙野智章選手がサプライズで来店したとの記事がある(甲11の2)。 カ 「REPLAY」の売上げに関する記事 (ア)「「リプレイ(REPLAY)」の2018年12月期のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は、前期比21%増の2170万ユーロ(約27億円)だった。売上高は2億3790万ユーロ(約299億7540万円)で、うち85%は国外が占めている」との記事がある(甲12の1)。 (イ)「伊ジーンズカジュアルブランド「リプレイ」を生産・販売する伊ファッションボックスの19年度業績は、売上高2億6230万ユーロ(前年度比10.3%増)、EBITDA(金利・償却・税引前利益)2800万ユーロ(30%増)の増収増益となった。」との記載がある(甲12の2)。 (ウ)「ファッションボックスは世界50か国以上で店舗を展開しており、売上高の89%を輸出が占める。19年度は全ての市場が成長したが、特に中東(49%増)、東ヨーロッパ(36%増)、アジア(10.6%増)、南ヨーロッパ(8.1%増)がけん引した。」との記載がある(甲12の2の1)。 キ 小括 前述のとおり、「REPLAY」は、申立人の創業当時から使用されるブランドであり、約40年もの間、継続的に使用されている。 現在では被服に限らず、バッグ、アクセサリー、シューズなどファッションに関連する幅広い商品を展開しており、世界的なファッションブランドとしての地位を確立している。 したがって、引用商標「REPLAY」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、世界的なファッションブランドとして日本における需要者・取引者の間に広く認識されていたことは明らかである。 (3)申立人による「REPLAY」商標登録事例 申立人は、商標「REPLAY」について、75か国以上の国や地域において商標登録を得ている(甲14)。「REPLAY」は、申立人の大事なブランドであり、これを適切に保護するために膨大な費用をかけて、これまで世界中で権利化を進めてきた。 本件登録異議の申立ては、「REPLAY」と類似し、取引上誤認混同が生ずるおそれのある商標登録を排除し、「REPLAY」を商標として適切に保護するために必要な手続きであり、申立人によるブランド「REPLAY」の保護活動の一環として行われているものである。 (4)商標法第4条第1項第11号について 特許庁の商標審査基準によれば、「商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。」とある。 引用商標は、本件商標の先願に該当し、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「REPLAY」が世界的なファッションブランドであると我が国の需要者の間において広く認識されている。 そして、引用商標は、ファッションに関連した商品を指定商品に含むものである。 すなわち、本件商標をこれらと同一・類似の商品・役務に使用した場合、出所の混同が生ずるおそれがあるといえる。 ここで、本件商標の指定商品をみるに、第9類及び第18類の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似する。 したがって、本件商標と引用商標は、取引者・需要者をして彼此誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標であり、その指定商品も同一・類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号について 特許庁の商標審査基準に照らし合わせれば、本件商標が他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であることは明らかである。 ア 本件商標は、申立人の引用商標と類似する商標であって、引用商標は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国において著名な商標であり、そして、我が国の需要者においても広く認識されているものである。 イ 近年では、ファッションブランドを運営する企業が、被服に限らず、バッグ、アクセサリー、シューズ等多角的な商品ラインナップを展開し、同一のブランド名を使用して、販売していることは周知の事実である。これは申立人においても例外ではなく、現に「REPLAY」ブランドが被服以外の幅広い商品を展開していることは前述のとおりである。需要者をしてみても、被服のみならず、自身が身に着け、日頃使用するものについて、愛好するブランドで統一して揃えたいというニーズが存在することも容易に推察されるところである。 また、申立人は、引用商標「REPLAY」と関連するブランドとして、1991年より「REPLAY&SONS(主に子供服のためのブランド)」、2003年より「WE ARE REPLAY(主にプレステージライン)」を展開する(甲5の4)。このことから、「REPLAY」と類似する本件商標についても、需要者・取引者において、「REPLAY」と関連する申立人によるブランドであるとして認識されるおそれがあり、出所の混同が生ずるおそれがあることは明らかである。 ウ ここで、本件商標の指定商品を見ると、第9類及び第18類の指定商品は、いずれもファッションと密接に関連している商品群である。 そして、これらの商品は、ファッションブランドとして現に多様な商品を展開している「REPLAY」に係る商品と密接な関連性を有するものであり、その需要者を共通にするものである。 エ そうすると、引用商標と類似する本件商標を前記指定商品に使用すると、ファッションブランドとして世界的に著名な「REPLAY」に関連する商品であると誤認し、需要者がその商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。 したがって、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は、1981年にイタリアで設立され、創業当時から商標「REPLAY」を使用し、デニム製品等の被服、バッグ、靴などの製造・販売を行っていること(甲5、甲6)、現在50か国以上で「REPLAY」ブランドを展開し、全世界における同ブランドの単独店舗は110店舗、セレクトショップ等は5,000店舗以上であること(甲5の2、3)、「REPLAY」ブランドの2018年の売上高は2.4億ユーロ(約299.8億円)であったこと(甲12の1)、申立人は2013年以降サッカーチームなどとスポンサー契約等を締結していること(甲8、甲9)及び申立人は商標「REPLAY」について75か国以上の国や地域において商標登録を得ていること(甲14)が認められる。 また、我が国においては、2011年に申立人の日本法人(FASHION BOX JAPAN株式会社)が設立され(甲5の3、4、甲12の1)、引用商標を使用した商品(以下「申立人商品」という。)は、遅くとも東京・代官山に旗艦店がオープンした2012年頃から販売されていること(甲7の1の1、他)、申立人商品は全国39店舗のほか、通販サイト、セレクトショップなどでも販売されていること(甲7)、申立人は2020年及び2021年に「プーマ(PUMA)」及び「バットマン(BATMAN)」とのコラボ商品を販売したこと(甲10)並びに申立人は、2019年10月に東京・銀座三越において、2020年8月に東京・新宿伊勢丹メンズ館においてトークイベントなどを開催したこと(甲11)が認められる。 しかしながら、申立人商品の我が国における売上高、シェアなどの販売実績や、宣伝広告の期間、地域及び規模等の広告実績を示す主張はなく、それらを定量的に確認できる証左も見いだせない。 イ 上記アのとおり、申立人商品は、我が国において、遅くとも2012年頃から販売され、全国39の店舗や通販サイトなどで販売されていることなどが認められることから、申立人商品は需要者の間においてある程度知られているということができるものの、申立人商品の我が国における販売実績や広告実績を示す証左は見いだせないから、申立人商品及びそれに使用されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品として及び同商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 なお、申立人は、商標「REPLAY」について、75か国以上の国や地域において商標登録を得ている(甲14)旨主張しているが、そのことをもって、直ちにその商標が需要者の間に広く認識されているものということはできないし、まして、我が国の需要者の間に広く認識されているということもできない。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 (ア)本件商標は、上記1のとおり「RePLAYER」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないことから、特定の観念を有しない一種の造語として認識、把握されるものである。そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「リプレイヤー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (イ)なお、申立人は、本件商標「RePLAYER」は既成語「replay」に「er」を加えた語であり、需要者・取引者は自然と前半を占める既成語「replay」を基に、これに「er」を加えて発音を特定するものであって、語末の「er」は発音記号にあるように通常「ア」と発音されることから、「RePLAYER」の発音は、「RePLAY(リプレイ)」と「ER(ア)」となり、「リプレイア」という称呼が生じる旨主張している。 しかしながら、我が国においては、例えば「player」が「プレイヤー(競技者)」、「buyer」が「バイヤー(買手)」と発音され親しまれていることから、本件商標「RePLAYER」は、看者をして語尾の「ER」が「ア」と発音されることなく、全体として「リプレイヤー」と発音(称呼)されるものと判断するのが相当である。 したがって、申立人のかかる主張は採用できない。 イ 引用商標 引用商標は、上記2(1)ないし(3)のとおり、いずれも「REPLAY」の欧文字からなり、該文字に相応して「リプレイ」の称呼を生じ、当該文字は「再生する、再生」(株式会社小学館「ランダムハウス英和大辞典第2版」)の意味を有する語であることから、「再生する、再生」の観念を生じるものと判断するのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「RePLAYER」と引用商標の構成文字「REPLAY」の比較において、両者は、2文字目の「e」の小文字と「E」の大文字の差、及び、語尾における「ER」の文字の有無という差異を有し、この差異が8文字と6文字という比較的少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、外観において相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 次に、本件商標から生じる「リプレイヤー」の称呼と引用商標から生じる「リプレイ」の称呼を比較すると、両者は語尾において「ヤー」の音の有無という差異を有し、この差異が、6音と4音という比較的短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに、観念については、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「再生する、再生」の観念を生じるものであるから、両者は観念において相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の登録異議の申立てに係る指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、その類似性の程度は低い。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれを登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 なお、申立人は、引用商標が外国において著名である旨述べるところがあるが、提出された証拠によっては、引用商標(商標「REPLAY」)が外国において著名又は周知であると認めるに足りる事情は見いだせない。 また、仮に、引用商標が、外国において著名であったとしても、上記のとおり我が国の需要者の間に広く認識されているものではないから、申立人の主張は採用することができない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の指定商品中、登録異議の申立てに係る指定商品についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-11-04 |
出願番号 | 2021008156 |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W0918)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 鈴木 雅也 |
登録日 | 2021-07-15 |
登録番号 | 6417055 |
権利者 | 三井化学株式会社 |
商標の称呼 | リプレーヤー、アアルイイプレーヤー、プレーヤー |
代理人 | 大木下 香織 |
代理人 | 仲村 圭代 |
代理人 | 小野 博喜 |
代理人 | 羽切 正治 |
代理人 | 弁理士法人YKI国際特許事務所 |