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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W054044
管理番号 1389969 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-21 
確定日 2022-09-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第6478367号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6478367号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6478367号商標(以下「本件商標」という。)は、「再生因子注入療法」の文字を横書きした構成からなり、令和3年3月4日に登録出願、第5類、第40類及び第44類に属する別掲1記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年10月14日に登録査定され、同年11月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第5873945号商標(以下「引用商標」という)は、別掲2に示した構成からなり、平成28年3月1日に登録出願、第5類「サプリメント,食餌療法用飲料・食餌療法用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」、第44類「美容,理容,美容・理容に関する情報の提供,医療及び健康に関する情報の提供」及び第3類並びに第35類の商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月12日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第11号及び同項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 本件商標の構成態様
本件商標は、標準的な書体で構成された「再生因子注入療法」という文字のみからなる商標であり、文字は同書同大、称呼は、「サイセイインシチュウニュウリョウホウ」という長い称呼を有するが、「サイセイインシ」と「チュウニュウリョウホウ」とには、観念上のつながりはなく、「再生因子」という「物」を、「注入療法」という「方法」によって、体内に「そそぎ入れる」ことを表す観念が生じる。
そうすると、本件商標は、「再生因子」と「注入療法」という少なくとも2語で構成された結合商標となる。
本件商標構成中の「再生」という文言は、一般的には「再び生きること」や「再び生かすこと」を意味するが、薬学等の分野においては「欠損が起きた組織の欠損部が、もとの組織の増殖によって補われること」をいい、また、「因子」という文言は、「ある結果を生ずるもととなる諸要素のうちの1つ」のことを意味する(甲3の1、2)。
既存の「○○因子」と呼ばれる文言のなかに、「再生因子」と呼ばれるものはなく、「再生因子」は、申立人が作り出した造語であり、識別力の強い商標である(甲3の5)。
また、「注入」及び「療法」に関しては、広辞苑には「注入」とは「そそぎ入れること。つぎこむこと。」、「療法」とは「治療の方法」とある(甲4の1、2)。
そうすると、「注入療法」は「注射器、カテーテル等を用いて、口以外の経路から内々に何らかの効果を奏する「物」を投与する治療法」であるということができ、実際に、医療・美容業界においては、そのような使用形態で「注入療法」という文言が使われている(甲5)。
以上より、「再生因子注入療法」は「何らかの因子を体内に注射などを用いて注入することによって、「再生」という結果を得るための治療方法」という役務であり、「再生因子」は、そうした結果を得るために用いられる商品であると解される。
2 商標法第3条第1項第3号について
本件商標の構成態様及びその構成要素となっている文言、及び本件商標から生じる観念は、上記1に示したとおりである。
(1)第5類の指定商品について
第5類の指定商品は、「再生因子」を含むものに限定されていない。
仮に、第5類の指定商品が「再生因子」を含むものに限定されると、「その商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章」となるから、本件商標は、第5類の指定商品との関係で商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)第40類の指定役務について
第40類の指定役務は、「再生因子を得るための」役務に限定されていない。
ここで、「ヒト細胞の加工,動物細胞の加工,治療用細胞加工,その他の医療材料の加工」が「再生因子を得るため」に限定された場合には、役務の質、効能を普通に用いられる方法で表示する標章となる。
また、「医療材料の加工に関する情報の提供」が「再生因子を得るため」に限定された場合には、「役務の効能、その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するものとなるから、本件商標は、第40類の指定役務との関係で商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)第44類の指定役務について
第44類の指定役務である「再生医療を利用した治療又は診断」の内容を検討する。
まず、「再生医療」とは、「組織や臓器の欠損や機能不全に対し、幹細胞を使って機能を回復する医療」と定義される(甲6)。
一方、「治療又は診断」における「治療」には、その中に1つの手法として「注入」治療が含まれることは上述したとおりであり、本件商標は、「再生因子」を「注入療法」により、患者の体内に経口以外の経路で「そそぎ入れる」ものであることがその態様より明らかであるから、「再生因子」がここでいう「再生医療」に使用される因子であることも明らかである。
以上から、本件商標の「再生因子注入療法」は、その指定役務である第44類の「再生医療を利用した治療又は診断」の「質、効能、用途、提供の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当し、本件商標は、第44類の指定役務との関係で商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との対比
本件商標「再生因子注入療法」は、「再生因子」と「注入療法」の結合商標である。そのうちの「注入療法」の語に関しては、上述したとおり「注射器、カテーテル等を用いた治療法」であるということができ、実際に医療・美容業界において普通にそのような使用形態で使われる(甲5)ものであるため、「注入療法」という文字列は商標の要部を構成しない。
そうすると、本件商標の要部は「再生因子」であり、この「再生因子」をもって類似判断を行わなければならない。
しかし、引用商標は、本件出願の日前に出願され、登録されている商標(甲2)である。そして、本件商標から要部を抽出すると、「再生因子」となり、引用商標と外観が類似し、「サイセイインシ」という同一の称呼と、同一の観念を有する類似のものである。
(2)指定商品・役務について
本件商標と引用商標の指定商品・役務は、同一又は類似である。
したがって、本件商標は、商標の要部が引用商標と同一であり、その指定商品・役務が、引用商標の指定商品・役務と同一又は類似である。
以上より、本件商標は、上記商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第16号について
(1)第5類に属する指定商品について
ア 本件商標は、「注入療法」という文言を含んでおり、時間の要素を含む「方法」を示す標識である。しかし、本件商標の第5類に属する指定商品は、時間の要素を含まない「物」に対して、時間の要素を含む「方法」を示す標識を付すことは、商品の質の誤認を生じさせるものである。
イ さらに、「注入療法」は治療法であって、何らかの物を製造する方法ではないから、上記の商品を製造することはできない。また、上記の商品は、「再生因子注入療法」のみに使用されるものでもない。
このため、これらの商品に対して「注入療法」を含む標識を付すことは、商品の質の誤認を生じさせるものに他ならない。
ウ さらに、第5類の指定商品のうち、「薬剤,医療用血液,血しょう」以外の商品は、上記注入療法の際に、注射やカテーテル等によって体内に「そそぎ入れる」ために用いられる商品でないことは、一般需要者にとっても常識である(甲8〜甲10)。
したがって、注入による治療とは関係のないこうした商品に本件商標を付する行為は、こうした商品が注入療法に使用可能な商品であるかのような品質誤認を、需要者に生じさせるおそれがある。
また、本件商標の第5類の指定商品のうち、「薬剤,医療用血液,血しょう」は、「再生因子」を含むものに限定されていない。そうすると、「再生因子」を含まないこれらの指定商品に、あたかも「再生因子」を含むような商標を付すことになるため、本件商標は「商品の品質の誤認を生ずるおそれのある商標」に該当することになる。
このため、本件商標を、第5類に属する指定商品に使用することは、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)第40類に属する指定役務について
第40類の指定役務である「ヒト細胞の加工,動物細胞の加工,治療用細胞加工,その他の医療材料の加工,医療材料の加工に関する情報の提供」は、「再生因子を得る」ための役務に限定されていない。
したがって、本件商標を、第40類に属する指定役務に使用することは、「再生因子を得る」ことによって得られるはずの治療効果が得られるかのような誤認を生じさせるものとなり、商品の品質を誤認させることになるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
5 むすび
以上より、本件商標登録に係る商標は、商標法第3条第1項3号、同第4条第1項第11号及び同項第16号に該当し商標登録を受けることができないものである。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)申立人提出の甲各号証によれば、以下のとおりである。
ア 「再生」、「因子」、「注入」、「療法」の各文字が申立人主張の意味を有することが認められる(甲3の1、2、甲4の1、2)。
イ 「注入療法」の文字が使用されていることがうかがえる(甲5)。
ウ 以上ア及びイからすると、本件商標を構成する「再生」、「因子」、「注入」及び「療法」の各文字が意味を有し、また、「注入療法」の文字が使用されていることがうかがえる。
しかしながら、「再生」及び「因子」を結合させた「再生因子」の文字は、一般の辞書や書籍等に掲載されている語ではなく、また、本件商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界における需要者に、直ちに何らかの意味合いを認識させるものでもない。
さらに、職権をもって調査しても、「再生因子注入療法」の文字が、本件商標の指定商品及び指定役務の品質、質等を表示するものとして使用されている実情は発見できないし、商品の品質又は役務の質等を表示するものと認識されるというべき事情も発見できない。
そうすると、「再生因子注入療法」の文字は、その構成全体をもって特定の意味合いを認識させない一種の造語というべきである。
してみれば、「再生因子注入療法」の文字からなる本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者に、その構成全体をもって特定の意味合いを認識させることのない一種の造語として認識、把握されるものというべきであるから、商品の品質又は役務の質等を表示するものとはいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が本件商標を自他商品及び役務の識別標識として認識することができないとみるべき特段の事情は見あたらない。
さらに、本件商標が商品及び役務の品質、質を表示するものといえないものであるから、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
(2)申立人の主張
申立人は、「「再生因子」の文言を含む商標を使用することは、「その商品の・・・品質、用途・・・を普通に用いられる方法で表示する標章となる」旨及び「「再生因子」を用いた役務は、その役務の提供の態様又は方法を普通に用いられる方法で表示するものに該当する」旨主張している。
しかしながら、「再生因子」の文字(語)は、一般的な辞書等に掲載されている語ではないうえに、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではなく、また、本件商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において商品又は役務の品質、質等を表示するものとして使用されている状況は見いだせないから、本件商標より、「再生因子を注入する療法」のごとき漠然とした意味合いを連想させる場合があるとしても、商品又は役務の特定の品質、質等を直接的ないし具体的に表示するものとして直ちに理解させるともいい難く、その構成全体をもって一体的に把握される一種の造語であると認識されるとみるのが自然である。
よって、申立人の主張は、採用することができない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当しない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、「再生因子注入療法」の文字からなり、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、視覚上まとまりよく一体的に表されているものであり、いずれかの文字部分が看者に強い印象を与えるような態様ではない。
また、これから生じる「サイセイインシチュウニュウリョウホウ」の称呼は、やや冗長とはいえ、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、上記(1)のとおり、構成全体をもって特定の意味を認識させないものではあるが、かかる構成及び称呼からすれば、一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが自然である。
したがって、本件商標は、「サイセイインシチュウニュウリョウホウ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲のとおり、レタリングを施した「再生因子」の文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、一般的な辞書等に掲載されていないうえに、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、特定の観念を生じない。また、引用商標の構成文字に相応して生じる「サイセイインシ」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
したがって、引用商標は、「サイセイインシ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
本件商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおり、「注入療法」の文字の有無に加え、「再生因子」の文字のレタリングの有無において明らかな差異を有するものであるから、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「サイセイインシチュウニュウリョウホウ」の称呼と引用商標から生じる「サイセイインシ」の称呼を比較すると、両称呼は、「チュウニュウリョウホウ」の有無という明確な差異を有するものであるから、それぞれを称呼するときには、明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、比較することができないものである。
エ 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において明らかに異なるものであるから、その外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考慮すると、両商標をそれぞれ同一又は類似の商品及び役務に使用しても、両商標は互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他に、本件商標と引用商標とが類似の商標とすべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上によれば、本件商標は引用商標とは非類似の商標であるから、両商標を同一又は類似の商品及び役務について使用しても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第11号及び同項第16号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、本件商標の登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件の指定商品及び指定役務
第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用血液,血しょう,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液,ばんそうこう除去用溶剤,湿布剤、圧迫ガーゼ」
第40類「ヒト細胞の加工,動物細胞の加工,治療用細胞加工,その他の医療材料の加工,医療材料の加工に関する情報の提供」
第44類「再生医療を利用した治療又は診断,美容,医療情報の提供,動物の治療,動物の美容,代替医療による治療」

別掲2 引用商標




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異議決定日 2022-09-07 
出願番号 2021032798 
審決分類 T 1 651・ 13- Y (W054044)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 馬場 秀敏
清川 恵子
登録日 2021-11-30 
登録番号 6478367 
権利者 株式会社同仁がん免疫研究所
商標の称呼 サイセーインシチューニューリョーホー、サイセーインシチューニュー、インシチューニューリョーホー、インシチューニュー 
代理人 特許業務法人綾船国際特許事務所 

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