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審決分類 |
審判 一部無効 外観類似 無効としない W28 |
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管理番号 | 1389838 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2021-04-30 |
確定日 | 2021-12-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6179405号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6179405号商標(以下「本件商標」という。)は、「Happy Teddy Bear」の文字を標準文字で表してなり、平成30年4月20日に登録出願、第14類「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,身飾品,時計」及び第28類「熊のぬいぐるみ」を指定商品として、令和元年8月20日に登録査定、同年9月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の無効の理由として引用する商標は、以下のとおりである。 1 登録第2383311号(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:昭和58年7月4日 設定登録日:平成4年2月28日 書換登録日:平成14年10月16日 更新登録日:平成24年2月14日 2 登録第5468693号(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成23年8月23日 設定登録日:平成24年2月10日 3 登録第6233228号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月18日 設定登録日:令和2年3月6日 4 登録第6233229号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月20日 設定登録日:令和2年3月6日 5 登録第6245620号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲5のとおり 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月20日 設定登録日:令和2年4月15日 6 登録第6245621号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:MY TEDDY BEAR 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月22日 設定登録日:令和2年4月15日 7 登録第6173094号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:I LOVE TEDDY BEAR 指定商品:第28類「熊のぬいぐるみ,遊戯用器具,運動用具」 登録出願日:平成30年10月3日 設定登録日:令和元年8月23日 8 登録第6220804号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:TEDDY BEAR SPORTS 指定商品:第28類「運動用具」 登録出願日:平成31年3月26日 設定登録日:令和2年1月30日 9 登録第6245622号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:HELLO TEDDY BEAR 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月22日 設定登録日:令和2年4月15日 10 登録第6245624号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:TEDDY BEAR CLUB 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月22日 設定登録日:令和2年4月15日 11 登録第6245623号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:ROYAL TEDDY BEAR 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月22日 設定登録日:令和2年4月15日 12 登録第6242250号商標(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:TEDDY BEAR WORLD 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月26日 設定登録日:令和2年4月3日 13 商願2019−46593号(以下「引用商標13」という。)) 商標の構成:HAPPY TEDDY BEAR 指定商品:第28類「縫いぐるみのおもちゃの熊」 登録出願日:平成31年3月20日 拒絶査定日:令和3年1月18日 14 請求人が、第14類の商品を指定商品とする登録商標として、審判請求書中に記載している「Teddy Bear(TEDDYBEAR)」の文字からなる、又は当該文字を構成中に含む登録第2096663号ほか5件(以下「引用商標14」という。) 15 請求人が、請求人所有の登録商標として審判請求書中に記載している「TeddyBear」の文字からなる登録第6262645号ほか37件の登録商標(審決注:引用商標14と一部重複がある。以下、「引用商標15」という。 ) 以下、引用商標1ないし引用商標6をまとめていうときは、「28類引用商標1」、引用商標7ないし引用商標13をまとめていうときは、「28類引用商標2」という場合があり、引用商標1ないし引用商標15をまとめて「引用商標」という。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第28類の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 請求の理由 (1)被請求人の背信行為 被請求人は、平成21年頃から請求人とK社とのライセンス契約に基づき、日本国内で製造された「テディベアぬいぐるみ商品」を小売販売していた業者であり(甲1、甲2)、K社は被請求人にテディベアの「ぬいぐるみ商品」等を納品していた。 請求人とK社とのライセンス契約は、平成27年8月末日で終了することになったため(甲3)、請求人はK社から依頼され、同社の納品先である被請求人と直接「ライセンス契約」を行い「テディベアぬいぐるみ人形商品」の製造・販売を継続することを要請された。 被請求人は、自身の事業を請求人と直接契約の形で継続することを約束し(甲4)、ライセンス契約の交渉を行ったが、被請求人は、故意にこれまでの契約条件と大きく異なる不利な条件を提案したためライセンス契約は成立しなかった。 そのため、請求人は、被請求人が「テディベアぬいぐるみ人形商品」や「アクセサリー商品」等の製造・販売を中止していると信じていたが、被請求人は、その後、請求人に無断で、請求人の所有する商標権等を侵害しながら「テディベアぬいぐるみ商品」や「アクセサリー商品」等の製造、販売を請求人に無断で継続し、また「商品販売宣伝」に「Teddy Bear」の文字を使用している事が判明した。 当該行為は、上記の経緯を考えると、請求人に対する「ビジネス」面での「背信行為」であり信義にもとると考えられる。 したがって、本件商標の登録は、無効にすべきである。 (2)本件商標の指定商品中の第28類は、請求人の28類引用商標1及び28類引用商標2の「類似権範囲」であり、審査に誤りがあったために「登録査定」になっただけであり、本来は「拒絶査定」となるべきものであったため、「無効」になるべきである。 ア 請求人の「類似商標」(原型)である28類引用商標1と本件商標の指定商品中の第28類「熊のぬいぐるみ」は、ほとんど同一であり、かつ、類似群コード(24A01)も一致する。 イ 本件商標は、請求人の「TeddyBear」商標である28類引用商標2と同一の形態である。 28類引用商標2は、28類引用商標1を基本として登録になったものである。 請求人は、28類引用商標1が登録となっていることを前提に本件商標と同一の商標(商願2019−46593)を出願したが、本件商標の存在で拒絶となった経緯がある。 以上を総合的に考えると、本件商標が登録となる余地はなかった。 ウ 本件商標は、あくまで「Teddy Bear」が主体で、それに「Happy」が付属した「合成語」にすぎない。 「Happy」は、日本語で「幸福」「愉快な」を表す「形容詞」にすぎず、それ程大きな意味はなく、挨拶等で「Happyですか」「Happyですよ」等と一般に軽く、広く使用されている。 エ 請求人の引用商標の主体もあくまで「Teddy Bear」であり、それが大きく書かれている。 それに、「ONDORI―SHA」や「JASS INTERNATIONAL」とそれぞれの会社名の固有名詞との「合成語」である。 両者を比較すると、明らかに類似であり、本件商標に特別な独自性があるものとはいえないため、無効にすべきである。 (3)「熊のぬいぐるみ人形」の権利について 雄鶏社は、もともと、引用商標1を、平成4年頃に商標登録として所有していた。 その後、「熊のぬいぐるみ人形」については、引用商標1によって、雄鶏社のものであるとの認識が日本での共通のものとなっていたのであり、その頃、同種の登録商標の存在はなかった。 また、「テディベア」の商標を登録出願しても全て引用商標1のために「拒絶」になっていた。 日本の社会では、他人が「熊のぬいぐるみ人形」で「テディベア」の商標を使用する事もなかった。 雄鶏社は、平成21年頃に倒産し、その「清算弁護士」が請求人への引用商標1の譲渡を申し出て、請求人はそれを買収して、所有を続けていたものである。 しかし、本件商標の審査判断は、それ等の社会通念を破壊して、ぬいぐるみ業界の秩序を揺るがすものとなり、各社への混乱を生じさせている。 (4)「Teddy Bear」は、「ぬいぐるみ人形」の名前として、1つの言葉として100年以上前の明治時代から日本国内で知らない人がいない程有名であることから、本件商標は、厳密にいえば、「Teddy Bear」に「Happy」が付属して合成された言葉にすぎず、本件商標の主体は、あくまで「Teddy Bear」である。 「Happy」は、日本語で「幸福」「愉快な」を表す「形容詞」にすぎず、それ程大きな意味はなく、挨拶等で「Happyですか」「Happyですよ」等と一般に軽く、広く使用されている。 そのような言葉は「Fine」「Lucky」等多くあり、上記の名詞の「Teddy Bear」と対等な言葉とは考えられない。 「Teddy Bear」は、世界的に有名な「熊のぬいぐるみ人形」として確立された「名詞」や「単語」であり、「Happy」については、軽く「名詞」や「単語」を修飾するにすぎず、対外的印象が少ないものであり、「Happy」が付いたからといって、「Teddy Bear」(類似商標含む。)と、別の単語として認識することはできない。 外見も「Teddy Bear」が主体であり、それに申し訳程度に「Happy」が付けられたとしても、同一商標であり独立した商標としては考えられない。 請求人の第28類の類似権範囲の引用商標1ないし引用商標4と本件商標の構成中の「Teddy Bear」は、請求人の上記各引用商標の「Teddy Bear」と類似関係であり、権利侵害になるから「無効」にするべきである。 (5)本件商標の登録審査の誤り 本件商標の審査時において、拒絶理由通知書では、「ハッピー」、「Happy」、及び「ハッピー」と「HAPPY」の文字を2段に表してなる商標を引用している(甲7)。 上記引用自体が請求人のこれまでの主張と全く相反するもので、「形容詞」を主体として考えられており、商標の主体である「名詞」の「Teddy Bear」については何ら考慮がされていないことに問題があった。 被請求人は、「Happy」のみを分離抽出することは妥当性を欠く旨の請求人の考えと一致する意見を述べ、審査官の判断が誤っていることを意見書で指摘しており(甲8)、元々、本件商標の審査自体が誤ったものである。 (6)被請求人の苦悩 上記の審査官の誤った判断について、被請求人は「Happy」との合成語を38件も羅列し、反論したことは、「Happy」が単に他の言葉の軽い飾りにしかすぎない存在であることを逆に証明している。 (7)正当な類似性の指摘 本来ならば、本件商標の主体は「Teddy Bear」であり、「Happy」はそれに付随した軽い「形容詞」にすぎないものであるから、請求人の「登録商標」との類似関係を指摘するべきであったはずである。 そうでなく、被請求人は、逆に「Teddy Bear」を主体として合成語の存在を列挙し、本件商標の登録の正当性を主張すべきものであったと思われる。 しかし、請求人が調査したところ、「Happy」のような「形容詞」との合成語の登録商標を発見することはできなかった。 特に、第28類においては合成語だけの登録商標は、請求人の3件以外存在しない。 (8)本件商標の「Teddy Bear」合成語としての登録は不適切である。 請求人は、本件商標とほとんど一緒の「Teddy Bear」との「合成語」の登録を得ている(甲9)。 それらは全て請求人所有の「Teddy Bear」の単独の登録商標(計87件)を所有した上で、その「類似商標」として登録を得ているものだと思われる。 本件商標の審査結果(甲8)は、計38件の判断の全てを根底から覆すものであり、その審査基準はあくまでも「Teddy Bear」の登録商標を主体とし、それらの「形容詞」や修飾語については全く評価されないものであったはずである。 「Teddy Bear」との合成語は、あくまで「登録商標」を基本とし、それに軽い「形容詞」を合成したものしか認めた例がない。 以上の理由で、本件商標の審査判断については、他の多くの審査官の判断と異なっているため、本件商標の審査の判断が誤ったものである。 2 むすび したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第11号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 被請求人の背信行為が無効理由であるとの主張について (1)被請求人に背信行為があるとの主張について 請求人は、被請求人にはビジネス上の背信行為があるから、本件商標が無効であるとの主張をしているが、被請求人は以下のとおり、背信行為を行っていないことから請求人の主張は根拠がない。 ア 被請求人が証拠として提示するメール(甲4)について、どのメールの文言が「故意に不利な条件を提示した」ことに該当するのか明示されておらず、主張の根拠が不明瞭である。 イ 商標権のライセンス交渉においては、お互いに契約条件を提示し、合意に到達するようにお互いに交渉するのが通常の一般的なビジネス行為であり、提示した条件が異なっているから、又は、合意に達しなかったからといって、必ずしも「故意に契約不成立を目的とする悪質なやり方」であるということはできない。 本事案の場合、2015年10月20日付けの被請求人から請求人に対するメールにおいて、被請求人が希望するライセンス条件を提示し、それに対して、2016年3月8日付けのメールにおいて請求人が希望するライセンス条件を提示し、その条件提示に対して、2016年8月2日のメールによって、被請求人からのカウンター条件を提示したという経緯である。 その結果、ライセンス交渉がまとまらなかったのであるから、これらのメールのやり取りは通常のライセンス交渉であり、特段、故意に契約不成立を目的としたものではない(甲4)。 よって、被請求人は、請求人が主張する背信行為は一切行っていない。 (2)請求人の所有する商標権等を侵害しているとの主張について 請求人は、「被請求人が、請求人に無断で請求人の所有する商標権等を侵害しながら、テディベアぬいぐるみ人形商品やアクセサリー商品等の製造・販売を継続し、また、商品販売宣伝に『Teddy Bear』の文字を使用している」と主張しているが、被請求人は、本件商標に係る指定商品に、本件商標を使用しており、請求人が主張するように「Teddy Bear」の文字を単独で使用しているわけではない(乙1)。 さらに、請求人は、指定商品を「熊のぬいぐるみ」とする商標権「Teddy Bear」を所有していないから、当該商品に商標権「Teddy Bear」をライセンスする権限は有していない。 よって、被請求人が請求人所有の商標権を侵害しているとの主張は根拠がない(乙3〜乙5)。 (3)以上のように、被請求人は、侵害行為に該当する行為は行っていないことから、請求人が主張するような背信行為は一切行っていない。 よって、請求人の、被請求人の請求人に対する「ビジネス」面での背信行為があり、信義にもとるとの主張は、根拠がないことが明らかである。 (4)商標法第46条には、背信行為を無効理由とするような規定はないから、請求人の被請求人の背信行為が本件商標に関する無効理由となるとの主張には根拠がない。 2 本件商標が指定商品中の第28類について請求人保有の登録商標と類似しており無効であるとの主張について (1)請求人の主張する無効理由 請求人は、本件商標の指定商品中、第28類「熊のぬいぐるみ」は、請求人が保有する第28類を指定商品とする28類引用商標1及び28類引用商標2と指定商品が同一であり、商標も類似していることから、無効理由を有していると主張している。 しかしながら、28類引用商標2のうち引用商標8については、その指定商品が本件商標とは類似ではなく、明らかに無効理由とはならないから、この答弁書の対象からは除外する(乙7)。 (2)結合商標の類否判断について 本件商標「Happy Teddy Bear」は、「Happy」「Teddy」「Bear」という3つ英単語からなる結合商標である。また、請求人が保有し、類似と主張している商標についても、同様にいくつかの英単語からなる結合商標である。 このような結合商標の類否の判断については、判例が「商標の類否判断は、全体観察が原則だけれども、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないときには、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される場合がある」(リラ宝塚事件(最判昭和38年12月5日(昭和37年(オ)第953号)民集17巻12号1621頁、)、そして、「一部を抽出して類否を判断することは、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き許されない」(つつみのおひなやっこや事件(最判平成20年9月8日(平成19年(行ヒ)第223号民集228号561頁)と判示している。 すなわち、結合商標の類否の判断は、<a>原則、全体観察で行うが、<b>結合商標が取引上不可分的に結合していない場合には、要部を抽出し分離観察が可能であり、<c>取引上不可分的に結合している場合は、原則どおり要部を抽出し分離観察を行うことはできないが、この場合であっても、<i>商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、<ii>それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合にだけは分離観察をすることができる、と判示している。 そして、商標の類否は、こうして商標の要部を認定した後に、要部同士の外観、称呼、観念の対比によって、判断される。 (3)本件商標の要部について 本件商標についてみると、本件商標「Happy Teddy Bear」は、構成として、次のような特徴をもっている。 ア 同一の書体、同一の大きさをもって軽重の差なく構成されており、全体として外親上もまとまりよく一体不可分に表現されている。 イ 全体の構成音数が拗音を1音と数えても8音と格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼される。 ウ さらに、本件商標の構成中、「Happy」の部分は英語で「幸福な」「愉快な」を意味し、「Teddy Bear」の部分は英語で熊のぬいぐるみを表していることは、よく知られている(乙2)。 そして、「Happy」が意味する「幸福な」「幸せな」という観念が、「Happy」の語に連続して表記されている「Teddy Bear」の意味する熊のぬいぐるみと無理なく自然に結びつくので、本件商標「Happy Teddy Bear」と接した取引者、需要者は直ちに「幸福なテディベア」「幸せな熊のぬいぐるみ」という全体としてまとまりのある一つの観念を想起する。このように全体としてまとまりのある一つの観念が想起される以上、そこから分断された称呼が生じるとは考えるのは不自然であるから、本件商標から一連不可分の「ハッピーテディベア」の称呼のみが生じるのは明らかである。 エ また、本件商標を分離して観察しなければならない特段の事情、例えば、「Teddy Bear」の部分が、取引者、需要者に対して第28類の指定商品である「熊のぬいぐるみ」との関連において出所識別標識として強く印象を与えるものと認められるような場合であるが、「Teddy Bear」部分は指定商品「熊のぬいぐるみ」との関連では普通名称となっていることから、識別力を有しておらず、また、「Happy」の部分からも出所識別標識としての称呼、観念が生じることから、分離観察しなければならない特段の事情はない(乙5)。 以上のことから、本件商標の要部は「Happy Teddy Bear」の全体であって、請求人が主張するような「Teddy Bear」部分ではないことが明らかである。 (4)請求人が類似と主張する請求人所有の登録商標の要部について 請求人が本件商標と類似であると主張する商標のそれぞれについて要部を特定すると、まず、引用商標1の要部についてみると、商標の構成としては「ONDORI−SHA’S」という英文字が上段に横書きに一連に書かれ、当該英文字の下部に英文字「Teddy Bear」が横書きで一連に記載される構成となっている。そして、この商標の要部については、昭和60年審判第14797号の拒絶査定審判における審決が判断しており、当該審決によると、「Teddy Bear」の文字は、熊のぬいぐるみ(玩具)の意味を有する英語として広く親しまれているものであって、単に商品の普通名称を認識させるにすぎないものであるばかりでなく、玩具業界では商品「縫いぐるみのおもちゃの熊」を表示するためのものとして「Teddy Bear」の語が普通に用いられているところである。かかる事情よりみれば、本件商標中「Teddy Bear」の文字が自他商品識別標識として看者の印象に残り、独立して商品の選別に資することができるものとは認め難く、結局、本件商標は「オンドリシャ」あるいは「オンドリシャテツデイーベア」の称呼のみを生じるものとみるのが相当である、と判断している。 したがって、当該商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」(引用商標1)の「Teddy Bear」部分は、指定商品「熊のぬいぐるみ」については識別力を有しないので、本件商標の要部は、「ONDORI−SHA’S」部分、又は「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の商標全体であると判断している(乙5)。 同じ理由から、請求人が28類引用商標1に分類している登録商標「JASS INTERANATIONAL/TeddyBear」(引用商標2〜引用商標4)の要部は、「JASS INTERNATIONAL」部分、又は「JASS INTERANATIONAL/TeddyBear」の全体である。 「MY Teddy Bear(MY TEDDY BEAR)」(引用商標5、引用商標6)の要部は、「MY」部分に識別力はないので、「MY Teddy Bear(MY TEDDY BEAR)」の商標全体である。 次に、同じ理由から、請求人が28類引用商標2に分類している登録商標の要部は、「I LOVE TEDDY BEAR」(引用商標7)の要部は「I LOVE」部分、又は「I LOVE TEDDY BEAR」部分である。 「HELLO TEDDY BEAR」(引用商標9)の要部は、「HELLO」部分、又は「HELLO TEDDY BEAR」部分である。 「TEDDY BEAR CLUB」(引用商標10)の要部は、「CLUB」又は「TEDDY BEAR CLUB」全体である。 「ROYAL TEDDY BEAR」(引用商標11)の要部は、「ROYAL」又は「ROYAL TEDDY BEAR」部分である。 「TEDDY BEAR WORLD」(引用商標12)の要部は、「WORLD」又は「TEDDY BEAR WORLD」部分である (5)本件商標と請求人が類似すると主張する登録商標との類否について ア 引用商標1との類否について 本件商標の要部は、上記で述べたとおり「Happy Teddy Bear」の全体である。 一方、引用商標1「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の要部は、「ONDORI―SHA’S」部分、又は「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の商標全体である。 そして、両商標の類否についてみると、称呼については、本件商標からは、一連の「ハッピーテディベア」の称呼のみが生じ、一方、引用商標1からは、「オンドリシャ」、あるいは「オンドリシャテツデイーベア」の称呼が生じることから、取引者、需要者は、本件商標と引用商標1とを明瞭に聞き分けることができる。 また、外観については、本件商標と引用商標1とは、本件商標においては、商標の語頭に「Happy」という大文字で始まる文字があり、引用商標1は、「ONDORI」という文字で始まることから明らかに区別できる。 さらに、観念については、本件商標が「幸福なテディベア」「幸せな熊のぬいぐるみ」という全体としてまとまりのある一つの観念を生じるのに対して、引用商標1からは、全体として「雄鶏社の」又は「雄鶏社の熊のぬいぐるみ」といった観念を想起させることから、両商標の観念は明らかに異なっている。 したがって、本件商標と引用商標1とは、称呼、外観、観念のいずれにおいても異なることから非類似である。 イ 引用商標2ないし引用商標4との類否について 本件商標の要部は、「Happy Teddy Bear」の全体である。一方、「JASS INTERANATIONAL/TeddyBear」(引用商標2〜引用商標4)の要部は、「JASS INTERNATIONAL」部分、又は「JASS INTERANATIONAL/TeddyBear」の商標全体である。 そして、これらの商標の類否についてみると、称呼については、本件商標からは、一連の「ハッピーテディベア」の称呼のみが生じ、一方、引用商標2ないし引用商標4からは、「ジャスインターナショナル」あるいは「ジャスインターナショナルテデイーベア」の称呼が生じることから、取引者、需要者は、本件商標と引用商標2ないし引用商標4とを明瞭に聞き分けることができる。 そして、外観については、本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは、本件商標の語頭は「Happy」という大文字で始まり、引用商標2ないし引用商標4は、「JASS」という文字で始まり、二段書であることもあり、明らかに区別できる。 さらに、観念については、本件商標が「幸福なテディベア」「幸せな熊のぬいぐるみ」という全体として、まとまりのある一つの観念を生じるのに対し、引用商標2ないし引用商標4からは、全体として「ジャスインターナショナル社関連の」、又は「ジャスインターナショナル社と関連する熊のぬいぐるみ」といった観念を想起させることから、両商標は明らかに区別される。 したがって、本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは、称呼、外観、観念のいずれにおいても異なることから非類似である。 ウ 引用商標5及び引用商標6との類否について 本件商標の要部は、「Happy Teddy Bear」の全体である。一方、引用商標5及び引用商標6の要部は、「MY」部分に識別力がないことから「MY Teddy Bear(MY TEDDY BEAR)」の商標全体である。 そして、これらの商標の類否についてみると、称呼については、本件商標からは、一連の「ハッピーテディベア」の称呼のみが生じ、一方、引用商標5及び引用商標6からは、「マイテデイベア」の称呼が生じることから、取引者、需要者は、本件商標と引用商標5及び引用商標6とを明瞭に聞き分けることができる。 また、外観については、本件商標においては、商標の語頭に「Happy」という大文字で始まる文字があることと引用商標5及び引用商標6には、商標の語頭に「MY」という文字があることによって、明らかに区別できる。 さらに、観念については、本件商標が「幸福なテディベア」「幸せな熊のぬいぐるみ」という全体としてまとまりのある一つの観念を生じるのに対して、引用商標5及び引用商標6は、全体として「私の熊のぬいぐるみ」といった観念を想起させることから、両商標は明らかに区別される。 したがって、本件商標と引用商標5及び引用商標6とは、称呼、外観、観念のいずれにおいても異なることから非類似である。 エ 引用商標7、引用商標9ないし引用商標12との類否について 本件商標の要部は、「Happy Teddy Bear」の全体である。 一方、引用商標7の要部は、「I LOVE」部分、又は「I LOVE TEDDY BEAR」部分全体、引用商標9の要部は、「HELLO」部分、又は「HELLO TEDDY BEAR」部分全体、引用商標10の要部は、「CLUB」部分、又は「TEDDY BEAR CLUB」部分全体、引用商標11の要部は、「ROYAL」部分、又は「ROYAL TEDDY BEAR」部分全体、引用商標12の要部は、「WORLD」部分、又は「TEDDY BEAR WORLD」の全体である。 そして、これらの商標の類否についてみると、称呼については、本件商標からは、「ハッピーテディベア」の称呼のみが生じ、一方、引用商標7からは「アイラブ」又は「アイラブテデイベア」、引用商標9からは「ハロー」又は「ハローテデイベア」、引用商標10からは「クラブ」又は「テデイベアクラブ」、引用商標11からは「ロイヤル」又は「ロイヤルテデイベア」、引用商標12からは「ワールド」又は「テデイベアワールド」の称呼が生じることから、取引者、需要者は、本件商標と上記各引用商標の称呼とを明瞭に聞き分けることができる。 また、外観については、本件商標においては、商標の語頭に「Happy」という大文字で始まる文字があり、引用商標7は「I LOVE」の文字、引用商標9は「HELLO」の文字、引用商標10は「TEDDY」の文字、引用商標11は語頭に「ROYAL」の文字、引用商標12は「TEDDY」の文字から始まっていることから、取引者、需要者は明らかに区別できる。 さらに、観念については、本件商標が「幸福なテディベア」「幸せな熊のぬいぐるみ」という全体としてまとまりのある一つの観念を生じるのに対して、引用商標7からは「愛する」又は「熊のぬいぐるみを愛している」、引用商標9からは「こんにちは」又は「こんにちは、熊のぬいぐるみ」、引用商標10からは「熊のぬいぐるみに関する人の集まるところ(クラブ)」、引用商標11からは「威厳のある、王らしい、豪華な」又は「威厳のある熊のぬいぐるみ、豪華な熊のぬいぐるみ」、及び引用商標12からは、「世界」又は「熊のぬいぐるみの世界」といった観念を想起させることから、本件商標と上記各引用商標は明らかに区別される。 したがって、本件商標と引用商標7、引用商標9ないし引用商標12とは、称呼、外観、観念のいずれにおいても異なることから非類似である。 よって、本件審判には、請求人が主張するような無効理由は存在しないことが明らかである。 オ 上記のとおり、請求人の「総合的に考えると本件商標が登録になる余地はなかった」との主張は、根拠がないことが明らかである。 3 本件商標の主体が「Teddy Bear」であるとの主張について 請求人は、本件商標は「Teddy Bear」という英文字に形容詞の「Happy」が付属した合成語であり、「Happy」は単なる形容詞であることから、主体は「Teddy Bear」部分であると主張する。 しかしながら、このような2つ以上の単語が組み合わされた結合商標の要部(請求人は「主体」という言葉を使っているが、以下「要部」と表現する。)の認定については、判例や審決が示している。 判決に従うと、本件商標の要部については、指定商品「熊のぬいぐるみ」について「Teddy Bear」部分は識別力がなく、また「Happy」部分を分離して観察すべき合理的な理由もないので一連不可分の商標として扱うべきであることから、本件商標の要部は「Hapy Teddy Bear」の全体である。 よって、請求人の本件商標の要部が「Teddy Bear」部分であるとの主張には全く根拠がないことが明らかである。 4 請求人の登録商標の主体が「Teddy Bear」であるとの主張について 請求人は、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」「JASS INTERNATIONAL/TeddyBear」についても、会社名の固有名詞との合成語であるから主体は「Teddy Bear」で部分であると主張している。 しかしながら、結合商標の要部の認定は、判例や審決が示しており、それらに従って、要部を認定すると、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の要部は「ONDORI−SHA’S」部分、又は「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の全体であり、「JASS INTERNATIONAL/TeddyBear」の要部は「JASS INTERNATIONAL」部分又は「JASS INTERNATIONAL/TeddyBear」部分である。 よって、請求人の商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」「JASS INTERNATIONAL/TeddyBear」の要部は「Teddy Bear」部分であるとの主張は根拠がない。 また、請求人は、「Teddy Bear」はぬいぐるみ人形の名前として、一つの言葉として100年以上前の明治時代から日本国内で知らない人がいないほど有名であり、そのために本件商標は、「Teddy Bear」に「Happy」が付属して合成された言葉にすぎないから、本件商標の主体は「Teddy Bear」であると主張している。 しかしながら、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の拒絶査定不服審判に関する審決(乙6)が、「Teddy Bear」という文言は指定商品「熊のぬいぐるみ」については普通名称化し、識別力がないということを示しており、「Teddy Bear」は要部にはなり得ないことを示している。 よって、「Teddy Bear」部分が請求人の保有する登録商標の要部であるとの請求人の主張には根拠がない。 5 その他、第14類及びその他の分類において「TeddyBear」の商標登録について、請求人が商標登録を受けていることを主張するが、本件審判において請求人が無効を主張する第28類とは関係がなく、本件審判の無効理由とはならない。 6 請求人の「熊のぬいぐるみ人形」の権利に関する主張について 請求人は、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」について、請求人が雄鶏社から譲渡を受けたものであること、及び商標「Teddy Bear」は、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の存在によって商標登録ができなかったと主張し、本件商標は、同じ理由で登録されるべきではなかったにもかかわらず登録されていることから無効理由があると主張している。 しかしながら、商標「Teddy Bear」が、指定商品「熊のぬいぐるみ」について商標登録できないのは、当該指定商品との関係において、「Teddy Bear」という文言が普通名称化しているから登録できないのであって、商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の存在があるからではない(乙6)。 よって、請求人が商標「テディベア」の出願をしても登録できないのは商標「ONDORI−SHA’S/Teddy Bear」の存在によるものであるとの主張は明らかに根拠がない。 さらに、請求人は、本件商標の審査判断が社会通念を破壊して、ぬいぐるみ業界の秩序を揺るがすものとなり、各社への混乱を生じさせていると主張しているが、請求人は、この主張についての証拠は何ら提示していないから、このような事実が生じているかどうかについては明らかではない。 仮に、上記のような事実があったとしても、その事実が本件商標の無効理由となる根拠が不明瞭である(商標法第46条第1項)。 よって、本件商標の無効理由とはなり得ない。 7 請求人の本件商標の登録審査は誤りであるとの主張について (1)請求人は、本件商標の審査において、次の3つの点を理由に審査が誤っていると主張している。 ア 拒絶理由通知書において、3つの引用商標を指摘しているが、商標の主体である「Teddy Bear」が何ら考慮されていないこと、 イ また、被請求人の意見書における反論において「Happy」との合成語を38件も羅列していることは審査官の拒絶理由とは全く無関係のものであったにも関わらず登録を認めていること、 ウ 本件商標の主体は「Teddy Bear」であり請求人が保有する登録商標との類似を指摘すべきであったにもかかわらず指摘していないこと。 (2)しかしながら、拒絶理由通知は、本件商標「Happy Teddy Bear」の「Teddy Bear」という文字は、指定商品「熊のぬいぐるみ」との関係では識別力がないことから、本件商標の要部を「Happy」部分であると認定し、当該要部「Happy」と類似する3件の引用商標を指摘して、拒絶理由として通知したものである。これに対し、被請求人が意見書によって、本件商標の要部は「Happy」ではなく、「Happy Teddy Bear」全体であると反論し、同様に商標全体を要部として判断されている例を38件挙げて立証したものである。その結果、本件商標の要部が「Happy」ではなく「Happy Teddy Bear」全体であると認定し、登録が認められたものである(甲7、甲8)。 そうすると、本件商標の要部は、請求人が主張するように「Teddy Bear」部分ではなく、「Happy Teddy Bear」全体である。 よって、審査において、3件の引用商標が指摘されたことは、「Teddy Bear」部分が識別力を有しないことを考慮したからであって、誤りではない。また、被請求人の意見書は、「Teddy Bear」部分が識別力を有しないことを前提として要部の認定について反論したものである。さらに、本件商標の要部が「Happy Teddy Bear」であることから、請求人保有の登録商標とは非類似であり、指摘する必要はないものであった。 したがって、上記(1)アないしウの3つの理由から本件商標の審査が誤っているとの請求人の主張はすべて根拠がないことが明らかである。 8 第28類においては「合成語」だけの商標は存在しないとの主張について 請求人は、第28類においては、合成語だけの登録商標は請求人が有する3件以外は存在しないと主張しているが、合成語としての商標が存在しないことが本件無効審判において、商標法第46条第1項に規定するいずれの無効理由に該当するのかが不明瞭である。すなわち、これは、合成語として、指定商品との関係において識別力があれば登録が認められ、識別力がなければ登録が認められないということを意味しているだけであって、本件無効審判の無効理由とは無関係である。 よって、合成語だけの登録商標が存在しないことが本件商標の無効理由にはなり得ないことは明らかである。 9 本件商標の「Teddy Bear」の合成語としての登録は不適切であるとの主張について 請求人は、本件商標とほとんど一緒の「Teddy Bear」との合成語を結合商標として登録を受けているが、それは請求人が登録商標「TeddyBear」を所有していることから、その類似商標として登録を受けているものだと思われると主張している。 しかしながら、本件商標について、「Teddy Bear」部分が指定商品「熊のぬいぐるみ」との関係では識別力がないということ、また、本件商標の要部は、「Happy Teddy Bear」全体であると判断されて登録が認められたのであるから、請求人が上記結合商標の登録を受けている事実が、本件商標の無効理由とどのような関係になっているのかは不明瞭である。 また、商標が登録されるかどうかの審査は、商標ごとになされるので、請求人がこれらの合成語(結合商標)の登録を受けているということは、本件商標が無効理由を有するかどうかとは無関係であり、本件商標の無効理由とはなり得ない。 10 結論 以上のように、本件商標に無効理由は存在しないから、無効審判の請求は根拠がないことは明らかである。 第5 当審の判断 1 本件審判の請求について 請求人は、審判請求書においては、本件商標の登録無効の事由について根拠条文を明示していないが、請求人は、本件商標は、請求人に対する「ビジネス」面での背信行為により本件商標の登録を無効にすべき旨及び本件商標は、請求人の所有する登録商標の「類似範囲」であり、無効にすべきものである旨主張し、引用商標を挙げていることからすると、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第11号に該当することを理由にして、同法46条1項1号に基づき商標登録の無効を主張しているものと解することができる。 そして、この点につき、被請求人も、審判事件答弁書において、請求人は本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第11号に該当すると主張しているものと善解し、実質的に答弁を行っている。 また、当審の「根拠条文を明確にするよう求めた」審尋に対し、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同項第11号に該当すると回答しているから、本件審判の請求の理由につき要旨を変更するものとも解されない。 これらの事情を考慮すれば、本件審判の請求の理由については、上記のとおりのものとして、以下検討する。 2 請求の利益について 請求人が本件審判を請求することについて、請求人が利害関係を有することに争いはないから、以下、本案に入って審理する。 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「Happy Teddy Bear」の欧文字を標準文字で表してなるところ、構成各文字は、いずれも同書、同大で表され、外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、いずれかの文字部分が、殊更、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいい難い。 また、構成文字全体から生じる「ハッピーテディベア」の称呼も格別冗長でもなく、無理なく一連に称呼されるものである。 そして、本件商標の構成中の「Teddy Bear」の文字は、「熊のぬいぐるみの一種」の意味を有する平易な英語(広辞苑 第7版)であり、その指定商品「熊のぬいぐるみ」との関係においては、自他商品識別標識としての機能を有しないか極めて弱いというべきであるものの、本件商標は、上記のとおり、外観上まとまりよく一体的に表されており、その構成中の「Happy」の文字が、「幸福」の意味を有する平易な英語(同上)であって、構成文字全体として「幸福な熊のぬいぐるみ」といった意味合いを容易に理解させるものであることからすれば、一体不可分のものとして認識し、把握されるとみるのが相当である。 してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ハッピーテディベア」の称呼のみを生じ、「幸福な熊のぬいぐるみ」の観念を生じるものである。 (2)引用商標について ア 引用商標1について 引用商標1は、別掲1のとおり、「ONDORI−SHA’S」(構成中の「O」はやや左に傾いている。以下同じ。)の欧文字と「Teddy Bear」の欧文字を上下2段に表してなるものである。 そして、引用商標1の構成中、「ONDORI−SHA’S」の文字は、一般の辞書等に掲載がなく、一種の造語と理解されるものであり、また、「Teddy Bear」の文字は、上記(1)と同様に、その指定商品「縫いぐるみのおもちゃの熊」との関係においては、自他商品識別標識としての機能を有しないか極めて弱いというべきものであるから、当該文字部分からは、出所識別標識としての称呼、観念は生じないものというのが相当である。 そうすると、引用商標1は、その構成文字全体から、「オンドリシャテディベア」又は「オンドリシャ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標2は、別掲2のとおり、「TeddyBear」の欧文字の上部に、当該文字の4分の1程度の文字で「JASS INTERNATIONAL」の欧文字を書してなるものである。 そして、引用商標2の構成中、「JASS INTERNATIONAL」の文字は、一般の辞書等に掲載がなく、一種の造語と理解されるものであり、また、「TeddyBear」の文字は、上記(1)と同様に、その指定商品「縫いぐるみのおもちゃの熊」との関係においては、自他商品識別標識としての機能を有しないか極めて弱いというべきものであるから、当該文字部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じないものというべきである。 そうすると、引用商標2は、その構成文字全体から、「ジャスインターナショナルテディベア」又は「ジャスインターナショナル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 引用商標3ないし引用商標13について 本件商標の登録出願の日は、前記第1のとおり、平成30年4月20日であるのに対し、引用商標3ないし引用商標12の登録出願の日は、前記第2の3ないし12のとおり、平成31年3月18日(引用商標3)、同月20日(引用商標4、引用商標5)、同月22日(引用商標6、引用商標9、引用商標10、引用商標11、)、平成30年10月3日(引用商標7)、平成31年3月26日(引用商標8、引用商標12)であるから、引用商標3ないし引用商標12は、本件商標より後に登録出願されたものである。 また、引用商標13の登録出願の日は、前記第2の13のとおり、平成31年3月20日であり、かつ、当該出願は、令和3年1月18日に拒絶査定され、その拒絶が確定している。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標1との類否について 本件商標と引用商標1とを比較するに、外観においては、「Happy」の文字及び「ONDORI−SHA’S」の文字の有無に明らかな差異を有するものであるから、両者は、明確に区別できるものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる「ハッピーテディベア」の称呼と引用商標1から生じる「オンドリシャテディベア」又は「オンドリシャ」の称呼とは、音数及び音構成において明らかな差異を有するから、両者は、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念においては、本件商標からは「幸福な熊のぬいぐるみ」の観念を生じるのに対し、引用商標1は、観念を生じないものであるから、両者は、相紛れるおそれはないものである。 してみれば、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼、観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない、非類似の商標というべきである。 イ 本件商標と引用商標2との類否について 本件商標と引用商標2とを比較するに、外観においては、「Happy」の文字及び「JASS INTERNATIONAL」の文字の有無に明らかな差異を有するものであるから、両者は、明確に区別できるものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる「ハッピーテディベア」の称呼と引用商標2から生じる「ジャスインターナショナルテディベア」又は「ジャスインターナショナル」の称呼とは、音数及び音構成において明らかな差異を有するから、両者は、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念においては、本件商標からは「幸福な熊のぬいぐるみ」の観念を生じるのに対し、引用商標2は、観念を生じないものであるから、両者は、相紛れるおそれはないものである。 してみれば、本件商標と引用商標2とは、その外観、称呼、観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない、非類似の商標というべきである。 ウ なお、請求人は、請求人の所有する上記各引用商標の主体(要部)は、あくまで大きく書かれている「Teddy Bear」である旨及び「Teddy Bear」は「ぬいぐるみ人形」の名前として一つの言葉として100年以上前の明治時代から我が国で知らない人がいないほど有名であり、本件商標は当該「Teddy Bear」の文字に「Happy」の文字を付属して合成された言葉にすぎず、本件商標の主体は「Teddy Bear」である旨主張しているが、「Teddy Bear」の文字が、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして著名性を有していることを裏づける証拠の提出はなく、ほかに、本件商標において、「Happy」の文字部分を捨象すべき事情も見いだせない。 したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。 (4)小括 上記(3)ア及びイのとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、その指定商品について比較するまでもなく、本件商標は、引用商標1及び引用商標2との関係において商標法第4条第1項第11号に該当しない。 また、上記(2)ウのとおり、引用商標3ないし引用商標13は、本件商標より先に登録出願されたものではなく、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標」ではないから、本件商標は、引用商標3ないし引用商標13を理由として商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえない。 なお、請求人は、第14類の商品を指定商品とする登録商標として、審判請求書中に、「Teddy Bear(TEDDYBEAR)」の文字からなる、又は当該文字を構成中に含む登録第2096663号ほか5件(引用商標14)及び請求人所有の登録商標として、「TeddyBear」の文字からなる登録第6262645号ほか37件の登録商標(引用商標15)を記載しているが、上記各引用商標を商標法第4条第1項第11号の引用とする主張は見いだせず、また、引用商標14及び引用商標15は、「Happy Teddy Bear」の文字からなる本件商標とは非類似の商標というべきものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)請求人は、被請求人が背信行為を行っている旨主張し証拠を提出しているところ、提出された証拠によれば、請求人とK社との間で、「TEDDY BEAR」の名称等に係る契約が平成21年9月から同27年8月末まで結ばれていたこと及び請求人と被請求人との間で、平成27年10月から同28年8月頃の期間に「TEDDY BEAR」に係るライセンス契約に関する交渉を行っていたことがうかがえる。 しかしながら、請求人とK社との上記契約及び請求人と被請求人との間のライセンス契約の交渉のいずれも、「Happy Teddy Bear」の文字からなる本件商標に係るものではないから、これらの証拠をもって、被請求人が請求人に対して背信行為を行ったということはできない。 なお、K社と被請求人との関係を具体的に裏づける証拠もない。 したがって、請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が請求人に対し何らかの背信行為を行ったものと認めることはできない。 (2)本件商標は、上記第1のとおりの構成からなり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、その出願の経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを認め得ることを具体的に示す証拠の提出もない。 (3)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第28類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第7号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1) 別掲2(引用商標2) 別掲3(引用商標3) 別掲4(引用商標4) 別掲5(引用商標5) (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
審理終結日 | 2021-10-06 |
結審通知日 | 2021-10-08 |
審決日 | 2021-10-27 |
出願番号 | 2018051128 |
審決分類 |
T
1
12・
261-
Y
(W28)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 馬場 秀敏 |
登録日 | 2019-09-13 |
登録番号 | 6179405 |
商標の称呼 | ハッピーテディベア、ハッピー、テディベア |
代理人 | 橘 祐史 |