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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W29
管理番号 1389953 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-25 
確定日 2022-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6425445号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6425445号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6425445号商標(以下「本件商標」という。)は、「crystalx」の文字を標準文字で表してなり、令和2年9月3日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品」を含む第3類、第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同3年7月1日に登録査定され、同年8月5日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の(1)ないし(3)であり、また、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は以下の(2)であって、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1091833号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、2010年(平成22年)9月2日にTurkeyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2010年(平成22年)11月23日に国際商標登録出願、第29類「Edible oils and fats, margarine, olive oil for food, corn oil for food, sunflower oil for food, cotton seed oil for food, soybean oil for food.」を指定商品として、平成24年10月19日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第1141863号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2012年(平成24年)8月17日にTurkeyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2012年(平成24年)10月15日に国際商標登録出願、第29類「Edible vegetable oils, olive oil, sunflower oil, cotton oil, corn oil, soybean oil; margarines.」を指定商品として、平成25年8月9日に設定登録されたものである。
(3)登録第3009062号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成4年5月14日に登録出願、第29類「乳製品」を指定商品として、同6年11月30日に設定登録されたものである。
以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第29類「食用油脂,乳製品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(なお、表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、「crystalx」の文字を、標準文字により同書同大横一列に表してなるもので、全体を一語としてみた場合、特定の意味を有さない造語商標といえるが、構成語中の「crystal」は、辞書(広辞苑)に、「水晶」「結晶」を意味する旨の記載がある、我が国で広く親しまれた英単語であり(甲5)、本件の異議申立対象の指定商品である第29類「食用油脂,乳製品」との関係において、特定の品質、効能などの記述的な意味がないため、本件商標の中で、分離独立して自他商品識別機能を発揮するものといえる。
また、「crystal」の後、語尾に付された「x」は、元来アルファベット一文字のみとして自他商品等識別力を発揮せず、当該指定商品との関係で特別の意味を有する事実も見受けられない。
取引の実情に関して、オンラインショッピングサイトで「食用油」を検索すると、商品名称とともに、アルファベットや数字からなる品番も表示されているものが多く見受けられ、食用油のカテゴリーでは、同一ブランドの下、多種多様な商品バリエーションがあるため、それらを区別するため、商品名称に、アルファベット一文字あるいは二文字を用いた品番を組み合わせて表示する商慣行があるものといえる(甲6)。
したがって、本件商標「crystalx」に接した需要者は、「crystal」部分が強く支配的に印象に残る要部として認識し、通常「crystal」部分のみをもって取引に臨むといえるため、「crystal」部分を分離して、称呼、観念を認定し、先行商標と類否判断を行うべきといえる。
イ 本件商標と引用商標1との対比
引用商標1は、欧文字と図形要素が組み合わされた結合商標であり、本件商標と引用商標1について全体同士で比較すると、図形部分の有無による構成物の差異により、外観非類似の関係にあるといえる。
しかしながら、引用商標1の文字部分「KRISTAL」は、独立して目立つ態様で記されており、視覚上、図形部分と明確に分離して、文字部分単体においても自他識別機能を発揮している。また商品名称として、図形部分より文字部分が需要者、取引者の記憶に残りやすく強い印象を与えるので、本件商標との対比においては、商品名称である文字部分「KRISTAL」について分離観察した上で、相応した称呼、観念、外観を比較することが可能であり、適切といえる。
称呼に関しては、引用商標1の文字部分「KRISTAL」からは「クリスタル」の称呼が生じる。これに対し、本件商標からは、要部となる「crystal」部分に呼応した「クリスタル」の称呼が生じることから、両者は、称呼を共通とする類似の関係にあるといえる。
観念に関しては、引用商標1の文字部分「KRISTAL」は、トルコ語(甲7)であり、英語の「CRYSTAL」に該当する語となるが、日本におけるトルコ語の認知度から、その言語及び意味を直ちに理解することは難しく、特定の意味が生じない造語と認識されうるといえるが、トルコ語の「KRISTAL」と英語の「CRYSTAL」を比較すると、7文字のうち5文字が共通し、「クリスタル」に相当する英語の綴りが、必ずしも正しく想起されるとはいえないことから、「KRISTAL」に接した需要者が、同一の称呼から連想して「クリスタル(水晶、結晶)」あるいは「クリスタル(水晶・結晶)と関連するもの」程度の観念を想起しうるものといえる。
よって、両者を構成全体で比較した場合には、特定の意味が生じない一種の造語同士として、観念上比較することができないが、要部認定による分離観察によって両者を対比するのが、より自然といえることから、本件商標は、要部「crystal」に相応して、「クリスタル(水晶、結晶)」といった観念が生じ、引用商標1も、文字部分「KRISTAL」に相応して、「クリスタル(水晶、結晶)」あるいは「クリスタル(水晶、結晶)に関連するもの」との観念が生じるといえるから、両者は観念においても類似の関係にあるものといえる。
外観に関しては、引用商標1の文字部分「KRISTAL」と、本件商標の要部「crystal」を直接対比して観察すると、冒頭及び3文字目のアルファベット相違、大文字小文字の相違から、外観上の区別は可能といえるが、実取引においては、時と場所を異にする離隔的観察がされることが通常であるので、同じ7文字中5文字が共通し、称呼及び観念においても共通することから、両者は外観上においても近似するものと認識され、類似と認識されうるといえる。
以上より、本件商標と引用商標1は、称呼において共通し、観念、外観においても相紛れる可能性がある類似の商標に該当する。
また、引用商標1の指定商品は、本件商標の指定商品中、第29類「食用油脂」と類似の関係にある。
したがって本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
ウ 本件商標と引用商標2との対比
引用商標2は、引用商標1と同様、欧文字と図形要素が組み合わされた結合商標となる。引用商標2の場合、商品ブランドマークのデザインとして、文字部分と図形部分は、一体的にデザインされているが、白抜きの文字部分「KRiSTAL」は、商品ブランド名称として最も目立つ、前面の中央部に配置され、全体の3分の1程度の大きさで、大きく印象に残る形で描かれている。
したがって、引用商標2は、文字部分単体でも、自他商品等識別力を発揮しており、文字部分が船舶などの図形部分と観念上の強いつながりがあるなどといった一体的に認識しなければならない事情もないので、文字部分「KRiSTAL」について分離観察した上で、相応した称呼、観念、外観を比較することが可能であり、適切といえる。
称呼に関しては、引用商標2の文字部分「KRiSTAL」からは「クリスタル」の称呼が生じ、本件商標からは、要部となる「crystal」部分に呼応した「クリスタル」の称呼が生じることから、両者は、称呼を共通とする類似の関係にあるといえる。
観念に関しては、引用商標1と同様で、引用商標2の文字部分「KRiSTAL」は、特定の意味が生じない造語と認識されうるといえるが、英単語「CRYSTAL」と同一の称呼が発生し、共通するアルファベットによる外観上の近似性も加わることから「クリスタル」あるいは「クリスタルと関連するもの」程度の観念は想起されるといえる。
よって、両者について要部認定による分離観察を行うと、「クリスタル(水晶、結晶)」に関する観念が共通するものとなるので、両者は観念においても類似の関係にあるものといえる。
外観に関しては、引用商標2の文字部分「KRiSTAL」と、本件商標の要部「crystal」を直接対比して観察すると、冒頭及び3文字目のアルファベット相違、大文字小文字の相違から、外観上の区別は可能といえるが、実取引においては、時と場所を異にする離隔的観察がされることが通常であるので、7文字中5文字が共通し、称呼及び観念においても共通することから、両者は外観上においても近似するものと認識され、類似と認識されうるといえる。
以上より、本件商標と引用商標2は、称呼において共通し、観念、外観においても相紛れる可能性がある類似の商標に該当する。
引用商標2の指定商品は、本件商標の指定商品中、第29類「食用油脂」と類似の関係にある。
したがって、本件商標は、引用商標2との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
エ 本件商標と引用商標3との対比
引用商標3は、上段に片仮名「クリスタル」、下段に欧文字「CRYSTAL」を二段併記した商標である。
称呼に関しては、引用商標3の片仮名「クリスタル」は、欧文字「CRYSTAL」の読み方を特定する振り仮名の役割を果たしているものといえ、「クリスタル」の称呼が生じる。これに対し、本件商標からは、前述のとおり、要部となる「crystal」部分に呼応した「クリスタル」の称呼が生じることから、両者は、称呼を共通とする類似の関係にあるといえる。
観念に関しては、既存語である引用商標3からは、「クリスタル(水晶、結晶)」といった観念が生じるのに対して、本件商標からは、要部「crystal」に相応して、「クリスタル(水晶、結晶)」といった観念が生じるといえるので、両者は観念においても類似の関係にあるものといえる。
外観に関しては、引用商標3の欧文字部分「CRYSTAL」と、本件商標「crystalx」を対比すると、大文字小文字の相違はあるもの、アルファベットの相違は、末尾の「x」の有無のみであることから、両者は外観上においても近似するものと認識され、類似するといえる。
本件商標と引用商標3では、語尾の「x」の有無が異なる文字商標同士であり、図形との結合商標との間ほどの外観上の相違もない中、称呼同一、観念、外観のいずれにおいても類似するので、両者は類似しているものといえる。
引用商標3の指定商品は、本件商標の指定商品中、第29類「乳製品」と同一の関係にある。
したがって本件商標は、引用商標3との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標2の権利者が製造するオリーブオイルは、良質なオリーブの産地として知られるトルコ産のオリーブを100%使用した高品質のオイルであり、引用商標2のマークは、2020年の国際オリーブオイル協会(IOC)によるコンペティション(IOC―UKKZRトルコ2020)等でも金賞を受賞するなど国際的に高い評価を得ているブランドのマークとして広く知られている(甲9、甲10)。
日本でも、本件商標の出願日前、2020年6月に国際オリーブオイルコンテストの「OLIVE JAPAN」で銀賞を受賞したことが発表になっており、我が国でも広く知られるに至っている(甲11、甲12)。
前述のとおり、本件商標と引用商標2は、類似しており、本件指定商品の分野の需要者は、「crystalx」の文字商標からなる商標が、本件指定商品について使用された場合には、引用商標2の商標権者の商品に係るものであると誤信するおそれがあり、又は、当該商品が引用商標2の商標権者との間に、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信するおそれがある。
したがって本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標2の周知性について
申立人の提出に係る証拠、同人の主張及び職権調査によれば、以下の事実を認めることができる。
ア GLOBAL WALKERSのウェブサイトによれば、引用商標2に近似した態様の標章が表示された「KRiSTAL OLIVE OIL」(クリスタルオリーブオイル)が紹介され、我が国で販売されていることはうかがえる(甲9)。
イ 甲10は、「KRiSTAL」の受賞歴紹介とのことであるが、いずれも外国語で記載されたものであって、我が国の取引者、需要者に向けての広告宣伝資料であるとは認められないし、職権をもって調査するも、それらの詳細な内容についての発見はできなかった。
ウ OLIVE JAPAN 2020 国際オリーブオイルコンテストが開催され、受賞者が発表されたことと「KRISTAL Ektra Virgin Olive Oil Selection」が受賞していることはうかがわれる(甲11、甲12)。
上記アないしウの事実によれば、我が国において、引用商標2に近似した態様の標章が表示された「KRiSTAL OLIVE OIL」(クリスタルオリーブオイル)が販売されていることはうかがえるところである。
しかしながら、該OLIVE OIL(オリーブオイル)の我が国における売上高、販売量などの販売実績及び広告宣伝の回数や宣伝広告費の額など、その周知性を数量的に判断し得る具体的な証拠は提出されていない。
また、申立人の商品とともに引用商標2の使用を見いだすことができないものであって、引用商標2の周知性を基礎づけるものとはいえない。
その他、本件商標の登録出願日において、引用商標2が広く知られていることを認めるに足る証拠の提出はなく、引用商標2の周知性を認め得る事情は見いだせない。
してみると、提出された証拠をもってしては、引用商標2の周知、著名性を認めるには不十分といわざるを得ないものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標2が我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「crystalx」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は同じ書体、同じ大きさ及び等間隔で、視覚上まとまりよく一体的に表されているものである。また、本件商標の構成文字全体に相応して生じる「クリスタルエックス」の称呼も、格別冗長ではなく、よどみなく一気一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成態様においては、外観上「crystal」の文字部分又は「x」の文字部分が独立して強調されているとみられる態様ではなく、その構成全体をもって「クリスタルエックス」とのみ称呼される一体不可分の造語を表した商標と認識されるとみるべきであって、その構成中の「crystal」の文字部分のみを分離、抽出して観察しなければならない格別の理由は存在しない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して「クリスタルエックス」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、別掲1のとおり、長方形の左右上部にオリーブの木図形を、中央部分に青色及び水色よりなる帯状の図形を配し、該帯状図形の中央に緑色の半弧を描き、該半弧内に船舶図形と「KRISTAL」の欧文字を配した構成よりなる、図形と文字との結合商標である。
そして、引用商標1の構成中、「KRISTAL」の文字部分は、半弧の内側に記載されているものの、引用商標1の中央上部の目立つ位置に、読み取りやすい書体で明瞭に記載されていることから、外観上、その他の構成要素である図形部分とは、一見して明確に区別して認識できるものであり、「KRISTAL」の文字部分は、看者に強い印象を与えるものというのが相当である。
そうすると、引用商標1の構成中、図形部分と「KRISTAL」の文字部分とは、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできないから、図形部分と文字部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有するものである。
よって、引用商標1からは、図形部分と文字部分とをそれぞれ要部として抽出することが許されるものであるところ、構成中の「KRISTAL」の文字部分は、トルコ語であるとしても、我が国では一般的に知られている語とはいえないから、特定の語義を有しない造語として認識されるものであって、特定の意味合い又は特定の読みを有しない欧文字にあっては、これに接する取引者、需要者は、我が国において広く親しまれている英語読み又はローマ字読みにならって称呼されるのが自然である。
したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して、「クリスタル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲2のとおり、金色で縁取られた緑色の楕円形状内に船舶の図形を描き、該楕円形状に重なるように、金色で縁取られた白抜きで「KRiSTAL」の欧文字を配した構成よりなる、図形と文字の結合商標である。
そして、引用商標2の構成中、「KRiSTAL」の文字部分は、図形部分に重なるように表されているものの、引用商標2の中央の目立つ位置に、大きい書体で明瞭に記載されていることから、外観上、その他の構成要素である図形部分とは、一見して明確に区別して認識できるものであり、「KRiSTAL」の文字部分は、看者に強い印象を与えるものというのが相当である。
そうすると、引用商標2の図形部分と「KRiSTAL」の文字部分とは、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできないから、図形部分と文字部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有するものである。
よって、引用商標2からは、図形部分と文字部分とをそれぞれを要部として抽出することが許されるものであるところ、構成中の「KRiSTAL」の文字部分に相応する「kristal」は、トルコ語であるとしても、我が国では一般的に知られている語とはいえないことから、特定の語義を有しない造語として認識されるものであって、特定の意味合い又は特定の読みを有しない欧文字にあっては、これに接する取引者、需要者は、我が国において広く親しまれている英語読み又はローマ字読みにならって称呼されるのが自然である。
したがって、引用商標2は、その構成文字に相応して、「クリスタル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(ウ)引用商標3は、「クリスタル」の片仮名と「CRYSTAL」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、上段の「クリスタル」は、下段の「CRYSTAL」の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであるから、引用商標3は、その構成文字全体に相応し、「クリスタル」の称呼を生じるとみるのが相当である。また、「CRYSTAL」は、「結晶、水晶」等を意味する親しまれた英単語であることから、引用商標3からは「クリスタル」の称呼を生じ、「結晶、水晶」の観念を生じるものである。
(エ)したがって、引用商標はいずれも、「クリスタル」の称呼を生じ、引用商標1及び引用商標2は、特定の観念を生じないものであり、引用商標3は、「結晶、水晶」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の外観を比較すると、本件商標と引用商標1及び引用商標2の全体の比較においては、図形の有無という顕著な差異があることから、容易に区別することができ、また、引用商標1及び引用商標2の文字部分並びに引用商標3との比較においても、本件商標は「crystalx」と表されている一方、引用商標1は「KRISTAL」、引用商標2は「KRiSTAL」及び引用商標3は「クリスタル」と「CRYSTAL」で表されており、各構成文字に差異を有するから、本件商標と引用商標は外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「クリスタルエックス」の称呼と引用商標から生じる「クリスタル」の称呼とは、語尾音において「エックス」の音の有無という顕著な差異を有するものであって、音数及び音構成に明確な差異があるから、称呼において相違するものである。
さらに、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、いずれも特定の観念は生じないものであるから、観念において比較することができず、観念上、類似するところのないものである。また、引用商標3は、「結晶、水晶」の観念を生じるから、本件商標とは観念上、相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念において比較することができないとしても、外観において明確に区別でき、称呼においても相違するものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
また、本件商標と引用商標3とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標の登録異議の申立てに係る指定商品と引用商標の指定商品が、同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり、また、本件商標と引用商標2とは上記(2)ウのとおり、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその申立てに係る指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標2を連想又は想起させるものとは認められず、当該商品が他人の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲

【別掲1】引用商標1(色彩は原本参照)


【別掲2】引用商標2(色彩は原本参照)


【別掲3】引用商標3



(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-09-08 
出願番号 2020109338 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W29)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 鯉沼 里果
板谷 玲子
登録日 2021-08-05 
登録番号 6425445 
権利者 株式会社ストロングハート
商標の称呼 クリスタルエックス、クリスタル 
代理人 弁理士法人RYUKA国際特許事務所 
代理人 小川 弥生 
代理人 池田 雅人 
代理人 鈴木 均 

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