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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03354144
管理番号 1389952 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-21 
確定日 2022-09-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第6423743号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6423743号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6423743号商標(以下「本件商標」という。)は,「ZARAHA」の文字を標準文字で表してなり,令和2年10月15日に登録出願,第3類「化粧品,美容用化粧品,せっけん類」,第35類「美容に関する商品の販売情報の提供,オンラインによる化粧品及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」,第41類「美容に関するセミナーの企画・運営又は開催,エステティックに関するセミナーの企画・開催又は開催,美容に関する知識の教授,エステティックに関する知識の教授」及び第44類「美容,エステティック美容,美容に関するカウンセリング及び情報の提供,エステティック美容に関するカウンセリング及び情報の提供,エステティックサロンに関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として,同3年7月5日に登録査定,同年8月2日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下,(1)ないし(4)をまとめて「引用商標」という。また,(5)を「申立人商標」といい,(1)ないし(5)をまとめていうときは「ZARA商標」という。)。なお,引用商標に係る商標権はいずれも現に有効に存続している。
(1)国際登録第973064号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1のとおり「ZARA」の欧文字を書してなり,2015年(平成27年)4月14日に国際商標登録出願(事後指定)され,第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use; cleaning, polishing, degreasing and abrasive preparations; soaps; perfumery, essential oils, cosmetics, hair lotions; toilet water; blueing for laundry; starch for laundry purposes; beauty masks; cosmetic preparations for skin care; hair colorants and dyes; shoe creams and polishes; shampoos; cosmetic kits; depilatory preparations; lipstick; cosmetic pencils; hair spray and nail polish; tissues impregnated with cosmetic lotions; after-shave lotions; make-up preparations; stain removers; sachets for perfuming linen; nail care preparations; flower extracts (perfumery); incense; scented wood; cosmetic preparations for baths; toiletries; oils for toiletry purposes; eau de cologne; deodorant soaps; mustache wax; hair colorants; eyebrow cosmetics; shampoos for pets; cosmetics for animals; cosmetic creams; cleansing milks; dry-cleaning preparations; scented water; perfumes; make-up powder; fabric softeners for laundry use; cosmetic dyes.」を指定商品として,平成28年1月22日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第706028号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおり「ZARA」の欧文字を書してなり,2000年(平成12年)4月26日に国際商標登録出願(事後指定)され,第35類「Advertising services; commercial business management; business administration services; office work services; bringing together of variety of goods for the benefit of others.」及び第20類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として,平成13年9月28日に設定登録されたものである。
(3)国際登録第752502号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおり「ZARA」の欧文字を書してなり,2000年(平成12年)8月1日にSpainにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して,2001年(平成13年)2月1日に国際商標登録出願され,第35類「Advertising; business management; business administration; office work; bringing together for the benefit of others of a variety of goods (excluding the transport thereof), enabling customers to conveniently view and purchase those goods; sales promotion for others provided through the distribution and the administration on privileged user cards; organization of exhibitions for commercial or advertising purposes; modeling services for advertising or sales promotion; publishing of advertising texts; window dressing; assistance in franchised commercial business management; demonstration of goods; organization of trade fairs for commercial or advertising purposes; sales promotion (for third parties); sales by auction.」及び第25類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として,平成14年4月12日に設定登録されたものである。
(4)登録第5215666号商標(以下「引用商標4」という。)は,「ZARA」の文字を標準文字で表してなり,平成19年7月2日に登録出願,第35類「事業の管理,事業の運営,商業又は工業の管理に関する助言,フランチャイズに関する商業の管理に関する助言,販売促進のための企画及び実行の代理,輸出入に関する事務の代理又は代行,他人の事業のために行う物品の調達及びサービスの手配,商業に関する情報の提供,事業の管理に関する助言,実演者に関する事業の管理,市場分析,世論調査」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として,同21年3月19日に設定登録されたものである。
(5)「ZARA」の欧文字からなる商標(申立人商標)は,申立人が,世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして,世界各国及び我が国の取引者,需要者に広く知られていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 申立人商標「ZARA」の周知・著名性について
申立人が使用する商標「ZARA」は,世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして,世界各国及び我が国の取引者,需要者に広く知られている。
申立人のファッションブランド「ZARA」は,1975年にスペインで1号店がオープンして以来,現在では世界で約2040店舗が展開されており,「ZARA」(「ZARA HOME」を含む)の2021年1月期の世界全体の売上高は,コロナ禍が響き苦戦したものの,141億2900万ユーロ(約1兆7943億8300万円,1ユーロ=127円で換算)を維持している(甲5,甲6)。日本においても1997年に日本法人が設立され,翌年に1号店を渋谷に開店し,現時点では国内に約100の店舗が存在する(甲7)。
このような「ZARA」の世界展開や商業的成功,及びそれに伴うブランド認知度の向上により,米Interbrand社が毎年公表するブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」において,直近の2020年度版で第35位に選出されており,世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして認識されている(甲8)。
したがって,申立人商標は,本件商標の登録出願時点には,ファッションの分野において我が国の取引者,需要者の間で広く認識されており,強い顧客吸引力を持つ周知又は著名な商標といえる。特許庁における,過去の異議申立ての決定及び無効審判の審決においても,申立人商標が少なくとも「被服」の分野において,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されている旨が認定されている(甲9,甲10)。
イ 申立人の化粧品の取り扱いについて
申立人の取扱商品には,被服の他,実際に化粧品が含まれている。申立人のオンラインショップにおいて,香水,フェイスパレット,リップスティック,ネイルポリッシュなどの多くの化粧品が販売されている(甲11)。申立人は,日本でこれらの商品を申立人商標の下で展開している(甲12〜甲15)。
このように,申立人は,化粧品についても日本で現実に商品展開をしており,このことは広く我が国の需要者・取引者に知られているといえる。
ウ 「被服」と「化粧品」の関連性について
本件商標に係る指定商品「化粧品,美容用化粧品,せっけん類」は,人の装いを整えたり,彩ったりする点で,ファッションに深く関係する商品である。そのため,申立人を含めた多くのファッションブランドでは,同一のブランドを用いて化粧品を展開することは一般的であるといえる。現に,海外の有名ファッションブランドが,日本において化粧品を商品展開している事実が認められる(甲16〜甲19)。
さらに,人気のブランド香水のランキング調査をみても,多数のファッションブランドが化粧品である香水を商品展開している(甲20)。
したがって,ファッションの中心アイテムである商品「被服」と商品「化粧品」とは,取引者,需要者の層が共通し,互いに関連性が強いものというべきである。
そして,申立人のファッションブランド「ZARA」も,世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして知られるものであることから,商品「被服」に関する申立人商標の周知・著名性は「化粧品」にも及んでいることは明らかである。
エ 商品「化粧品」と「美容・エステティックに関する役務」の関連性について
本件商標に係る「美容・エステティックに関する役務」は,化粧品を用いて人の装いを整えたり,彩ったりすることを目的とする点で,「化粧品」に深く関係する役務である。そのため,多くの化粧品ブランドでは,「美容・エステティックに関する役務」を提供していることは一般的であるといえる。現に,化粧品ブランドが,日本において美容・エステティックに関する情報を提供している事実が認められる(甲21〜甲25)。
したがって,商品「化粧品」と「美容・エステティックに関する役務」とは,商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者であることが一般的であり,かつ,取引者,需要者の層が共通し,互いに関連性が強いものというべきである。
以上のことからすると,申立人のファッションブランド「ZARA」も,世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして知られるものであり,日本において「化粧品」を展開していることから,商品「被服」に関する申立人商標の周知・著名性は,「美容・エステティックに関する役務」についても及んでいることは明らかである。
オ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標から生じる「ザラハ」の称呼と,引用商標から生じる「ザラ」の称呼とは,弱く発音される語尾「ハ」の有無のみの差であり,称呼上相紛らわしいため,互いに類似しており,また構成文字「ZARA」の共通性により,全体的な外観も類似している。
特に,引用商標を構成する「ZARA」は独創性の高い商標であり,このような造語より構成される創造商標については,一般に強い識別性が認められ,他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には,既成語から構成される商標よりも需要者に対する印象・連想作用等から出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。
さらに,申立人商標は「被服」の分野で周知・著名であって,その周知・著名性は関連する「化粧品」「美容・エステティック」の分野にも及ぶことから,本件商標がその指定商品・指定役務に使用された場合には,周知・著名なブランド「ZARA」を想起・連想されるため,互いに観念上の類似性も認められる。
カ 指定商品・役務の類否について
本件商標の第3類の全指定商品及び第35類「オンラインによる化粧品及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」と,引用商標1の第3類「other substances for laundry use; cleaning preparations; soaps; perfumery, cosmetics, hair lotions; toilet water; beauty masks; cosmetic preparations for skin care; hair colorants and dyes, shampoos; cosmetic kits; depilatory preparations; lipstick; cosmetic pencils; hair spray and nail polish; tissues impregnated with cosmetic lotions; after-shave lotions; make-up preparations; nail care preparations; flower extracts(perfumery);cosmetic preparations for baths; toiletries; oils for toiletry purposes; eau de cologne; deodorant soaps; mustache wax; hair colorants; eyebrow cosmetics; shampoos for pets; cosmetics for animals; cosmetic creams; cleansing milks; dry-cleaning preparations; scented water; perfumes; make-up powder; cosmetic dyes.」とは,互いに同一又は類似の関係にある。
さらに,本件商標の指定役務中の第35類「美容に関する商品の販売情報の提供」と,引用商標2の指定役務中の第35類「commercial business management; business administration services」,引用商標3の指定役務中の第35類「business management; business administration」,引用商標4の指定役務中の第35類「事業の管理,事業の運営,商業又は工業の管理に関する助言」とは,互いに同一又は類似の関係にある。
以上のことからすると,本件商標と引用商標は互いに類似する商標であり,本件商標と引用商標の指定商品・指定役務も同一又は類似することから,本件商標は,商標法第4条第1項11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人商標は,世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして知られ,申立人のハウスマークと同等に位置づけられるべきものである。それ自体は辞書に採録のない造語であるが,特に被服の分野においては周知・著名性を獲得しており,本件商標と外観・称呼及び観念において類似する。
また,海外の有名ファッションブランドが,化粧品の商品展開をしていることが通常であり,化粧品ブランドが,「美容・エステティックに関する役務」を提供することが通常であることからすると,「被服」と「化粧品」「美容・エステティックに関する役務」とは密接な関連性を有すると共に,取引者,需要者の層が共通する。
そうすると,「被服」と「化粧品」,「美容・エステティックに関する役務」の関連性が高く,その需要者等を共通とするので,本件商標が指定商品・指定役務に使用された場合は,これに接した取引者,需要者は,申立人と経済的又は組織的関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで,商品・役務の出所について混同を生じるおそれが高い。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が外国及び我が国の取引者,需要者の間で周知・著名な商標であること,さらに,本件商標が引用商標と類似することは,上述のとおりである。
申立人とは無関係の他人である本件商標の権利者が,周知・著名な商標と類似する本件商標を採択することは,自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を,著名商標に化体した信用にただ乗りフリーライド)することによって得ようとするものであり,不正の目的が認められる。
また,本件商標の使用は,引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招くものであり,またその名声を棄損させるものである。
したがって,本件商標の使用は,引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招き,またその信用,名声,顧客吸引力等を毀損させる不正の目的が認められるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)「ZARA商標」の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,ファッションブランド「ZARA」を展開するスペインの企業(アパレルメーカー)であり,1975年にスペインで1号店をオープンして以降,「ZARA」ブランドを使用して被服の製造,販売を行っており,2013年4月末時点で87か国に1991店舗を展開し,本件異議申立て時点では全世界に2040を超える店舗を展開している(甲5,甲7,申立人の主張)。
(イ)「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)ブランドの2021年1月期の世界全体の売上高は,141億2900万ユーロ(約1兆7943億8300万円)であった(甲6)。
(ウ)米国Interbrand社が公表するブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」において,「ZARA」は,35位にランクされている(甲8)。
(エ)申立人は,我が国において,1997年に日本法人を設立し,1998年に第1号店を渋谷に開店して以降,店舗数は拡大し,本件異議申立て時点で約100の店舗が国内に存在するとされる。そして,それらの店舗及び2011年10月に開設されたオンラインストアを通じ,「ZARA」ブランドの商品「被服」の販売がされているとされる(甲5,甲7,申立人の主張)。
(オ)申立人の取扱い商品には,被服の他,香水,フェイスパレット,リップスティック等の化粧品が含まれている(甲11〜甲15)。
イ 上記アの事実によれば,「ZARA」ブランドはInterbrand社のブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」で第35位であり,申立人の「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)ブランドの2021年1月期の世界全体の売上高は141億2900万ユーロ(約1兆7944億円)であった。そして,我が国においては,当該ブランドの被服が,1998年から継続して販売されており,本件異議申立て時点では,約100の国内の店舗やインターネットを通じて販売されていることがうかがえる。
以上からすれば,申立人の「ZARA商標」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品「被服」を表示するものとして,我が国又は外国における需要者の間に一定程度認識されていたということができる。
しかしながら,「ZARA商標」を使用した申立人の業務に係る商品又は役務(以下「申立人商品・役務」という。)の我が国又は外国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,「ZARA商標」を使用した申立人商品・役務の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできず,我が国又は外国における客観的な使用事実に基づいて,「ZARA」商標の使用状況を把握することができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における「ZARA商標」の周知性の程度を推し量ることはできない。そのほか,「ZARA人商標」が,申立人商品・役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認める得る事情は見いだせない。
そうすると,「ZARA商標」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,その被服の分野を超えて,本件商標の指定商品及び指定役務における申立人商品・役務を表すものとして,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
(2)本件商標と「ZARA商標」について
ア 本件商標
本件商標は,「ZARAHA」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字は,いずれも同じ書体,同じ大きさで,等間隔に表されており,外観上まとまりよく一体的に看取されるものであって,当該文字は,辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。
そして,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,本件商標からは「ザラハ」の称呼を生じるものとみるのが相当である。
また,本件商標の構成文字全体に相応して生じる「ザラハ」の称呼も冗長ではなく,無理なく一連に称呼し得るものである。
そして,上記(1)のとおり,「ZARA商標」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品・役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,他に本件商標の構成中「ZARA」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情も見いだせない。
そうすると,本件商標の上記構成及び称呼からすれば,本件商標の構成全体をもって,特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し,把握するというのが自然であり,これに接する取引者,需要者は,殊更に「ZARA」の文字部分に着目することはない。
してみれば,本件商標は,その構成文字全体に相応して,「ザラハ」の称呼のみを生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 「ZARA商標」
「ZARA商標」は,上記2のとおり,いずれも「ZARA」の殴文字からなるところ,当該文字は,辞書等に掲載のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語であると認識されるものである。
そして,上記アと同様に,特定の語義を有しない欧文字からなる商標については,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるから,「ザラ」の称呼を生じるものとみるのが相当である。
したがって,「ZARA商標」は,「ザラ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と「ZARA商標」の類否について
本件商標と「ZARA商標」の類否を検討すると,外観においては,両者は,語尾において「HA」の2文字の有無の差異を有しており,両者の6文字又は4文字という少ない構成文字においては,当該差異が,両者の外観全体の印象に与える影響は大きいから,両者は外観上判然と区別できるものである。
次に,本件商標から生ずる「ザラハ」の称呼と,「ZARA商標」から生じる「ザラ」の称呼とを比較すると,語尾における「ハ」の音の有無という差異を有しており,この差異が3音又は2音という短い音構成からなる両称呼全体の語調,語感に及ぼす影響は大きいから,両者をそれぞれ一連に称呼するときは,いずれも明瞭に聴別し得るものである。
さらに,観念においては,両者は,いずれも特定の観念は生じないものであるから比較することはできない。
したがって,本件商標と「ZARA商標」とは,観念において比較できないとしても,外観においては判然と区別し得るものであり,称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから,これらが需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,これらの商標は,いずれも相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標とは,上記(2)のとおり,非類似の商標であるから,本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「ZARA商標」の周知・著名性について
「ZARA商標」は,上記(1)のとおり,申立人商品・役務を表示するものとして,我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
イ 本件商標と「ZARA商標」の類似性の程度について
本件商標と「ZARA商標」とは,上記(2)のとおり,非類似の商標であって,別異の商標というべきものであるから,その類似性は極めて低いものである。
ウ 出所の混同のおそれについて
「ZARA商標」は,上記(1)のとおり,申立人商品・役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり,また,上記イのとおり,本件商標と「ZARA商標」とは,別異の商標というべきものであって,その類似性が極めて低いものである。
そうすると,本件商標は,本件商標の商標権者が,これをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者,需要者が「ZARA商標」を連想又は想起することはなく,その商品及び役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
「ZARA商標」は, 上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品・役務を表示するものとして,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また,本件商標と「ZARA商標」とは,上記(2)のとおり,いずれも非類似の商標である。
さらに,本件商標は,不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的,その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)申立人の主張について
申立人は,本件商標は「ZARA商標」と称呼及び外観が類似し,「ZARA」ブランドは,商品「被服」の分野で周知・著名であるから,関連する商品「化粧品」及び「美容・エステティックに関する役務」の分野にも周知著名性は及ぶ旨主張している。
しかしながら,「ZARA商標」は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品「被服」を表示するものとして,我が国又は外国における需要者の間に一定程度認識されており,かつ,商品「化粧品」について申立人商標を使用していることは認められるものの,申立人の提出した甲各号証によっては,「ZARA商標」が商品「化粧品」及び「美容・エステティックに関する役務」の分野の需要者にまで,広く知られていると認めるに足りる証拠を見いだすことはできない。また,商品「被服」と商品「化粧品」及び「美容・エステティックに関する役務」とは,一般的にその商品及び役務の提供場所とその商品の製造,販売場所が一致するとはいえないし,かつ,同一の事業者によって行われているのが一般的であるということはできないから,両者は相互に類似する商品又は役務の関係にあるものと認めることができない。
したがって,申立人の主張は採用することができない。
(7)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標3)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-09-08 
出願番号 2020127458 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W03354144)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 板谷 玲子
須田 亮一
登録日 2021-08-02 
登録番号 6423743 
権利者 Victoria Beauty株式会社
商標の称呼 ザラハ 
代理人 福井 孝雄 
代理人 小暮 君平 
代理人 特許業務法人BORDERS IP 
代理人 渡邊 薫 

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