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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W053032
管理番号 1391160 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-26 
確定日 2022-10-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6441384号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6441384号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6441384号商標(以下「本件商標」という。)は、「リグナンジェノール」の片仮名と「LIGNANGENOL」の欧文字を2段に表してなり、令和2年11月4日に登録出願、「サプリメント」を含む第5類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同3年8月16日に登録査定され、同年9月10日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも同人が販売する「フランス海岸松樹皮エキス」のブランド名としてサプリメントの分野において広く知られ、周知に至っているとするものである。
(1)登録第4926868号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 PYCNOGENOL
指定商品 第29類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成9年3月3日
設定登録日 平成18年2月10日
(2)国際登録第1439558号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第5類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2019年(令和元年)10月17日(事後指定)
設定登録日 令和3年2月26日
(3)国際登録第1003213号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 PYCNOGENOL
指定商品 第1類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日 2009年(平成21年)3月24日
設定登録日 平成22年5月14日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証を提出した。
(1)「PYCNOGENOL」の独創性
「PYCNOGENOL」は、「濃密」を意味するギリシャ語の接頭辞「PYCNO」と、「生む」「作り出す」を意味する英語「Generate」の「GEN」、フラボノイド系化合物の一種であるフラバノール(Flavonol)の接尾辞「OL」を組み合わせてなる、独創性の高い造語の商標である。
申立人は、1973年に独自の抽出方法で得られる「フランス海岸松樹皮エキス」(以下「申立人製品」という。)を開発し(甲5)、その申立人製品につける商標として「PYCNOGENOL」を採択した。その後、1991年に最初の国際登録出願(甲6)、1992年には最初の日本出願(甲7)を行い、1996年より日本で「PYCNOGENOL」「ピクノジェノール」の名の下に申立人製品の販売を開始した(甲8)。後述するように、引用商標は、とりわけサプリメントの分野で広く知られているが、そもそも日本でサプリメントという商品が認識されたのは1990年頃のことであり、国が規制を緩和し、サプリメントの販売を認めたのは1996年のことになる(甲9)。かような時代背景に照らし合わせると、申立人製品が日本のサプリメント市場の先駆けであることは明らかである。
今でこそ、競合他社製品の中には引用商標と似たような構成からなる商標を見つけることも少なくないが、申立人製品のパイオニアとしての立ち位置及び引用商標の周知性を考慮すれば、そのような後発組の商標は全て引用商標へのすり寄りと考えるのが自然である。即ち、そのようなすり寄りによって、引用商標の独創性の程度が左右されるべきではなく、引用商標が今でもなお高い独創性を持った造語商標であることは明らかである。
(2)引用商標の周知性について
ア 海外における使用実績
上述したとおり、申立人は1973年に申立人製品を開発した。申立人製品にはプロシアニジン類やフラボノイド類が豊富に濃縮されており、優れた抗酸化作用をはじめ、抗炎症作用、コラーゲン結合作用、血流改善効果などを有することが科学的に実証されている。これらの特徴を生かして、申立人製品は、サプリメントをはじめ、医薬品、化粧品、糖尿病患者のための代替食品及び飲料等について世界中で広く使用され続けている(甲5、甲10、甲11)。
現在、申立人製品が配合された商品が販売されている国は、北米、南米、欧州、アジア、アフリカの46か国にのぼる(甲12)。
イ 日本における使用実績
日本では、上述したとおり申立人は1996年より商標「PYCNOGENOL」「ピクノジェノール」を付した申立人製品の販売を開始し、現在に至るまで24年間にわたり販売を行っている。日本における申立人製品の直近6年間の年別販売量は、2021年1313kg、2020年1249kg、2019年1176kg、2018年1232kg、2017年1285kg及び2016年921kgである。
販売開始から24年を経てなお販売量が増加傾向にあることは、申立人製品が日本に親しまれていることの証拠に他ならない。これらの申立人製品は、主な日本販売代理店であるDKSHジャパン株式会社(甲13)及び株式会社卜レードピア(甲14)を通じて各種メーカーへ配分され、そこでサプリメン卜や化粧品等の最終製品に配合された上で需要者の手元に届く。
現在日本で販売されている、申立人製品が配合されたサプリメントの一例として25の商品があげられる(甲15〜甲39)。それらからは、申立人製品を配合したサプリメントが、健康食品通販の大手であるディーエイチシーをはじめ、健康食品通販業者及びネットショッピング大手の楽天市場、Amazon等、複数のチャネルにて多数の製品が取り扱われている様子が分かる。また、販売されている各種サプリメントの包装容器あるいは販売ウェブサイトのページには、引用商標が大きく表示されている様子が散見されることから、申立人製品が単なるひとつの原料というよりもむしろ看板となる成分として扱われており、商品を選択する際に考慮される重大な要素のひとつとして、需要者の目に引用商標が飛び込んでくることは明らかである。
ウ 小括
引用商標が独創性の高い造語であること、引用商標が現在に至るまで24年もの間、健康食品通販の大手を含め複数のチャネルを通じてサプリメントについて使用され続けており、また申立人製品の販売数量は今でもなお増加傾向にある事実に鑑みれば、引用商標は、サプリメントの分野において広く知られており、周知に至っていると考えて然るべきである。
(3)混同のおそれについて
ア 本件指定商品と申立人製品について
本件指定商品には、いわゆるサプリメントの他、薬剤、菓子、穀物の加工品、飲料が含まれている。一方、申立人製品はサプリメントの他、薬剤、機能性食品、飲料の原料としても使用されている(甲5、甲11)。
したがって、本件指定商品と申立人製品は、引用商標が広く知られているサプリメントの分野においては商品が重複するほか、その他の分野においては完成品と原材料という密接な関連性が認められる。
イ 引用商標と本件商標について
本件商標は「リグナンジェノール」の片仮名と「LIGNANGENOL」の欧文字を二段に表してなり、その構成に従い「リグナンジェノール」の称呼が生じる。本件商標は造語であるため、特定の観念は生じない。
ところで、本件商標に含まれる「リグナン」「LIGNAN」は、植物に含まれている化合物群の名前であり、抗酸化作用を有する物質として知られている(甲40、甲41)。本件指定商品には「シルバーファーの木の枝からの抽出物を主原料とした」という表示が使用されていることからも、本件商標の「リグナン」「LIGNAN」は当該物質名に由来すると考えるのが自然である。
一方、申立人は、引用商標の他に、「ミルトジェノール」(甲42)及び「MIRTOGENOL」(甲43)を登録し、2011年より現在に至るまで日本でサプリメントの原料及びサプリメントについて使用している(甲44〜甲48)。
ウ 小括
上述した引用商標の周知性に加えて、申立人が「GENOL」「ジェノール」を接尾辞とする複数の商標を登録・使用している現状に鑑みれば、健康志向をうたう商品について「〇〇〇GENOL」に接した需要者は、引用商標を想起すると考えるのが妥当である。「LIGNAN」「リグナン」が申立人製品と同じ、植物由来であって抗酸化作用を有する物質であることを考慮すればなおのこと、本件商標に接した需要者が引用商標を想起し、何らかの関連性があるものとして混同するおそれがあると考えて然るべきである。
(4)まとめ
上記のとおり、引用商標が造語であって広く知られていること、申立人製品と本件指定商品の密接な関連性を考慮するに、本件商標が本件指定商品について使用された場合、申立人の業務に係る商品又は役務と何らかの関連性があるものとして広義の混同が生じるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は1973年に「フランス海岸松樹皮エキス」(申立人製品)を開発したこと(甲5等)、我が国においては、申立人は1996年に商標「ピクノジェノール」を使用した申立人製品の販売を開始したこと(甲8)、近時「DKSHジャパン株式会社」及び「株式会社卜レードピア」が申立人製品を取り扱っていること(甲13、甲14等)、相当数の事業者が申立人製品を含有する商品(サプリメント、美容ドリンク)を通販サイトで販売し、当該通販サイトでは販売する商品の原材料として申立人製品が含まれている旨が引用商標又は商標「ピクノジェノール」(以下、それらを合わせて「引用商標等」という。)とともに表示され(甲15〜甲39)、中には販売する商品の容器に引用商標等が表示されているものがあること(甲24、甲29〜甲31等)などが認められる。
しかしながら、引用商標等を使用した申立人製品(以下「使用商品」という。)の売上高、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。なお、申立人は、我が国における申立人製品の2016年ないし2021年の年別販売量を述べているが、それを裏付ける証左は見いだせないから、かかる販売量を採用することはできない。
イ 上記アのとおり、申立人は我が国において1996年に引用商標等を使用した申立人製品(使用商品)の販売を開始し、近時、相当数の事業者が申立人製品を含有する商品(以下「販売商品」という。)を通販サイトで販売し、当該通販サイトにおいては販売商品の原材料として申立人製品が含まれている旨が引用商標等とともに表示されていることなどが認められることから、申立人製品はサプリメント等の原材料の一つとして、取引者、需要者の間である程度知られていることがうかがえるものの、使用商品の我が国における販売実績を示す証左は見いだせないから、使用商品及びそれに使用される引用商標は、申立人の業務に係る商品(フランス海岸松樹皮エキス)として及び当該商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「リグナンジェノール」の片仮名と「LIGNANGENOL」の欧文字を2段に表してなり、その構成文字に相応し「リグナンジェノール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
(ア)引用商標1及び3は、上記2(1)及び(3)のとおり、いずれも「PYCNOGENOL」の欧文字からなり、該文字に相応し「ピクノジェノール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(イ)引用商標2は、別掲のとおり、二重の円の中央に3本の木と思われる図形を表し、当該二重の円の間に、上部に「PYCNOGENOL」、下部に「HORPHAG RESEARCH」の欧文字を表してなり、その構成文字及び構成態様に相応し「ピクノジェノールホーファーリサーチ」「ピクノジェノール」「ホーファーリサーチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1及び3の類否
本件商標と引用商標1及び3の類否を検討すると、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。また、本件商標の欧文字部分「LIGNANGENOL」と引用商標1及び3の構成文字「PYCNOGENOL」の比較においても、両者は前半部における「LIGNAN」と「PYCNO」の文字の差異により、外観上相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「リグナンジェノール」の称呼と引用商標1及び3から生じる「ピクノジェノール」の称呼を比較すると、両者は前半部において「リグナン」と「ピクノ」という音の差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、彼此聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標1及び3は、いずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標1及び3は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標2の類否
本件商標と引用商標2の類否を検討すると、両者の上記のとおりの外観は構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。また、本件商標の欧文字部分「LIGNANGENOL」と引用商標2の上部の文字部分「PYCNOGENOL」の比較においても、両者は上記(ア)と同様に、外観上相紛れるおそれのないものといえる。
次に、称呼においては、まず、本件商標から生じる「リグナンジェノール」の称呼と引用商標2から生じる「ピクノジェノール」の称呼を比較すると、両者は上記(ア)と同様に彼此聞き誤るおそれのないものといえ、また、本件商標の称呼「リグナンジェノール」と引用商標2の称呼「ピクノジェノールホーファーリサーチ」「ホーファーリサーチ」とは相紛れるおそれのないこと明らかである。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(ウ)小括
したがって、本件商標は、引用商標のいずれとも非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
(3)混同のおそれ
上記(1)のとおり引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり本件商標は、引用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の独創性の程度や本件商標の指定商品と申立人製品との関連性などを考慮しても、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲(引用商標2)



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-10-21 
出願番号 2020136082 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W053032)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 森山 啓
小林 裕子
登録日 2021-09-10 
登録番号 6441384 
権利者 株式会社GSIクレオス
商標の称呼 リグナンジェノール、リグナンゲノール 
代理人 特許業務法人 丸山国際特許事務所 
代理人 木戸 良彦 

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