• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X25
管理番号 1392183 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-06-17 
確定日 2022-10-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5499888号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5499888号商標(以下「本件商標」という。)は、「ECOBLUE」の文字を標準文字で表してなり、平成23年8月24日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,帽子」を指定商品として、同24年6月8日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第37号証(以下「甲○」と記載する。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上(平成30年(2018年)7月1日から令和3年(2021年)6月30日まで。以下「要証期間」という。)日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 被請求人提出の証拠(以下「乙○」と記載する。)は、本件商標権者、その専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間に、日本国内で本件商標をその指定商品のいずれかについて使用していた事実を証するものではないから、商標法第50条第2項本文の要件を具備しない。
イ 要証期間における本件商標の使用
(ア)乙1は、本件商標権者の取引先である株式会社ゲストリスト(以下「G社」という。)による陳述である。その陳述書の名義人は、G社の代表取締役であるが、印影は認印であり、誰でも容易に入手及び使用できるものであるから、同代表取締役の意思に基づいて押印されたとはいえない。したがって、本陳述書の成立の真正を否認する。
さらに、G社は、被請求人と取引関係にある様子がうかがえ、利害関係人であるから、被請求人の要請に応じて証拠書類を作り出すことが容易である。また、その陳述書は、使用又は不使用が問題となった本件審判請求後に作成されている。
したがって、乙1は、不使用による取消を免れる目的で作成されたということができ、信用性を欠く。
乙2は、被請求人が保有するエクセルで作成されていると推察されるところ、これは被請求人による改変が容易であり、日付や品番等は自由に書き換えることができるから、信用性に欠ける。
乙3は、何ら日付が入っていない。
被請求人は、納品の事実を主張しておきながら、それを示す納品書や受領書は提出しておらず、他に要証期間における使用の事実を客観的に裏付ける証拠もない。また、請求書中に本件商標の記載もない。
以上より、乙1及び乙2については証拠能力を欠くこと、乙3は日付が不明であるから、本件商標を使用した事実は存在しない。
(イ)乙4及び乙5は、いずれも2011年又は2013年に作成されたもの、また、乙6は投稿日が2016年1月27日であり、要証期間内に本件商標の使用の事実を証明する証拠書類とはなり得ないから、要証期間に本件商標が使用された事実は存在しない。
乙7は、作成日及び展示の時期が不明である。また、被請求人の常設展示室は、インターネッで検索してもヒットしないし(甲3)、外観からも判然としない(甲4)。よって、乙7は要証期間内における本件商標の使用の事実を証明していない。
乙8は、撮影日が要証期間外であることから、要証期間の本件商標の使用の事実を証明できない。さらに、乙8は、乙7に展示されている商品の拡大写真であり、室内(常設展示室)で撮影されたものであるとの記載があるが、机の色が乙7に写る机の色と異なっているから、本当に乙7の室内で撮影されたものであるかが不明であり、両証拠の関連性がない。したがって、常設展示室において本件商標が使用された事実は存在しない。
ところで、被請求人は、2011年から2016年に商標を使用していたこと、及び2021年8月時点においても使用していたことを立証し、経験則を通じて、この間使用が継続されていたことを立証する趣旨と解される。しかし、頻繁に新商品及び新ブランドが出回るアパレル業界においてはこのような経験則は妥当ではないから、被請求人としては要証期間の使用を立証する必要がある。
また、被請求人の立場にある者であれば、要証期間における使用事実そのものを証明することを目的として、乙2に対応する納品書などを含めて直近の証拠を可能な限り提出するのが通常である。にもかかわらず、乙2以外のものは2016年以前の証拠や2021年8月に写真撮影をした証拠を提出するにとどまっている。これは、要証期間に使用したことを裏づける証拠がなかった、すなわち、不使用であったことの証左であり、要証期間における使用がなかったことを強く推認させる。
(ウ)乙9は、作成日が不明であるほか、「MADE IN CHINA」と表示されており、真に本件商標権者がG社に卸したものか、また、指定商品に使用されたのかも不明であるので、要証期間における本件商標の使用の事実を証明できていない。
(エ)乙10は、カタログと電子メールとの関連性が不明であること、「広告」及び「頒布」に該当するか不明であるから、商標法上の使用(商標法第2条第3項第8号)を構成しない。よって、乙10も要証期間内における本件商標の使用の事実を証明し得ない。
(オ)以上のとおり、被請求人は種々の証拠書類を提出しているものの、いずれも要証期間における本件商標の使用の事実を証明するものではないから、商標法第50条第2項本文の要件を満たしていない。むしろ、不使用であった事実が強く推認され、本件商標は、その指定商品について、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないことが実態である。
ウ 本件商標の「指定商品」についての「登録商標の使用」に該当しないこと
(ア)被請求人提出の証拠に表された使用商標は、乙1、乙3、乙6及び乙8に記載されている上段「ECOBLUE」、下段「JEANS」の二段書きからなる商標(以下、「使用商標1」という。)、乙4、乙5、乙8、乙10に「ECO BLUE JEANS」と掲載されている使用商標(以下、「使用商標2」という)は、本件「登録商標の使用」に該当しない。
(イ)本件商標と使用商標1及び使用商標2は同一ではなく、また、社会通念上同一の商標でもないこと
a 外観における相違
本件商標は、「ECOBLUE」の文字を標準文字で表したものであり、スペース等の区切りはなく、同一の文字種、同一の書体、同一の大きさ、等しい間隔をもって外観上まとまりよく一体的に構成されている。
一方、使用商標1は、「ECOBLUE」と「JEANS」の二段書きであるものの、上段の「ECOBLUE」と下段の「JEANS」の各文字は上下段が非常に密接しており、同一の文字種、同一の書体、同一の大きさでもって外観上まとまりよく一体的に構成されているから、段書きの「ECOBLUE/JEANS」を目にした需要者、取引者が「ECOBLUE」と「JEANS」とを分離して認識するとは考えにくい。
次に、使用商標2は、「ECO」、「BLUE」及び「JEANS」の間にスペースが配されているものの、同一の文字種、同一の書体、同一の大きさ、等しい間隔をもって外観上まとまりよく一体的に構成されているから、「ECO BLUE JEANS」を目にした需要者、取引者が「ECOBLUE」と「JEANS」とを分離して認識するとは考えにくい。
よって、本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、かかる外観における相違から、社会通念上同一の商標ではない。
判決及び審決(甲5〜甲7)によれば、使用商標1及び使用商標2は、「JEANS」の語が「ECOBLUE」又は「ECO BLUE」と一体不可分に付されていることにより、本件商標とは全く異なった印象を与えるから、本件商標と使用商標1及び使用商標2は社会通念上同一とはいえない。
b 観念における相違
本件商標は、全て大文字であり、同一の書体、同一の大きさ、等しい間隔をもって外観上まとまりよく一体的に構成されており、また、称呼音数も長音を含めて5音であることから、一息に称呼し得る。よって、観念も商標全体として観察すべきである。
ここで、「ECOBLUE」は辞書には掲載のない語であるため、特定の意味合いの生じない造語として認識される。
たとえ、「ECO」と「BLUE」とで分離観察されるとしても、本件商標の構成中「ECO」から始まる語には、「economy」(経済)や「ecology」(生態学)等の多義的な意味合いが生ずるため、特定の意味合いを認識することは困難である(甲8)。そうとすると、本件商標からは「環境に配慮した青」等という特定の意味合いは生じ得ない。本件商標の登録が認められているのはその証左である。
一方、使用商標1及び使用商標2の構成中の「BLUEJEANS」という語は、辞書に掲載されており(甲9)、また、「BLUE」の語と「JEANS」の語との結びつきは非常に強いと考えられることから、何らかの「ブルージーンズ」程の意味合いを認識できる。
さらに、使用商標1及び使用商標2は、一見すると、本件商標に、識別力のない語(「JEANS」)を単に付記的に用いているようにも考えられるが、「JEANS」の有無によって観念が大きく変わるから、使用商標1及び使用商標2の構成中、「JEANS」の語は付記的に用いられているものではなく、それ一体として本件商標とは別の商標を構成するものである。
したがって、本件商標からは特定の意味合いが生じ得ないのに対し、使用商標1及び使用商標2からは少なくとも「ブルージーンズ」程の意味合いが生じ得るから、観念上互いに区別することができるため、社会通念上、同一の商標ではない。
c 称呼における相違
本件商標は、標準文字からなる商標であり、その構成に応じて「エコブルー」の称呼が生ずる。
一方、使用商標1及び使用商標2は、外観上まとまりよく一体的に構成されていることから、「エコブルージーンズ」の称呼のみが生ずる。
ここで、使用商標1及び使用商標2から生ずる「エコブルージーンズ」の称呼は、長音を含めて9音であり、格別冗長なものとはいえず、無理なく一気に称呼し得る。
さらに、「BLUE」と「JEANS」とは、辞書に掲載されるほど非常に結びつきの強いものであるため、一連に称呼するに際し、違和感は生じない。
そして、本件商標と使用商標1及び使用商標2は、同一の文字種、同一の書体、同一の大きさ、等しい間隔でまとまりよく一体的に表され、一連のまとまった意味を看取できる「ECOBLUEJEANS」を、「ECOBLUE」と「JEANS」とで分けて称呼するとは考え難い。
よって、本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、異なる称呼が生じるから、社会通念上同一の商標ではない。
審決例(甲10〜甲13)によれば、使用商標1及び使用商標2は、「JEANS」の語が「ECOBLUE」又は「ECO BLUE」と一体不可分に付されていることにより、異なった称呼が生じるから、本件商標と使用商標1及び使用商標2とは、社会通念上同一とはいえない。
d 想定される反論
使用商標1及び使用商標2から、「ECOBLUE」のみが要部となり得るという反綸が想定されるが、以下のとおり採用されるべきではない。
使用商標1及び使用商標2は、「ECO」、「BULE」、「JEANS」の各語からなるところ、外観上まとまりよく一体に表されており、ここから生じる「エコブルージーンズ」の語も無理なく一連に称呼できるものである。また、「BLUE JEANS」の語が「(ブルー)ジーンズ」を表す既存語であることを考慮すれば、「ECOBULE」と「JEANS」に分けて商標を観察することは許されない。
被請求人は、「JEANS」の語は、単に本件商標に付記的に用いられたものであると主張するかもしれないが、使用商標1及び使用商標2のいずれにおいても、「JEANS」の文字は「ECO」、「BULE」の文字と同じ大きさ、同じ書体、同じ間隔で表されているから、付記的に用いられたものではない。
また、「ECO」、「BULE」、「JEANS」はいずれも、指定商品との関係から識別力が高いとはいえないから、識別力の軽重を理由として、「ECOBLUE」の文字部分のみを分離・抽出して認識する理由はない。
e 小括
以上より、本件商標と使用商標1及び使用商標2は同一又は社会通念上同一の商標と評価できないから、被請求人の提出証拠を考慮しても、使用商標1及び使用商標2は「登録商標の使用」に該当しない。
(ウ)Healthyブランドの商品タグに示される商標について(乙9)
a 商標的な使用態様でないこと
不使用取消審判において、商標的な使用態様であるか否かを考慮した裁判例は存在する(甲25)。
乙9からすれば、「Healthy DENIM」と記載されたタグの裏面に「Eco Blue」の記載があるが、それは、すぐ左隣にある「Col.」の右側に配されている。
ここで、「Col.」とは、服飾業界では、色番号の略語である(甲26、甲27)から、乙9に示されている「Eco Blue」とは、あくまで色番号が「Eco Blue」であることを意味しているのであり、当該表示態様は、出所識別機能を発揮する「商標的な使用」とはいえない(商標法第2条第3項第1号)。
確かに、色彩の色を表す語であっても、それが意味を持たない造語のようなものであれば出所識別機能を発揮し得なくもないが、本件の場合、「Eco」及び「B1ue」の語は、指定商品(特に、ジーンズ)の分野においては、「環境に配慮した青い染料を使用していること」を無理なく認識させるものであるから、「Eco Blue」に接した需要者及び取引者がここから直ちに出所識別標識と認識するとは考え難い。
よって、乙9において示された「Healthy DENIM」と記載されたタグの裏面での商標の使用は、ジーンズについての商標的な使用には該当せず、「登録商標」の使用ではない。
なお、上記の主張をもって、Healthyブランド以外の本件商標権者のタグの使用方法が、商標的な使用であることをも認める趣旨ではないことを付言しておく。
b 本件商標と同一又は社会通念上同一ではないこと
Healthyブランドの商品タグに示される商標(乙9)が、万一商標的な使用であると判断されたとしても、乙9に記載の使用商標は「Eco Blue」であり、「Eco」と「B1ue」の間にスペースが配されており、分断されるため「Eco」と「B1ue」それぞれの意味合いが生じる。したがって、「Eco」は「Ecology」の略語であるから、「環境に配慮する」程の意味合いが、また、「B1ue」からは「青色。藍色。」程の意味合いが生じる。
また、乙9は、商品タグの色彩を表す「Col.」の欄に記載されているから、「Eco Blue」からは「環境に配慮する青」の意味合いが暗示的に生じる。
一方、本件商標「ECOBLUE」は造語であるから、特定の観念を生じ得ない。
よって、観念が異なるから、本件商標と「Eco Blue」とは社会通念上同一の商標ではないため、「登録商標の使用」に該当しない。
(エ)使用商標1及び使用商標2の使用は指定商品についての使用ではないこと
a 使用商標1及び使用商標2における「ECOBLUE JEANS」のタグの使用が、「洋服」、すなわち「ズボン」に当たるジーンズ(以下、「対象指定商品」という。)の使用ではなく、加工役務に対する商標の使用である(乙1、乙3、乙6、乙8)。
(a)本件商標権者は、1960年にランドリーとしてスタートし、1965年にデニムの「洗い加工」をスタートして以来50年以上デニムを洗い続けている(甲28)。また、そのホームページには、「表情豊かなデニムを洗いの技術で生み出し、まるで長年履き続けたような味わいを実現する加工技術により、一本一本丁寧に仕上げます」とある(甲29)。
これらの事実から、本件商標権者の主要業務はジーンズの加工技術である。
(b)次にジーンズとウォッシュ加工について、ジーンズの誕生には諸説あるが、一般的には、1873年にアメリカのリーバイ・ストラウス社が販売したリベット補強済みパンツがジーンズの原型とされている。もともとは、炭鉱夫の作業着であったジーンズであるが、1950年代になると、若者の反抗の象徴としてハリウッドのスター達が着用するようになり、市民権を得るに至った。そして、ジーンズはどちらかというと新品ではなく、履き古した色落ちの美しいジーンズが重宝される傾向にある。これは、アメリカの黄金期である1950年代製のいわゆるヴィンテージジーンズが愛好家の間で、高値で取引されている傾向からも明らかである。しかし、新品の青々としたジーンズから普通に穿いたのでは、その色落ちまで年単位の期間を要する。そこで、各社は、ジ一ンズについてウォッシュ加工を施し、新品でありながら、着古したジーンズのような味わいを作り出すに至っている(甲30、甲31)。
(c)そして、本件商標権者は、前述したようにジーンズのウォッシュ加工を主要業務とするメーカーであり、その商品に付しているタグは、「ECOBLUE JEANS」と称される完成品であるジーンズに対して加工・処理を施した証明として付されるタグであるから、製品であるジーンズについて特別なウォッシュ加工が施されているという点において品質表示機能が発揮されている。
(d)したがって、本件商標権者の使用は、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」の役務における使用である。
また、被請求人は乙6において、人気俳優の公式Facebookの投稿の写しも提出しているが、その投稿コメントに対して、「うちの旦那、ジーンズ加工の仕事してます(中略)。なにかあれば作りますよ!(あ、作らせます(笑い))」との返信コメントが寄られている。このことからも需要者、消費者は、そこに掲載されているジーンズに付されているタグは、ジーンズそのものではなく、特定の加工処理が施されたジーンズに付されているタグであると認識していることが伺い知れる。
(e)ここで、類似商品・役務審査基準によれば、「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」については、第40類の役務である。
一方、対象指定商品は「ジーパン」であるが、こちらは類似商品・役務審査基準によれば、第25類に属する。
そして、当該役務と商品は、非類似である。
(f)よって、使用商標1及び使用商標2の使用は、対象指定商品について使用をしていたものではないから、「登録商標」の「使用」にあたらない。
b 販促配布用に制作されたPDFカタログと社内メール(乙10の1〜乙10の3)が本件商標の「使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当しないこと
(a)立証趣旨によれば、ECOBLUEの販促用PDFカタログを本件商標権者の社内メールにより社員に配布した事実を立証しようとしている。
しかし、そのようなカタログ(乙10の1、2)が社内メール(乙10の3)に添付されているPDFカタログと同一であることは何も立証されていない。また、社内メールには、サスティナブル加工のサンプルとはっきりと明示されていることからも、当該PDFカタログは、第25類「洋服」のカタログではなく、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」のサンプルカタログであることは明らかであり、本件商標の対象指定商品の使用証拠とはならない。
したがって、「商品に関する広告」には該当しない。
(b)仮に当該PDFカタログが「商品に関する広告」に該当するとしても、次のとおり、「頒布」に該当する事実はない。
「頒布」とは一般公衆による閲覧可能な状態に置くことをいう(甲32)ところ、ジーンズのカタログ(乙10の1)と社内メール(乙10の3)に添付の資料との関連性は不明だから、そのカタログが一般公衆により閲覧可能な状態にあったことについては何ら証明されていない。
よって、「頒布」に該当する事実はなく、「使用」に該当しない。
エ 被請求人の権利濫用主張に対する反論
被請求人は、請求人について、利害関係が見当たらない一個人にすぎないことから、本件審判請求が権利濫用的な請求であるというが、以下のとおり、権利濫用に該当しない。
商標法第50条は、請求人適格を「何人」もとし、何ら限定を設けていない。また、不使用取消審判の請求人に登録商標の使用意思等を要求していないから、事前の接触や交渉なく、審判を請求したとしても、何ら権利濫用には当たらない。被請求人の主張からは、請求人が専ら被請求人を害することを目的としていたことをうかがわせるような事情もうかがえない。したがって、被請求人の主張は独自の見解であり、かつ、証拠に基づかない憶測にすぎない主張であるから到底採用されるべきものではない。
以上より、本件審判は権利濫用によって請求されたものではなく、被請求人の主張は失当である。
(3)口頭審理陳述要領書(令和4年5月16日付け)
ア 陳述書(乙1、乙15の1、乙16)は、G社の存在及び真の代表者であるか不明であるから、信用できない。
陳述書(乙17)については、株式会社Haunt(以下「H社」という。)も同様であるから、信用できない。
イ REDCARDブランドの販売に係る使用
(ア)被請求人は、要証期間に、本件商標をその指定商品に使用した事実を直接示す客観的な証拠を提出していない。
(イ)被請求人の主張は、法的根拠を欠き、要証事実への推認力もないから、失当である。
a 根拠条文を示していない。
b 最初と最後の時点において商品の販売事実を証明した場合、その間も当該商品が継続的に販売されていたことを推定するなどと規定する条文はない。
c 被請求人の論理では、要証期間の使用を証明する必要がなくなり、業務上の信用が化体しなくなるとして3年の期間を設けた趣旨を没却する。
d G社は、被請求人の利害関係人であるから、その代表者の陳述書は信用できない。
e H社は、G社と同じビルにあるG社の直営店のようであるから、両者は密接な取引関係がある。したがって、H社は、被請求人との関係においてG社と同視でき、その店長の陳述書(乙17)も信用できない。また、同書に記載の事実を裏付ける証拠もない。
f 被請求人は、ジーンズの加工は流行に左右されないから、引き続き販売されたことが社会経験上導かれる事実であると主張するが、そのような経験則は証明されていない。立証責任は被請求人にある。
g 復刻版など販売停止された商品が再販売されることはあり得る(甲33、甲34)ところ、被請求人は、製造販売を一度停止したものの、要証期間後に開始した可能性がある。
(ウ)オンワード社(以下「O社」という。)向け説明資料英語版について
西江氏のO社宛てメール(乙12の2)には、説明資料(乙12の1)が添付されていたことの証明はない。
仮にO社に送付されたとしても、同資料の内容は専ら浄化技術に関するもので、本件商標の指定商品と無関係であるから、使用(商標法第2条第3項第8号)に該当しない。
(エ)型番「26403−afm」の販売について
ジーンズの写真(乙13)は撮影時期が不明であり、その他の証拠(乙2、乙25、乙26)は改ざんが容易であり、乙26は押印がなく、関連性や信用性がないから、販売の事実は証明されていない。
(オ)H社による型番「26403−afm」の商品の仕入れ
H社の陳述書は信用できず、その事実を裏付ける客観的証拠がない。被請求人の主張もH社店長の証言は、ECOBLUEのタグが商品に付されていた蓋然性が高いなどと憶測にとどまっている。
ウ HealthyにおけるEco Blueの使用
(ア)型番「HL27636−ebl」等の商品
a Healthyブランドの商品タグ(乙9)、G社の陳述書(乙15の1)、発注明細書(乙28)、Packing List(乙29)から、埼玉県の企業に納品された事実は証明されていない。
(a)G社は、被請求人の利害関係人であるから、その代表者の陳述書(乙15の1)は信用できない。
(b)発注明細書(乙28)も、利害関係人たるG社が発行したもので、その日付も容易に改変できるから信用できない。
(c)発注明細書(乙28)は、G社がその子会社と称する企業に宛てたものにすぎず、証拠上、本件商標権者と何ら関係がない。
(d)発注明細書(乙28)とPacking List(乙29)の合計数量は一致しないから、商品の関係が不明である。
(e)輸入者(使用の主体)が誰か証明されていない(仮に埼玉県の企業が輸入者であれば、被請求人の使用権者ではない。)。
(f)被請求人は製造も加工も行っていないため、同人の意思による輸入であるのか不明である。
b 衣類の色等の特徴を示したにすぎないから、商標的使用ではない。
(a)カタログに掲載されている各商品名は、「Pink」、「Cactus」、「Quinua」などで特定されている(乙15の2)。
(b)カタログには、例えば型番と英文字が掲載されている。青系の衣類「HL27636−ebl」、「Eco Blue」、黒系の衣類「HL31636−ebk」、「Eco Black」、青系の衣類「HL68620−el」、「Eco Light」、青系のパンツ「HL58527−df」、「Dark Fringe」
これらの対応関係からすれば、各型番を構成する小文字は、色彩若しくはその照度、又は加工の品質等を示した英文字の略称であるから、英文字も商品名を表示しているわけではない。
(c)発注書(乙28)やPacking List(乙29)では、「COLOR」欄に「Eco Blue」又は「ebl」の文字が記載されており、これは、色として認識されていることの表れである。
(d)なお、Healthyブランドの商品タグ(乙9)が商標的使用でないことは、既に述べたとおりである。
(イ)有限会社シーガルディレクション(以下「S社」という。)への販売及びウェブサイトでの販売について
S社への販売事実は、客観的に証明する証拠がない。
次に、ウェブサイトでの販売については、販売の事実の証明もなく、商標的使用でもない。
a 検索ページ(乙11の2)には、2021年3月31日付けHealthy denimに関する記載があるが、当該ページで本件商標は使用されていない。
b ウェブサイト(乙11の1)の日付は、2022年3月23日である。要証期間の使用ではないから、検索結果と関係がない。
c 甲35には、商品写真が「EcoBlue」等の文字とともに掲載されている。当該文字が商品名であるなら「青」、「黒」の色が記載されるはずだが、そのような記載がないから、「EcoBlue」等の文字は色を示している。
d 色、サイズ及び数量は、対象物及び代金額を特定するための必須要素である。
ウェブサイト(乙11の1、甲35)には、「サイズ×カラー」欄以外に色を選択する項目はない以上、「EcoBlue」等の欄は色を指定する役割を担っている。
そして、被請求人が指摘する写真画像内の「EcoBlue」の文字は、「サイズ×カラー」欄との対応関係を示している。このような対応関係は、他の写真画像にも存在する(甲36、甲37)。
e 被請求人は、消費者がどのように色を選択するのか何ら言及していない。
f 写真画像内に色を示す文字が表示された画像も存在する(甲36、甲37)。
(ウ)以上のとおり、型番「HL27636−ebl」等の商品の輸入、並びにS社への販売及びウェブサイトでの販売による使用の事実について、証明されていない。
エ 本件商標権者の展示室について
(ア)本件商標が付された商品又はパンフレットが、要証期間に展示又は頒布されたことを直接示す証拠の提出はない。
(イ)被請求人主張のとおり、建物の看板(乙19)からすれば、展示室と称される部屋を直ちに認識できないから、取引先に道案内を要する。そうすると、来訪者は案内された者に限定される(乙20の1、2、乙22)。
しかし、501号室の来訪の事実や本件商標が使用された事実は証明されていない。
(4)上申書(令和4年7月4日付け)
ア Healthyブランドにおける「EcoBlue」の使用に対する反論
(ア)a 被請求人は、乙11の1を根拠に、S社が品番「HL27636−ebl」の服を販売した事実から、カタログ(乙15の2)が2020年秋頃に示されたはずであると主張する。
しかしながら、S社ウェブサイト(乙11の1)に2022年3月23日以外の日付はなく、要証期間にS社が販売に及んだ事実はない。そうすると、このカタログがS社に示されたことは合理的に推測できず、それを示す客観的な証拠もない。
したがって、当該カタログがS社に提示された事実は存在しない。
b 製品発注明細書(乙28)に係る取引の依頼については、株式会社フォーブロックス(以下「F社」という。)が本件商標権者に依頼した証拠も、それを受けて本件商標権者が中国製造会社に依頼した証拠もない。納品については、パッキングリスト(乙29)があるものの、埼玉県の会社に届くまでの経過を示す証拠はない。
そこで、以下を考慮すれば、F社と本件商標権者の間の取引及び本件商標権者と中国製造会社の間の取引はなく、タグが、品番「HL27635−ebl」、「HL27636−ebl」、「HL27637−ebl」、「HL27465−ebl」で特定される衣類に付された事実もない。
(a)明細書(乙28)はG社がF社に宛てた発注書にすぎず、F社が本件商標権者に依頼したことを示す証拠ではない。また、F社が本件商標権者発行の請求書(乙27)に記載の金額を支払ったという証拠がないから、その請求書が実際発行されたのか明らかではない。
そうすると、F社が本件商標権者に本当に依頼をしたのか、その依頼を受けたことにより請求書が発行されたのか、因果関係は明らかではない。
したがって、本件商標権者とF社間の取引は証明されていない。
なお、乙27は本件商標権者が発行したF社宛ての請求書であるところ、このデータを保有しているのは被請求人であり、容易に日付を変更できるから、信用性を欠く。
(b)被請求人は、発注数量と納品数量が10%程度前後することは業界慣行であり、受け取った数量に見合った金額が支払われていると主張する。
しかしながら、そのような業界慣行の証明がなされておらず、F社が受け取った数量に見合った金額(乙27)を支払ったことを示す証拠も存在せず、主張の前提を欠く。
なお、乙32の数量と乙27の数量を比べると、後者の方が数量は若干多いが、製造数量より多くの数量が納品されることは不自然である。
(c)中国製造会社は、同社のインボイスと称する書面(乙32)について、それ以外に同社発行の書面がない以上、同社のインボイスか否かの真偽を判断する材料がないため、同社が乙32を作成したものか明らかではなく、署名もない。また、当該インボイスは、本件商標権者の香港支社宛てであるところ、被請求人も香港支社を通じるなどして作成しようと思えば作成できるから、信用できない。
次に、インボイスと称する書面(乙32)に対して本件商標権者から支払われたことは証明されておらず、同インボイスが発行されたかは明らかではない。そうすると、本件商標権者が中国製造会社に本当に依頼していたのかについて疑義が生じる。
また、インボイスが発行されたとしても、依頼主が本件商標権者であるとすれば、その宛先はなぜ本件商標権者ではなく、その香港支社であるのかが明らかではないから、本件商標権者の中国製造会社に対する依頼と同インボイスの関係も不明である。
したがって、本件商標権者と中国製造会社の取引が存在したといえるほどの立証はされていない。
(d)被請求人は乙31を提出したが、第1に、署名押印がないため、テンタック株式会社(以下「T社」という。)により作成されたかは明らかではない。T社がG社の依頼を受けて作成したものであれば、乙5のようなT社発行の納品書が存在するはずであるが、当該書面が提出されていない。
第2に、乙31のタグ種欄には「HDHT−01」とあり、タグのデザイン図が表示されているが、T社がデザイン資料として作成したのであれば、「発注No」欄は「受注No」欄として表示されるはずであるから不自然である。
第3に、乙31は誰でも容易に作成可能である。
以上から、真にT社により作成された書面であるか不明だから、乙31は形式的証拠能力を有しない。
さらに、仮に形式的証拠能力を有するとしても、記載内容は単純で改変も容易である。タグ種欄やデザイン図の品番などを変更することは容易であるから、信用性を欠く。
以上より、乙31は、「HDHT−01」が、タグ(乙9、乙31)であることを客観的に証明しない。
(e)被請求人は、中国での製造の際に、明細書の発注指示に基づいてタグが衣類に付されたと主張する。
しかしながら、その明細書はF社宛てであり、中国製造会社宛てではないから、中国製造会社が日本語で記載された明細書を受け取ったとは考えられない。そうすると、中国製造会社がどのように指示を受けたのかについて疑義が生じるが、これに関する証拠はない。
また、このタグがいつ誰により中国製造会社へ送られ、いつどこでタグが衣類に取り付けられたのかを示す客観的な証拠はない。
加えて、このタグが衣類に付された状態で輸入されたことを示す客観的な証拠もない。
以上を総合すれば、本件明細書に関する本件商標権者とF社との取引及び本件商標権者と中国製造会社との取引が行われたことが証明されていないから、各取引が行われた事実はない。万一、各取引があったとしても、両取引は無関係である。
いずれにせよ、タグが「HDHT−01」を指すかは明らかではなく、タグが衣類に付されたことを示す客観的証拠はない。
(イ)a 本件カタログには衣類(青)及び色違いの黒の衣類が掲載されている。「HL27636−ebl」などの品番の直下に「Eco Blue」又は「Eco Black」、「Ly100%」という素材表示及び金額が順に記載され、太字で「Pink」、「Cactus」、「Quinua」、「Guava」との記載があり、その真横に「New」と赤字で記載されている。
赤と黒の2種類があるところ、それぞれの色に対応して「Eco Blue」と「Eco Black」が区別されていること、「Eco Blue」、「Eco Black」の文字、素材表示や金額は太字ではないのに対し、品番と「Pink」、「Cactus」などの文字は太字で強調されていること、通常「New」と表示して新商品であることを強調する場合、その文字は商品名付近に記載されることが多いことを勘案すれば、「Pink」、「Cactus」などが衣類の商品名であり、「Eco Blue」は色を示しているにすぎない。
b タグに表示されている「Style Guava」は商品名を、「Eco Blue」は色を、「Quality LYOCELL 100%」は素材「Ly100%」を示している。そして、「Col.」とは服飾業界では色番号の略である(甲26、甲27)ことを併せ考えれば、「Eco Blue」は色を示している。
さらに、明細書及びパッキングリストでは、「Eco Blue」の文字が「COLOR」欄に記載(乙28、乙29)され、「品名」欄は空白で、「色番」に「Eco Blue」の省略である「ebl」が記載されている(乙27)。S社のウェブサイトにおいても、カラーを示す態様で「Eco Blue」の文字が利用(甲35)されており、取引先を含む関係者が色と認識している表れであるから、一般消費者であれば色を示していると認識する。
c 以上より、「Eco Blue」の文字は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標であるから、登録商標の使用に当たらない。
(ウ)被請求人は、環境に配慮した加工技術である点を一貫して主張しており、加工処理の資料(乙12の1)も踏まえると、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理」の役務について使用していると評価できる。
したがって、商品について使用していない。
イ REDCARDジーンズに対する反論
(ア)a 業務日報(乙33の2、3)の対象ジーンズ欄の「出荷日」欄にはいずれも「?」と記載されており、出荷されたか否かは明らかではない。
また、対象ジーンズ74本が記載されているG社宛て請求書(乙2)は被請求人が作成したものだから、その内容をいつでも変更し、印刷、押印できるから、証拠の信用性を欠く。さらに、その請求書の請求金額がG社から支払われたことを示す証拠がない以上、その請求書が現実に発行されたか否か明らかではない。
なお、G社代表者及びH社店長は、被請求人の取引先で利害関係人であるから、陳述書(乙1、乙17)は信用できない。
したがって、対象ジーンズ74本がG社へ出荷されたことは客観的に証明されていない。
b 業務日報(乙33の2、3)の欄外の「附属(下げ札・袋)」は、対象ジーンズとの関係ではECOBLUE JEANSと二段書きされたタグ(乙3)を意味する。
そして、「×」表示は、そのタグが存在しないため検査されなかったことを示すから、業務日報は対象ジーンズにタグが付されていなかったことを示している。
この点に関し、被請求人は、陳述書(乙34の1)を提出するが、それは被請求人の検査課長による陳述で、被請求人と密接な強い利害関係を有するから、被請求人に不利な陳述をすることはあり得ない。
さらに、多数の被服について日々検査を行っている者が、1年以上も前の事実について、指示者を特定し、74本のジーンズにタグを取り付けたことを正確に記憶しているとは考えられない。およそ業務日報を確認してそのように思い至った程度にすぎないことは想像に難くない。
このように、陳述書は信用性を欠く。
c 要証期間に、タグが付された状態でジーンズが販売されたことを示す客観的な証拠はない。
(イ)a タグの表示は、「ECOBLUE」及び「JEANS」の文字を上下二段に表示したもので、二段表示であるものの、同一の文字種、書体、大きさで外観上まとまりよく一体的に構成されており、「エコブルージーンズ」と一気に称呼できる程度の長さ(9音)である。
「ECOBLUE」の部分は、被服の加工技術の製法(乙12の1)や色といった品質を示すものであり、当該部分自体がジーンズの標章として機能しているものではなく、「ECOBLUEJEANS」全体で「ECOBLUE」という品質を備えたジーンズの標章として機能するものである。
また、説明資料(乙12の1)には「ECOBLUEJEANS(R)」(審決注:(R)は「R」の文字を円囲いしたもの。)と記載され、被請求人自身が一連一体であることを認めている。
b 本件商標は、タグに係る標章と外観及び称呼は異なり、社会通念上同一ではない。
c 以上より、被請求人は、本件商標と異なる標章が記載されたタグを使用していたにすぎず、本件商標をジーンズに使用した事実はない。
(ウ)「布地・被服又は毛皮の加工処理」の役務についてタグを使用しているから、商品について使用していない。
ウ 展示室での展示に対する反論
使用商標を付したジーンズの展示が要証期間にあったことを証明する証拠は、被請求人から提出されていない。
乙30及び乙7は、要証期間外のものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、口頭審理陳述要領書、手続補正書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙1から乙34(枝番号あり。)を提出した。
(1)答弁の理由
ア 本件商標権者は、要証期間に、本件商標「ECOBLUE」を、「洋服」の「ズボン」、すなわち「ジーパン」にタグを付して、日本国内の業者に販売しており、本件商標を使用している。
イ ジーパン等の販売(乙1〜乙6、乙9)
(ア)本件商標権者は、岡山県において、主としてデニム生地のジーパン等の製造、加工、販売をしている会社であり、ジーンズ製品の製造を自らは手がけない販売事業者が主要な取引先である。例えばG社はそうした取引先の1つである。
(イ)本件商標権者は、自社で製造、加工したジーンズが、特に環境に配慮した加工工程を経た製品である場合、すなわち、染色等に大量の水を要するジーンズの製造・加工において、ほぼ100%リサイクル水を用いる等の環境に配慮された適合製品である場合にのみ、需要者に環境に優しい特徴を強く訴求するべく「ECOBLUE」と書かれた商品タグを商品に付している(乙1、乙3)。
(ウ)本件商標権者の取引先の1つであるG社は、デニム製品ブランド「RED CARD」及び「Hea1thy」において、「ECOBLUE」タグを付したジーパンを販売している(乙1、乙3、乙6、乙9)。そして、同社代表取締役社長の陳述書(乙1)にあるとおり、本件商標権者は、2013年より現在に至るまで、これらのタグの付いた商品をG社へ納入している。G社は、自社店舗「HAUNT」において、これらの製品を消費者に店頭販売している。
(エ)具体的販売の事実
a 本件商標権者は、2021年3月9日に、「品番26403−afm」のジーパン74本をG社へと納品している。この商品には、「REDCARD」のタグとは別に「ECOBLUE」のタグが独立して付されている(乙1)。また、本件商標権者の請求書にも、同日に当該品番を74本納品したとの記載がある(乙2)。当該商品に「ECOBLUE」のタグが付されていることは、陳述書に記載の写真からも明らかである(乙1)。
b 「ECOBLUE」の商品タグが付されたG社のジーパンが一般消費者に販売されていた事実は、例えば、人気俳優の公式Facebookにおける2016年1月27日の投稿からも確認できる(乙6)。遅くとも、「ECOBLUE」のタグが付されているジ一パンが2016年の時点で市場に流通していたことが確認できる。
c なお、このECOBLUEの商品タグ(乙3)は、2011年12月に本件商標権者がT社に発注して作成したものである(乙4の1)。そして、2013年の納品書(乙5の1〜3)からも、本件商標権者は、遅くとも2013年以降、環境配慮型の製品にこれらのタグを使用することができた。かかるタグにおける青字のゴシック体で書かれた「ECOBLUE」のロゴ(乙3)は、本件商標と社会通念上同一である。かかるタグが2013年以降使用されていることを合理的に裏付けるものである。
d その他、G社向けのHealthyブランドの商品タグにも、裏面にECOBLUEと記載されている(乙9)。これも、環境配慮型の加工商品にのみ記載される表示である。
ウ 商品カタログ及び商品展示について(乙7〜乙10)
(ア)本件商標権者は、2019年12月20日に、持続的社会環境適合のサスティナブル加工が施された「ECOBLUE」のジーンズ製品について、自社社員の販促配布用にPDFカタログを制作した(乙10の1、2)。
このPDFカタログは、同日、本件商標権者の社員にメール配布され(乙10の3)、以降、販売事業者との商談において、社員は、適宜印刷のうえ、取引先に書面にて配布している。
(イ)また、本件商標権者は、デニム製品の販売事業者向けに、2019年秋に東京の代官山に展示室を開設している。本件商標権者は同所において、「ECOBLUE」のタグを付したジーパンの見本を展示しており、販売事業者が本社に来訪すれば、これらに容易に接することができる状態におかれていた。かかる展示は2020年秋より常設の展示であり、2021年8月末現在まで継続している(乙7、乙8)。
権利濫用による請求人適格について
請求人は当業者ではなく、利害関係が見当たらない一個人にすぎないから、本件審判請求が権利濫用的な請求であることを念のため付言する。
請求人は、これまでにも異議申立案件などの申立人として関与しているようである。もっとも、1つはゲーム分野、他は太陽電池モジュールであって、相手方も技術分野もバラバラである。
加えて、本件は衣料品であるから、およそ業態に脈絡がないことは明らかである。加えて、請求人は本件商標と類似の商標に限らず、何らの商標出願もしておらず、また登録商標を保有しているわけでもないなど、請求人が衣料品事業に関わっている形跡も見当たらず、利害関係を示す事情は一切うかがわれない。
してみると、およそ請求人としての実態はなく、権利濫用又は事実上の名板貸しである不当な申し立てであることが強く懸念される。いわゆる同業者が調べれば、あるいは、被請求人に照会すれば、常設展示場などにおいて、当社のジーンズにおける使用状況を少なくとも合理的に知り得る機会があったはずである。請求人は、本件商標権者の取引実態を十分確認することも、事前の接触や交渉もなしに、唐突に不当な審判請求に及んでいるものであって、被請求人に煩雑な立証の応答負担を強いることとなっている。
こうした対応は、およそ無関係な第三者が殊更に制度を悪用するに等しいものであるから、かかる行為は厳に戒められなければならないものであり、ここに強く抗議するとともに、権利濫用であることを念のため付言する。
(2)口頭審理陳述要領書(令和4年4月25日付け)
ア REDCARDブランドの販売に係る使用について
(ア)G社は、REDCARDやHealthyといった高級ブランドを展開する被服卸売業をしている会社であり、REDCARDはジーンズ製品に用いられているG社の主要ブランドの1つである(乙1)。
そして、本件商標権者は、G社の求めによりREDCARDのジーンズを製造し、G社に販売している(乙1、乙14、乙16)。REDCARDは日本製であり(乙13)、岡山の工場で製造、加工されている。
(イ)本件商標権者の製造するジーンズ製品の一部には、新品でありながらあらかじめ着古されたような使用感を持たせた美観とするために、縫製後のジーンズに脱色加工(ヴィンテージ加工)を付与するものがある。
従来の脱色加工では薬品が使用されており、さらに色落ちによる青い廃水が周辺環境を汚染するという問題があった。そこで、持続的な社会の実現を志向し、本件商標権者はオゾン加工によって薬品を用いずに脱色することに業界で最初に取り組み、オゾン処理用の設備もデニム業界では先駆けて導入した。
さらに、2020年には本件商標権者は廃水のさらなる浄化とリサイクルも組み合わせ、使用する水の量を大幅に削減することに成功している。そこで、本件商標権者は一連の脱色加工の施された付加価値の高い衣類をECOBLUEと称して、2013年来、他と差別化してアピールしている。
(ウ)本件商標権者は、ECOBLUEの紙タグ(乙3)をはじめとした紙製商品タグの制作をT社に依頼し、2013年に13,000枚(3,000枚+5,000枚+5,000枚)の納品を受けている(乙5)。この紙タグは、2013年以降、REDCARDブランド製品のうち、オゾン脱色による加工品にのみ取り付けられてきた(乙14、乙16)。
REDCARDに2013年からECOBLUEが導入されたことは、陳述書(乙1、乙14、乙16)からも明らかである。そして、2016年1月の俳優のFacebookにおいてもECOBLUEの紙タグが付された製品写真が掲載されていることから、タグが使用された商品が過去に流通していたことは紛れもない事実である(乙6)。
そして、2022年現在も、G社がREDCARDについてECOBLUEのメリットをアピールしていることは、2022年1月の雑誌記事(乙30)からも推認できる。してみると、2013年から現在に至るまで、ECOBLUEを商品訴求に使用し続けている。
さて、脱色加工はビンテージ感をもたらす加工であって、ジーンズの加工では定番のスタイルの1つである。全てのジーンズに洗いざらしや着古した加工を施すわけではないのは当然だが、他方で、短期的な柄物の流行りの衣服といった流行に左右されるものとは異なる、いわばスタンダードな路線として定着をみている加工手法であるから、流行や短期の場当たり的な使用といったものではない。請求人の主張は、ジーンズに当てはまった議論とはいえない流行り廃りの大きな被服を持ち出しているにすぎない。ジーンズの裾の太さ、腰の高さなどのデザインではなく、その仕上げの仕方であるから、流行りに直結するものではない。
2013年に使用が開始され、現在も使用されているとなれば、これがおよそ一貫して引き続き販売されてきたであろうことは、社会経験上導かれる事実といえるものであり、これを阻害する事由があるというのであれば、請求人が具体的に指摘すべきである。製造できなかった事情、明らかに製造しないはずであるといった具体的な背景事情があるなら、適示すべきであるところ、単に、被服は流行ものだ、という主張が述べられたにすぎず、こうした事情は全く見当たらない。
最初と最後の使用が示されている以上、およそその間の使用が合理的に推認できるのは当然のことである。そして、芸能人のFacebookの写真(乙6)は、無関係な第三者による掲載であり、2016年当時紙タグが使用されていたことを強く推認させる。そして、現在の使用が否定されるいわれはなく、引き続き使用されていたことが推認される状況といえる。かかる事情のもとで、G社代表取締役の陳述書(乙1、乙16)の内容とも矛盾していない。
また、セレクトショップHAUNTの店長も、5年以上ECOBLUEが使用されていたことを認めている(乙17)。セレクトショップの店長は、一般消費者に製品の特性を丁寧に説明する必要がある立場にあることから、およそ商品のREDCARDのことを熟知している立場にある人物であり、その陳述は信用に値するものである。
(エ)ECOBLUEのタグのついたREDCARDの製品の1つが、2021年3月に本件商標権者からG社に74本製造販売された型番「26403−afm」である。この製品には、ECOBLUEの紙タグが商品に吊り下げられている(乙1、乙13)。
本件商標権者は、G社に対する2021年3月の請求書(乙2)に示すように、ECOBLUEタグが付されている型番26403−afmを74本販売している。
なお、改めて確認したところ、同商品は、2019年12月20日にG社から本件商標権者に対して101本の発注があり(乙25)、2020年3月11日に3本、14日に98本が納品されている(乙26)。
(オ)2013年12月作成のT社の紙タグ13,000枚は、2021年まで使用されており、審判請求を受けた時点では残部を有していた。2022年になって、残数がなくなったので、新たにタグを発注しており、単にタグが残っていたから新たに印刷を依頼しなかったに過ぎない。
乙2及び乙26の販売数量実績に基づいて、例えば2013年12月から月100本にタグをつけて出荷し続けたと仮定した場合、2021年6月までの91か月で必要となるのは9,100枚となる。実質的にREDCARD向けにのみ紙タグ(乙3)が使用されていた実情からすると、13,000枚を使い切っていなかったことは、合理的に説明できる。したがって、紙タグに残数があったことに何ら矛盾はない。
なお、他社との取引では、脱色加工した製品が多く製造されたものの、これらにはECOBLUEの布タグが利用されており、別デザインであった(乙24)。
また、他社向けのサスティナブル加工の説明資料英訳版(乙10の1、2)は、被請求人が他社のために用意したものである。タグの説明の項目には、ECOBLUEのタグの見本デザインとして乙24と同じ布タグのデザインが呈示されている。もっとも、取引先が希望すればデザイン変更ができる旨を提案していた。
このような事情は、紙タグ(乙3)が使用されていたのはREDCARD向けのみであったことをうかがわせる。
乙7の写真の中には、乙3の紙タグの添付された商品もあるが、それ以外のバリエーションのタグも見本として提示されていることが分かる。このように、顧客先の希望でタグのデザインは変更し得るものであったことから、当初の見込みよりも残数が生じたのは事実である。
なお、後述のHealthyのブランドはG社のための製品であるが、Healthyは中国の工場で製造加工される関係で、この紙タグ(乙3)は付されていない。以上のことから、たとえ他製品や他社との取引が継続的にあったとしても、紙タグ(乙3)の残数には全く影響しなかった。
(カ)G社と同じビルのセレクトショップの運営会社に対して、2021年4月2日に型番26403−afmのREDCARDのジーンズを販売している(乙17)。
また、同店の店長も、型番26403−afmの2021年4月の購入の事実に加えて、過去5年以上ECOBLUEの取り扱いがあったことを認めている(乙17)。
仕入れにも関与する店長がECOBLUEの取り扱いを証言している以上、商品にECOBLUEのタグが付されていた蓋然性が極めて高いことは明らかであって、紙タグの使用が矛盾なく説明できるところである。ジーンズごとの特色を店長が把握しているのは極めて自然であり、ECOBLUEの意味合いを理解して陳述していることは合理的に疑いの余地がない。
(キ)G社製の型番26403−afmのジーンズには、ジーンズ本体の内側に黒い縫製タグが付されている。この黒い縫製タグには、日本製、(株)ゲストリストとの表示とともに、「26403」と製品の型番が記載されている。そしてこのジーンズから吊り下げられている白い紙タグにも、26403−afmと詳細な品番が示されている。さらにECOBLUEの紙タグが、黒いタグ付け用ループでジーンズのベルト通し部にループ留めされている。
被請求人の取引先のG社代表者の陳述書の記述内容及び写真(乙1)にある事実と、この状況(乙13)とは合致しており、矛盾はない。請求人は乙1の印鑑が個人の印が押印されていたものであるとして信用性を指摘しているが、G社の代表者の新たな陳述書(乙15、乙16)には、いずれも代表取締役印が押印されており、乙1の陳述書の真正に疑義はない。
(ク)以上から、本件商標権者は、2013年以来現在まで、G社のREDCARDのジーンズのうち、オゾンを用いて脱色加工をした製品について、ECOBLUEと書かれた紙タグ(乙3)を付けてG社に販売しており(乙1、乙16、乙17)、2020年3月に26403−arm(審決注:「afm」の誤記と認める。)を101本、2021年3月にも74本を販売している(乙1、乙2、乙13、乙25、乙26)から、被服の一種であるジーンズに要証期間にECOBLUEを使用していたといえる。
イ HealthyにおけるEco Blueの使用について
(ア)G社は、2020年秋(2020年9月13日作成)に2021年向けのHealthyブランドの衣服のカタログを制作し、ワンピース(HL27636−ebl)、ブラウス(HL27635−ebl)、カラーシャツ(HL27637−ebl)、パンツ(HL27465−ebl)の各商品に「Eco Blue」の表記を掲載している(乙15の1〜3)。これらの商品は、いずれも本件商標権者によりオゾンによる脱色加工がなされることが予定されており、Eco Blueと表示されていた。この仕様は、本件商標権者とG社がカタログ(乙15の2)作成の前に打ち合わせた内容に基づいてカタログにおける使用を了承していたものである。事実、当該カタログは、本件商標権者がG社から送付を受けたものである。
なお、当該カタログには、青色の生地の商品が他にも掲載されているが、それらにはEco Blueと書かれておらず、同じ青系であっても他の記載がされている。つまり、加工処理や染色工程が異なる場合は、商品の名称が正しく区別されている。
(イ)G社は、2020年秋の商談結果から、子会社のF社名義にて、2020年10月16日に本件商標権者に発注した(乙28)。乙28は、本件商標権者がそのまま受領したものであって、F社名義での受領は請求先を示すものとして本件商標権者への発注指示となっている。
本件商標権者は、これら製品を中国国内で製造加工した後、2021年3月16日付けで上海から発送し、G社の納品先の倉庫へと納品した(乙29、乙15の1)。ワンピース(HL27636−ebl)、ブラウス(HL27635−ebl)、カラーシャツ(HL27637−ebl)、パンツ(HL27465−ebl)の各商品のタグには それぞれ「Eco Blue」と表記されている。
(ウ)G社は、卸売先の1つであるセレクトショップに対して、2021年3月にワンピース(HL27636−ebl)を販売した(乙15の1)。
(エ)同ショップは、店舗以外にオンラインショップも展開しており、そこで遅くとも2021年3月31日にはHL27636−eblの販売を開始した(乙11の1、2)。G社のカタログ(乙15の2)にもEco Blueとある。
(オ)なお、エコブルーといった色が現実に存在している訳でもなければ、需要者が具体的な色を想起して認識しているといった社会通念もない。あくまで脱色による抜け感が洗いざらしの風合いを表現するために用いた造語なのであって、カジュアルな上質感を演出するために用いられてはいるものの、具体的な品質と結びついて需要者に定着しているものでは一切ない。あくまで本件商標権者の訴求する商標としての識別表示としての手がかりとなっているにすぎず、ECOBLUEという表示が、商品を気に入り再度リピートする場合の手がかりとして、他と区別しうる材料にはなり得ても、これがエコブルーの色だ、といった短絡的なメッセージは持ち合わせていないので、商標的な目印として機能しているものである。
(カ)以上から、G社のHealthyの特定の商品は、本件商標権者が製造し、タグをつけて納品しており、その承諾のもとで使用されているものであり、2021年3月に取引の事実があったことからすると、要証期間内に、衣服について使用された事実がある。
ウ 本件商標権者の展示室について
(ア)本件商標権者は渋谷区の501号室に展示室を備え、取引先アパレルメーカーに対して2020年10月より商品サンプルを展示してきた。この展示室において、被請求人はECOBLUEの紙タグのついた商品を展示していた(乙7)。また、本件商標権者社員は、顧客への説明において、環境持続型の製品説明のためECOBLUEのパンフレット(乙10の1〜3)を印刷し、同展示室等で顧客に提示するなどして利用している。
(イ)請求人は展示の実態がないかのように論難するが、例えば甲4は、1階の店舗に関するウェブサイトの情報にすぎず、501号室とは無関係である。事実、501号室を賃貸していることは、ビルの看板にも表示されている(乙19)。
さて、展示室の「501」という部屋番号は、リーバイス社の著名なジーンズ501の型番にも通じる番号であることから、顧客に覚えやすい番号でもあり、被請求人にとって魅力的であった。そこで、空いたタイミングで、打ち合わせと展示のために2020年10月から賃貸するに至ったのである(乙14、乙17)。
(ウ)本件商標権者の取引相手は、アパレル会社であって、いわゆる一般消費者に向けてアピールする必要はない。そこで、展示室の存在を一般的に知り得る形で掲載する必要はなく、ビル1階の看板以外に特段の掲示はしていない。もっとも、展示室の開設から間もない2020年末から2021年初にかけての取引先とのメールのやりとりに示すとおり、展示会の案内やサンプルの打ち合わせの際には、取引先が来訪場所を間違えないようにと、個別に501号室の場所や地図を明記した案内を送付している。それらの案内の内容から、その利用目的が展示会やサンプルの展示であることは明らかである(乙20〜乙22)。
(エ)例えば、乙22のメールは、サンプルを見せるのに都合がいいからとして、相手方に出向くのではなく、わざわざ501号室への来訪を促し、501号室を案内している。本件商標権者の商品ラインナップに鑑みれば、持続的な加工であるECOBLUEは当然説明される対象として含まれていたと考えるのが自然である。
(オ)以上のとおり、501号室には展示室としての利用の実態がある。そして、この展示室の外観は、乙7に示していたとおりであり、壁際に商品の衣服が多数吊るされており、商談用の机と椅子が配置されている。そして、乙7の左上の写真の展示品のジーンズの中には、ECOBLUEの紙タグが吊るされたジーンズが含まれている。
なお、乙8は、それらのジーンズを拡大してタグを見えやすく示すために別なテーブルの上に載せ置いて撮影したものである。重要なのは、乙7の展示外観であるから、写真で確認できる以上、展示の実態がないなどと論難されるべきものでは全くない。
(カ)実際に利用されていたことを裏付けるものとして、501号室に関する2021年4月の東京事務所の予定表を示す(乙23)。
少なくとも取引先との打ち合わせに3回は使用されており、同月の予定表には、打ち合わせ場所として、「@501」との記号が略記されている。このことは501号室での打ち合わせを意味していることは明らかであり、取引先との打ち合わせがなされていた事実を強く推認させる。
(キ)以上から、本件商標権者は展示室501号室を2020年1月の展示会その他の打ち合わせに利用しており、展示室としての実態がある以上、乙7のような展示実態があったことが強く推認される。
してみると、ECOBLUEのタグの付された商品が展示されている状態にあった以上、2020年の10月以降、501号室において、打ち合わせがなされ、展示、広告といった使用があったことが合理的に推認される。
(3)上申書(令和4年6月20日付け)
ア Healthyブランドにおける使用
(ア)本件商標権者は、G社の扱うHealthyブランドの被服を中国国内の工場で製造し、それら商品をG社の配送管理する倉庫に中国から直送で2021年3月に納品している(乙27、乙28)。これら製品は、品番HL27636−eblなどの4品目である。例えば品番27636−eblは、別紙(乙15の1)及び製品カタログ(乙15の2)に記載のとおり、写真の下に品番HL27636−ebl、その下に「EcoBlue」と表示されている。
このカタログの内容と同様に、小売店のウェブサイトでも「EcoBlue」の表示が用いられている(乙11の1)。小売店のS社などが販売に及んだ事実からすれば、カタログ(乙15の1、2)が、乙15の3の時点で作成され、2021年春向け商品用に2020年9月以降に小売店に提示されたことは合理的に推測される。G社からの陳述書(乙15の1)のとおり、2021年3月に小売店に販売するためには、事前にカタログ(乙15の2)を取引先小売店に示して数量を踏まえた発注をすることが重要だからである。そして、小売店がカタログ(乙15の2)を目にしていなければ、商品受注すること自体が不可能である。
なお、乙15の2のEcoBlueの表示は、商談時にG社に本件商標権者が提案したものである。eblの品番の製品は、環境負荷の少ない本件商標権者の脱色加工を施す製品であるから、EcoBlueと表示する商品提案はG社に採用された。
(イ)HL27636−eblなどの製品4品目そのものにもタグ(乙9)が付されていた。そのタグは、品番のほかに「EcoBlue」との記載があり、T社が作成したG社指定のタグである。G社からの発注書(乙28)の左下にタグの指示が明示されており、下げ札(タグ種)「HDHT−01」1枚とは、このタグを当該品番の下げ札を製品に取り付けることの指示である。
乙31に、T社作成の2020年10月19日付けのタグに添付されるシールの券面デザイン資料をプリントアウトしたものを示す。このタグ種HDHT−01は、白い肉厚な丈夫な板状の態様のタグであり、その内部にRF−IDという電磁誘導により非接触で個体識別情報を読み取る回路が配されているので、高価なタグである。これに貼付されるシールの券面デザイン(乙31)は、乙9のタグの券面デザインに対応しており、各製品に、中国での製造の際に、乙28の発注指示に基づいてタグ(乙9、乙31)が付された。
(ウ)乙28の発注に基づき、中国から発送(乙29)されているが、この製品が本件商標権者の指示と関与によることを示す資料として、インボイス(請求書)(乙32)を示す。この本件商標権者の関連会社向けの2021年3月21日付けのインボイス(乙32)は、上海市の会社からのものであり、HL27635−eblが81個、HL27637−eblが159個、HL27465−eblが198個、HL27636−eblが125個と、それら数量は、乙29の発送数量とも対応している。
(エ)なお、発注数量と納品数量は、およそ10%前後することが業界慣行として許容されていることから、発注どおりにぴったり納品されるわけではない。製品の仕上がり具合による歩留りとの関係で、検品に備えて多めに製造されることがあっても、発注側は10%以内であれば多めでも受け取り、10%以内であれば納品数量が少なくても受領する。いずれも受け取った数量に見合った金額が支払われており、数量不足や過多だからといってトラブルは生じておらず、本件商標権者からG社への請求もこの慣行に従っているにすぎない。発注数量と納品数量との相違は当事者間では許容されており、取引上なんら不自然なものではないから、両書面の数量の不一致がそれら書面の結びつきを否定することにならない。むしろ、請求書は納品数量に基づいていることからすれば、実数としての納品の事実を示す資料といえる。
イ REDCARDのジーンズの製造
本件商標権者は、岡山本社の工場において、2021年春向けに、26403−afmを2月1回、3月2回の計3回に分けて製造している(乙33の1〜3)。本件商標権者が製造した257本のうち、183本は2月に製造されている。そして、3月には74本が製造されており、3月9日にG社に出荷されている(乙2)。3月分の2回の製造は、合計74本であるところ、この製造数は請求書(乙2)の74本の数量とも合致し、整合している。
なお、26403−afmは、日本国内で製造しているから、手持ちのタグ(乙3)を、本件商標権者は自己の費用で脱色加工した製品にのみタグ付けしている。この手持ちのタグはT社から本件商標権者が購入したものであり、HealthyのタグのようなG社側からの支給品扱いではないため、G社の仕様書に記載はない。これは、本件商標権者側が自らの意思でタグを積極的に使用していたことの証左ともいえる。
そして、乙6や乙13に添付されているように、本社工場の監督責任者が指示して最終の検査工程でタグの取り付け作業が行われている。タグの取り付け工程を担当していたのは、本件商標権者社員の加工部検査課長で、2021年3月6日に50本、3月8日に24本、本社営業部長の指示により、タグ(乙3)をジーンズにロックスピンで装着作業をした(乙34の1)。
このように、具体的な製造工程の業務日誌や、タグ付けを担当した担当者の証言からも、G社の陳述書(乙2、乙16)にあるジーンズ(乙13)が2021年3月に74本製造され、G社に販売されたことは明らかである。
ウ 展示室での閲覧
本件商標権者の環境配慮をした脱色加工技術は、オゾンを用いる装置を導入するなどして初めて実現できるから、製品特徴をアピールできる重要な差別化ポイントとなってきた。事実、G社も雑誌(乙30)にアピールしたものと思われる。展示室には、乙7のとおり商品展示スペースがあるところ、自社製品の特長であるECOBLUEをあえて展示しない理由が全く見当たらない。商談の際、希望すれば来訪者に閲覧可能となっている。また、展示室を案内する際のメールにも、展示室であれば、商品を見せることができることを理由としている(乙22)。
展示室をわざわざ賃借し、展示会を実施していた事実からすれば、自社技術であるECOBLUEを採用した商品をアピールできる状態に置いていたであろうことは、高額な賃料をかけて展示室を維持し続けている事実をもって、合理的に矛盾なく推測できる。

4 当審の判断
(1)請求人適格について
被請求人は、本件審判の請求人は、利害関係の見当たらない一個人にすぎないから、権利濫用又は事実上の名板貸しである不当な申し立てであることが懸念される旨を主張する。
しかしながら、商標法第50条第1項で規定される審判請求は、「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されているから、登録商標の不使用による取消審判の請求が、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である。
そして、被請求人は、漠然とした懸念や不満について言及するとしても、本件審判請求が、専ら被請求人を害することを目的としているなど、権利濫用に該当するような具体的な理由を明らかにする証拠を提出していない。
したがって、請求人は、本件審判についての請求人適格を有するものであり、本件審判請求は適法に請求されたものと認められる。
(2)本件商標の使用について
ア 被請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)本件商標権者は、主としてデニム生地のジーパン等の製造、加工、販売をしている会社であり、サスティナブルな素材を使用又はサスティナブルな加工によって作られた地球環境に優しいジーンズである「ECO BLUE JEANS」を取り扱っている(請求人の主張、乙10の1)。
(イ)G社は、「HEALTHY」ブランドを含むハイエンドな被服ブランド卸売業を展開しているところ、本件商標権者にジーンズ製品の製造委託をしている(乙15の1)。
(ウ)G社の「Healthy DENIM」のカタログ(2021年春夏向け)には、「HL27465−ebl」(パンツ)の品番の商品(以下「本件使用商品」という。)のほか、ワンピース、シャツ、ブラウスなどが掲載されており、いずれも品番の下に「Eco Blue」の文字が表示されている(乙15の2)。
(エ)G社からF社に宛てた「製品発注明細書」(発注日:2020年10月16日)によれば、納期を「2021年3月11日」、原産国を「中国」、「下げ札」を「HDHT−01」として、本件使用商品と同一品番の商品(202個)が発注されている(乙28)。
(オ)「HDHT−01」の下げ札(T社製造)には、本件使用商品の品番とともに、「Col.」の文字に続いて「Eco Blue」の文字(以下「本件使用商標」という。)が表示されている(乙31)。
(カ)a G社の代表取締役の陳述によれば、上記(エ)の発注は、G社の子会社であるF社を通じて、本件商標権者に発注された(乙15の1)。
b 中国上海の会社(S.G.C Inspection Centre)の「梱包明細書」(2021年3月16日付け)には、本件使用商標の品番に相当する項(198個)がある(乙29)。
c 中国上海の会社(SHANGHAI XINFENG TEXTILEGOODS CO.,LTD)が本件商標権者の関連会社「NISHIE DENIM(H.K.)CO.LIMITED」に宛てたインボイス(2021年3月17日付け)には、本件使用商品の品番の項に費用(198個分)が記載されている(乙32)。
d 本件商標権者がF社に宛てた請求書(2021年3月31日締切)には、本件使用商品の品番に相当する項に費用(199個分)が記載されている(乙27)。
イ 検討
(ア)以上の認定事実によれば、本件商標権者は、G社から、その子会社であるF社を通じて本件使用商品(202個)の製品発注を受けて、中国の関連会社や取引先を通じて、要証期間である2021年3月中旬に、本件使用商品(198個)を梱包し、それに要した費用を同月に発注元(G社)に請求していることが認められる。
(イ)本件使用商品には、本件使用商標を表示した下げ札(HDHT−01)が指定されていたところ、本件使用商標(Eco Blue)は、本件商標(ECOBLUE)と共通する構成文字よりなるから、両商標は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる社会通念上同一の商標と認められる。
(ウ)以上によれば、本件商標権者は、要証期間(2021年3月中旬)に、本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標を付した本件使用商品(パンツ)を、中国の関連会社や取引先を通じて輸入し、G社に納品したことが推認できる。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、Healthyブランドの商品タグ(下げ札)に表示された本件使用商標は、「Col.」の文字の右側に配されており、当該文字は服飾業界では色番号の略語(甲26、甲27)であるから、色番号が「Eco Blue」であることを意味しており、指定商品の分野においては、「環境に配慮した青い染料を使用していること」を無理なく認識させるから、ジーンズについての商標的な使用には該当しない旨を主張する。
しかしながら、本件使用商標(Eco Blue)は、特定の意味を有さない造語であって、我が国で親しまれたような色彩を表示する語ではないから、「Col.」の文字に近接して配置されているとしても、本件商標の指定商品に係る需要者をして、特定の色彩や商品の品質の表示であると直ちに認識、理解させるものではない。
また、本件使用商標は、「ECO BLUE JEANS」などの独自の加工方法などを取り扱う本件商標権者により表示されていることを鑑みても、単なる色彩の表示として用いられているものと断定することは難しく、当該表示が本件使用商品についての出所識別機能や品質保証機能を果たしている可能性は否定できない。
したがって、本件使用商標の使用を、商標法第50条第2項に基づく登録商標(本件商標)のその指定商品についての使用と認定することに特段の問題はない。
イ 請求人は、被請求人提出の証拠には、製品発注明細書(乙28)に係る取引について、F社が本件商標権者に依頼した証拠も、それを受けて本件商標権者が中国製造会社に依頼した証拠もなく、納品の経過を示す証拠がないから、F社と本件商標権者間の取引及び本件商標権者と中国製造会社間の取引はなかった旨を主張する。
しかしながら、上記(2)ア(カ)のとおり、G社がF社に宛てた発注(乙28)は、F社を通じて本件商標権者に発注された旨の陳述に加えて、その発注内容と数量及び時期がおおむね整合する具体的な証拠(梱包明細書、インボイス、請求書)もあるから、これら証拠によって、本件商標権者が、本件使用商品を、中国の関連会社や取引先を通じて輸入し、G社に納品したと推認できる。
なお、請求人は、上記の取引の存在を否定するような、具体的な証拠は提出していない。
ウ 請求人は、乙32(インボイス)と乙27(請求書)の数量を比べると、後者の方が若干多いのは、製造数量より多くの数量が納品されたことになり不自然である旨を主張する。
しかしながら、確かに中国上海の会社が本件商標権者の関連会社に宛てたインボイス(乙32。中国での製造数量に相当。)に記載の本件使用商品の数量(198個)と、本件商標権者がF社に宛てた請求書(乙27)に記載の本件使用商品の数量(199個)は一致していないものの、両取引に全く相関関係がないといえるほどの数量差ともいえないから、F社の親会社であるG社の代表取締役の陳述(乙1。本件使用商品を含む商品取引の製造加工における本件商標権者の関与を言及。)もある中で、当該取引の存在自体やそれへの本件商標権者の関与までを否定する理由はない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、本件商標権者が、その指定商品に含まれる本件使用商品(パンツ)について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-08-08 
結審通知日 2022-08-10 
審決日 2022-08-23 
出願番号 2011060561 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 杉本 克治
阿曾 裕樹
登録日 2012-06-08 
登録番号 5499888 
商標の称呼 エコブルー、エコ、イイシイオオ 
代理人 横井 健至 
代理人 進藤 純一 
代理人 横井 宏理 
代理人 横井 知理 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ