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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0911
管理番号 1391176 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-28 
確定日 2022-10-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第6502224号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6502224号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6502224号商標(以下「本件商標」という。)は、「enson」の欧文字からなり、令和3年4月20日に登録出願、第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月21日に登録査定され、同4年1月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「EPSON」の欧文字からなり、同人の略称、同人のグループ会社の冠ブランド名及びプリンター、液晶プロジェクター等の情報関連機器、精密機器等のブランド名及びサービス名として、全国的に著名になっているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人の概要
申立人は、昭和17年5月に有限会社大和工業として設立し、その後、合併等を経て、昭和60年11月にセイコーエプソン株式会社に社名変更し、現在に至っているものである。
そして、申立人は、資本金「532億400万円」、従業員数「連結79,944名/単体12,676名」(2021年3月31日現在)、売上収益「連結9,959億円(2021年3月期)」、グループ会社83社(国内19社、海外64社)(2021年3月31日現在)であって、日本を代表する企業の一つである(甲2)。
(2)引用商標の著名性
申立人は、昭和50年6月に「EPSON」ブランドを制定した。
この「EPSON」というブランド名称は、事業領域を広げる発端となった「EP−101」に由来するもので、「EP(Electric Printer)」が新しい価値を提供したように、様々な分野で、価値ある製品・サービスである子ども「SON」を多く生み出し続けていこうという思いが込められたものである。
「エプソン/EPSON」の語は、ブランド制定から半世紀弱を経過した今日において、申立人の略称、ハウスマーク、申立人のグループ会社が共通して使用するブランド名、及び「プリンター、液晶プロジェクター、時計、コンピュータソフトウェア」等の情報関連機器、精密機器等のブランド名及びサービス名として、その業務に係る商品・役務について現在も大々的に継続して使用され続けている。
もちろん、申立人及びそのグループ会社が作成するカタログ表紙、商品/商品包装箱には引用商標である「EPSON」の文字が付されている。
さらにいえば、申立人は、プロサッカークラブ「松本山雅フットボールクラブ」のオフィシャルスポンサーであり、そのユニホームの胸元部分には引用商標が記されている。
このように引用商標は、半世紀弱の間、申立人が使用し続けているものであって、日本国内において著名性を確立しているものである。(甲3〜甲11)。
(3)申立人の日本における「EPSON」登録商標
ア 申立人が所有する登録第1822583号商標は「EPSON」の欧文字で構成されており、昭和56年9月24日に登録出願、昭和60年11月29日に設定登録され、第7類から第12類まで、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、現に有効に存続しているものである。
そして、上記商標登録には、商標登録原簿に記載のとおり防護標章登録第33号として第1類から第42類までの数多くの商品/役務を指定して登録されている。
すなわち、引用商標が著名であることは、特許庁において顕著な事実である(甲12)。
イ 申立人が所有する登録第4589388号商標は「EPSON」の欧文字で構成されており、平成13年4月6日に登録出願、第1類から第42類に属する数多くの商品及び役務を指定商品及び指定役務として平成14年7月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである(甲13)。
(4)申立人の日本以外における「EPSON」
申立人は、日本国内はもちろんのこと、海外において64のグループ会社を所有し、グループ全体として年間1兆円弱の売上収益を上げている(甲2)。
そして、上記事業展開に照応させるべく、アメリカ合衆国を始め、ヨーロッパ、アジアなど世界150以上の国で「EPSON」商標を登録している(甲14)。
(5)商標法第4条第1項第15号に該当するとして商標登録が取り消された判決等
ア 令和3年(行ケ)第10092号判決(甲15)
イ 無効2019−890037審決(甲16)
(6)混同が生ずるおそれ
上述したとおり、本件商標は、欧文字で「enson」と記した態様の商標である。これに対して、引用商標は、欧文字で「EPSON」と記した態様の商標である。本件商標と引用商標は、いずれも欧文字5文字で構成され、5文字中「E」「S」「O」「N」が共通し、2文字目の「n」と「P」のみが相違する。
引用商標は、上述のとおり我が国において極めて著名である。そのため、2文字目において一字だけ相違する極めて類似性の高い本件商標に接する取引者、需要者は、引用商標との関係で、あたかも申立人となにがしかの関係を有する者による商品であるかのように混同するものである。より具体的には、当該商品が、申立人との間に親子関係会社や系列会社等の緊密な営業上の関係を持つ営業主、又は同一の商標によって商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所につき誤認を生じさせるものである。
また、本件商標の他人による使用は、申立人が長い年月をかけて築きあげてきた著名商標である引用商標の持つ顧客吸引力ヘのただ乗り行為であり、当該顧客吸引力の希釈化を招く結果を生ずることも明らかである。
(7)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知性について
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は1942年(昭和17年)5月に設立され、「プリンター、液晶プロジェクター、時計、コンピュータソフトウェア」など(以下「申立人商品」という。)の製造販売などを行っていること(甲2〜甲10)、申立人の売上高は、2013年度から2019年度までは毎年1兆円を超え、2020年度は9,959億円であること(甲2の2)、申立人の売上高のうちプリンター関連商品の売上高が、2014年度において67.5%、2020年度において69.3%であること(甲3の2、甲2の2)、2020年度における売上高の22%が我が国の売上げであること(甲2の2)、申立人は1975年(昭和50年)6月にエプソンブランドを制定し、1977年(昭和52年)に引用商標「EPSON」を使用していること(甲3の1)、引用商標は近年も申立人商品に付されるなどして使用されていること(甲3の2、甲4〜甲9)などが認められる。
(イ)上記(ア)からすれば、申立人は引用商標を申立人商品について昭和52年から現在まで45年以上継続して使用しているとみるのが自然であり、加えて、申立人の売上高が2013年(平成25年)度から2020年(令和2年)度までにおいて毎年1兆円前後であること、同売上高の70%近くがプリンター関連商品であること、及び同売上高の22%が我が国の売上げであることを併せ考慮すれば、引用商標は、本件商標の登録出願日(令和3年4月20日)前から、申立人の業務に係る商品(プリンター関連商品)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定日(令和3年12月21日)においても継続していたものと判断するのが相当である。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
(ア)本件商標
本件商標は、上記1のとおり「enson」の欧文字からなり、当該文字に相応し「エンソン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
(イ)引用商標
引用商標は、上記2のとおり「EPSON」の欧文字からなり、当該文字に相応し「エプソン」の称呼を生じ、上記アのとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、「(ブランドとしての)EPSON」の観念を生じると判断するのが相当である。
(ウ)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、本件商標の構成文字「enson」と引用商標の構成文字「EPSON」は、そのつづりにおいて2文字目に「n」と「P」の文字の差異を有し、この差異が共に5文字という比較的少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「エンソン」の称呼と引用商標から生じる「エプソン」の称呼を比較すると、両者は第2音において「ン」と「プ」の音の差異を有し、この差異が共に4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに聞き誤るおそれはないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないのに対し、引用商標は「(ブランドとしての)EPSON」の観念を生じるから、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
混同を生ずるおそれ
上記アのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるが、上記イのとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の独創性の程度や本件商標の指定商品と申立人商品との関連性の程度などを考慮しても、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえないから、その登録は、同項の規定に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分に御注意ください。
異議決定日 2022-10-14 
出願番号 2021048426 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0911)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
山田 啓之
登録日 2022-01-20 
登録番号 6502224 
権利者 ▲峠▼程電子(香港)有限公司
商標の称呼 エンソン 
代理人 水崎 慎 
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所 
代理人 高橋 克宗 
代理人 福田 伸一 
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