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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W0105
管理番号 1392147 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-21 
確定日 2022-11-07 
事件の表示 商願2019−155283拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は,令和元年12月11日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年11月10日付け:拒絶理由通知書
令和2年12月23日 :意見書の提出
令和3年4月12日付け :拒絶査定
令和3年7月21日 :審判請求書の提出
令和3年10月26日 :手続補正書の提出

2 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり,願書記載のとおりの商品を指定商品として,登録出願され,その後,指定商品については,当審における上記1の手続補正書により,第1類「化学品,工業用のり及び接着剤,植物成長調整剤類,肥料,陶磁器用釉薬,塗装用パテ,高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,写真材料,試験紙(医療用のものを除く。),人工甘味料,工業用粉類,原料プラスチック」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」とされたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,その構成中に「富士化学工業株式会社」の文字を有してなるところ,当該文字は,「東京都新宿区高田馬場2−1−2」所在の法人ほか5者の名称と同一であり,かつ,その他人の承諾を得ているものとは認められない。したがって,本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨
商標法4条1項8号は,他人の名称を含む商標については,他人の承諾を得ているものを除いては,商標登録を受けることができないと規定しており,それ以上に何らの要件も規定していない。・・・需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからすると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解されるのであって,商品又は役務の出所の混同の防止を図る規定であるとは解されない(最高裁平成15年(行ヒ)第265号,最高裁平成16年(行ヒ)第343号)。
したがって,ある名称を有する他人にとって,その名称を同人の承諾なく商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることになるものと考えられるのであり,この場合,出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか,いずれが著名あるいは周知であるといったことは,考慮する必要がない(知財高裁平成20年(行ケ)10309号)。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
本願商標は,別掲のとおり,円図形の内部に5本の白抜きの太線を放射線状に配してなる図形の右側に,「富士化学工業株式会社」の漢字を横書きしてなるところ,原審において説示のとおり,当該文字を名称とする者が複数存在している。
そして,請求人と,少なくとも原審の拒絶理由通知において示した者のうち,審決時においても存在する「茨城県稲敷市羽賀2214−2」在,「千葉県船橋市宮本6−31−14」在,「静岡県伊豆の国市中島209」在及び「和歌山県和歌山市中之島1570」在の名称を「富士化学工業株式会社」とする者とは,他人であると認められるから,本願商標は,その構成中に他人の名称を含むものといわなければならず,また,当該他人の承諾を得たものとも認められない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は「商標法第4条第1項第8号が適用されて法人名の登録が拒絶されるためには,当該商標が登録されることにより,その他人の人格権を毀損させることが客観的に認められる程度にその他人に一定程度の著名性や稀少性が認められ,あるいは,その具体的な指定商品・指定役務において,他人の人格権を毀損する客観的事情が存する必要があり,その「他人」が法人である場合,その「人格的利益」については,より慎重に判断されるべきである。」旨述べるとともに,「請求人は医薬品業界において高い周知性を有している。」旨及び「請求人と原審において引用された「富士化学工業株式会社」とは,請求人と業種を全く異にするから,請求人が,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について自己の名称を登録しても,これらの法人において「人格的利益」を損なうことにはならない。」旨を主張し,証拠方法として甲第9号証ないし甲第130号証(枝番を含む。)を提出している。
しかしながら,商標法第4条第1項第8号該当性の判断においては,上記(1)のとおり,ある名称を有する他人にとって,その名称を同人の承諾なく商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることになるものと考えられ,いずれかが著名あるいは周知であるとか,出願人と他人との間で事業内容が競合するかといったことは,考慮する必要がないと解釈される。
したがって,請求人の主張は採用できない。
イ 請求人は,「株式会社」を含む法人の名称が,業界で相当程度知られていること,及び引用された各法人と業種が異なることをもって,その名称を含む商標の登録が,人格権を毀損するものではないと判断されたとする審決例(甲131)並びに福岡県所在の「富士ケミカル株式会社」が存在するにも関わらず,東京都所在の富士ケミカル株式会社により「フジケミカル株式会社」の文字を有する商標が登録されている例(甲132,甲133)を挙げ,本願商標も登録されるべき旨を主張しているが,請求人の挙げる登録例は,いずれも本願商標とは構成・態様が異なり事案を異にするものであって,かつ,具体的事案の判断においては,過去の登録例に拘束されることなく検討されるべきものであるから,これらの存在が,上記(2)の認定・判断を左右するものではない。
したがって,請求人の主張は採用できない。
ウ 請求人は,「法人の名称を含む登録商標に対し,それと同一の自己の名称を有する法人が,商標法第4条第1項第8号を根拠に異議を申し立て,又は無効審判を請求した例は,過去にほとんど見受けられないことが判明した。そうとすれば,自己の名称と同一の名称を含む商標が登録されることのみをもって,その法人において「人格権の毀損」を認識させる可能性は極めて低い。」旨を主張している。
しかしながら,当該主張は請求人独自の主張であって,裏付けとなる証拠の提出はないし,ある名称を有する他人にとって,その名称を同人の承諾なく商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることになるのは,上記(1)のとおりであるから,請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲 本願商標


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-08-30 
結審通知日 2022-09-02 
審決日 2022-09-13 
出願番号 2019155283 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (W0105)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 豊瀬 京太郎
特許庁審判官 板谷 玲子
須田 亮一
商標の称呼 フジカガクコーギョー 
代理人 稲垣 朋子 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 松澤 由香 

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