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審決分類 審判 全部無効 商標の周知 無効としない W25
管理番号 1389839 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-05-24 
確定日 2022-05-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第6244577号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6244577号商標(以下「本件商標」という。)は、「CAMBER SPORTS」の欧文字を標準文字で表してなり、平成30年11月15日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,タンクトップ,ティーシャツ」を指定商品として、令和2年3月30日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する商標は、「CAMBER」の欧文字からなる商標(以下「請求人商標」という。)である。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)請求人は、1948年に米国ペンシルバニア州東部のモンゴメリーにおいて生地の生産を始め、その後1992年に請求人商標のブランドで被服の製造を開始した。被服ブランドとしても30年近い歴史を持ち、米国内だけでなく日本国内においても人気を博している(甲1、甲2)。
本件商標は、その登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている請求人商標に類似するものであり、かつ、指定商品も同一又は類似の商品に使用するものである。
(2)本件商標は、商願2018−141690(以下「原出願」という。)の分割出願に係るものである。原出願は、平成30年11月15日付けにて出願されたものであるが(甲3)、その後、令和元年10月4日発送の拒絶理由通知書において、「原出願に係る商標がその出願前より取引者、需要者間に広く認識されている請求人商標に類似し、かつ、指定商品も同一又は類似の商品に使用するものであるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。」旨の判断がなされている(甲4)。
その後、原出願の分割出願として、請求人商標が使用されている商品と同一又は関連性が強い商品を指定商品とする本件商標が出願されたが、当該分割出願に対しては拒絶理由通知が発せられることなく商標登録が認められている。
原出願の拒絶理由通知書に対しては意見書の提出はなされていないことから、本来であれば当該分割出願に対しても原出願と同様の拒絶理由が通知されるべきところ、恐らくは過誤により登録査定がなされたものと考えられる。
(3)被請求人は、請求人商標の商品の販売が実店舗ではなくオンラインストアで販売されていること及び当該商品が他のブランドの商品とともに販売されていることをもって、当該商標の周知性を否定しているが、「Amazon」や「ZOZOTOWN」 に代表されるメガオンラインストアにおける被服等の販売が主流となりつつある昨今においては、服飾メーカーが必ずしも直営の実店舗を有しているわけではなく、むしろ多額の販売経費を要する実店舗を減らして、より効率的な販売が可能なオンラインストアヘの移行が活発化しているのが実情である。
請求人商標の商品も上述のオンラインストアにおいて広く販売されているものである。例えば、「Amazon」においては171のアイテム(商品)が、また、「ZOZOTOWN」においては367のアイテムが販売されている(甲5、甲6)。オンラインストア「jalana」においては、請求人商標の商品の歴史的背景の説明とともに16のアイテムが販売されており(甲7)、その末尾には取扱ブランドの一覧が表示されているが、請求人商標も「Levi’s」や「VANS」といった著名ブランドと並んで表示されている。
また、上述の歴史的背景の説明においては「アメリカはペンシルバニア州の老舗スポーツウエアメーカー『キャンバー』。1948年に生地工場としてスタートしたファクトリーで、学生スポーツチームや、体育協会等からのボディ受注を請け負っていました。そのノウハウを活かし、CAMBERとしてのオリジナルレーベルを始めたのは1992年。」との記載があるとおり、請求人商標はいわゆる「スポーツウエア」として認知されているものである。
したがって、本件商標と請求人商標との間で商品の出所について混同が生ずるであろうことは想像に難くない。
(4)被請求人は、令和2年11月9日付けにて、商標「CAMBER」を出願しているが(商願2020−144311)、当該出願に対しては、令和3年7月21日付けにて拒絶理由通知書が発せられている(甲8)。
審査官は、請求人商標を引例として、被請求人の商標が商標法第4条第1項第10号等に該当すると判断している。これは、本件商標の原出願である商願2018−141690及び第三者の出願に係る商願2018−153241に対する拒絶理由通知書において、請求人商標を周知商標として引用し、商標法第4条第1項第10号に該当するとした判断とも整合するものである。
よって、本件商標の登録は無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 請求人商標が請求人の業務に係る商標として需要者の間に広く認識されている事実など全く存在しない。
2 甲第2号証関係
(1)甲第2号証は、ウェブサイト「スタンダードメイド」(乙1。以下「スタンダードサイト」という。)の「CAMBER」に関するページ(以下「CAMBERページ」という。)であるが、これを見ると、タイトルには「CAMBER/キャンバー正規販売店」とあるものの、末尾に「オンラインストアはこちら」とあるとおりで、請求人商標の商品の実際の販売店舗は存在せず、オンラインストアがあるだけということが分かる。
また、そこでの請求人商標の宣伝文句は「アメリカ・ペンシルバニア州東部のモンゴメリー郡・ノーリスタンにて生地の生産工場として発足・・・1992年よりCAMBERブランドとして立ち上がり・・・生地や細部のパーツまでアメリカ製に拘った、大変稀少なメーカーです。・・・CAMBERのTシャツは・・・」といった内容のものであって、米国の老舗メーカーであるということや商品の特徴が紹介されている。しかし、ブランドの人気や有名店での取扱いといった内容の記載は見受けられない。
(2)スタンダードサイトのオンラインストアは請求人商標だけではなく、2021年7月16日現在で「BRANDS ブランド」の欄にあるように請求人商標を含め10ものブランドのオンラインストア(以下「ストア10店」という。)が群がっているものである。
(3)スタンダードサイトのオンラインストアであるストア10店の各ページも、その態様はほとんど同様である。
そして、スタンダードサイトのストア10店のオンラインストアの中で特に請求人商標が目立っているとか、力を入れて宣伝されているということでもない。
(4)以上述べたとおり、甲第2号証は、何ら請求人商標が請求人の業務に係る商標として需要者の間に広く認識されていることを裏付ける証拠にはなっていない。
3 甲第1号証関係
甲第1号証は、ウェブサイト「ファッションプレス」が取り扱っている「ブランド」の請求人商標の商品に関するファッション情報のページであるが、書かれている内容は、CAMBERページとほぼ同様であり、ここでも請求人商標が需要者の間に広く認識されていることを裏付けるような記載はない。
4 甲第3号証、甲第4号証関係
請求人は、「本件商標の原出願において請求人商標により商標法第4条第1項第10号に該当するとの拒絶理由通知が出されていたのであるから、本件商標の出願においても同じ拒絶理由通知が発せられるべきところ同通知がなされることなく商標登録が認められているので、恐らくは過誤により登録査定がなされたものであろう」と主張しているが、素直に考えれば、審査官は原出願において上記のような拒絶理由通知を出したけれども、その後の被請求人等からの情報等により同拒絶理由を裏付ける事実はないものと判断して、後の本件商標の出願においては拒絶理由通知を出さなかったということであろう。
5 むすび
以上のとおり、請求人商標が他人の業務に係る商標として需要者の間に広く認識されている事実など到底認められないものであるから、請求人商標と本件商標の類似性も否定されるものと考えられるが、その点を論ずるまでもなく、本件審判の請求は成り立たないものである。

第5 当審の判断
1 請求人商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているかについて
(1)請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 請求人は、1948年(昭和23年)に米国において生地の生産を始め、その後1992年(平成4年)に請求人商標のブランドで被服の製造を開始した(請求人の主張)。
イ 2021年(令和3年)5月24日に印刷された「FASHION PRESS」と称するウェブサイト及び同「ST&DARD MADE」と称するウェブサイト並びに同年12月6日に印刷された「Jalana」と称するウェブサイトにおいて、請求人商標の紹介記事が掲載されている(甲1、甲2、甲7)。
ウ 当該記事には、請求人商標に関するブランドの歴史として、1948年(昭和23年)に米国において生地の生産工場としてスタートしたこと、及び1992年(平成4年)に請求人商標のブランドを立ち上げたことが記載されている(甲1、甲2、甲7)。
エ 前記イにおける「ST&DARD MADE」と称するウェブサイト及び「Jalana」と称するウェブサイトにおいて、請求人商標が使用されているスウェットシャツ、フード付きシャツ及びティーシャツが販売されている(甲2、甲7)。
オ 2021年(令和3年)12月6日に印刷された「Amazon」及び「ZOZOTOWN」のウェブサイトにおいて、請求人商標が使用されたフード付きシャツ、ポロシャツ及びティーシャツ等が販売されており、「Amazon」のウェブサイトには171品目及び「ZOZOTOWN」のウェブサイトには367品目の請求人商標に係る商品がそれぞれ掲載されている(甲5、甲6)。
(2)判断
前記(1)によれば、請求人は、スウェットシャツ、フード付きシャツ、ティーシャツ及びポロシャツ等の被服に請求人商標の使用をしており、請求人商標はいくつかのウェブサイトにおいて紹介記事が掲載され、また、請求人商標に係る商品がいくつかのオンラインストアにおいて一定程度の品目数販売されていることが認められる。
しかしながら、請求人商標の紹介記事が掲載されているウェブサイトについて、その数はさほど多いとはいえず、また、当該ウェブサイトは本件商標の登録査定後に印刷されたものであって、当該登録査定前に掲載されていたことを示す証拠の提出はない。
また、当該紹介記事において、請求人商標に関するブランドの歴史として、米国において生地の生産工場としてスタートし、平成4年に請求人商標のブランドを立ち上げたことが記載されているが、我が国において請求人商標の使用が開始された時期の記載はなく、そのため、我が国における請求人商標の使用開始時期は不明である。
さらに、請求人商標に係る商品が販売されているオンラインストア(ウェブサイト)について、当該ウェブサイトは本件商標の登録査定後に印刷されたものであって、当該登録査定前に請求人商標に係る商品が販売されていたことを示す証拠の提出はない。
そうすると、請求人の提出に係る証拠によっては、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る被服を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
前記1のとおり、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品(被服)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとはいえない。
そうすると、たとえ、本件商標がその構成中に「CAMBER」の欧文字を含み、かつ、その指定商品が請求人の業務に係る商品と同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 請求人の主張について
請求人は、本件商標の原出願及び商標「CAMBER」に係る出願(商願2020−144311)が、いずれも請求人商標を引用して商標法第4条第1項第10号に該当する旨の拒絶理由通知を受けていることから、本件商標についても同号に該当する旨主張している。
請求人の提出に係る証拠(甲4、甲8)によれば、本件商標の原出願及び商標「CAMBER」に係る出願が、いずれも請求人商標を引用して商標法第4条第1項第10号に該当する旨の拒絶理由通知を受けていることが認められる。
しかしながら、原出願における拒絶理由通知書(甲4)については、判断の根拠が何ら記載されていないことから、どのような証拠に基づいて、請求人商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるものと判断したのか不明である。
また、商標「CAMBER」に係る出願における拒絶理由通知書(甲8)については、判断の根拠としてウェブサイトを5件引用しているところ、これらのウェブサイトにおいて、請求人商標が紹介されていることは認められるものの、いずれのウェブサイトも本件商標の登録査定後に確認されたものである。
そうすると、請求人商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているかについては、これらの拒絶理由通知書を踏まえたとしても、前記1のとおり判断するのが相当である。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号に該当するものではなく、同項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

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特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分に御注意ください。

審判長 佐藤 淳
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-12-27 
結審通知日 2022-01-05 
審決日 2022-01-21 
出願番号 2020009542 
審決分類 T 1 11・ 255- Y (W25)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 淳
特許庁審判官 小田 昌子
山田 啓之
登録日 2020-04-10 
登録番号 6244577 
商標の称呼 キャンバースポーツ、カンバースポーツ、キャンバー、カンバー 
代理人 山崎 行造 
代理人 西川 巌 
代理人 橘高 郁文 

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