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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1389954 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-28 
確定日 2022-09-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6429416号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6429416号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6429416号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「アップルモンスター」の文字を書してなり、令和2年6月29日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同3年7月5日に登録査定、同年8月16日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、以下のとおりである(なお、以下の引用商標1ないし引用商標7をまとめて「引用商標」といい、引用商標1ないし引用商標6は、現に有効に存続しているものである。)。
(1)登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様: 「MONSTER」(標準文字)
登録出願日: 平成22年7月8日
設定登録日: 平成22年12月24日
更新登録日: 令和2年12月2日
指定商品: 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
(2)登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様: 別掲2のとおり
登録出願日: 平成18年6月9日
設定登録日: 平成19年6月22日
更新登録日: 平成29年5月9日
指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
(3)登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様: 「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日: 平成22年7月8日
設定登録日: 同23年2月25日
更新登録日: 令和3年2月25日
指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
(4)登録第6138055号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様: 「MONSTER DRAGON TEA」(標準文字)
優先権主張: 2018年(平成30年)7月3日 カナダ
登録出願日: 平成30年12月26日
設定登録日: 平成31年4月12日
指定商品:第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
(5)登録第6323183号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様: 「MONSTER ENERGY DRAGON TEA」(標準文字)
優先権主張: 2019年(令和元年)10月28日 中華人民共和国
登録出願日: 令和2年4月27日
設定登録日: 令和2年12月1日
指定商品:第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
(6)登録第6365952号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様: 「JAVA MONSTER」(標準文字)
登録出願日: 令和2年1月20日
設定登録日: 令和3年3月19日
指定商品:第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
(7)申立人の主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの
「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標7」という。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第447号証(枝番号を含む。なお、特に断らない限り、証拠番号には枝番号を含み、表記にあたっては、「甲○」及び「甲○の○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)及び別紙1ないし別紙9を提出した。
(1)申立人の使用に係る「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)及びその表音「モンスター」、「MONSTER」の頭文字「M」をベースとしたモンスターの爪を象った図柄(以下「爪の図柄」という。甲328)、並びに爪の図柄と「MONSTER」及び「ENERGY」から構成されるロゴマーク(以下、これらをまとめて「申立人商標等」という場合がある。)の周知性について
ア 申立人商標と取扱い商品
(ア)申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり(甲3)、創業時以降、アルコールを含有しない飲料(炭酸飲料、天然ソーダ水、清涼飲料、フルーツジュース、エナジードリンク等の様々な飲料製品)の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事し、2015年6月以降はエナジードリンクの事業に注力している(甲2、甲58)。
(イ)申立人商標等は、申立人が2002年から、現在に至るまでMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として継続して使用しているものであり、2002年に米国で第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、日本国内の市場では、2012年5月に販売開始して、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中であって、全世界では2017年の米ドルベースで第2位の売上げを記録(甲58)したブランドといえるものである。
申立人商品には、2002年以降現在まで、「MONSTER」の文字をすべての個別製品名に使用し、これらの個別製品の包装容器(缶、瓶)には、特徴的な書体の「MONSTER」の文字(甲416)を独立して見る者の目を惹く態様で表示したデザインを使用している(甲7、甲10、甲14、甲15、甲58〜甲62、甲101〜甲103、甲127、甲128、甲253、甲256、甲257、甲263、甲264、甲291、甲323、甲324、甲353〜甲361、別紙1、別紙2)。
申立人商品の個別製品には、常に「MONSTER」の文字に他の語・文字又は数字を結合させた名称(例えば、「MONSTER ENERGY」。)が使用されており、全商品が「MONSTER」の文字を基調とする製品名で統一されている。
(ウ)我が国において、2012年5月の発売以降、現在までに販売された申立人商品(リニューアル製品及び季節限定商品を含む。)は次のとおりである(別紙1)。
a 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー 缶355ml)」(2012年5月8日発売、甲7、甲14)、「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー ボトル缶473ml)」(2018年8月7日発売の大容量ボトル缶、甲354〜甲356)
b 「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」(2012年5月8日発売、甲7、甲14)、「MONSTER KHAOS(モンスターカオス 缶355ml)」(2016年5月17日リニューアル発売、甲384)
c 「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(2013年5月7日発売、甲10、甲15)、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(2017年4月下旬リニューアル発売、甲385)
d 「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(2014年8月19日発売、甲59、甲61)、「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)」(2016年4月12日リニューアル発売、甲383)、「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3缶160ml自動販売機限定発売)」(2019年4月23日発売、甲361)
e 「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250g)」(2014年10月7日発売、甲60、甲62)
f 「MONSTER ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(2015年7月21日発売、甲101〜甲103)
g 「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ 缶355ml)」(2017年6月27日発売のバレンティーノ・ロッシ氏とのコラボレーション、甲256、甲257、甲263)
h 「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー スペシャルデザイン缶355ml)及び「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ スペシャルデザイン缶355ml)」(2017年12月上旬発売の平野歩夢氏とのコラボレーション、甲291)
i 「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(2018年4月24日発売、甲323、甲324)
j 「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(2019年4月23日発売、甲353、甲357、甲358)
イ 広告宣伝活動
申立人は、エナジードリンクの中心的需要者層である若い世代の男性(甲401)にMONSTERブランドを強くアピールするため、独自のマーケティング戦略に基づいて申立人商品の広告宣伝活動を全世界的に行っており、申立人が2002年以降に費やした広告費は、宣誓供述書作成時の2019年5月14日時点で46億米ドルを超える(甲58)。我が国では、申立人商品の販売を開始した2012年から2017年末までに広告宣伝費として7,680万米ドルを費やした(甲58)。
申立人商品に関する広告宣伝活動の特徴は、国際的に活躍する有名人気アスリート、チーム及びミュージシャン等に対するスポンサー活動を中核に捉え、スポーツイベント等や大手コンビニエンスストアとタイアップした申立人商品のサンプル配布、販売キャンペーン、MONSTERブランドの非売品グッズの配布などを頻繁に実施し、また、申立人商品の中心的な需要層である10〜30代の若い世代が一般に多く利用するウェブサイトやソーシャルメディアなどのインターネットメディアを駆使した情報発信によって、MONSTERブランドの認識度を高め、申立人商品の販売促進を行うというものである。
加えて、申立人商品及びMONSTERブランドの広告活動の一環として、申立人は、MONSTERブランドをアパレルメーカー等に使用許諾し、様々なMONSTERブランドライセンス商品をライセンシーを通じて、あるいは、申立人が運営するオンライン通販サイトやスポーツイベント等の会場で配布している。また、ビデオゲーム会社と提携してMONSTERブランドを使用したビデオゲームソフトの開発や当該ビデオゲームの発売とタイアップした申立人商品の共同販売促進活動を継続的に実施している。
ウ 第三者の記事(表彰等)
申立人の経営戦略及び業績は、「TIME」、「FORTUNE」等の有名誌で度々紹介され、また、数々の賞を受賞するなど、本件商標が登録出願されるはるか以前から米国を中心とする経済界で高く評価されている(甲54、甲55、甲58、甲391〜甲393)。
また、有名経済・ビジネス誌には、有名アスリート等に対するスポンサー活動を通じたMONSTERブランドのマーケティング戦略や、その業績の高成長ぶりを賞賛する記事が数多く掲載されている(甲49〜甲53、甲56、甲57)。
エ 国内外における商標登録
申立人は、我が国を含む世界150を超える国及び地域において、引用商標を含むMONSTERブランドマークを商標登録している。(甲58、甲438〜甲440)。
オ ブランド認知度及び市場占有率
第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内エナジードリンク市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかであり、2013年以降も、申立人商品は着実に売上を伸ばしている。また、働く女性層にターゲットを絞り、オレンジ色のデザインで果汁入りの「モンスター・カオス」を投入するなど、消費者におけるブランド認知度はさらに上昇した(甲311、甲312、甲314、甲316〜甲322、甲384、甲385)。
カ 「MONSTER」、「モンスター」との表示で認識されていたこと
申立人は、申立人商品の広告宣伝活動において、「MONSTER」及び「モンスター」の表示を使用していることから、申立人商品は、我が国において「モンスター」と呼ばれ、「MONSTER」及び「モンスター」と表示され、認識されていた(甲364等)。
キ 小括
以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る申立人商標等は、本件商標の登録出願時及び査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 本件商標との類似性
本件商標の構成文字「アップルモンスター」は、「MONSTER」又はその音訳「モンスター」の文字、「モンスター」の音(称呼)、「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標1ないし引用商標7、並びに「MONSTER」を使用した申立人商品の個別製品名(別紙1)と一致し、これらの申立人の使用に係る商標と外観、称呼及び観念の印象が類似する。
また、本件商標の構成文字は、申立人商品に使用されているすべての個別製品名と「MONSTER」又はその音訳「モンスター」に他の語を結合する方法によって構成されている点でも申立人の使用に係る商標と一致する。
さらに、本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)に使用される「アップル」の文字は、当該商品の原材料を表示するもの、すなわち品質表示として認識理解されるに止まり、自他商品識別力を欠く。仮に「アップル」の文字が自他商品識別力を発揮する場面があったとしても、「モンスター」の文字と比較して自他商品識別力が薄弱であることは明白であるから、本件商標においては「モンスター」の文字部分が出所識別標識として需要者に強い印象を与える。
よって、本件商標は、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。
イ 本件指定商品との関連性
本件指定商品は、引用商標5及び引用商標6の指定商品と同一又は類似のものであることに加えて、申立人商品のエナジードリンクとは、製造部門、販売場所、原材料、用途、効能、需要者層が一致ないし重複する類似のもの、あるいは関連性が極めて強い商品というべきである。
本件指定商品の最終的な需要者は一般消費者であるから、通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
ウ 出所の混同
「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び査定時に申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた。
したがって、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人会社を直観し、当該商品が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力を希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料社」という。)を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7〜甲9)。
(イ)申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターブソリュートリーゼロ)」(甲10、甲15)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジーM3)」(甲59、甲61)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー)」(甲60、甲62)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ)」(甲101〜甲103)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ)」(甲256、甲257、甲263、甲264)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ)」(甲323、甲324)及び2019年(平成31年)4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ)」(甲353、甲357〜甲360)の販売を開始し、製品によってはリニューアルした製品やコラボ缶の製品を販売した(甲127、甲128、甲252〜甲257、甲291、甲353〜甲356、甲361)。
(ウ)申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」(2016年(平成28年)5月から)、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTR」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」の容器には、別掲3のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「使用商標」という。)が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257〜甲263、甲357〜甲360ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器にはその中央にデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下、この文字部分を「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されており、さらに、これらの文字と共に爪の図柄も表示されている(甲60、甲62、甲323〜甲326ほか)。
(エ)申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、使用商標又はこれと共に爪の図柄を表示している(甲73〜甲80、甲82、甲83、甲87、甲88ほか)。我が国において、引用商標2商標又はこれと共に爪の図柄が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98、甲100ほか)。
(オ)平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権(国際登録第1048069号など)を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169〜甲224、別紙8)。
(カ)JMR生活総合研究所(以下「JMR生活総研」という。)による消費者調査No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、JMR生活総研による消費者調査No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲312)。
(キ)有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)
(ク)ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
(ケ)JMR生活総研による消費者調査データNo.269「エナジードリンク(2018年(平成30年)5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴ−ルド 寡占化すすむエナジ−ドリンク市場」のタイトルのもと、「今回の調査では、「リアルゴ−ルド(日本コカ・コーラ)」「レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)−」「モンスターエナジー(アサヒ飲料)」の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載がある(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html)。また、JMR生活総研による消費者調査データNo.293「エナジードリンク(2019年(令和元年)5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルのもと、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。」の記載がある
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html)。
(コ)申立人及びアサヒ飲料社は、本件商標の登録出願日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブサイトにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は引用商標2商標若しくは「モンスターエナジー」の文字と共に爪の図柄が表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101〜甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124ほか)。
イ 上記アの事実によれば、申立人は、我が国において、アサヒ飲料社を通じて2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後、現在まで計9種類の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通し申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンクで3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は2017年(平成29年)において成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の商標登録出願日(令和2年6月29日)前から、登録査定日(令和3年7月5日)においても、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといい得るものである。
また、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に、使用商標が表示されていること、常にこれと共に爪の図柄が表示されていること、さらにニュ−スリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」または、「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字並びに使用商標に爪の図柄を加えた態様は、いずれも本件商標の登録出願前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、指定商品中にエナジードリンクを含む、「MONSTER ENERGY」の文字からなる引用商標3、使用商標に爪の図柄を加えた態様からなる引用商標2は、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されているものというべきである。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品は、幅広い需要者層を有するエナジードリング以外の清涼飲料の分野においてまで、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
さらに、「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字は、ニュースリリ−ス、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられるとしても、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは使用商標の文字と共に表示又は掲載されていることからすれば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字を、申立人商品(「モンスターエナジー」)の一連の名称として使用されていることを前提に、申立人商品(「モンスターエナジー」)を指称する文字として理解するというべきである。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは使用商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」及び「モンスター」の文字からなる引用商標1及び引用商標7は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、「MONSTER DRAGON TEA」の文字よりなる引用商標4は、その指定商品中に「エナジードリンク」を含むものであるとしても、当該商標を使用した商品についての販売実績及び取引実情等が確認できないものであり、申立人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
さらに、引用商標5は「MONSTER ENERGY DRAGON TEA」及び引用商標6は「JAVA MONSTER」の文字からなるものの、その指定商品中に「エナジードリンク」を含むものではないし、また、当該商標が使用された指定商品についての販売実績や取引実績が確認できないものであるから、引用商標5及び引用商標6が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、引用商標との関係で、出所の混同を生ずるおそれがある旨主張していると認められるので、以下検討する。
ア 本件商標と引用商標の類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、上記1のとおり「アップルモンスター」の片仮名を横書きしてなるところ、当該文字は、同じ書体、同じ大きさ及び等間隔で表され、視覚上、まとまりよく一体的に看取されるものであって、「モンスター」の文字部分が殊更看者に対して強く支配的な印象を与えるという構成であるとはいえない。
そして、構成中の「アップル」は、「りんご」の意味を、「モンスター」は「怪物、化け物」の意味(甲444〜甲447)を、それぞれ有する一般に親しまれた語であるから、これらの文字を結合させたと認められる「アップルモンスター」の文字部分から「りんごの怪物、りんごの化け物」程の意味合いを容易に理解させ、これより生じる「アップルモンスター」の称呼もよどみなく一連に称呼できるものである。
さらに、本件商標は、たとえ、その構成中「アップル」の文字部分が上記のとおり「りんご」の意味合いを有するとしても、かかる構成、称呼及び上記実情などからすれば、該文字が指定商品の原材料、品質等を表示したものとして、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標「アップルモンスター」の文字は、その全体から生じる観念、称呼及び上記の事情から、当該文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるというべきである。
したがって、本件商標は、「アップルモンスター」のみの称呼、「りんごの怪物、りんごの化け物」ほどの観念を生じるものの、「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念は生じない。
(イ)引用商標
引用商標1及び引用商標7は、「MONSTER」又は「モンスター」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスター」の称呼及び「怪物、化け物」の観念を生じる。
引用商標2は、別掲2のとおりの構成からなるところ、爪の図柄と文字部分を分離し看取する場合もあるから、これより文字部分を捉えて、「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
引用商標3は、「MONSTER ENERGY」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。
引用商標4は、「MONSTER DRAGON TEA」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスタードラゴンティー」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
引用商標5は、「MONSTER ENERGY DRAGON TEA」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジードラゴンティー」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
引用商標6は「JAVA MONSTER」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「ジャバモンスター」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標1とは、外観において、文字の種類及び構成文字数の差異から判然と区別できるものであり、称呼において、「モンスター」の音を共通にするとしても、本件商標における「アップル」の音の有無の差異及び全体の構成音数が相違するから明瞭に聴別できるものであり、観念において、「りんごの怪物、りんごの化け物」ほどの観念と「怪物、化け物」の観念をそれぞれ生じ、相違するものであるから、相紛れるおそれはない。
本件商標と引用商標2とは、文字部分の外観において、文字の種類、1段書きと2段書きの差異及び文字数の差異があり、また、両者の全体の外観の比較において図形の有無の差異もあることから、全体の外観において判然と区別できるものであり、称呼において、「モンスター」の音を共通にするとしても、本件商標における「アップル」の音の有無の差異及び全体の構成音数が相違するから明瞭に聴別できるものであり、観念において、「りんごの怪物、りんごの化け物」ほどの観念と「怪物、化け物」の観念をそれぞれ生じ、相違するものであるから、相紛れるおそれはない。
本件商標と引用商標3ないし引用商標6とは、外観において、文字の種類及び構成文字数の差異から判然と区別できるものであり、称呼おいて、「モンスター」の音を共通にするとしても、相違する音である本件商標における「アップル」の音、引用商標3なし引用商標6における「エナジー」、「ドラゴンティー」及び「ジャバ」の音の差異からすれば、明瞭に聴別でき、観念において、本件商標からは、「りんごの怪物、りんごの化け物」の観念を生じるのに対し、引用商標3ないし引用商標6から特定の観念は生じないから、観念において相紛れるおそれはないものである。
本件商標と引用商標7とは、外観において、「アップル」の文字の有無及び構成文字数の差異から判然と区別できるものであり、称呼において、「モンスター」の音を共通にするとしても、本件商標における「アップル」の音の有無の差異及び全体の構成音数が相違し、観念において「りんごの怪物、りんごの化け物」ほどの観念と「怪物、化け物」の観念を生じるから、観念において相違するものであり、相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標1ないし引用商標3及び引用商標7とは、外観において判然と区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別することができ、観念において相違するものであり、また、本件商標と引用商標4ないし引用商標6とは、外観において判然と区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別することができ、観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらを総合的に判断すれば、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
イ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性
本件商標の指定商品は食品であることから、飲料である申立人商品とは、一般消費者向けに製造、販売される商品である点において、その用途、目的、取扱事業者、販売場所等に関連性があり、需要者層も一部共通にするものといえる。
ウ 出所の混同のおそれ
上記(1)イのとおり、引用商標2及び引用商標3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されているものと認めることはできるものであり、本件商標の指定商品と申立商品との関連性があり、需要者層も一部共通にするとしても、その商品の分野を超えた商品の需要者の間で広く認識されているものと認めることはできないし、引用商標1及び引用商標4ないし引用商標7は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者の間において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、上記ア(ウ)のとおり、本件商標は引用商標とは別異の商標である。
そして、これらを踏まえて、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人及びアサヒ飲料社)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
この他に、申立人のいずれの主張を検討しても、本件商標が申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記1のとおりの構成からなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きよう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記イのとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。
その他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲 別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標2)

別掲3(使用商標)



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異議決定日 2022-09-14 
出願番号 2020086047 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W30)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
小俣 克巳
登録日 2021-08-16 
登録番号 6429416 
権利者 株式会社あんでるあん
商標の称呼 アップルモンスター、モンスター 
代理人 柳田 征史 
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