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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W1825 |
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管理番号 | 1390682 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2020-02-03 |
確定日 | 2022-04-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6123121号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6123121号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年2月16日に登録出願、第18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同31年1月21日に登録査定、同年2月22日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、以下の10件の登録商標(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)であって、いずれも別掲2のとおりの構成からなり、現に有効に存続しているものである。 1 登録第1716371号商標(以下「引用商標1」という。)は、昭和55年10月17日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同59年9月26日に設定登録され、その後、平成18年3月1日に指定商品を第14類、第16類、第20類、第24類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同26年9月16日に第16類及び第24類についてのみ、商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 2 登録第1849612号商標(以下「引用商標2」という。)は、昭和55年8月1日に登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同61年3月26日に設定登録され、その後、平成19年9月5日に指定商品を第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 3 登録第1974801号商標(以下「引用商標3」という。)は、昭和57年2月18日に登録出願、第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同62年8月19日に設定登録され、その後、平成19年12月19日に指定商品を第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 4 登録第2091935号商標(以下「引用商標4」という。)は、昭和59年11月12日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、平成21年6月24日に指定商品を第6類、第9類、第12類、第13類、第19類及び第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 5 登録第2400549号商標(以下「引用商標5」という。)は、昭和59年11月12日に登録出願、第13類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録され、その後、同16年4月21日に指定商品を第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 6 登録第2428528号商標(以下「引用商標6」という。)は、平成元年10月26日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同4年6月30日に設定登録され、その後、同16年9月15日に指定商品を第14類、第20類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 7 登録第2602055号商標(以下「引用商標7」という。)は、平成3年9月30日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年11月30日に設定登録され、その後、同17年2月2日に指定商品を第18類「傘」を含む第6類、第14類、第18類、第21類、第22類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同25年9月10日に第18類、第21類、第25類及び第26類についてのみ、商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 8 登録第2680732号商標(以下「引用商標8」という。)は、平成3年9月30日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年6月29日に設定登録され、その後、同17年8月31日に指定商品を第9類「運動用保護ヘルメット,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」、第27類「体操用マット」及び第28類「運動用具」を含む第6類、第9類、第15類、第18類ないし第22類、第24類、第25類、第27類、第28類及び第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同26年2月12日に第9類、第20類ないし第22類、第25類、第27類及び第28類についてのみ、商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 9 登録第2721876号商標(以下「引用商標9」という。)は、昭和58年10月14日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年5月30日に設定登録され、その後、同20年3月19日に指定商品を第3類及び第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 10 登録第3328661号商標(以下「引用商標10」という。)は、平成6年12月20日に登録出願、「傘」を含む第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年7月4日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標の登録を商標法第4条第1項第11号により無効にすべき具体的理由 (1)利害関係 請求人であり、引用商標の商標権者であるドイツ法人Puma SE(以下「プーマ社」という。)は、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業である。1920年(大正9年)にアディ・ダスラー及びルドルフ・ダスラーの兄弟が靴を販売する「ダスラー兄弟商会」を設立したのがそもそもの始まりであり、その後、兄弟が1948年(昭和23年)にそれぞれ独立し、兄ルドルフがプーマ社を設立した。引用商標は、俊敏に獲物を追いつめ必ずしとめるイメージを想起させる、ヒョウくらいの大きさのネコ科の哺乳類動物であるピューマ(「プーマ」ともいう。)に由来するものである。 我が国においては、1972年から、日本国内における代理店としてコサ・リーベルマン株式会社が、請求人の業務に係る商品のうち、靴、バッグ、アクセサリーについて事業を展開し、2003年5月1日に、請求人の日本法人であるプーマジャパン株式会社(以下「プーマジャパン社」という。)が同事業を承継した。そして、ウェアについては、1972年から国内のライセンシーであるヒットユニオン株式会社が製造・販売していたが、2006年1月に、日本において引用商標を付したアパレル関連商品を生産する、請求人の日本法人であるプーマ・アパレル・ジャパン株式会社(以下「プーマアパレルジャパン社」という。)が設立され、同社がヒットユニオン株式会社から営業権を譲り受けた。2010年に、プーマアパレルジャパン社とプーマジャパン社は合併し、現在のプーマジャパン社となった(甲15)。 上述のとおり、請求人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時前より有効に存続し、我が国の取引者、需要者の間で周知・著名な引用商標の商標権者である(甲22)。 したがって、本件審判請求について利害関係を有する。 (2)引用商標の周知著名性 「2016年版スポーツ産業白書」によると、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、「プーマジャパン(株)」が7位に記載され、当該売上高は、2013年に約431億円、2014年に約425億円、2015年(見込)に約431億円、2016年(予測)に約442億円と推移している。 また、「スポーツシューズビジネス2016」によると、プーマジャパン社は、スポーツシューズのメーカー別国内出荷数量ランキングでは第5位であり、スポーツシューズのメーカー別国内出荷金額では6位に記載され、2013年に約179億円(全体の5.9%)、2014年に約177億円(全体の5.4%)、2015年に約184億円(全体の5.2%)、2016年(予測)に約178億円(全体4.8%)である。 さらに、「スポーツアパレル市場動向調査」(2015年版及び2017年版)によると、スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングでは、2012年は第4位、2013年から2017年は第5位であり、2016年出荷金額(見込)は約213.7億円(市場占有率4.1%)、2017年出荷金額(予測)は約214.0億円(市場占有率4.0%)であり、上位の「アディダス」「ミズノ」「アンダーアーマー」「ナイキ」「プーマ」の5ブランドだけで、全体の約30%を占めている。 請求人のウェブページにおいて、我が国のウェブサイトにおける商品の販売や直営店等の紹介がなされ、また、インターネットの公式オンラインストア、ABC−MARTオンラインストア、オンラインショップZOZOの通販などの媒体を通じて、需要者はプーマブランドの商品を購入することができる。 請求人はサッカーを始め、陸上競技、モータースポーツ等様々なスポーツ分野でスポンサーとして協賛しているだけでなく、陸上選手、有名歌手、デザイナー、人気キャラクター及びサッカーのクラブチーム等とのコラボレーションをしたシューズや、新作のスニーカーの宣伝をしている。 以上によれば、請求人は、1948年から「PUmA」の文字をプーマ社のブランドとしてスポーツシューズ等のスポーツ用品・スポーツウェアに使用し、我が国においては、1972年から靴、バッグ、アクセサリー等について、製造・販売してきたこと、かつ、引用商標を付してスポーツ分野でスポンサーとして協賛し、有名人等とのコラボレーションをした商品等を、少なくとも2009年には、ウェブサイトにおいて掲載しており、また、2013年ないし2017年における「プーマ」ブランドの売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキング」においても常に上位に位置している。 このため、「PUmA」の文字からなる引用商標は、請求人の業務に係るスポーツシューズ、被服、バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められるものである。 本件商標の登録出願時以前より、現在も継続して、引用商標を付したスポーツシューズ、被服、バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを日本国内で製造販売している事情として、甲第4号証ないし甲第11号証を提出する。 以上により、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、請求人の業務に係るスポーツシューズ、被服及びバッグ等のスポーツ用品・スポーツウェア(以下「請求人商品」という。)を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであることは、顕著かつ公知の事実といえる。 (3)商品の同一又は類似 本件商標の指定商品「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」はいずれも、引用商標中の引用商標7、引用商標8及び引用商標10に係る指定商品と同一又は類似している。 また、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、請求人商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっているところ(甲15及び甲22)、いずれも、本件商標の指定商品に含まれる、あるいはこれと関連性が高い商品である。 (4)商標の同一又は類似 ア 外観 本件商標の「PUmS」の欧文字は、各文字が縦線を太く、横線をやや細く、角部分に丸みを持たせた独特の書体により斜体で表され、「m」と「S」の間にアポストロフィ(’)を各文字の縦線とほぼ同じ太さ・向きに配し、さらに、「S」の下端が、「P」の縦線の手前まで描かれた横線と一体に描かれており、全体をもって略横長の長方形の左右の辺をやや右斜めにした(平行四辺形)枠内にはめ込まれたような印象を与える。 一方、引用商標の「PUmA」の文字部分は、各文字が縦線を太く、横線を細く、各文字の線を垂直に表すようにし、そして、角部分に丸みを持たせた縦長の独特の太く四角い書体で表され、全体をもってあたかも略横長の長方形の枠内にはめ込まれたような印象を与えるものである(甲15)。 請求人は、引用商標をスポーツシューズ、被服、バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアに使用しており(甲4ないし甲11)、同一の標章を我が国において多数商標登録している。 全10件の引用商標は、昭和55年8月1日から平成6年12月20日にかけて出願、昭和59年9月26日から平成9年7月4日にかけて登録され、本件商標の登録出願時及び登録査定時において有効に存続している(甲3の1ないし甲3の10)。 両商標を横に並べて外観を対比してみると、記号(アポストロフィ)又は図形要素(「s」の下端と一体に描かれた横線)、最後の欧文字1文字において差異が認められるものの、各文字を縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特の書体、及び欧文字4文字の構成において共通している。また、商標の縦横比は、引用商標が10:3(=縦:横)であるのに対し、本件商標は10:2.2(アポストロフィの上端から計測すると、10:2.6)となっており、外観全体の印象、特徴は似通っている。 特に、周知著名な引用商標を右斜め17度に斜体で表示にしたものと、本件商標の欧文字部分とを見比べてみると、各文字のフォントデザインが共通していることもあいまって、外観上、商標全体の特徴がとても近似していることが確認できる。 各種文書作成ソフトのフォントスタイルに「標準、太字、斜体、太字斜体」が設定されていることからも明らかなように(甲23)、文字(特に、欧文字)を斜体で表すことは一般に行われている。そうすると、当該事情に馴染みある需要者、取引者であれば、文字のフォントスタイルが標準か斜体かの違いを、単なる通常の表示変更の範ちゅうと捉えるにすぎず、それによって、両者の出所が異なる特徴として認識することは有り得ない。 欧文字4文字のうち、「P」「U」「m」の3文字を個別に対比してみるに、縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特のフォントデザイン(書体)が共通していることから、その外観的特徴はいずれも共通している。 縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特のフォントデザイン(書体)は、周知著名な引用商標の顕著な特徴として需要者に認識させる要因の一つといえる。 また、4文字目の欧文字「S」と「A」について対比してみるに、通常の書体であれば、両文字は一見して容易に区別できるが、本件のように、縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特の書体で描かれた場合、その外観上の印象は似通って見える。 さらに、本件商標の最後の欧文字「S」は、下端が、左方向に長く線状に描かれているが、スポーツやアパレル業界において、欧文字からなる商標の下や上に、構成文字とつながって線状の図形を装飾的に描くことは、頻繁に用いられている。 現に、請求人も、周知著名な引用商標のバリエーションとして、構成文字を斜体で表示したり、また、構成文字とつながった線状の図形を引用商標の下に描いた態様で使用したりしている(甲11ないし甲14)。 このため、当該事情に馴染みある通常の注意力を有する我が国の需要者であれば、本件商標の構成文字「S」の下端が横一直線に延伸されている部分を、特段、特徴のある態様と認識することはないと判断されてしかるべきである。 そうすると、本件商標の指定商品の需要者が通常有する注意力を基準として、全体観察又は分離観察、離隔観察により、両商標の外観を対比してみると、上述したとおり、構成文字4文字の最後の1文字が異なり、本件商標には識別力の弱い記号(アポストロフィ)及び図形要素(横一直線)が施されている点において異なるものの、最初の3文字「PUM」が同一で、縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特の書体により各文字が書されている態様において酷似している。また、本件商標の「s」の文字の下端が「p」の縦線の手前まで横一の太線で延伸されていることで、本件商標の外輪がはっきりと表され、略横長の平行四辺形にはめ込まれた印象を看者に強く与えるものである。 したがって、たとえ、両商標の構成態様及び構成文字の一部において差異があるとしても、本件商標は周知著名な引用商標の顕著な特徴を備えており、引用商標の周知著名性に係る事情をも勘案して全体的に考察すれば、両商標は、類似の商標といえる。 イ 称呼 本件商標は辞書等に掲載された外国語ではなく、その読み方は定まっていない。そのような馴染みない外国語を目にした我が国の需要者であれば、ローマ字読みにして称呼する場合、あるいはその発音を知らない場合であっても、馴染みのある英語の発音に倣って英語風に称呼する場合があると考えられる(甲33)。 通常、構成文字に相応したローマ字読みをして、当該語の称呼を特定することが経験則である。このため、本件商標から需要者が認識する自然な称呼とは、「プムズ」若しくは「プムス」、又は引用商標の周知著名性に係る事情から生じる「プームズ」若しくは「プームス」といえる。 これらと引用商標から生ずる称呼「プーマ」とを対比すると、3音又は4音という音構成において、異なるのは語頭音に続く長音の有無、末尾の「ス」の音の有無であり、その差異音にしても、弱音かつ聴取しがたい語尾に位置することから、それぞれを一連に称呼した場合には、全体の語調、語感が極めて近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがある。 ウ 観念 引用商標からは、「請求人の周知著名な商標」の意味合いが生じるのに対し、本件商標からは明確な意味合いが生じない。このため、両商標には観念上、明確な差異が認められない。 エ 一般的・恒常的な取引の実情 本件商標の指定商品は、引用商標が長年使用されてきた請求人商品と同一又は用途・目的・品質・販売場所等を同じくし、関連性の程度が極めて高く、商標やブランドについて詳細な知識を持たず、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通するだけでなく、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくない(甲34ないし甲36)。その場合、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、ささいな相違点に気付かないことも多い(甲16及び甲17)。 本件商標の指定商品に係るこれらの一般的・恒常的な取引の実情も十分考慮して両商標の類否を判断する必要がある。 このため、本件商標がワンポイントマークとして使用されたスポーツウェアが、周知著名な引用商標が数多く並ぶスポーツ用品店に陳列された場合、これを目にした通常の注意力を有する本件商標の指定商品に係る需要者であれば、その外観の相紛らわしさ、印象の酷似性により、両商標を誤認する可能性はより高いことが推測され得る。 実際の取引においては、文字商標の下や周辺に、横一直線を始め、線図を装飾的に描いた商品も多数流通している(甲37ないし甲42)。 (5)周知著名な文字商標に関する過去の類否判断事例 周知著名な文字商標との類否が争われた過去の審判事件において、例えば、「TABASCO」と「SABISCO」(甲18)、「SMFG」と「SMFC」(甲19)、「YONEX」と「YUNEX」(甲20)、「ネスプレッソ」と「ネルプレッソ」(甲21)は、一文字程度の違いであっても両商標は類似すると判断されている。本件においても同様の判断・認定がされてしかるべきである。 (6)小括 上述したとおり、本件商標と引用商標とは称呼及び外観において看者の印象・記憶に共通した印象を与えるだけでなく、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似する。 そうすると、引用商標の周知著名性、引用商標の書体の特徴、本件商標の指定商品における取引の実情や需要者の注意力を総合的に勘案すると、最後の4文字目や識別力の弱い記号及び図形要素に相異点を有するとしても、当該相異点が商標全体として看者の印象・記憶に影響を及ぼす程のものではなく、外観及び称呼における共通点を凌駕するものではないことから、両商標は類似すると判断されてしかるべきである(甲15ないし甲21)。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 本件商標の登録を商標法第4条第1項第15号により無効にすべき具体的理由 (1)本件商標と引用商標との類似性の程度 上述したとおり、本件商標と引用商標とは、とりわけ外観において看者の印象・記憶に共通した印象を与える。また、本件商標からは明確な意味合いが生じないため、両商標には観念上、明確な差異が認められないことから、商標全体の類似性の程度は、高い。 また、請求人は、引用商標のバリエーションとして、構成文字を斜体で表示し、構成文字とつながった線状の図形を引用商標の下に描いた態様の標章を使用しており(甲11ないし甲14)、これらと本件商標との類似性はより一層高いものといえる。 (2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度 引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、請求人の業務に係るスポーツシューズ、被服及びバッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであることは、特許庁において、顕著かつ公知の事実と認められている。 また、引用商標は、各文字が縦線を太く、横線を細く、各文字の線を垂直に表すようにし、そして、角部分に丸みを持たせた縦長の独特の太く四角い書体で表され、全体をもってあたかも略横長の長方形の枠内にはめ込まれたような印象を与える特徴を備えており、その独創性は高い(甲24)。 (3)本件商標の指定商品と請求人商品との関連性 本件商標の指定商品のうち、「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は、引用商標の周知著名性が需要者に広く認識されている請求人商品(スポーツシューズ、被服及びバッグ等のスポーツ用品・スポーツウェア)に含まれる、同一の商品といえる。また、その他の本件商標の指定商品「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,日傘」についても、請求人は、業として引用商標を付したスポーツ用日傘を製造販売している(甲5)。 このため、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度は極めて高い。 (4)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 本件商標の指定商品には、日常的に利用される性質の商品が含まれ、スポーツ関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、広く一般の消費者を含むものということができる。そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えられることから、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通する(甲15ないし甲17)。 さらに、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく(甲34ないし甲36)、その場合、ワンポイントマークは比較的小さいものであるから、そもそも、そのような態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる(甲15ないし甲17)。また、マーク自体に詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから、スポーツシャツ等に刺繍やプリントなどを施すときは、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、ささいな相違点に気付かず、内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって、その全体的な配置や印象が引用商標と比較的類似していることから、ワンポイントマークとして使用された場合などに、本件商標は、引用商標とより類似して認識されるとみるのが相当である。 (5)混同を生ずるおそれ 上記の事情等を総合すると、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、スポーツやアパレル関連の商品分野において、高い著名性を有していたことに照らせば、両商標の具体的構成に差異が存在するとしても、引用商標と外観において類似し、称呼上の印象も近似していると認められる本件商標が請求人商品と同一又はこれと深く関連する本件商標の指定商品に付して使用された場合、また、これをワンポイントマークとして使用された場合などには、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、顕著に表された独特な欧文字4字の外観構成に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、当該商品が請求人又は請求人との間に緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。 したがって、仮に、本件商標と引用商標とが非類似であるとしても、引用商標は、請求人商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されており、また、上述したとおり、両商標は、その構成中の欧文字4文字のうち、最初の3文字が同じで、独特の書体(フォントデザイン)が似通っているだけでなく、商標全体をもってあたかも略横長の長方形(平行四辺形)の枠内にはめ込まれたような印象を与えるものである。さらに、請求人は、引用商標のバリエーションとして、斜体に表示したものや構成文字とつながった線状の図形を引用商標の下に描いた態様の標章をも使用していることから、たとえ、称呼が相違し、外観において差異が認められるとしても、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、広く認識されて周知・著名な引用商標を連想、想起し、当該商品が請求人、又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、誤認するおそれがあるものと判断されてしかるべきである。 (6)小括 以上により、本件商標は、その全ての指定商品について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、申立人の業務に係るスポーツシューズ、被服、バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されている引用商標を連想、想起し、当該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 答弁に対する弁駁 (1)請求人が本件において特に問題視しているのは、被請求人が「日本国内においてプーマジャパン社との取引の下、正規代理店として製品(主にモータースポーツ製品)を流通、販売」していることから、以前から引用商標を当然知っているにもかかわらず、引用商標の特徴と似通った態様の本件商標を採択するに至った行為、そして、本件商標が登録されたことに気付いた請求人が、プーマジャパン社を通じて、直ちに被請求人と話し合いを行った際、被請求人は、本件商標の使用は控え、別の標章に変更する旨、プーマジャパン社に回答したものの、現在に至るまで履行しようとしない被請求人の態度である。当該事情を裏付ける証拠として、プーマジャパン社の従業員の陳述書(甲48)を提出する。 挙げ句の果てに、被請求人は、本件商標をTシャツ、帽子、トートバッグ、耳当てに付して販売を開始し(乙3の2ないし乙3の4及び乙4の1)、また、売場において、引用商標が付されたTシャツの隣に陳列して販売する行為に及んだ(乙4の2)。 (2)ア 被請求人による本件商標と異なる「Pum’s」の使用 被請求人は、自ら運営するECサイトにおいて、本件商標とは別の態様の「Pum’s」を使用している(甲45)。 被請求人は、本件商標はオリジナル商品として確立していると主張する一方で、本件商標とは全く異なる態様で「Pum’s」を使用しており、本件商標のみを使用しているわけではない。 イ 本件商標を付した被請求人の販売商品 被請求人は、Tシャツ、帽子、トートバッグ、耳当てに本件商標を付して販売している(乙3及び乙4)。 しかしながら、いずれも本件商標の指定商品には該当しない。 このため、当該使用は、本件商標の登録性とは何ら関係なく、被請求人の反論は意味をなさない。 ウ 商標の類似性 本件商標を付した黒色の帽子(キャップ)(乙3の2及び乙4の1)と同一カラーにより引用商標が付されたキャップとを対比してみると、その文字部分の特徴(周知著名な引用商標の独創性の高さ)から、非常に似通った印象を受ける。 また、本件商標の最後の欧文字「S」は、下端が左方向に長く線状に描かれているが、スポーツやアパレル業界において、欧文字からなる商標の下に、構成文字とつながって線状の図形を装飾的に描くことは、頻繁に用いられている(甲25ないし甲32)。 現に、請求人も、周知著名な引用商標のバリエーションとして、構成文字を斜体で表示したり、また、構成文字とつながった線状の図形を引用商標の下に描いた態様で使用したりしている(甲11ないし甲14)。 このために、当該事情に馴染みのある通常の注意力を有する我が国の需要者であれば、本件商標の最後の文字「S」の下端が横一直線に延伸されている部分を、特段、特徴のある態様と認識することはない。 4 結論 以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標について 本件商標の成り立ちは、当事業部の「PUMP UP MOTORSPOTS(パンプ アップ モータースポーツ)」というキャッチコピーをテーマに立ち上げたオリジナルブランドロゴであり、被請求人においては「パムス」又は「パム」と称呼している(乙1及び乙2)。「Pum’s」の語源はキャッチコピーに使われる単語の頭文字を引用し、構成中の「m」と「s」の文字の間には「’(アポストロフィ)」の符合を組み合わせた造語である。外観的特徴も本件商標は右斜めに斜体がかけられており、それぞれのフォントにおいても引用商標とは縦横比が異なり、構成全体においても一体的に表されていると認識されるべきであり、特定の観念と類似性を生じさせるものではない。 「Pum’s」の文字に相応した称呼としては「パムス」、「パムズ」、「プムス」又は「プムズ」と生じさせるものであり、引用商標の構成文字である「PUMA」に相応した「プーマ」及び「ピューマ」の称呼とは明らかに全体の語調、語感が異なり、明瞭に聴別することができる。また、請求人のブランドである「PUMA」の構成文字から生じるネコ科の哺乳類「ピューマ」の観念においても本件商標と相紛れるおそれはない。 2 本件商標のブランド「Pum’s」について 本件商標の「pum’s」は、モータースポーツをテーマに展開するオリジナルブランドであり、被請求人が運営するECサイト、直営店舗及びサーキット会場にてオリジナル商品の販売を行っている(乙3の1ないし乙3の4)。 また、被請求人は、日本国内においてプーマジャパン社との取引の下、正規代理店として製品(主にモータースポーツ製品)を流通、販売しており、直営店舗やサーキット会場において消費者を混同させるようなブランドを展開する意図があるはずもなく、売場において陳列が隣り合っていたとしても、本件商標「Pum’s」はオリジナル商品として確立しており、消費者が引用商標の商品と混同して購入されているという実態は見受けられない(乙4の1及び乙4の2)。 第5 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について 請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、請求人は、1972年(昭和47年)から我が国において、請求人の日本法人であるプーマジャパン社を通じて事業を展開するとともに、プーマジャパン社のオンラインサイト及びカタログ並びに各種雑誌及び各種オンラインサイト等において、引用商標がゴルフ用シューズ等の靴、ゴルフ用シャツ等のウエア、帽子及びバッグに2005年(平成17年)頃から現在に至るまで継続して使用されていることが認められ、プーマジャパン社の業務に係るスポーツ関連の商品について、相当程度の出荷数量及び売上高又は出荷金額があり、ランキングにおいても上位に位置しているものである。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係るスポーツ関連の商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているというのが相当である。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、「pum’s」の文字を太字のやや斜体の書体で表し、末尾の「s」の文字の下端を語頭の「p」の文字の下まで横一直線に延伸し、下線のように表された構成からなるものである。 そして、「pum’s」の文字(語)は、既成の語ではなく、また、我が国において一般に親しまれている語とも認められない。 そうすると、「pum’s」の文字からなる本件商標は、これを英語風に発音した「パムズ」、「パムス」、「プムズ」又は「プムス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は、別掲2のとおり、「PUmA」の文字を太い縦線と細い横線で描く書体で表してなるものである。 そして、前記1のとおり、引用商標は、請求人の業務に係るスポーツ関連の商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているものである。 そうすると、引用商標は、「プーマ」の称呼を生じ、「請求人のブランド」としての観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするものの、末尾における「s」の文字と「A」の文字との相違、「’」(アポストロフィ)の有無、下線のように表されたものの有無、書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか否かといった点において異なることから、外観においては、相紛れるおそれはないものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる「パムズ」、「パムス」、「プムズ」又は「プムス」の称呼と引用商標から生じる「プーマ」の称呼とは、たとえ語頭における「プ」の音を共通にする場合があるとしても、いずれも3音という短い音数においては、2音目及び3音目における音の相違が称呼全体に与える影響は大きく、それぞれを一連に称呼しても、全体の音調、音感が異なり、相紛れるおそれはないものである。 さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは「請求人のブランド」としての観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれはないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標7、8及び10の指定商品中に含まれているとしても(引用商標1ないし6及び9の指定商品は、本件商標の指定商品とは類似しないものと認められる。)、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用商標との類似性の程度 前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 そうすると、たとえ、語頭を含めた「pum(PUm)」の構成文字を共通にし、称呼において語頭における「プ」の音を共通にする場合があるとしても、本件商標と引用商標との類似性の程度は、極めて低いものといわなければならない。 (2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度 前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係るスポーツ関連の商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているものである。 そうすると、引用商標の周知著名性の程度は、極めて高いものといえる。 また、引用商標は、別掲2のとおり、「PUmA」の文字を太い縦線と細い横線で描く書体で表してなるものであり、書体においてやや特徴を有するものの、当該文字(語)自体は、「ピューマ(動物)」を意味する既成の語であるから、引用商標の独創性の程度は低いといえる。 (3)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との間の関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 本件商標の指定商品には「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」が含まれており、請求人の業務に係るスポーツ関連の商品とは、その用途及び目的を共通にするため、両商品の間の関連性の程度は高く、また、取引者及び需要者の共通性も高いといえる。 さらに、「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を含むスポーツ関連の商品においては、商標をワンポイントマークとして表示する場合があるという取引の実情がある。 (4)出所の混同のおそれ 前記(2)のとおり、引用商標の周知著名性の程度は極めて高く、また、前記(3)のとおり、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との間の関連性の程度は高く、取引者及び需要者の共通性も高いといえる。 しかしながら、前記(1)のとおり、本件商標と引用商標との類似性の程度は極めて低く、また、前記(2)のとおり、引用商標の独創性の程度は低いことからすると、商標をワンポイントマークとして表示する場合があるという取引の実情を考慮したとしても、本件商標に接する取引者及び需要者が、請求人又は引用商標を連想又は想起することはないというべきである。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用をしても、その取引者及び需要者をして、当該商品が請求人の商品に係るものであると誤信させるおそれがあるものとはいえず、当該商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものともいえない。 (5)小括 以上のとおり、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、本件商標と引用商標との外観を対比すると、縦線が太く、横線がやや細く、角部分に丸みを持たせた独特の書体により各文字が書されている態様において酷似している旨、また、本件商標は、全体をもって略横長の平行四辺形の枠内にはめ込まれたような印象を与え、引用商標は、全体をもってあたかも略横長の長方形の枠内にはめ込まれたような印象を与えるから、外観全体の印象、特徴は似通っている、特に、周知著名な引用商標を右斜め17度に斜体で表示にしたものと、本件商標の欧文字部分とを見比べてみると、外観上、商標全体の特徴が近似している旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成文字の書体を子細に観察すれば、縦線と横線の太さが異なるものの、その差は僅かであり、縦線と横線の太さが明らかに異なる引用商標の構成文字の書体との対比において、酷似しているとはいえないものである。 また、たとえ、本件商標と引用商標とが、いずれも、全体として略横長の平行四辺形又は長方形の枠内にはめ込まれたような印象を与えるとしても、両商標は、末尾における「s」の文字と「A」の文字との相違、「’」(アポストロフィ)の有無、下線のように表されたものの有無、書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか否かといった点において異なることから、外観において相紛れるおそれはないものであること、前記2(3)のとおりである。 (2)請求人は、本件商標からは、引用商標の周知著名性に係る事情から「プームズ」又は「プームス」の称呼をも生じる旨主張している。 しかしながら、たとえ引用商標の周知著名性の程度が極めて高いとしても、前記2(1)のとおり、本件商標からは、「パムズ」、「パムス」、「プムズ」又は「プムス」の称呼を生じるというべきである。 仮に、本件商標から「プームズ」又は「プームス」の称呼を生じるとしても、引用商標から生じる「プーマ」の称呼とは、前半における「プー」の音を共通にするものの、後半における「ムズ」又は「ムス」の音と「マ」の音との明らかな差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても、全体の音調、音感が異なり、相紛れるおそれはないものである。 (3)請求人は、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく、その場合、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、ささいな相違点に気付かないことも多いことからすると、その外観の相紛らわしさ、印象の酷似性により、両商標を誤認する可能性は高い旨主張している。 しかしながら、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、末尾における「s」の文字と「A」の文字との相違、「’」(アポストロフィ)の有無、下線のように表されたものの有無、書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか否かといった点において異なっており、称呼及び観念における相違も考慮すれば、たとえ両商標がワンポイントワークとして小さく表示される場合があるとしても、混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。 (4)請求人は、本件商標を付した黒色の帽子(乙3の2、乙4の1)と同一カラーにより引用商標が付されたキャップとを対比すると、非常に似通った印象を受ける旨主張している。 しかしながら、本件商標と引用商標とは非類似の商標であること前記2(3)のとおりである。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 ![]() 別掲2 引用商標 ![]() (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分に御注意ください。 審判長 中束 としえ 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2021-03-31 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-04-19 |
出願番号 | 2018024844 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
Y
(W1825)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
中束 としえ |
特許庁審判官 |
冨澤 美加 山田 啓之 |
登録日 | 2019-02-22 |
登録番号 | 6123121 |
商標の称呼 | パムズ、パムス、パム、プム、ピイユウエム |
代理人 | 三上 真毅 |