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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y10
管理番号 1390757 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-06-22 
確定日 2022-08-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第1890049号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1890049号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1890049号商標(以下「本件商標」という。)は、「ラパック」の文字を横書きしてなり、昭和58年7月21日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として同61年9月29日に設定登録、平成19年9月19日に指定商品を第10類「医療用機械器具,医療用チューブ,医療用点滴瓶」とする指定商品の書換登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和3年7月7日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)7月7日ないし令和3年(2021年)7月6日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人提出の証拠書面は、本件商標が「医療用機械器具」と「医療用点滴瓶」に使用されているという証拠にはならない。
ア 乙第1号証は、被請求人のWEBサイトにおける「RAPAK規格容器」の頁を示している。しかし、この頁には「食品容器」と書いてあり、ハイライトされた部分を見ると「薬品等の包装にも適しています。」とも書いてある。つまり、被請求人は、この容器には「何でも」入れることができると明らかにしている。何でも入れられる容器が医療用機械器具というのであれば、薬品を入れても溶解しないプラスチック製包装容器は、スーパーのレジ袋も含めて全て「医療用機械器具」ということとなる。
したがって、乙第1号証は、「医療用機械器具」及び「医療用点滴瓶」についての使用証拠に該当しない。
イ 乙第5号証は、被請求人の商品カタログである。このカタログ2頁目には、「香り・風味を保持するボトル。」と書いてある。これを見たら被請求人の商品は食品容器として販売されているとしか思えない。キャップ形状をみても、マヨネーズやソースといった食品を入れるのに適した包装用容器にしか見えない。
このカタログの最終頁には、「食品衛生法に定められた・・・試験に合格しています。」と書いてある。この記載からも、このカタログは食品製造等に関わる会社向けのカタログだと理解させる。もし、このカタログが、医薬品を扱う会社向けのカタログだというのであれば、例えば、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)で定められた検査を受けています」といった文言も併記するのが通常ではないか。そうしないと、医薬品を扱う会社は、被請求人の商品カタログに示されている容器に、自分達が扱う商品を入れていいのかどうか判断できないはずである。つまり、このカタログは「医薬品」や「医療用機器」を扱う関係者向けに作られたものではないことが明らかである。被請求人の営業担当者が、このようなカタログを持って「医薬品」等を扱う組織に営業をしているとは思えない。
ウ 「医療用機械器具」というのは、医院又は病院で専ら使用される機械器具である。「医療用点滴瓶」が第10類に属する「医療用機械器具」と位置づけられているのは、薬を入れる容器だけではなく、カテーテルや注射針といった他の部品と一体となって医療行為を果たす機能を有しており、医院又病院で専ら使用されると理解されているからである。ウェブサイトで「別表3No772:医薬品・ワクチン用注入器基準(告示第382号:平成23年9月30日)」というキーワードを調べたところ、「医薬品注入器」の使用目的又は効果の欄に、「専用医薬品カートリッジ及び医薬品・ワクチン注入用針を取り付けて使用し、皮下又は筋肉内へ医薬品を注入すること。」と書いてある(https://www.std.pmda.go.jp/scripts/stdDB/kijyun/stdDB_kijyun_resframe_main.cgi?s_sig=2&chk_kjn=ninsyou&search_etc=1300772%3A%88%E3%96%F2%95i%81E%83%8F%83N%83%60%83%93%97p%92%8D%93%FC%8A%ED)。
このような業界実情を考慮すると、医院等において医療行為を果たす機能を有している商品だけが「医療用機械器具」であるというのが業界の常識である。
エ 被請求人は、乙第5号証によるカタログにおいて、用途「アルコール」、「育毛剤」、「ローションジェル」の文字にハイライトをしている。それらは「医薬品」だということができるかもしれないが、カタログで示されている容器は、医療用機械器具としての機能を有しているようには見えない。また、医療用機械器具の部品だとも思えない。部品であっても、薬機法上必要な検査を受けた専用品でなければならず、このカタログで示されているような汎用的な包装容器が医療行為に使用されるはずがない。
オ 乙第5号証によるカタログ中、用途「アルコール」がハイライトされている頁に示されているポリエチレンボトルは、アルコール以外の用途が「シャンプー、リンス、ボディーソープ・・・農薬、その他」となっている。これは、このポリエチレンボトルが「何でも入れられるプラスチック容器」であることを明らかにしている。このような「何でも」入れることができるプラスチック容器は、商標法では、第20類に属する商品だと思料する。当該カタログ内で示されている他の容器も同様のことがいえる。
また、「ガラス製包装用薬品用容器」は、商標法では、第21類に属する商品である。つまり、例え、専ら医薬品を入れる「容器」であっても、病院で専ら使用され、医療行為を果たす機能を有していなければ、第10類に属する「医療用機械器具」に該当することはない。
カ 以上のことから、乙第1号証及び乙第5号証に示されている被請求人の商品は、「医療用機械器具」及び「医療用点滴瓶」ではない。被請求人提出の書面は、いずれも、本件商標が「医療用機械器具」と「医療用点滴瓶」に使用されているという証拠を示すものではない。
(2)乙第7号証及び乙第5号証の不適格性について
ア 被請求人によると、乙第7号証は、乙第5号証であるカタログが2021年5月に注文された事を示す納品書(兼領収書)ということである。被請求人は、第1回目の答弁書提出日の後である2021年10月1日に、乙第7号証である納品書(兼領収書)を入手したとわかる。
当該納品書によると、被請求人は、注文日と同じ5月11日にクレジットカード決裁をしたということになっている。クレジットカード払いをしたのだから、被請求人は遅滞なく領収書を入手できているはずである。そして、カタログ制作会社は、注文日である5月11日から7日後、カタログの納品とともに、当該納品書(兼領収書)を被請求人に渡すのが一般的な取引である。
したがって、乙第7号証である当該納品書(兼領収書)の作成日は、2021年5月の日付になっているのが普通である。それが何故、数ヶ月も経過した2021年10月1日の作成日となるのか、常識では考えられない話であって、この乙第7号証である納品書(兼領収書)は信ぴょう性が低いといわざるを得ない。
イ また、乙第7号証の納品書(兼領収書)は、被請求人によって出どころを墨消しされていることから、証拠として不適格である。このままでは、カタログ制作会社に対して、当該納品書(兼領収書)の正当性を確認したくてもできない。経理システムは、一般的に、改ざんや月次処理後の変更を防ぐため、作成日付をさかのぼって発行できないが、顧客からの注文日は自由に記載できる。被請求人は、2021年5月18日には納品されていたと主張しているが、当該納品書自体の信ぴょう性が低いため、納品日に関わる被請求人の主張を認めることはできない。
請求人は、乙第7号証が正当な証拠と成立するものではなく、ひいては乙第5号証であるカタログは2021年5月18日において被請求人に納品されていないと思料する。乙第5号証であるカタログがもし5月18日に納品されていたのであれば、被請求人は第1回目の答弁書とともに何故提出しなかったのか、その理由があるとすれば、第1回目の答弁書を提出した時点において、当該カタログがまだ被請求人に納品されていなかったと考えるのが自然である。
したがって、本件審判の請求の予告登録日前3年以内に商標を使用したという被請求人の主張は認められない。
ウ 乙第7号証が証拠として成立しないため、乙第5号証のカタログに記載されている「ラパック ボトル」の片仮名を被請求人が使用していたという被請求人の主張も成立しない。2021年5月18日に当該カタカナ文字が記載されたカタログを所有していたのであれば、第1回目答弁書にその旨を主張することができたはずである。それなのに、被請求人は、「RAPAK」と「ラパック」が社会通念上同一であることしか主張していなかった。このような経緯も、第1回目答弁書提出時点において当該カタログが被請求人の手元に存在しなかったのではないかと疑う要因である。
(3)「RAPAK」と「ラパック」は社会通念上同一ではない
被請求人は、第1回目答弁書において「『RAPAK』は称呼が(ラパックと)同一」と述べている。仮に、「PAK」の部分が「PACK」であれば「パック」と読むかもしれないが、「PAK」の部分を「パック」と呼ぶ人がいるとは思えない。「PAK」の呼び方は「パク」である。
したがって、「PARAK」と「ラパック」は社会通念上同一ではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 答弁の理由(第1回)
被請求人は、要証期間に日本国内において、その請求に係る指定商品中「医療用機械器具,医療用点滴瓶」について本件商標を使用している。
以下、その事実を立証する。
(1)乙第1号証で示される本カタログは、プリントアウトの日付のとおり、自社ホームページにて現在公開中であるが、乙第3号証で示されるアーカイブの日付のとおり、2018年7月29日時点で既に自社ホームページにて公開されており、現在まで引き続き公開されているものである。
したがって、本件審判の請求の予告登録日前3年以内に該当する。
(2)乙第2号証は、乙第1号証で示されるカタログが掲載される自社ホームページの「会社概要」の一部抜粋のプリントアウトであり、乙第4号証は、乙第3号証で示されるアーカイブと同一の年月(2018年7月8日)のアーカイブにおける「会社概要」の一部抜粋のプリントアウトである。乙第2号証及び乙第4号証には、被請求人の名称及び住所が掲載されており、日本国内における本件商標の商標権者による使用に該当する。
(3)乙第1号証及び乙第3号証に示されるカタログには、商品の説明として「薬品等の包装にも適しています。」の記載がある。
すなわち、本カタログに掲載されている容器は、医薬品を含む薬品の包装容器としても使用されることが記載されており、本件取消審判における指定商品「医療用機械器具」及び「医療用点滴瓶」に該当する。
(4)乙第1号証及び乙第3号証に示される本カタログは、右端側に一覧表示されるボタンのうち「RAPAK規格容器」のボタンを選択することで画面に表示される。
すなわち、本カタログには「RAPAK規格容器」が付されているが、「RAPAK規格容器」のうち、「規格」は一般的に使用されるものとして認識される部分であり、「容器」は普通名称として認識されるものであることから、自他商品等識別力を発揮する部分は「RAPAK」である。
したがって、本カタログには商標「RAPAK」が付された状態であることは明らかである。
本件商標は「ラパック」であるが、使用商標「RAPAK」は称呼が同一であり、社会通念上同一である。
(5)本件商標「ラパック」と社会通念上同一である「RAPAK」は、乙1及び乙3に示されるカタログに使用されているものであり、商標法第2条第3項第8号の行為に該当する。
2 答弁の理由(第2回)
(1)使用に係る商標
乙第5号証に示されるカタログは、表紙(第1頁)に「ボトルカタログ」と記載されるように、被請求人が製造販売するボトルが掲載されたボトルカタログである。本カタログには、第2頁に片仮名「ラパック ボトル」(以下「使用商標1」という。)と欧文字「RAPAK BOTTLE」(以下「使用商標2」という。)が表記されている。
使用商標1は、「ラパック」と「ボトル」との間にスペースが設けられており、後半部分「ボトル」は本商品の普通名称であることから、自他商品識別力を発揮する要部は「ラパック」である。
したがって、本カタログにて使用している使用商標1は、本件商標「ラパック」と社会通念上同一である。
また、使用商標2は、使用商標1と同様に、「RAPAK」と「BOTTLE」の間にスペースが設けられている点、及び、「BOTTLE」は本商品の普通名称であることから、自他商品識別力を発揮する要部は「RAPAK」である。使用商標2に使用商標1が併記されていることから、「RAPAK」は本件商標の欧文字表記であることを取引者等に強く認識させる構成となっている。使用商標1が本件商標と社会通念上同一であることからすれば、使用商標1の欧文字表記である使用商標2についても本件商標と社会通念上同一の商標であることは明白である。この点については、乙第6号証に示す判決(平成24年(行ケ)第10325号審決取消請求事件)によっても裏付けられる。
(2)使用時期
乙第7号証は、乙第5号証に示すカタログの納品書(兼領収書)である。本納品書(兼領収書)には、注文日が2021年5月11日とあり、印刷仕様(オプション)の欄に「7日納期」と記載されている。
すなわち、本カタログは、注文日から7日後の2021年5月18日には納品されていたものであり、被請求人は、営業活動に支障なきよう、直ちに頒布を開始している。なお、本納品書(兼領収書)に記載されている「作成日」は、本納品書(兼領収書)が作成された日であり、納品日ではない。
さらに、乙5に示すカタログは、裏表紙(第12頁)に記載の日付のとおり、発行日を2021年5月とするものである。
したがって、使用商標1及び使用商標2は、本件審判の請求の予告登録日前3年以内に使用されている。
なお、乙5のカタログの注文日前に、被請求人は本件審判請求がなされることを知り得る機会は皆無であり、いわゆる駆け込み使用ではない。
(3)商標の使用者及び使用場所
乙第5号証に示すカタログの裏表紙には、本件商標の商標権者である被請求人の会社名及び住所が記載されている。住所はパッケージング事業部及び容器開発部の所在地であるが、乙第8号証に示す自社ホームページの会社概要に記載されるとおり、京都本店は本件商標の商標権者の住所であり、日本国内における本件商標の商標権者による使用に該当する。
(4)使用に係る商品
本件商標は、被請求人が製造販売するボトルのうち規格ボトルに使用される商標であり、そのボトルは機能性の高さから様々な用途に適するものである。この点については、乙第5号証に示すカタログの第2頁に「容量・形状・キャップ、多彩なバリエーションからお選びいただける規格ボトルシリーズです。」の記載や、第7頁に規格「SHB」の用途として「アルコール、シャンプー、リンス、ボディーソープ、ハンドソープ、洗剤、鉱物油、農薬、その他」の記載、その他の規格のボトルにも様々な用途が記載されている点、機能性についての説明が多数記載されていることからも明らかである。
すなわち、乙第5号証に示すカタログは、食品用に限定されることなく、高機能の規格ボトルのカタログとして日々の営業活動に使用されているものである。
そして、乙第5号証に示すカタログには、第2頁に「ラパック ボトル シリーズ ラインナップ」の品番が記載されており、第7頁には品番「SHB」の用途として「アルコール」と記載され、第8頁には品番「HK−S」用途として「育毛剤」と記載され、第10頁には品番「HK−P」の用途として「ローションジェル」と記載されており、いずれについても医療用を除外するような特段の記載もない(なお、品番「HK−S」「HK−P」は、「ラパック ボトル シリーズ ラインナップ」に含まれるハクリボトルの品番であり、「ラパック ボトル シリーズ」に含まれる。)。
すなわち、上述のとおり、本カタログには医療用を含む「アルコール」、「育毛剤」、「ローションジェル」が用途として記載され、本カタログが高機能の規格ボトルのカタログとして日々の営業活動に使用されていることや、更には医療用ボトルには高い機能性が求められるのが通常であることも合わせれば、本カタログに掲載のボトルに医療用ボトルが含まれていることは明白である。
そして、医療用ボトルは本件商標の指定商品の「医療用機械器具,医療用点滴瓶」に含まれることから、使用に係る商品は「医療用機械器具,医療用点滴瓶」に該当する。
この点については、乙第9号証に示すパンフレットからも裏付けられる。乙第9号証に示すパンフレットは、被請求人が日々の営業活動において使用しているものである。本パンフレットには「ラパックボトル」の記載があり、その上方には「保存性能に優れたハイバリアーボトル」と記載され、下方には各種ボトルのイラストが記載され、右下端には会社名「KYORAKU Co.,Ltd.」と記載されている。本パンフレットの使用商標「ラパックボトル」は、「ボトル」部分が本商品の普通名称を表していることから、要部は「ラパック」であり、本件商標と社会通念上同一である点で乙第5号証に示すカタログと同様である。そして、本パンフレットも、用途を食品用に限定することなく、高い機能性をアピールポイントとしている。
かかる点からも、被請求人は、高機能の規格ボトルに対して商標「ラパック」を使用しており、「ラパック ボトル シリーズ」を掲載する乙第5号証に示すカタログも同様に高機能の規格ボトルのカタログとして使用しているものであり、その用途の記載からも規格ボトルには医療用が含まれていることが明白である。
(5)さらに、令和3年9月27日付け審判事件答弁書に添付の乙第1号証ないし乙第4号証について以下に述べる。乙第1号証及び乙第3号証に示す使用商標「RAPAK」は、乙第5号証のカタログに記載される使用商標2の要部「RAPAK」と同一である。上述のとおり、乙第5号証の使用商標2「RAPAK BOTTLE」は本件商標と社会通念上同一である。また、乙第1号証及び乙第3号証で示すカタログは自社ホームページで継続的に公開されているものであり、乙第5号証で示すカタログは紙媒体で配付しているものであり、両カタログは営業活動において併用されている。かかる状況を鑑みると、取引者等は、乙第1号証及び乙第3号証の使用商標「RAPAK」は、乙第5号証の使用商標2の要部「RAPAK」と同一であり、使用商標1の要部「ラパック」を欧文字で表記したものであると認識するのが通常であり、乙第1号証及び乙第3号証の使用商標「RAPAK」も本件商標と社会通念上同一の商標として認識されるものである。
なお、被請求人の自社ホームページの会社概要を示す乙第2号証及び乙第4号証の住所は、乙第8号証に示す自社ホームページの会社概要のとおり、京都本店の住所が本件商標の商標権者の住所と同一であることから、乙第1号証及び乙第3号証は本件商標の商標権者による使用に該当する。乙第10号証は自社ホームページのアーカイブデータに掲載される会社概要(一部抜粋)のプリントアウトである。乙第3号証のアーカイプデータと同年である2018年にアーカイブされたデータにも京都本店の住所が記載されている。
また、乙第3号証、乙第4号証及び乙第10号証に示すアーカイブデータは、非営利団体であるデジタルアーカイブが運営するWaybak Machineから入手したものである。

第4 被請求人に対する審尋及び被請求人による審尋への回答
1 審尋の要旨
審判長は、被請求人に対し、令和4年3月14日付けで、被請求人による主張及び提出された証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する証明をしたものと認めることはできない旨の合議体による暫定的見解を示した審尋を送付し、相当の期間を指定して、当該審尋へ回答する機会を与えた。
2 被請求人の回答
上記1の審尋に対して、被請求人は、何ら応答していない。

第5 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。(1)乙第1号証は、2021年9月27日に出力された本件商標権者のウェブサイトにおける製品情報のページであり、当該ページの「食品容器」の項には「多層ブローボトルの特長」として、「耐油性、耐有機溶剤性に優れており、油性食品、食用油を始め、鉱物油、農薬、有機溶剤を含む薬品等の包装にも適しています。」の記載がある。
なお、製品情報のページの右側には、「食品容器・包装」について各種項目が列挙されており、その中には「RAPAK規格容器」の表示もあるところ、被請求人の主張によれば、当該「RAPAK規格容器」の表示を選択することで、上記「食品容器」の項に遷移するものである。
なお、乙第3号証は、インターネットアーカイブのウェブサイトに保存されているデータであって、2018年7月29日の本件商標権者のウェブサイトにおける製品情報のページを出力したものであり、乙第1号証と同様の記載がある。
(2)乙第5号証は、被請求人の主張によれば、2021年5月発行の本件商標権者の製造販売するボトルのカタログである。
当該カタログには、表紙に「KYORAKU\BOTTLE\CATALOG」「キョーラク ボトルカタログ」の記載とともに、本件商標権者の略称の欧文字表記と認められる「KYORAKU」の記載がある。
また裏表紙には本件商標権者の名称が表示され、「202105−5」の記載がある。
そして、当該カタログの最初のページには、「RAPAK BOTTLE」「ラパック ボトル」の表題の下、「つくりたてのおいしさを、そのまま食卓に届けたい−そんな想いから、ラパックボトルは生まれました。」の記載とともに「ラパックボトルシリーズ ラインナップ」として「ハクリボトル」「MSB−M」「MSB」「MHB」「SHB」の記載がある。
また、「MSB−M」に関するページには「ポリエチレン多層ソフトボトル アルミシールつき中栓タイプ」、「用途 マヨネーズ、わさび、からし、・・・、その他」、「材質 LDPE多層」の記載、「MSB」に関するページには「ポリエチレン多層ソフトボトル アルミシールタイプ」、「用途 わさび、からし、・・・、その他」、「材質 LDPE多層」の記載、「MHB」に関するページには「ポリプロピレン多層ハードボトル」、「用途 焼肉のタレ、めんつゆ、食用油、・・・、その他」、「材質 PP多層」の記載、「SHB」に関するページには「ポリエチレン単層ハードボトル」、「用途 アルコール、シャンプー、リンス、ハンドソープ、洗剤、鉱物油、農薬、その他」、「材質 HDPE多層」の記載、「HK−S ハクリボトル スクリュー式」に関するページには「用途 醤油、ぽん酢、・・・、オリーブ油、アマニ油、・・・黒蜜、メープルシロップ、・・・、化粧水、乳液、シャンプー、リンス、・・・ヘアワックス、育毛剤、その他」、「材質 PP多層(最内層PE)」の記載、「HK−P ハクリボトル ポンプ式」に関するページには「用途 化粧水、乳液、ローションジェル、オイル、シャンプー、コンディショナー、その他」、「材質 PP多層(最内層PE)」の記載がある。
2 上記1によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)被請求人は、乙第1号証の本件商標権者のウェブサイトに記載されている「RAPAK規格容器」の表示及び乙第5号証のカタログに記載されている「ラパック ボトル」の表示をもって、本件商標と社会通念上同一商標を使用するものであると主張しているところ、乙第1号証及び乙第5号証は、その記載内容から、「多層ブローボトル」(以下「使用商品1」という。)又は「ポリエチレン又はポリプロピレン製ボトル状包装用容器」(以下「使用商品2」といい、使用商品1と使用商品2を合わせて「使用商品」という。)を紹介するためのウェブページ又はカタログであり、上記「RAPAK規格容器」の文字は使用商品1に、また、「ラパック ボトル」の文字は使用商品2に表示されたものと認められる。
また、乙第1号証は、本件商標権者のウェブページであって、乙第3号証のアーカイブデータにより要証期間に存在したものと推認し得るものであり、乙第5号証においても、本件商標権者の製作に係るカタログであって、要証期間である2021年5月に発行されたものであるとみて差し支えないものといえる。
(2)使用商品について
ア 被請求人は、使用商品1について、ウェブサイト(乙1、乙3)における商品の説明として、薬品等の包装にも適しているといった記載があるから、医薬品を含む薬品の包装容器としても使用されるものであって、「医療用機械器具」及び「医療用点滴瓶」に該当するものである旨、また、使用商品2はカタログ(乙5)において、用途として「アルコール」、「育毛剤」、「ローションジェル」が記載され、高機能の規格ボトルのカタログとして使用されていることや、医療用ボトルには高い機能性が求められるのが通常であることも合わせれば、カタログ(乙5)に掲載のボトルに医療用ボトルが含まれていることは明白である旨主張しているので、以下、この点について検討する。
イ 本件審判の請求に係る指定商品である第10類「医療用機械器具,医療用チューブ,医療用点滴瓶」とは、医院又は病院で専ら使用される機械器具、同チューブ、同点滴瓶であり、主として医師が処置し又は医師の指導で使用される、医療に特化した専用品であるといえる。
そして、使用商品1は、「多層ブローボトル」であるところ、これは乙第1号証の「食品容器」の項に掲載されていることから、本来は食品のための包装容器であるといえ、また、その説明として「耐油性、耐有機溶剤性に優れており、油性食品、食用油を始め、鉱物油、農薬、有機溶剤を含む薬品等の包装にも適しています。」の記載があることから、食品用の包装容器ではあるものの、鉱物油、農薬、薬品などといった物質をも包装することが可能な汎用性のあるボトル状の包装容器といえるものである。
また、使用商品2は、「ポリエチレン又はポリプロピレン製ボトル状包装用容器」であって、乙第5号証の「つくりたてのおいしさを、そのまま食卓に届けたい−そんな想いから、ラパックボトルは生まれました。」などといった記載から、主に一般家庭において使用されることを想定した食品のための包装容器といえるが、その他にも洗剤、化粧品等の用途も記載されていることから、汎用性のあるボトル状の包装容器であるといえる。
そうすると、使用商品は、いずれも汎用性のあるボトル状の包装用容器であって、医療に特化した専用品ということはできないものであり、その他の証拠を総合してみても、使用商品が「医療用機械器具」及び「医療用点滴瓶」であることを証明したものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、使用商品は、本件審判の請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる商品と認めることはできない。
ウ 小活
上記のとおり、被請求人が提出した証拠における使用商標は、本件審判の取消請求に係る指定商品について使用されたものとは認められない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、その請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したということはできない。
また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2022-05-27 
結審通知日 2022-05-31 
審決日 2022-07-07 
出願番号 1983068076 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y10)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 青野 紀子
小松 里美
登録日 1986-09-29 
登録番号 1890049 
商標の称呼 ラパック 
代理人 浅野 典子 
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