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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1389947 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2022-10-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6351256号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6351256号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6351256号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年8月27日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同3年1月13日に登録査定、同年2月10日に設定登録されたものである。

第2 申立人が引用する商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4964605号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2に示すとおりの構成よりなり、平成18年2月2日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を含む、第3類、第5類、第6類、第8類、第9類、第11類、第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第23類ないし第28類、第34類、第41類、第43類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年6月23日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
また、引用商標1には、第10類及び第15類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする防護標章登録第1号が平成19年2月23日に設定登録され、現に有効に存続している。
2 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、上記引用商標1及び下記(1)ないし(16)の商標(以下、まとめて「引用各商標」という。)であり、申立人がファッション関連商品等に使用して著名になったというものであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1806610号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和54年1月29日登録出願、第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成18年2月22日に指定商品を第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第5140748号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成19年4月27日登録出願、第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同20年6月13日に設定登録されたものである。
(3)登録第1285553号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和48年4月26日登録出願、第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同52年7月20日に設定登録され、その後、平成19年7月18日に指定商品を第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
また、引用商標4には、以下のとおり、防護標章登録が設定登録され、現に有効に存続している。
ア 第1類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする防護標章登録第1号が昭和62年1月20日に設定登録され、その後、平成19年6月27日に指定商品を第1類ないし第5類、第16類、第19類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされた。
イ 第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする防護標章登録第3号が平成6年5月27日に設定登録され、その後、同17年11月24日に指定商品を第9類及び第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされた。
(4)登録第4567433号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、平成13年7月19日登録出願、第3類、第9類、第14類、第18類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同14年5月10日に設定登録されたものである。
(5)登録第1727592号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和54年1月29日登録出願、第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同59年11月27日に設定登録され、その後、平成17年1月26日に指定商品を第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(6)登録第1811253号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、昭和57年10月13日登録出願、第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成18年3月1日に指定商品を第18類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(7)登録第1263242号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和48年4月26日登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同52年4月11日に設定登録され、その後、平成19年7月18日に指定商品を第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類ないし第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
また、引用商標8には、以下のとおり、防護標章登録が設定登録され、現に有効に存続している。
ア 第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務とする防護標章登録第4号が平成6年7月27日に設定登録された。
イ 第40類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務とする防護標章登録第5号が平成6年9月28日に設定登録された。
ウ 第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務とする防護標章登録第6号が平成7年3月29日に設定登録された。
エ 第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務とする防護標章登録第7号が平成8年5月29日に設定登録された。
オ 第37類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務とする防護標章登録第8号が平成8年7月29日に設定登録された。
(8)登録第1932457号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、昭和57年10月13日登録出願、第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同62年2月25日に設定登録され、その後、平成9年10月6日に一部放棄による抹消登録がされ、さらにその後、同19年6月27日に指定商品を第14類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(9)登録第1531366号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和53年9月6日登録出願、第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同57年8月27日に設定登録され、その後、同58年2月14日に一部放棄による抹消登録がされ、さらにその後、平成16年5月19日に指定商品を第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
(10)登録第3106543号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成4年8月18日登録出願、第18類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同7年12月26日に設定登録されたものである。
(11)登録第3326557号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成6年8月26日登録出願、第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同9年6月27日に設定登録されたものである。
(12)登録第1314571号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和48年4月26日登録出願、第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同52年12月2日に設定登録され、その後、平成19年7月4日に指定商品を第17類、第24類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
また、引用商標13には、以下のとおり、防護標章登録が設定登録され、現に有効に存続している。
ア 第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする防護標章登録第1号が昭和60年7月17日に設定登録され、その後、平成17年7月6日に指定商品を第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされた。
イ 第15類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする防護標章登録第2号が昭和60年10月7日に設定登録され、その後、平成18年4月12日に指定商品を第23類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされた。
(13)登録第4258117号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成9年11月27日登録出願、第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同11年4月2日に設定登録されたものである。
(14)登録第4507077号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成12年10月18日登録出願、第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同13年9月14日に設定登録されたものである。
(15)登録第4475741号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲7のとおりの構成よりなり、平成12年5月17日登録出願、第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同13年5月18日に設定登録されたものである。
(16)国際登録第446944A号商標(以下「引用商標17」という。)は、別掲8のとおりの構成よりなり、2011年(平成23年)4月18日に国際商標登録出願(事後指定)、第32類及び第33類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成24年3月2日に設定登録されたものであり、その後、指定商品については、2020年(令和2年)1月2日に通報された国際登録簿の更正により、令和2年1月16日に第32類を削除する更正の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第162号証(枝番を含む。ただし、甲第39号証ないし甲第42号証、甲第48号証及び甲第92号証は欠番である。)を提出した。
1 申立人の使用する引用各商標の世界的な著名性について
(1)申立人について
申立人は、著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設されたトータル・ファッション・メーカーである。
(2)引用商標1ないし17の「シャネルマーク」の著名性について
引用商標1ないし17は、申立人の創業者であるデザイナー「Gabrielle COCO CHANEL」のイニシャルを図案化したものであって、「シャネルマーク」と称され、化粧品をはじめ、高級婦人服、靴、帽子、ハンドバッグ、ベルトの他、アクセサリー等の宝飾品、時計等の各商品等に使用され(甲23〜甲24)、申立人の商品であることを示す出所表示として広く知られている。
また、「シャネルマーク」が付された申立人の商品は、日本を含め世界中で超一流品としての信用が形成されており、数々の刊行物等によって紹介されているものである(甲49〜甲57、甲59〜78、甲81〜甲91)。
また、これら申立人の業務に係る「シャネルマーク」については、防護標章登録がされていることから、「シャネルマーク」の著名性は特許庁において顕著な事実であると思料する(甲2の1〜甲2の3、甲5の1〜甲5の4、甲9の1〜甲9の7、甲14の1〜甲14の4、甲58)。
また、「シャネルマーク」の著名性については、判決、審決等において、「シャネルマーク」が申立人に係る商標として著名であることについて認められていることからも、明白な事実であると思料する(甲46、甲47、甲93、甲95〜甲128)。
ア 売上高及び広告宣伝費用
CHANELブランドを象徴する最も重要なハウスマークであるシャネルマークを付した商品について、2014年以降現在に至るまで、毎年、日本において50億円を上回る広告宣伝費を投下して、引用商標1ないし17の「シャネルマーク」を付した商品の販売促進活動・広告宣伝活動を行ってきた。そして、それらのシャネルマークを付した商品の日本における2014年以降の売上高は現在に至るまで毎年500億円を超えている(甲140)。
イ イベント
申立人は、毎年、商品の販売促進のため、数多くのイベントを行っている(甲144〜甲161)。
ウ デジタル広告
申立人は、シャネルマークを付したデジタルのバナー広告やSNSを数多く行っており、その一部の例として、2015年から2018年にかけて行われた資料を提出する(甲162)。
エ 雑誌等への紹介記事
「シャネルマーク」が付された商品が様々なファッション雑誌やライフスタイル情報誌において極めて多数掲載されている。2017年には、191回(甲136の1〜甲136の191)、2018年には205回(甲137の1〜甲137の205)、2019年には190回(甲138の1〜甲138の190)も「シャネルマーク」が付された商品が紹介されている。
(3)小括
以上のことから、本件商標の出願時である2020年8月27日にはもちろんのこと、本件商標査定時の2021年2月10日(決定注:同年1月13日の誤記と認める。)においても、申立人の引用商標1ないし17に係る「シャネルマーク」は申立人の業務に係る「化粧品、身飾品、被服や履物、帽子、かばん類、時計」等といったファッションに関連する商品に使用される商標として、極めて広く知られるに至っていた周知著名商標というべきである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標及び引用商標1の構成について
本件商標は、商標公報記載のとおり、欧文字の「C」字状の文字を左右対称に背中合わせに一部を重ね合わせた図形とその図形の下に欧文字「MUSIC BAR」及び「CHAYA」を配置してなる商標であって、その指定役務は第43類の「飲食物の提供」である。本件商標を構成する欧文字の「C」字状の文字をほぼ左右対称に背中合わせに一部を重ね合わせた固形部分(以下「本件商標の図形部分」という。)と欧文字「MUSIC BAR」及び「CHAYA」の文字部分は、本件商標の図形部分が殊更大きく記載されおり、大きさも異なり、文字の太さも相違することから、両者を常に一体として把握されるものとはいえず、本件商標の図形部分及び文字部分が、それぞれ独立して出所標識としての機能を有しているというべきである。
一方、引用商標1は、欧文字の「C」字状の文字を左右対称に背中合わせに一部を重ね合わせた図形からなる商標である。
(2)本件商標の図形部分と引用商標1の類否について
上記記載の本件商標の図形部分と、引用商標1とを比較すると、本件商標の図形部分と引用商標1はともに、欧文字の「C」の2文字をバランス良く背中合わせに交差させている点において構成の軌を同じくする。
また、図形部分が特定の事物を表現したものとは直ちに認識されないほどに構成上顕著な特徴を持っている点、同一半径の二つの文字を組み合わせた図形から構成されている点など、本件商標の図形部分及び引用商標1において共通した点が多くみられる。したがって、本件商標の図形部分は、引用商標1と構成の軌を同じくする商標というべきであり、全体として外観上引用商標1と極めて近似した印象を与える商標である。すなわち、本件商標の図形部分は引用商標1と外観的印象を共通にするものであり、著名な引用商標1に多少の変更を加えたにすぎず、引用商標1を容易に想起させ、相紛れるおそれのある類似商標として認識されるというべきである。
このような欧文字「C」を背中合わせに一部を重ね合わせた図形からなる商標が引用商標1と外観上類似することは、過去の特許庁の判断事例でも認定されている(甲96〜甲124)。さらに、「シャネルマーク」の著名性の程度の高さから、欧文字がたとえ「C」ではなくとも、欧文字「G」や「O」が組み合わされた図形であっても、欧文字「C」を背中合わせに配したという共通する構成のほかに異なる構成部分(例えば「C」に横線等の付加部分)があっても、申立人の「シャネルマーク」との基本的構成の共通性を認められ、「シャネルマーク」に類似する図形と認定されている、このことからも、明らかに欧文字「C」を背中合わせに重ね合わせた図形である本件商標の図形部分は、引用商標1に係る「シャネルマーク」と類似する商標であることは明らかである。
なお、引用商標1は図形のみから構成された商標であることから特定の観念が生ずるとはいえず、本件商標の図形部分と引用商標1は観念においては比較すべくもないというべきである。また、引用商標1は図形のみから構成された商標であることから特定の称呼が生ずるとはいえない。
さらに、商標の類否判断の際に考慮すべき具体的取引の実情に、先願権を有する他人の商標の著名性を考慮すべきであることは過去の判決においても認められている(甲43〜甲45、甲130〜甲132)。
上述した引用商標1の世界的な著名性及び上記の裁判例に鑑みると、引用商標1に係る商標の著名性が、具体的取引の実情として考慮されるべきであり、その結果、本件商標の図形部分と引用商標1との類似性はより高まるというべきである。
以上のことから、本件商標の図形部分はその取引者・需要者において著名な引用商標1とその構成及び態様が極めて酷似する図形と認識され、本件商標と引用商標1とはその外観において相紛れるおそれがあり、類似する商標というべきである。
なお、過去の判決、審決、異議決定、及び審査例等において、著名な引用各商標である「シャネルマーク」と外観上類似すると判断されている商標が多数ある(甲80、甲93、甲96、甲98、甲102、甲105〜甲107、甲109、甲110、甲115、甲117、甲120、甲122〜甲125、甲134)。
上記判断において、引用商標1である「シャネルマーク」と類似すると判断されていることに鑑みても、本件商標の図形部分においても同様に、本件商標が申立人の著名な引用商標1に類似するとの判断をなされるべきであると考える。
(3)本件商標と引用商標1における指定商品又は役務の比較
本件商標の指定役務は、第43類の「飲食物の提供」である。
一方、引用商標1は、その指定役務中に第43類の「飲食物の提供」を含むものである。
よって、引用商標1の指定役務は、本件商標の指定役務と同一である。
(4)小括
以上より、本件商標の図形部分は、本件商標の出願日前の商標登録出願に係る申立人の先行登録商標である引用商標1と類似する商標というべきであり、また本件商標は引用商標1に係る指定役務と同一又は類似の指定役務について使用するものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と他人の表示との類似性の程度
本件商標は、上述のとおり、申立人の引用各商標と類似する図形を含んでおり、類似性の程度は極めて高いというべきである。
(2)引用各商標の構成、著名性及び創造性について
本件商標と類似するというべき引用各商標である「シャネルマーク」は、上述したように申立人の創業者である「Gabrielle coco CHANEL」のイニシャルを図案化した図形商標であり、世界的な著名性を有していることはいうまでもなく、申立人による別件商標「CHANEL」と共に申立人の業務に係る商品又は役務に広範囲に使用されるハウスマークである。また、引用各商標は特徴的な構成を有している商標であることから、申立人以外の第三者により商標として採択される可能性の低い創造標章であることは明白である。
さらに、申立人には、引用各商標に係る「シャネルマーク」については、本件商標と同様に、欧文字「C」の長さをアレンジした商標についても「カンボンライン」として商品に使用しており、商標登録も有している(甲19〜甲22、甲25、甲26)。
(3)申立人が引用各商標を使用する商品と本件商標の指定役務との関連性について
申立人の業務に係る化粧品・被服・身飾品・時計・履物・サングラス・バッグ等の商品は、ファッション関連商品であるが、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」との関連性の程度及び取引者及び需要者の共通性は、以下に述べるとおり、申立人をはじめとした、現在のファッション製品にかかわる企業のレストラン事業を含めた多角化を進める経営方針、需要者への広告・宣伝媒体となっている雑誌において、近年、レストランに関する情報が被服・履物・バッグ等と同じくライフスタイルの情報として提供する女性ファッション誌等の現状、ファッション業界その他多種多様な異業種との積極的なコラボレーションによる商品開発事情等を鑑みれば、非常に高いといわざるを得ないものと思料する。
すなわち、申立人のようなファッション関連のブランド自体も、その多くが経営の多角化をすすめており、自社自身で次々とレストラン・カフェ業界に参入し始めている(甲27〜甲29、甲31〜甲38)。
これらの事実より、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」と申立人の業務に係る商品であるファッション関連商品とは、ともに、高級なブランドイメージ・ファッションイメージを需要者にアピールする商品であり、また、取引者及び需要者を共通する点で、商品・役務の関連性の程度は非常に高いと思料する。
したがって、上記の事情を勘案すると、本件商標は、我が国において、ファッション関連商品に関して著名な引用各商標と極めて酷似し、これを容易に想起させるというべき商標である。また本件商標の指定役務と引用各商標の指定商品・役務との間には、商品・役務の需要者・取引者において密接な関連性を有する事情を考慮すると、本件商標がその指定役務である「飲食物の提供」に使用された際には、これに接する取引者・需要者において、この役務が、申立人であるシャネルが企画しデザインしたレストランやカフェ・バーといった認識がされるおそれがあり、あたかも申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如くその役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)出所混同について
以上に鑑みれば、著名な引用各商標である「シャネルマーク」を容易に想起し得る図形と文字の結合からなる本件商標がその指定役務に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、あたかも著名な申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務であるかの如く誤認し、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
加えて、最高裁判所における判決例(平成10年(行ヒ)85審決取消請求事件)において、商標法第4条第1項第15号の趣旨から、フリーライド及びダイリューションを引き起こすような広義の混同を生ずる商標をも商標法第4条第1項第15号に該当すべきであると判示されている。
本件においても、本件商標の引用各商標に対する稀釈化を防止し、引用各商標が有する自他商品識別機能を保護すべきであり、本号の趣旨から考えても本件商標はその役務の出所について混同を生ずるおそれがあると判断され、その登録を取消されるべきである。
すなわち、著名な引用商標1ないし17と出所の混同のおそれがある商標と判断された判決、審決、異議決定、及び審査例は、極めて多数存在している(甲47、甲93、甲96、甲98〜甲103、甲107、甲108、甲111〜甲122、甲125〜甲128、甲133、甲134)。
これら多数の商標が引用各商標とその商品の出所について混同を生ずるおそれがあると判断されている特許庁における判断からも、引用商標1ないし17が、我が国において、他人の無断使用によるフリーライドやダイリューションから保護されるべき著名商標であることは明らかである。本件商標においても判断の統一が望ましいことから同様の判断がなされるべきである。
したがって、著名な「シャネルマーク」と相紛れるおそれのある本件商標が、当該著名表示に化体した高い名声及び信用にフリーライドすることによって、当該著名表示に化体した名声、信用、及び評判の稀釈化が引き起こされるというべきであり、この引用各商標に対する希釈化を防止し、引用各商標が有する自他商品識別機能を保護すべきであり、本条の趣旨から考えても本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(5)小括
以上述べたとおり、本件商標と引用各商標との外観上の類似性、申立人の引用各商標が周知著名性を獲得していること、申立人が著名性を獲得しているファッション関連商品と密接に関連する役務を本件商標が指定している点などの取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)不正の目的
本件商標は、申立人の創業者のイニシャルを図案化した独自性の高い著名なハウスマークとしてあらゆる商品に使用されている「シャネルマーク」と極めて酷似する図形部分を含んだ構成よりなることから、本件商標と引用各商標とは類似する商標というべきである。また、引用各商標は前述のように申立人による多年にわたる努力の積み重ねの結果、需要者間において広く知られ、高い名声・信用・評判を獲得するに至っており、本件商標の出願時には、引用各商標はすでに申立人の業務に係る商品又は役務に使用される商標として極めて広く知られていた著名商標というべきである。以上のことから、そのような著名性を獲得している申立人の「シャネルマーク」を構成に含んだ態様からなる商標であることに鑑みれば、本件商標は申立人の著名な商標を「不正の目的をもって使用するもの」として推認されるべきである。
また本件商標は、著名な引用各商標が使用されるファッション関連商品と密接な関係を有する「飲食物の提供」を指定しており、実際に申立人はレストランやカフェを経営していることから、偶然に著名な引用各商標と類似する商標を出願したものとは考え難く、引用各商標の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的でもって出願、使用されているものと推認される。すなわち、著名な引用各商標と類似する本件商標は、著名な引用各商標の持つ名声・信用・評判を毀損させる目的をもって出願したものというべきであり、その出所についての混同のおそれを有し、また著名な引用各商標の出所表示機能を希釈化させるおそれのあるものというべきであり、このような本件商標は信義則に反する不正の目的でなされた出願というべきである。
したがって、本件商標は申立人による独自性の高い著名な引用各商標と極めて類似する商標であり、また引用各商標の出所表示機能を稀釈化させ、その名声を毀損させる目的をもって商標出願されたというべきであることからもまた、本件商標は「不正の目的をもって使用するもの」というべきである。
(2)過去の異議決定及び無効審決
なお、引用各商標に関連する異議決定及び無効審決例において、対象となった登録商標の商標権者の不正の目的が認められた結果、商標法第4条第1項第19号に該当することを理由に登録が取り消されている(甲104、甲123、甲124)。
(3)小括
以上のことから、本件商標は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている「シャネルマーク」に係る引用各商標と極めて類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものというべきであることから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当すると思料する。
5 結び
以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同法第4条第1項第15号、及び同法第4条第1項第19号に該当するというべきであり、商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 使用標章の周知著名性について
申立人の主張及び証拠によれば、以下のとおりである。
(1)申立人は、高級婦人服、靴、帽子、ハンドバッグ、ベルトのほか、アクセサリー等の宝飾品、時計、香水等の化粧品などの製造販売等を業とするトータルファッションメーカーである。
申立人は、主として、申立人の創業者であるデザイナー「Gabrielle coco CHANEL」のイニシャルを図案化したものであって、「C」字状の太い曲線2つを左右対称に背中合わせに弧状部分で浅く交差させた別掲2と同一の構成からなる図形(以下「使用標章1」という。)及び円輪郭内に上記図形を表してなる別掲7と同一の構成からなる図形(以下「使用標章2」という。)並びにこれらと同視できる構成からなる標章(以下、これらをまとめて「使用標章」という。)を、世界各国において、申立人の業務に係る商品「コスチュームジュエリー、鞄、靴、服、香水及び化粧品」等のファッション関連商品(以下「申立人商品」という。)に使用している(甲139、甲141、甲142)。
そして、申立人商品は、1977年ないし2004年には、講談社発行の「世界の一流品大図鑑」や徳間書店発行の「世界の香水」などの刊行物や雑誌において紹介され、また、近年においては、「25ans」、「CLASSY」を始めとする数多くの雑誌に、2017年は191回、2018年は205回、及び2019年は190回申立人商品の紹介記事が掲載された(甲49〜甲57、甲59〜甲78、甲81〜甲91、甲94、甲136〜甲138)。
さらに、申立人は、使用標章を付した申立人商品について、我が国における2014年から2018年に至るまでの各年の広告費は50億円を上回り、その売上高は各年500億円を超え、コスチュームジュエリーに限っても、年間30億円を超える売上げであるとしている(甲140)。
加えて、申立人は、商品の販売促進のためのイベントを行っており、その冊子、招待状や来場者へのギフト、イベントの広告等に使用標章を付し(甲143〜甲161)、また、使用標章を付したデジタルのバナー広告やSNSを行っている(甲162)。
(2)前記(1)によれば、使用標章は、申立人の創業者であるデザイナー「Gabrielle coco CHANEL」のイニシャルを図案化したものであって、申立人商品について永年使用され、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、欧文字の「C」字状の曲線(曲線の太さは、極太に表された弧状部分から両端に向けて徐々に細くなり、両端部分で再び太くなるように表されており、開口部は広い。)2つを、上下にずらして左右非対称に背中合わせに弧状部分の一部を深く重ねた縦長図形(以下「本件図形部分」という。)と、その下に、小さく表された「MUSIC BAR」の欧文字及び大きく表された「CHAYA」の欧文字(以下「本件文字部分」という。)を上下二段に配した構成からなるものである。
そして、本件商標は、その構成態様などから、本件図形部分と本件文字部分がそれぞれ独立して自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得るものであり、本件図形部分からは特定の称呼及び観念を生じないものと、また本件文字部分からは「ミュージックバーチャヤ」の称呼及び「CHYAYAという名のミュージックバー」程の観念が生じるものと判断するのが相当である。
(2)引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、欧文字の「C」字状の曲線(曲線の太さは均一で、開口部は狭い。)2つを、左右対称に背中合わせに弧状部分の一部を浅く重ねた横長図形からなるものであり、特定の称呼を生じないものである。
そして、引用商標1は、前記1(2)のとおり、申立人商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されている使用標章1と、同一又は同じ構成からなるものであるから、申立人のブランドとしての「シャネルのマーク」の観念が生じるものである。
(3)本件商標と引用商標1との比較
まず、本件商標の要部である本件図形部分と引用商標1とを比較すると、両者は、いずれも「C」字状の2つの曲線の一部が重なるように左右背中合わせに配置された図形であるという点が共通するとしても、「C」字状の曲線の表し方の相違(太さが変化しているか均一であるか及び開口部が広いか狭いか)に加え、構成全体の表し方においても、左右非対称の図形と左右対称の図形、2つの曲線を深く重ねた縦長図形と2つの曲線を浅く重ねた横長図形などの点において、明らかに印象が異なるものであるから、外観上、相紛れるおそれのないものである。
そして、本件図形部分からは特定の称呼及び観念は生じないのに対し、引用商標1からは、特定の称呼は生じないものの、申立人のブランドとしての「シャネルのマーク」の観念が生じるものであるから、両者は、称呼においては比較できないとしても、観念において相紛れるおそれのないものである。
してみれば、本件図形部分と引用商標1とは、称呼においては比較できないとしても、外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
また、本件商標のもう一つの要部である本件文字部分又は構成全体と、引用商標1とを比較しても、両者は、構成文字の有無等により、それらの外観、称呼及び観念において、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標1とが類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるから、本件商標は、その指定役務と引用商標1の指定商品及び指定役務とが類似するとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
前記1(2)のとおり、使用標章は、申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められるものである。
しかしながら、使用標章1は引用商標1と同一の商標であり、また、使用標章2は円輪郭内に引用商標1を配してなるものであって、前記2のとおり、本件商標と引用商標1とが非類似の商標であることからすれば、本件商標と使用標章も同様に相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、商標の類似性の程度は極めて低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用をしても、取引者及び需要者をして使用標章を連想又は想起させることはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記1(2)のとおり、使用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるとしても、前記3のとおり、本件商標と使用標章とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。
さらに、本件商標が使用標章の顧客吸引力にただ乗りしたり、不当に利用するなど、不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠は見いだせない。
そうすると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 申立人の主張について
申立人は、過去の審決例等を多数挙げ、本件商標もそれらと同様に判断されるべきである旨主張しているが、商標法第4条第1項第11号該当性の判断は査定時において、同項第15号及び同項第19号該当性の判断は、出願時及び査定時において、取引の実情を勘案し、その指定役務の取引者及び需要者の認識を基準に個別具体的に判断されるべきものであるから、それら審決例等によっては上記判断を左右するものでない。
したがって、申立人のかかる主張はいずれも採用できない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲1
本件商標


別掲2
引用商標1、引用商標3、引用商標14及び引用商標15


別掲3
引用商標2、引用商標6、引用商標10ないし引用商標12


別掲4
引用商標4、引用商標8及び引用商標13


別掲5
引用商標5


別掲6
引用商標7及び引用商標9(色彩は原本参照)


別掲7
引用商標16


別掲8
引用商標17




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異議決定日 2022-09-30 
出願番号 2020106154 
審決分類 T 1 651・ 251- Y (W43)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 板谷 玲子
森山 啓
登録日 2021-02-10 
登録番号 6351256 
権利者 株式会社HIC
商標の称呼 ミュージックバーチャヤ、ミュージックバー、ミュージック、チャヤ、シイシイ 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 佐藤 俊司 
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