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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W054244
管理番号 1392353 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-07 
確定日 2022-08-05 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1548940号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1548940号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1548940号商標(以下「本件商標」という。)は、「IMMUVANCE」の欧文字を横書きしてなり、2020年1月8日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年6月26日に国際商標登録出願、第5類、第42類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3(2021)年8月10日に登録査定、同年10月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議の申立てにおいて引用する国際登録第1416064号商標(以下「引用商標」という。)は、「IMMUNOVANT」の欧文字を横書きしてなり、2017年10月25日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2018年4月23日に国際商標登録出願、第5類、第42類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2(2020)年2月7日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 本件商標と引用商標が類似していること
ア 称呼について
本件商標は「IMMUVANCE」の欧文字を横書きしてなるところ、構成文字に相応して「イミュヴァンス」の称呼が生ずるとみられるものである。
引用商標は、「IMMUNOVANT」の欧文字を横書きしてなるところ、構成文字に相応して「イミュノヴァント」の称呼が生じる。
そこで、本件商標より生ずる「イミュヴァンス」と引用商標より生ずる「イミュノヴァント」の称呼とを比較するに、両者の差異は、わずかに中間における「ノ」の有無と語尾における「ス」と「卜」の違いにあるが、中間音や語尾音は他の音に比べて明確さを欠く発声を以って発音されるのが通例であり、しかも中間音の「ノ」の音は、それ自体響きの弱い音で、前の「ミュ」の音に吸収されて余韻として残る程度の極めて弱い音となる。同様に、語尾音の「ス」と「卜」についても、前の「ヴァン」が強く明瞭に発音される関係で、これに吸収されて極めて弱く発音される。このため、差異音である中間の「ノ」の有無と語尾における「ス」と「卜」の違いは明確に聴取し難く、その差異は一層薄れがちとなる。
むしろ、両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含む大部分の音である「イミュ」とこれに続く「ヴァン」を共通にしており、しかもこれらの音は印象の薄い上記差異音とは異なって明瞭に強く発音されるので、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。
イ 観念について
本件商標は、既成語とはいえないものではあるが、本件商標の構成に含まれる「IMMU」の文字が、「(病気などへの)免疫、免疫性、抗体」を意味する外来語「イミュニティ」に通じる英語「IMMUNITY」の前半の文字と共通にしていることに鑑みれば(三省堂コンサイスカタカナ語辞典)、これに接する需要者・取引者をして、何か「免疫に関すること」程の意味合いを想起するか、そのような印象を連想する場合も少なくないと考えられる。
同様に、引用商標も、既成語とはいえないものではあるが、引用商標の構成に含まれる「IMMU」の文字が、「(病気などへの)免疫、免疫性、抗体」を意味する外来語「イミュニティ」に通じる英語「IMMUNITY」の前半の文字と共通にしていることに鑑みれば、これに接する需要者・取引者をして、何か「免疫に関すること」程の意味合いを想起するか、そのような印象を連想する場合も少なくないと考えられる。
そうすると、本件商標は、観念上も、引用商標と相当程度類似する。
ウ 外観について
本件商標と引用商標は、それら構成する文字の大部分である「IMMU…VAN」において共通しており、外観構成上も近似したものとなっている。
エ まとめ
そこで、異なる時間・場所を想定した隔離観察を行った場合、本件商標と引用商標は、称呼において相紛らわしく、観念上も近似する場合があり、しかも、外観上も、ともに「8字」から「10字」の比較的長い文字構成にあって、構成文字の大部分である「IMMU…VAN」において共通にしていることから、需要者等の通常の注意力のみをもってしては、本件商標と引用商標とを区別することは必ずしも容易ではない。
よって、本件商標と引用商標は、称呼・外観又は観念において類似し、紛れるおそれが高い。してみれば、本件商標は、引用商標と類似する。
2 本件商標の指定商品・役務と引用商標の指定商品・役務が同一又は類似であること
本件商標の指定商品及び指定役務は、「類似商品・役務審査基準」によれば、その全ての商品及び役務が、引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似のものである。
したがって、本件商標と引用商標が使用される商品の関連性は極めて高く、商品の用途、需要者及び取引者の範囲を共通にするばかりでなく、その商品の販売場所・販売方法においても一致している。
してみると、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と類似する。
3 考慮すべき取引の実清について
一般に医療従事者は、通常の消費者に比べて専門的知識を有し、高い注意力を有していると考えられている。
しかしながら、本件商標や引用商標が付された商品を手にするのは、何も医療従事者に限られるものではなく、実際に薬剤を服用するのは他でもない、医療の専門家ではない一般の消費者である。これらの者は、医療従事者と同等の注意力を有しているとは想像し難いものであり、必ずしも高い注意力を以って両商標が用いられるとは限らない。
特に、医薬品の販売名の中には、複数の医薬品の間で名称が類似しているものがあり、それらの間での薬剤取違えの事例が報告されている。特に、薬効が異なる医薬品と取違えた場合や、ハイリスク薬を取違えた場合は医療事故につながる可能性がある。
そこで、厚生労働省は、医薬品の名称類似に関する医療事故防止のため、「医療機関における医療事故防止対策の強化について」という通知を各医療関係者に行っている(甲3)。
さらに、厚生労働省は、「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策について」の情報提供を行っている(甲4)。
これらの通知又は情報提供においては、医薬品の販売名の頭文字の2文字又は3文字以上が一致した販売名に関しての類似性が高いとされている。
本件事案においては、本件商標が使用される医薬品は、その薬効が、引用商標が使用される医薬品の薬効とは異なる可能性があることや、免疫系疾患を含む各種ウイルス感染症等に作用するハイリスク薬である可能性があるばかりでなく、本件商標「イミュ(ヴァンス)」と引用商標「イミュ(ノヴァント)」は、語頭の2音又は3音が共通にしており、厚生労働省による医療事故防止対策の観点からも、類似性が高いものといえる。
4 結論
本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品が申立人の提供に係るものであるかの如く商品及び役務の出所について混同を生じる蓋然性が極めて高いといわざるを得ない。
しかも本件商標が使用される医薬品は、免疫系疾患を含む各種ウイルス感染症等に作用するハイリスク薬である可能性があり、とり違えて投与すると人間の命に関わる商品である。
よって、商標法第4条第1項第11号における判断で用いられる画ー的な基準である「類似」概念に捉われず、医療事故を末然に防ぐ観点からは、これを紛らわしい商標として、使用を禁止する必要があると考える。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「IMMUVANCE」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、また、本件商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界における需要者に、直ちに何らかの意味合いを認識させるといった事情もないから、一種の造語として認識、把握されるものである。
そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「イミュバンス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「IMMUNOVANT」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、辞書等に掲載されている語ではなく、また、引用商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界における需要者に、直ちに何らかの意味合いを認識させるといった事情もないから、特定の観念を有しない一種の造語として認識、把握されるものである。
そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「イミュノバント」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、共に構成中に「IMMU」及び「VAN」の文字を含むものの、中間の「NO」の文字の有無及び語尾の「CE」と「T」の相違という明らかな差異を有し、さらに、構成文字数も相違し、これらの差異が外観全体に与える影響は少なくないといえるから、両者は外観において異なる印象を与えるものであり、相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生じる「イミュバンス」の称呼と、引用商標から生じる「イミュノバント」の称呼を比較すると、両者は音数及び音構成において明らかに相違し、明瞭に聴別できる。
さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じない造語であることから、両者は観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標というのが相当である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するとみるべき特段の理由も見いだせない。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 申立人の主張について
申立人は、本件商標「イミュ(ヴァンス)」と引用商標「イミュ(ノヴァント)」は、語頭の2音又は3音が共通にしており、厚生労働省による医療事故防止対策の観点からも、類似性が高い旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標が非類似であることは上記(3)のとおりである。そして、商標法第27条第1項に「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」と規定されているとおり、同法第4条第1項第11号における商標の類否については、願書に記載された商標に基づいて判断されるべきものであって、商品や役務によってその判断が変わるものではないから、申立人主張の取引の実情があるとしても、商標の類否の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2022-08-03 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W054244)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
清川 恵子
登録日 2020-06-26 
権利者 CytoDyn Inc.
商標の称呼 イミュバンス、イムバンス 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 石田 昌彦 

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