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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W14
管理番号 1390729 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-03-18 
確定日 2022-02-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5982480号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5982480号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5982480号商標(以下「本件商標」という。)は、「バックレス」の文字を標準文字で表してなり、平成29年2月28日に登録出願、第14類「宝飾品,貴金属,金及び金合金,銀及び銀合金,白金及び白金合金,宝玉及びその模造品,ダイヤモンド,エメラルド,ルビー,サファイア,真珠,水晶,ひすい,めのう,黄玉石,かんらん石,さんご,へき玉,玉髄,貴金属製糸,人造宝玉,身飾品(「カフスボタン」を除く。),イヤリング,ネックレス,ブレスレット,ペンダント,宝石ブローチ,メダル,指輪,ロケット,ネクタイピン,ネクタイ止め,貴金属製き章,貴金属製バッジ,貴金属製ボンネットピン,カフスボタン,キーホルダー,貴金属製靴飾り,時計,腕時計,懐中時計」を指定商品として,同年9月22日に設定登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和3年4月12日である。
また、本件審判請求の登録前3年以内を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件審判請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は令和3年6月18日付けで審判事件答弁書を提出し、要証期間に、本件商標をその指定商品に使用していないことについて正当な理由があるから、本件商標の登録は、商標法第50条第2項ただし書きの規定により、その取り消しを免れ得るものである、と述べているが、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)の本件商標の不使用については正当理由が認められないものであり、前条の規定によりその取消しを免れ得るものではない。以下にその理由を述べる。
(2)被請求人は、赤字決算であったこと、新型コロナウイルス感染症の影響による業績不振、銀行からの融資等を受けられなかったことを不可抗力といい、これによる事業中断を前条の正当理由による不使用だと主張している。
しかしながら、商標法第50条第2項ただし書きにおける正当理由とは、「登録商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合である(甲2)。特措法に基づくまん延防止等重点措置や緊急事態宣言は自粛要請にすぎず直ちに法的義務の不履行を許容する天変地異等には当たらない(甲3)。
(3)特許庁は、コロナ禍において手続期間の救済措置をとっており、その救済措置等ウェブサイトで公開している。手続期間の取扱いについて、各種手続を所定期限内に行うことが困難となった者に対しては、引き続き、提出する証拠書類の省略、手続書類等に記載する理由の簡略化を認める等の柔軟な対応を行っており、詳細については「新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続きの取扱いについて」、「新型コロナウイルス感染症により影響を受けた手続きにおける『その責めに帰することができない理由』及び『正当な理由』による救済について」にまとめている。
しかしながら、ここでいう救済を受けうる手続きとは、拒絶理由通知への応答等の特許庁に対する「手続」であり、実体的な義務の猶予ではない。また、さらに、法令上「その責めに帰することができない理由」、法令上「正当な理由」による期間徒過の救済が定められているものについての救済が定められている。これも前記同様に、手続の猶予であって、不使用取消審判における商標の使用の義務のような実体的な義務の猶予ではない。
(4)本件商標は、2017年(平成29年)9月22日に登録されており、登録からコロナウイルス感染症の問題が深刻化する2020年(令和2年)初頭までの間に2年もの時間があり、本件商標の使用を開始するのに十分な期間があったにもかかわらず、被請求人はなんら使用を開始していなかった。
(5)上述のように、本件商標権者が本件商標を要証期間に、本件商標をその指定役務に使用していないことについて正当な理由はなく、本件商標の取消を免れることはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
1 「バックレス」の企画及び商品構想
本件商標権者は2016年(平成28年)6月29日に会社法人登記をして設立、流通業を軸として運営をスタートすると同時にジュエリー業の企画を始めた。本企画段階において商品名として「バックレス」を使用することを決定し、代理人に依頼して商標登録をし、予算確保した後、事業を展開して、「バックレス」の製造・販売を数年以内に開始する予定であった。「バックレス」を使用する商品として本件商標権者が最初に企画したのは指輪で、金とプラチナの二種類の金属を使用したデザインの指輪であった。二点目として、ネックレスの後ろ部分につけたり、首の後ろ襟の部分にブローチのように取り付けたりして背中に装着するアクセサリーを企画した。毎年1月の東京ビッグサイト、10月のパシフィコ横浜にて開催される宝飾展には10年前から毎回参加し、「バックレス」を商品化するために動いていたが、予算の面で、これまで実現させることができていない。
2 新型コロナウイルス感染拡大状況及び緊急事態宣言等に伴う事業計画の遅れ
当初は、「バックレス」試作品製作及びネット販売用ホームページ作成のため予算100万円を確保し、製作会社を探した。試作した指輪「バックレス」は金とプラチナの二種類の金属を使用しているため製作が難しく、商品化のための予算は200万円を想定し、合計300万円で事業を開始する予定であった。300万円という金額はジュエリー業の予算としては極めて少ない金額であり、本格的に事業化するには更なる予算が必要となる。しかしながら、決算報告書(乙1)のとおり、赤字決算が続いており、予算を確保することが難しい状況が続いている。その理由は本件商標権者の責に帰すべき事由ではなく、正当な理由があるものであることを以下に説明する。
会社設立当初は、経費が収入を上回り赤字決算となり、事業が軌道にのるまでには数年間を要するのが一般的である。会社設立から3年後の2019年(令和元年)に、流通業において従業員同士のパワハラ問題が勃発し、その対応に追われることになったが、パワハラ問題解決後、大手企業と直接契約を締結する運びとなり、大幅に収入が増加する見込みとなった。その後、ジュエリー業の開始のために着々と事業化の準備を始めた。しかしながら、その年の12月より新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延しパンデミックとなり、世界的に流通が止まり、緊急事態宣言も発令され、軸とした流通業も決算報告書(乙1)のとおり、当初の予定よりも数字が延びずに赤字決算、ジュエリー業の先行きも不透明なため銀行の融資等も受けることができず、予算が確保できずに事業化できないまま今現在に至っている。
よって、本件商標権者が本件商標を使用していないことについては、正当な理由があるものであり、本件商標は取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人は、答弁書において「本件商標権者が、本件商標を使用できていないことについては、正当な理由がある。」旨主張し、その証拠として乙第1号証を提出しているが、本件商標をその指定商品について、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していたことについては、何ら主張、立証していない。
そこで、以下、本件商標権者が、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品に本件商標を使用していないことについて正当な理由があるといえるか否かを検討する。
(1)商標法第50条第2項は、そのただし書において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又は指定役務に登録商標を使用していないとしても、「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」があることを商標権者である被請求人が明らかにしたときは、その商標登録は取り消されない旨規定している。
そして、同項が規定する正当な理由とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破損等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解すべき(東京高等裁判所 平成7年(行ケ)第124号判決、知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10160号判決、知的財産高等裁判所 平成22年(行ケ)第10012号判決)とされるものである。
(2)これを本件についてみるに、被請求人は、本件商標権者が本件商標を要証期間内において使用していないことについて、2019年12月より新型コロナウイルス感染症が蔓延し緊急事態宣言等の発令がされたことから、世界的に流通が滞り、本件商標権者の軸とする流通業について赤字決算が続き(乙1)、本件商標を使用する予定であった指輪やアクセサリーを商品化する予算が確保できず、ジュエリー業が事業化できないことをその正当な理由としている。
しかしながら、被請求人が正当な理由として主張しているのは、要するに、予算が確保できず、事業化できないということであり、その要因の一つとして新型コロナウイルス感染症による影響があったと推認し得るとしても、新型コロナウイルス感染症が本件商標権者によるジュエリー業を事業化できない直接的な原因であることを証明した証拠は提出していないことから、被請求人の上記理由は、いわば企業の内部的事情に起因するものといわざるを得ないものであって、本件商標権者の責めに帰すことができない事由ということはできず、上記(1)のような、地震、水害等の不可抗力、第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由や、商標権者等の責めに帰することができない事由に該当することを明らかにしたということはできない。
(3)そうすると、被請求人の主張及び提出した証拠をもって、本件商標の使用をしていないことについて、商標法第50条第2項に規定する正当な理由があるということはできない。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る商品のいずれかについての本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したとはいえず、また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-11-30 
結審通知日 2021-12-02 
審決日 2021-12-22 
出願番号 2017032222 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W14)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 榎本 政実
豊田 純一
登録日 2017-09-22 
登録番号 5982480 
商標の称呼 バックレス 
代理人 片山 礼介 
代理人 堤 裕一朗 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 

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