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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1389949 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-13 
確定日 2022-07-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6392910号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6392910号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6392910号商標(以下「本件商標」という。)は、「AZARA」の文字を標準文字で表してなり、令和2年5月14日に登録出願、第9類「不動産の管理及び運営の分野におけるアプリケーションソフトウェア,電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「不動産の管理及び運営の分野におけるオンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同3年4月27日に登録査定され、同年5月24日に設定登録されたものである。
なお、本件商標の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、令和3年10月29日受付で放棄の申請がなされ、その登録が抹消されているものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立てにおいて引用する国際登録第973064号商標(以下「引用商標」という。)は、「ZARA」の欧文字を横書きした構成からなり、2010年7月20日に国際登録商標出願(事後指定)され、第9類「Photographic, cinematographic, optical apparatus and instruments; electric monitoring apparatus; apparatus for recording, transmitting, reproducing sound or images; magnetic recording media, sound recording discs; data processing equipment and computers; computer peripheral devices; anti-dazzle goggles; pince-nez chains; contact lenses; pince-nez cords; spectacle lenses; spectacle cases, for pince-nez and for contact lenses; spectacle frames and lenses (eyeglasses); spectacles (optics); sunglasses; eyeglasses; optical lenses; magnetic cards; magnetic identity cards; electronic agendas; telephone apparatus; protective helmets; spyglasses; compact discs (audio-video); optical compact discs; mirrors (optics); binoculars (optics); printers for use with computers; instruments containing eyepieces; cassette players; bar code readers; compact disc players; optical character readers; optical lamps; magnifying glasses (optics); computer software (recorded); recorded computer operating programs; mouse (data processing equipment); electronic pocket translators; transistors (electronic); receivers (audio and video); intercommunication apparatus; video cassettes; walkie-talkies; pocket calculators; camcorders; headsets (for music); loudspeakers; mousemats; aerials; telephone headsets; flashlights [photography]; answering machines; measuring glassware; sports glasses; slide projectors; dissection sets (microscopy); covers for electric outlets; socket housings (electricity); flashlight bulbs (photography); stands for photographic apparatus; lasers not for medical purposes; computer memories; microphones; microscopes; modem; objectives (lenses); shutters (photography); recorded computer programs; computer programs (electronically downloadable software); projection screens and apparatus; prisms [optics]; radios; radiotelephony sets; radio telephone apparatus; computer keyboards; telescopes; word processors; video telephones; photographic viewfinders.」を指定商品として、平成24年3月16日に設定登録されたものであり、現在有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当して登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号違反について
ア 申立人商標「ZARA」の周知・著名性について
申立人が使用する商標「ZARA」は、世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして、下記に述べるとおり、世界各国及び我が国の需要者、取引者に広く知られている。
申立人のファッションブランド「ZARA」は、1975年にスペインにて1号店がオープンして以来(甲5)、現在では世界で約2,040店舗が展開されており(甲5)、「ZARA」(「ZARA HOME」を含む)の2021年1月期の世界全体の売上高は、コロナ禍が響き苦戦したものの、141億2,900万ユーロ(約1兆7,943億8,300万円、1ユーロ=127円で換算)を維持している(甲6)。日本においても1997年に日本法人が設立され、翌年に1号店を渋谷に開店した後、現時点で国内に約100の店舗が存在する(甲7)。
このような「ZARA」の世界展開や商業的成功、及びそれに伴うブランド認知度の向上により、米Interbrand社が毎年公表するブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」において、直近の2020年度版で第35位に選出されており、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして認識されている(甲8)。
したがって、申立人の商標「ZARA」は、本件商標の登録出願時点には、ファッションの分野において我が国の需要者、取引者の間で広く認識されており、強い顧客吸引力を持つ周知又は著名な商標といえる。特許庁における、過去の異議申立ての決定及び無効審判の審決においても、商標「ZARA」が少なくとも「被服」の分野において、我が国の需要者、取引者の間で広く認識されている旨が認定されている(甲9、甲10)。
イ 「被服」と「コンピュータソフトウェア」等の関連性について
昨今、有名ファッションブランドが、顧客との接点を広げるために、スマートフォン用のダウンロード可能な「アプリケーションソフトウェア」(以下「アプリ」という)を提供することが行われており、例えばi−Phone用のアプリがダウンロード可能な「App Store」を見ても、申立人の「ZARA」を含め、「H&M」、「ユニクロ」、「GU」、「ユナイテッドアローズ」といった有名ブランドのアプリが確認できる(甲11、甲12)。これらアプリは、オンラインストアの機能も持つところ、特にここ数年のコロナ禍で実店舗への訪問が難しくなったことで、通販により被服を購入する傾向が顕著となっている(甲13)。
したがって、ファッションの中心アイテムである商品「被服」と、ダウンロード可能なアプリを含む「コンピュータソフトウェア」等とは、特にアプリを作成する程の有名ファッションブランドにあっては、需要者、取引者の層が共通し、互いに関連性が強いものというべきである。
そして、上述のとおり、申立人のファッションブランド「ZARA」も、世界で最も成功しているファッションブランドの一つとして知られるものであり、また実際にダウンロード可能なアプリを作成・提供していることから、商品「被服」に関する申立人商標「ZARA」の周知・著名性は「アプリケーションソフトウェア」といった商品、及びこれと関連性の高い「電子計算機用プログラムの提供」といった役務にも及んでいることは明らかである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標から生じる「アザラ」の称呼と、引用商標から生じる「ザラ」の称呼は互いに類似しており、また構成文字「ZARA」の共通性により、全体的な外観も類似している。
特に、引用商標を構成する「ZARA」は、独創性の高い商標であり、このような造語より構成される創造商標については一般に強い識別性が認められ、他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも需要者に対する印象・連想作用等から出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。
さらに上述のとおり、申立人の「ZARA」は、「被服」の分野で周知・著名であって、その周知・著名性は関連する「コンピュータソフトウェア」等の分野にも及ぶことから、本件商標が指定商品・役務に使用された場合には、周知・著名なブランド「ZARA」を想起・連想させるため、互いに観念上の類似性も認められる。
そして、引用商標の指定商品「computer software(recorded);recorded computer operating programs」等と、本件商標の第9類及び第42類の指定商品及び指定役務は互いに同一又は類似の関係にある。
したがって、本件商標と引用商標は互いに類似する商標であり、本件商標と引用商標の指定商品も同一又は類似することから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、申立人が使用する商標「ZARA」は、世界最大の売上高を誇るアパレル企業である申立人の基幹ブランドとして知られ、申立人のハウスマークと同等に位置づけられるべきものである。それ自体は辞書に採録のない造語であるが、特に被服の分野においては周知・著名性を獲得しており、本件商標と外観・称呼及び観念において類似する。
また、上述のとおり、有名ファッションブランドによる、スマートフォン用のダウンロード可能なアプリ作成・提供が広く行われていることからすると、「被服」とダウンロード可能なアプリを含む「コンピュータソフトウェア」関連の商品・役務とは、密接な関連性を有するとともに、需要・取引者の層が共通する。
そうすると、「被服」と「コンピュータソフトウェア」関連の商品・役務は、互いの関連性が高く、その需要者等を共通とするので、本件商標が指定商品・役務に使用された場合は、これに接した需要者、取引者は、申立人と経済的又は組織的関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで、商品の出所について混同を生じるおそれが高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標が外国及び我が国の需要者、取引者の間で周知・著名な商標であること、さらに、本件商標が引用商標と類似することは、上述のとおりである。
申立人とは無関係の他人である本件商標の権利者が、周知・著名な商標と類似する本件商標を採択することは、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、著名商標に化体した信用にただ乗りフリーライド)することによって得ようとするものであり、不正の目的が認められる。
また、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招くものであり、またその名声を毀損させるものである。
したがって、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招き、またその信用、名声、顧客吸引力等を毀損させる不正の目的が認められるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
本件商標は、上記1のとおり、令和3年10月29日に商標権が放棄され、本件商標権の登録の抹消がなされているが、本件商標権はそれまでは有効に存続していたものであるから、本件登録異議の申立てについて審理するものであり、以下のとおり判断する。
(1)「ZARA」の文字からなる商標の周知性
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、ファッションブランド「ZARA」を展開するスペインの企業であり、1975年にスペインで第1号店をオープンして以降、「ZARA」ブランドの下で被服の製造、販売を行っており、現在は世界で2,000以上の店舗を展開している(甲5)。
(イ)「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)ブランドの2021年1月期の世界全体の売上高は141億2,900万ユーロ(約1兆7,944億円)である(甲6)。
(ウ)米国Interbrand社のブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2020」において、「ZARA」は第35位である(甲8)。
(エ)我が国においては、1997年に日本法人「株式会社ザラ・ジャパン」が設立され、「ZARA」ブランドの商品は、1998年に販売が開始され、現在は全国約100の店舗やインターネットを通じて販売されている(甲5、甲7、甲11)。
(オ)申立人が提出した甲各号証からは、「ZARA」の文字からなる商標が実際に申立人の業務に係る被服について使用されている具体的な態様や、「ZARA」の文字からなる商標が使用された個別の被服の販売実績、広告の実績等、その具体的な使用状況を確認することはできない。
イ 上記アのとおり、「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)ブランドの商品の2021年1月期の世界全体の売上高は141億2,900万ユーロ(約1兆7,944億円)であり、「ZARA」ブランドはInterbrand社のブランド価値評価ランキングで第35位であり、また、我が国において「ZARA」ブランドの「被服」は、1998年(平成10年)以降、現在まで継続して販売され、現在約100の店舗やインターネットを通じて販売されていることをあわせ考慮すれば、同ブランドに係る「ZARA」の文字からなる商標は、申立人の業務に係る「被服」を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に一定程度認識されているものということができる。
しかしながら、我が国又は外国における「ZARA」の文字からなる商標を使用した被服に限定した売上高など販売実績を示す主張はなく、その証左も見いだせないし、また、当該商品に係る広告の実績も確認できないから、「ZARA」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「被服」を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標は、それがその指定商品について使用されていることが確認できないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標の指定商品(「computer software(recorded);recorded computer operating programs」等)を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
ウ なお、申立人は「ZARA」の文字からなる商標が我が国において周知であることの証左として過去の審決例等を挙げている(甲9、甲10)が、商標の周知性は、事案毎に事実・証拠に基づき個別具体的に判断すべきものであるから、それらをもって上記判断が左右されるものではない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「AZARA」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書等に記載された成語ではなく、特定の意味を有しない造語であるから、その構成文字に相応して「アザラ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり、「ZARA」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は辞書等に記載された成語ではなく特定の意味を有しない造語であるから、その構成文字に相応して「ザラ」の称呼を生じ、また、当該文字は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできないことも踏まえれば、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者はそれぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、外観においては、看者の注意を引きやすい第1文字において「A」文字の有無という差異を有し、この差異が4文字ないし5文字という少ない文字構成からなる両者の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく、両者を離隔的に観察しても、外観上、判然と区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「アザラ」の称呼と引用商標から生じる「ザラ」の称呼とは、称呼の識別上重要な要素である語頭において、「ア」の音の差異を有し、その差異が2音ないし3音構成という短い音構成である称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似する商品を含むとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
上記(1)のとおり、「ZARA」の文字からなる商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、本件商標と、引用商標と構成態様を同じくする「ZARA」の文字からなる商標とは、上記(2)と同様の理由により、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして「ZARA」の文字からなる商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性
申立人は、引用商標との関係において本件商標が本号に該当する旨主張するところがあるが、主張の全趣旨から「ZARA」の文字からなる商標との関係を含めて、以下検討することとする(以下、引用商標と「ZARA」の文字からなる商標をあわせて「引用商標等」という。)。
引用商標等は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標は、上記(2)及び(3)のとおり、引用商標等を連想又は想起させることのない、非類似の商標である。
さらに、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当せず、その登録は同条同項の規定に違反してされたものとはいえないものであって、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2022-07-06 
出願番号 2020060355 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2021-05-24 
登録番号 6392910 
権利者 ジョーンズ ラング ラサール アイピー インコーポレイテッド
商標の称呼 アザラ 
代理人 小暮 君平 
代理人 福井 孝雄 
代理人 特許業務法人BORDERS IP 
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