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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1389962 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-17 
確定日 2022-09-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6448784号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6448784号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6448784号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年4月16日に登録出願、第25類「ズボン,外衣,ベスト,オーバーコート,防水加工を施した被服,ジャケット(被服),ティーシャツ,自動車競技用衣服,水泳着,靴及び運動用特殊靴,フットボール靴,帽子,ストッキング及びユニホーム用ストッキング,手袋(被服),ミトン,スカーフ,ターバン,装飾用袖口」を指定商品として、同年9月2日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第832340号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2004年(平成16年)6月25日に国際商標登録出願、第3類、第9類、第14類、第16類、第18類、第24類、第25類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成17年9月22日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 申立人の周知・著名性について
申立人であるイタリアの法人、ジョルジオ アルマーニ エス.ピー.エー.(英文名称:Giorgio Armani S.P.A.)は、デザイナーであるジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年にイタリアのミラノに設立されたファッションハウス(最新の高級服のメーカー)であり、高級ホテル(アルマーニ ホテルズ)や高級リゾートのチェーンビジネスのみならず、世界中でカフェやバー、ナイトクラブの運営も行っている(甲3)。
アルマーニブランドは、ファッション業界で最も権威のあるブランドと紹介され、メインブランド「ジョルジオ アルマーニ」の他、複数の姉妹ブランド、化粧品、リゾート、高級レストランなど多彩な事業を展開して「アルマーニ」と総称される(甲4)。
2 申立人の創立者ジョルジオ アルマーニについて
申立人は、イタリアのファッションデザイナーであるジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年に設立された(甲3〜甲5)。
申立人の創立者ジョルジオ アルマーニは、同じくイタリアを代表するファッションデザインナーである、ジャンフランコ・フェッレ(Gianfranco Ferre:末尾の「e」にはアクサン・テギュ記号が付されている。)、ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)とともに、「ミラノの3G」と呼ばれ、その一翼を担い、世界中で知られており(甲5)、その知名度を表す最たるものとして、アメリカの「Time(タイム)」誌の表紙を1982年に飾り、ファッションデザイナーとしては、1940年代のクリスチャン・ディオール以来約40年ぶり、2人目として表紙を飾った。イタリア人としては、ノーベル賞受賞劇作家のルイジ・ピランデルロに次いで2人目である(甲5、甲9の2)。
また、ジョルジオ アルマーニは、1981年のGQ誌の「メンズ・スタイル・アウォード・フォー・ベスト・ファッションデザイナー賞」を皮切りに、イタリア政府から、1985年にはイタリア共和国功労勲章「コメンダトーレ章」、1986年には「グランデ・ウッフィチャーレ章」、1987年には「共和国功績勲章」及び「大騎士賞」を授与されている。受賞歴はイタリア国内にとどまらず、1988年にはスペイン国王から、世界最高のファッションデザイナーに贈られる「クリストバル・バレンシアガ賞」を、1989年には日本でも「繊研賞」を授与されている(甲5)。
さらに、ジョルジオ アルマーニは、1980年以降、数々の映画衣装を担当し、映画のクレジットには、2005年時点で300回登場している(甲5、甲9の2)。
ジョルジオ アルマーニの自身の評伝として2007年に「ジョルジオ・アルマーニ 帝王の美学」が日本経済新聞社から発行されているほか、同年に日本ファッション・エディターズ・クラブにより「FECデザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選出もされている(甲5)。
つまり、ジョルジオ アルマーニは、20世紀で最も成功したデザイナーであり、著名な番付「フォーブズ(Forbs)」の世界長者番付にもランクインされている(甲5)。
上記で述べたことは、ファッション業界で知名度の高い雑誌「VOGUE」の記事においても同様に記載されている(甲6)。
3 申立人の我が国での事業について
(1)経緯
申立人は、1987年に、Giorgio Armani Japan株式会社を設立した。このときに、西武デパートの池袋店、渋谷店に店舗をオープンさせている(甲9の2)。
その後、日本各地でGiorgio ArmaniとセカンドラインのEmporio Armani等のブランドの店舗の出店を続け、現在では日本国内で72店舗を擁している(甲7)。
近年では、東京都内にある小学校の制服のデザインをしたことが全国のテレビ局により報道されたが、これも、ジョルジオ アルマーニが全国で高級ブランドであることが広く知られているからに他ならない。
(2)国内の「GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)」の店舗
申立人は、「GIORGIO ARMANI DONNA FUKUOKA IWATAYA(ジョルジオ アルマーニ ドンナ 福岡 岩田屋)」「GIORGIO ARMANI DONNA SHINJUKU ISETAN(ジョルジオ アルマーニ ドンナ 新宿 伊勢丹)」「GIORGIO ARMANI DONNA UMEDA HANKYU(ジョルジオ アルマーニ ドンナ 梅田 阪急)」「GIORGIO ARMANI GINZA TOWER(ジョルジオ アルマーニ 銀座タワー)」「GIORGIO ARMANI HIROSHIMA FUKUYA(ジョルジオ アルマーニ 広島 福屋)」など21の店舗を国内に有している(甲7の2)。
(3)海外の店舗
海外にも多数の国で店舗を構えており、引用商標が店舗の装飾や入口などに使われている(一例として、甲9の3)。
4 引用商標の周知、著名性について
上記1ないし3のとおり、申立人とそのブランドであるGiorgio Armaniは、40年以上も世界各国で広く事業活動を行っている。引用商標も1985年から前記のあらゆるArmaniブランドの展開に際して使用されている。したがって、その保有するブランド(商標)と引用商標は、日本国内のみならず、世界各国で周知、著名なものとして認知されている。
(1)売上高
2014年ないし2020年の申立人のアニュアルレポートによれば、2012年ないし2020年の売上高(1ユーロ130円で換算)は、2012年は29億2,840万ユーロ(約3,806億円)、2013年は30億4,720万ユーロ(約3,961億円)、2014年は31億3,580万ユーロ(約4,076億円)、2015年は40億1,150万ユーロ(約5,215億円)、2016年は39億4,040万ユーロ(約5,122億円)、2017年は39億2,660万ユーロ(約5,104億円)、2018年は38億600万ユーロ(約4,948億円)、2019年は41億5,700万ユーロ(約5,404億円)、2020年は32億7,800万ユーロ(約4,261億円)を記録している(甲8)。
これらの金額を見ても、申立人ブランドの世界での市場規模は大きく、ブランドの持つ価値が高く、申立人の商標並びにブランドが需要者に周知されていることが分かる。
(2)我が国での売上高
ア Giorgio Armaniブランド商品の売上高
2016年ないし2021年の我が国におけるArmaniブランド、全ラインの商品の売上高は、いずれの年も、1億4,000万ユーロないし2億2,500万ユーロ(182億円〜292億5,000万円。1ユーロ130円で換算)であり、6年間の平均で186億円ほどの国内売上高である。
イ 我が国での引用商標を付した製品の売上高
前記アのアルマーニブランドの売上高の約10%が、引用商標を付した商品の売上高である。したがって、2016年ないし2021年では、いずれの年も、18億円ないし29億円ほどの売上高である。
ウ 我が国でのGiorgio Armaniブランド商品の売上高
2015年ないし2020年の、我が国におけるGiorgio Armaniブランドの商品の売上高は、いずれの年も、4,071万7,000ユーロないし6,161万6,000ユーロ(50億819万円〜75億7,876万円。1ユーロ123円で換算)であり、平均66億円ほどの国内の売上高である。
(3)世界での引用商標を付した商品の売上高
2015年ないし2019年の世界における、引用商標を付した商品の売上高は、いずれの年も、約3億1,152万ユーロないし約3億7,150万ユーロ(約383億円〜約457億円。1ユーロ123円で換算)であり、総計で約16億7,305万ユーロ(約2,058億円)である。
以上の数値は、申立人の社内で集計したデータに基づいたものであり、一般には公表されていない数値であり、社内のデータそのものを書面形式で提出することはできないが、必要性に応じて形式を相談の上、提出することも検討する用意がある。
(4)広告宣伝費
ア 世界で費やしたGiorgio Armaniブランドに関する広告宣伝費
申立人が我が国を含む世界各国で費やしたGiorgio Armaniブランドに関する2012年度ないし2016年度の広告宣伝費は、「GAロゴ 被服」について、いずれの年も、1,612万8,000ユーロないし2,050万ユーロ(約20億円〜約25億8,000万円。1ユーロ126円で換算)、「GAロゴ 靴」について、74万3,000ユーロないし467万9,000ユーロ(約9,300万円〜約5.9億円。1ユーロ126円で換算)であり、2017年度はそれら被服、靴をあわせて1,287万1,000ユーロ(約16億円。1ユーロ126円で換算)であった。
いずれの年も、被服、靴をあわせて最低20億円以上、最高時は25億円以上の広告宣伝費をかけている。
イ 我が国で費やしたGiorgio Armaniブランドに関する広告宣伝費
申立人が我が国で費やしたGiorgio Armaniブランドに関する2017年ないし2020年の広告宣伝費は、被服について、いずれの年も、171万3,000ユーロないし274万1,000ユーロ(約2.1億円〜約3.4億円。1ユーロ123円で換算)、総計で2016年の2,000ユーロ(約24万円。同上)を加えて、833万1,000ユーロ(約10億円。同上)であり、2017年以降、毎年最低2億円以上を費やしている。
ウ 世界で費やした引用商標を付した商品に関する広告宣伝費
申立人が世界において、引用商標を付した商品に関し費やした2015年ないし2019年の広告宣伝費は、被服について、いずれの年も、2,021万3,000ユーロないし2,358万7,000ユーロ(約25億円〜約29億円)、総計で1億1,115万5,000ユーロ(約137億円)であった。
以上の数値は、申立人の社内で集計したデータに基づいたものであり、一般には公表されていない数値であり、社内のデータそのものを書面形式で提出することはできないが、必要性に応じて形式を相談の上、提出することも検討する用意がある。
(5)商品の販売個数
申立人は、引用商標が使用されるジョルジオ アルマーニというブランドの他にも「エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)」、「アルマーニ コレッツィオーニ(Armani Collezioni)」、「アルマーニ ジーンズ(Armani Jeans)」などの個別ブランドを所有し、被服、かばんや小物などの革製品、宝飾品、靴などを販売している。アルマーニに関わるその全体で毎年4,000万個程度の商品を世界で販売している。そのうち、我が国では80万個の商品が販売されており、さらに、そのうちの、おおよそ10%が引用商標を付した商品であり、2014年には11万999個、2015年には9万6,524個、2016年には4万6,178個、2017年には8万6,567個の商品を、2020年春夏シーズンに3万9,649個、同秋冬シーズンに4万25個の商品を販売している。
(6)引用商標が広告、宣伝の目的に使用された例
申立人の我が国向けのインターネットホームページの写しによれば、引用商標が複数のページに表示され、申立人のビジネスと引用商標とが密接に関わっており、引用商標が国内外の消費者の目に触れる機会が多いことが分かる(甲9の1)。
(7)雑誌等への掲載事例
申立人はインドやブラジル国内で頒布される雑誌等へ引用商標が付された商品の広告掲載を多数行っている(甲10の1、2、13)。
日本国内においても、2015年ないし2020年にかけて、国内で頒布される女性誌に複数回商品が掲載され、その商品に引用商標が表示されている(甲10の3〜12、14〜37)。
なお、それら掲載雑誌の2019年1月ないし3月までの3か月の国内印刷部数は、一般社団法人日本雑誌協会にて公表されている(甲10の38)が、一部発行部数が分かっている件に関してだけでも、1か月に32万部程度が発行されている雑誌へ、当該広告が掲載されている。
(8)世界各国での引用商標の商標登録例
申立人は、世界122か国の国別の商標登録のほか、71か国を超える指定国を指定した、マドリッド協定議定書に基づく国際登録商標を所有し、引用商標の世界的な法的保護を確保の上、使用している(甲11)。
(9)引用商標について著名性を認定したスペインでの異議申立ての決定
他人が保有するスペイン国の登録商標に対する、同国での異議申立ての審理において、引用商標の著名性が認定されている(甲12)。
(10)Brand Financeによる評価
英国に拠点を持つ、世界のブランドの評価を行う事業者Brand Finance社(甲13の1)は、2017年のイタリアのブランドトップ50を分析しており(甲13の2)、申立人のブランドの総称である「Armani」について、第10位にランク付けしている。
(11)Deloitte(デロイト)の高級品市場のランキング
国際的なビジネスコンサルティング企業として知られているDeloitte(デロイト)により、世界の高級ブランドのランキングが公表されており、その2018年ないし2020年の報告(甲13の3)によれば、2015年は21位、2016年は24位、2017年は26位、2019年は26位にランク付けされている。
(12)Reuters(ロイター)による記事
ロイターの記事によれば、2017年は25億ユーロ(1ユーロ126円換算で、3,150億円)の売上げを達成しており、プラダに次いで2番目に大きいイタリアのファッショングループであると報じている(甲14)。
5 商標法第4条第1項第11号違反について
(1)本件商標は、図形と文字からなり、この図形部分は、全体として円をモチーフとした図形である。左右2つに分かれた黒色の線による円を外縁に配したモチーフが描かれている。その左半分には縦中央に直線が、また、上部には半弧が描かれ、前記縦線から円の外側に水平に延びた横線が突き出ている。また、右半分には、上部の外縁に一部欠けた半弧が描かれ、円の中心に向かって縦線が延び、円の中心部分から円の外側へ向かって水平に横線が延びている。その端部から、下方向へ半孤が延びている。上部の半弧の中央には一部欠損があるが、極めて小さく、外観観察において注目するところではない。また、円をモチーフとした図の下には、「ALIEN SNAIL」の文字が配してある。
(2)引用商標も、円をモチーフにした図形商標であり、左半分に半弧を配し、下端から円の中心に向かって直線が円中央付近まで突き出て、その先端が左へ折れて水平方向に短い直線を延ばしている。また、右半分にも半弧を描き、その上端から円中心に向かってほぼ円の中心まで垂直方向、下へ向かって直線を伸ばし、円の中央付近にはその直線と、右側の半弧とを結ぶ水平方向の直線を備えている。円の左右に配された半弧の上端及び下端から垂直方向に直線が延び、右側の図形は垂直縦方向の線と水平横方向の線とが円の中央へ向かって延びていること、また左側の図形は半弧の中央部分にあたる位置に水平方向に直線が配されている点は、引用商標の円をモチーフとした図形の特に特徴のある部分であり、本件商標はかかる特徴点を同じく備えている。
(3)このように引用商標と構図を一にする本件商標は、外観が区別し難いほどに近似してデザインされている。商標の類否観察では、時と処を別にして行う隔離観察をもって行うところ、引用商標の特徴点を備え、円をモチーフとした図形からなる本件商標に接する需要者は、引用商標と外観上、十分に区別をすることができず、相紛らわしい図形と認知するのが自然である。
したがって、両商標は、その外観の印象が極めて近似するから、外観が類似している。
称呼の点については、本件商標は、「エイリアン スネイル」と称呼される英単語からなると推察される。
観念の点においては、本件商標に上記のとおり文字が配されているとしても、「ALIEN SNAIL」の文字は、成句としては存在しない語であるなど、需要者をして意味を理解できないものと考える。仮に「エイリアン スネイル」と称呼できたとしても、上部の図形部分との有機的結びつきは外観上も称呼上も存在しないため、図形部分と文字部分のそれぞれの認知と意味の把握には何ら影響しない。
以上のとおり、称呼、観念の観点からは両商標は対比することはできない。よって、両商標は、図形部分の共通性が際立つのであり、上記のとおり、外観上区別できないほど近似しているから、外観、称呼及び観念を総合的に勘案して、類似するものといえる。
(4)前記のとおり、引用商標自体は周知、著名な商標であるから、称呼、観念を凌駕して外観が極めて近似している本件商標に接した需要者は、本件商標から申立人の商標を想起させ、具体的な出所の混同を生じるおそれがあるほか、事業上何らかのつながりがあると想起される広義の混同のおそれが存在する。
以上により、本件商標は引用商標と外観上極めて紛らわしく、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは否定できないから、本件商標と引用商標とは類似するというべきである。
(5)また、本件商標の指定商品はすべて、引用商標の指定商品と同一又は類似する指定商品である。
(6)よって、本件商標は、先願の引用商標と同一又は類似する商標であって、同一又は類似する指定商品にかかる出願であり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録された商標である。
6 商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標と引用商標とが類似するとはいい得ないとした場合であっても、引用商標が申立人の商標として日本国内において周知、著名であることからすると、本件商標がその指定商品について使用されたときには、需要者、取引者をして、申立人の提供する商品であるかのごとく、又は申立人と経済的、組織的に何らかの関連を有するものの提供に係る商品であるかのごとく、その出所について需要者をして誤認混同を招くことは明らかである。
本件商標の指定商品は、引用商標の第25類の商品を対象とするものであるから、狭義、広義の出所の誤認混同を生じるおそれが存在することに疑いはない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないとした場合であっても、本件商標は同項第15号に違反して登録されたものである。
7 商標法第4条第1項第19号違反について
引用商標は、申立人の周知、著名な商標として世界各国で認識されることからすると、これと類似する本件商標をその指定商品に使用する場合には、ファッション業界において周知、著名な円をモチーフとした図形商標である引用商標に化体した知名度にフリーライドして、不正の利益を得る目的のもと、使用されるのであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人はデザイナーであるジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)により1975年にイタリアのミラノに設立された高級服のメーカーであり、現在は「Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)」、「Emporio Armani(エンポリオ アルマーニ)」、「Armani Collezioni(アルマーニ コレッツィオーニ)」などを含む「Armani(アルマーニ)」ブランド(以下「申立人ブランド」という。)を展開し、ホテル、カフェ、バー、ナイトクラブの運営なども行っていること(甲3、甲4、甲6)、申立人ブランドの世界における2012年ないし2020年の売上高は、いずれの年も、約29億ユーロないし約41億ユーロ(約3,806億円〜約5,404億円。1ユーロ130円で換算)であったこと(甲8)、世界におけるブランドランキングにおいて、申立人ブランドを、2015年は21位、2016年は24位、2017年は26位、2019年は26位にランク付けする事業者及び2017年のイタリアのブランド評価において10位にランク付けする事業者があること(甲13)、並びに、我が国においては、申立人は1987年にGiorgio Armani Japan株式会社を設立し、西武池袋店、西武渋谷店に「GIORGIO ARMANI」ブランドの店舗(以下「申立人店舗」という。)をオープンし、現在では申立人店舗は21店舗となっていること(甲7)、2015年から2020年に発行され、引用商標が使用された商品(以下「使用商品」という。)を紹介等する女性誌が相当数あること(甲10の3〜12、14〜37)、さらに、引用商標は、遅くとも2015年から使用商品に使用されているほか、国内外の申立人店舗に掲示等されていること(甲9の3、甲10の5ほか)などが認められる。
しかしながら、引用商標が使用された商品(使用商品)の我が国及びイタリアなど外国における売上高、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。なお、申立人は我が国及び世界における使用商品の売上高、販売数、広告宣伝費の具体的な金額及び数量を述べているが、それを裏付ける証左は見いだせないから、それら金額及び数量は採用できない。
(2)上記(1)のとおり、申立人は1975年にイタリアのミラノに設立された高級服のメーカーであり、現在では「Giorgio Armani」、「Emporio Armani」、「Armani Collezioni」などを含む申立人ブランドを展開し、申立人ブランドの世界における2012年ないし2020年の売上高は約3,806億円ないし約5,404億円であり、また、申立人ブランドは2015年ないし2019年に世界で21位ないし26位にランク付けされ、我が国において申立人ブランドの商品は1987年から販売されていることなどが認められることから、申立人ブランドは、我が国又はイタリアなど外国における需要者の間に相当程度知られているものといえる。
しかしながら、引用商標が使用された商品(使用商品)の我が国及びイタリアなど外国における売上高、シェアなど販売実績を示す証左は見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又はイタリアなど外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、上段に外輪郭が略円形状であって、その内部に長い縦線と短い縦線及び横線を組み合わせてなる図形(以下「本件図形部分」という。)と、その下段に「ALIEN SNAIL」の欧文字(以下「本件文字部分」という。)を配してなるところ、その構成態様から本件図形部分と本件文字部分が、常に一体とみるべき取引の実情等は認められないから、それぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るといえる。
そして、本件図形部分は、特定の事物を表するものとして認識されているという事情は見いだせないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の本件図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じず、その構成中の本件文字部分からは、その文字に相応して「エイリアンスネイル」の称呼を生じ、また、当該文字は一般の辞書等に掲載のないものであり、特定の語義を生じない一種の造語と認識されるというべきであるから、本件文字部分からは、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、円の上部左側及び下部右側の弧を一部切り取り、左の円弧の下部先端に接続し、中央に向って縦直線を配し、その先端に接続し、左に向かって先端部分が斜めに切り取られた横直線を配してなる。また、右の円弧の上部先端に接続し、中央に向かって縦直線を配し、該円弧の中央部分から、先端部分が斜めに切り取られた横直線を配し、縦直線と横直線が中央付近で交差した構成からなるものである。
そうすると、引用商標は、上記の特徴的な構成による組み合わせがバランス良く結合しており、その構成全体がまとまりのある一体のものとして、需要者に強く印象づけられるものであって、円図形をモチーフとした特異性のある図形として認識されるとみるのが相当であり、これより、特定の称呼及び観念は生じないものと認められる。
なお、申立人は、引用商標はアルファベット「G」と「A」が組み合わされてなるモノグラムであると主張するが、これが仮に「G」と「A」を基調としたものであるとしても、その図案化の程度は高く、アルファベット「G」と「A」を組み合わせたものと直ちに看取されるというより、その構成全体から円図形として認識されるというべきである。
(3)本件商標と引用商標の比較
ア 本件商標と引用商標の類否を検討すると、まず、本件図形部分と引用商標を比較すれば、外観において、両者はいずれも外輪郭が略円形状に表されているものの、近時、商標を構成する文字を図案化して表すことが普通に行われていることからすれば、前者はその下段に表された「ALIEN SNAIL」の各単語の語頭の欧文字「A」と「S」をモチーフとした図形と認識させるのに対し、後者は円図形をモチーフとした特異性のある図形と認識させるものであり、かかる外観上の差異が両者の視覚的印象に与える影響は大きく、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
そして、本件図形部分と引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件図形部分と引用商標は、外観において相紛れるおそれがなく、称呼及び観念において比較することができないものであるから、両者の外観、観念及び称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものというべきものである。
イ また、本件商標の構成全体及び本件文字部分と引用商標とは、上記のとおりの外観、称呼及び観念からすれば、相紛れるおそれのないことは明らかである。
してみると、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
ウ なお、申立人は、引用商標の構成において、円の左右に配された半弧の上端及び下端から垂直方向に直線が延び、右側の図形は垂直縦方向の線と水平横方向の線とが円の中央へ向かって延びている点及び左側の図形は半弧の中央部分にあたる位置に水平方向に直線が配されている点は、引用商標の円をモチーフとした図形の特に特徴のある部分である、本件商標はかかる特徴点を備え、引用商標と構図を一にし、引用商標と外観が区別し難いほどに近似してデザインされているなどとして、両商標は外観上類似している旨主張している。
しかしながら、本件図形部分及び引用商標は、上記のとおり、本件図形部分の下段に表された「ALIEN SNAIL」の各単語の語頭の欧文字「A」と「S」をモチーフとした図形、及び円図形をモチーフとした図形と認識されるものであって、離隔的に観察しても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当であるから、申立人のかかる主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められない。
また、本件商標は、上記2のとおり、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきであるから、類似性の程度が高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記2のとおり本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、さらに、上記3のとおり、本件商標は、引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうとすると、本件商標は、引用商標の知名度にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきである。
なお、申立人は我が国及び世界における使用商品の具体的な売上高、販売数、広告宣伝費に係る証左の提出を検討する用意がある旨主張しているが、仮に引用商標が周知著名であるとしても、上記のとおり本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標であり、上記判断を覆し得ないから、かかる証左は求めないこととした。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標)


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特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-09-15 
出願番号 2021047211 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2021-09-28 
登録番号 6448784 
権利者 北京外星蝸牛科技有限公司
商標の称呼 エーリアンスネール、エーリアン、スネール、エイエス 
代理人 叶野 徹 
代理人 弁理士法人筒井国際特許事務所 
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