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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y41
管理番号 1389639 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-08-06 
確定日 2022-05-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4845345号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4845345号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年7月7日に登録出願、第41類「献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」を含む、第16類、第25類、第32類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同17年1月24日に登録査定、同年3月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年8月27日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年8月27日から令和3年8月26日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、登録第4845345号商標の指定商品及び指定役務中、第41類『献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与』(以下「請求に係る指定役務」という。)についての登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用について
ア 「なでしこジャパン」という商標が、サッカー女子日本代表チームの愛称として、我が国で広く知られていることに関しては、争いがないところである。
例えば、サッカー男子日本代表であれば「森保ジャパン」等の「監督名」+「ジャパン」の愛称がつけられており、野球の日本代表であれば「侍ジャパン」の愛称がつけられている。
「なでしこジャパン」もその一つであり、サッカー女子日本代表の愛称として日本国内で著名である。
しかしながら、「なでしこジャパン」が著名な商標であることと、本件商標である二段併記で構成される「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」が、請求に係る指定役務で使用されていることとは別問題であり、少なくとも本件商標は、請求に係る指定役務に関して、使用しているとはいえない。
イ 本件商標は、二段併記であり、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の「なでしこジャパン」又は「NADESHIKO JAPAN」の標章を使用していると主張しているとおり(請求に係る指定役務での使用でないことは後述する。)、被請求人が、本件商標である二段併記の標章(なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN)を使用していないことに関しては争いがないものと思われる。
そして、二段併記の商標の使用に関して、審査便覧(甲4)には、5葉目に「(エ)その他社会通念上同一と認められる商標」として、例2に「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」と記載されている。
本件商標において上段の「なでしこじゃぱん」に関しては、「なでしこ」と「じゃぱん」の結合商標であるが、その文字は一種の造語であり、特定の観念を生じない。
本件商標の下段の「NADESHIKO JAPAN」も同様に、「NADESHIKO」と「JAPAN」の結合商標であるが、その文字は一種の造語であり、特定の観念を生じない。
なお、サッカー女子日本代表は、FIFA女子ワールドカップでも優勝した経験があり、その標章は著名であるため、サッカー女子日本代表のイメージに影響されやすいが、「NADESHIKO JAPAN」の文字自体は一種の造語であるため特定の観念が生じるものではない。
取消2020−300837の審決(甲3)において「・・・『なでしこジャパン』が『サッカー女子日本代表』の愛称であることは広く知られているので、当該愛称を平仮名と欧文字で表した、本件商標の上段及び下段の各文字は、ともに『サッカー女子日本代表』の観念を同一にするものといえるから、その一方の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる。」と判断されているが、「サッカー女子日本代表」の観念は、「なでしこじゃばん」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字自体から想起されるものではなく、「なでしこジャパン」という商標の使用によって後から付着した観念である。
したがって、「なでしこじゃばん」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字から「サッカー女子日本代表」の観念が生じるというのは誤りである。
この理論が成り立つのであれば商標が著名になればその観念が生じることとなってしまい、観念の概念が広くなりすぎてしまい妥当ではない。
例えば、「ニンテンドー」という文字は、造語であるため特定の観念が生じないが、この理論からいえば「ゲームの開発・製造・販売を行う日本の企業」という観念が生じることになる。
また、例えば「みかん」という名前の犬が著名になった場合、「みかん」の観念が「犬」になってしまう。しかし、「みかん」の観念は、「柑橘系の果物」であって「犬」ではない。
本件商標も同様に、「なでしこじゃばん」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字は造語であって特定の観念が生じるものではない。これらの商標に後から付着した「サッカー女子日本代表」というような観念が生じるとするのは妥当ではない。
したがって、上段と下段の商標はいずれも特定の観念を生じず、観念が同一ではないため、「なでしこじゃぱん」及び「NADESHIKO JAPAN」のいずれか一方の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とはいえず、本件商標の使用に該当しない。
また、本件商標の上段に記載された「なでしこじゃぱん」の文字の使用であっても本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当しないのであるから、被請求人が主張する平仮名から構成される「なでしこ」と片仮名から構成される「ジャパン」の結合商標である「なでしこジャパン」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用に該当しない。
ウ 本件商標の上段の「なでしこじゃぱん」が下段の「NADESHIKO JAPAN」の読み方を表しているとも考えられるが、この場合、仮に「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」と「NADESHIKO JAPAN」が社会通念上同一の商標と考えられたとしても、「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」と「なでしこジャパン」とが、社会通念上同一の商標とはいえない。
一般的に、二段表記の商標は、標準文字よりも登録が容易であるため、商標権の権利範囲や社会通念上同一の範囲も標準文字の場合と比べ狭く解釈されるべきである。
被請求人が「NADESHIKO JAPAN」を標準文字で商標登録出願及び商標登録せずに、あえて二段表記の「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」で商標登録出願及び商標登録しているのであるから、その社会通念上同一の範囲は、通常の標準文字である「NADESHIKO JAPAN」とその範囲は異にすべきであり、通常の標準文字よりも狭く解釈されるべきである。
したがって、本件商標と「なでしこジャパン」とは、社会通念上同一の商標とはいえない。
(2)被請求人の主張について
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、2019年フランスで開催されたFIFA女子ワールドカップにあわせて、サッカー女子日本代表の写真展が14自治体で開催された旨の報告内容である。
被請求人は、乙第1号証により、本件商標と社会通念上同一であると主張する「なでしこジャパン」の文字が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に使用されている旨を主張している。
しかしながら、乙第1号証からもわかるように、1枚目の写真では「なでしこジャパン大和市写真展」とタイトルが表示されており、2枚目の写真では「再び、世界のなでしこへ がんばれ!なでしこジャパン」とタイトルが表示されており、3枚目の写真ではタイトルすら表示されておらず、タイトルが一貫しておらず、指定役務「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」において、「なでしこジャパン」の商標が使用されているとはいえない。
また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表の愛称である。
つまり「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、写真展の対象である選手達を表すものであって「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」を表すものでなく、乙第1号証が示す「なでしこジャパン」の使用は商標的使用に該当しない。
また、取消2020−300837の審決(甲3)では「(6)小括」において「上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の通常使用権者である神奈川県大和市は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第41類『興業の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)』の範ちゅうに含まれる『写真展の開催』に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたことが認められる。」と判断されている。
したがって、本件取消審判では、「写真展の企画・連営又は開催を除く。」としており、乙第1号証は、本件商標の使用証拠には該当しない。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、2019年3月24日のFIFA女子ワールドカップの優勝トロフィーの特別展示後の「日本の女子サッカーの歩み〜around FIFA Women’s World Cups」というタイトルのトークショーの様子である。
被請求人は、乙第2号証により、本件商標と社会通念上同一であると主張する「なでしこジャパン」の文字が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に使用されている旨を主張している。
しかしながら、1枚目ないし3枚目の写真を見ても「なでしこジャパン」の表示はされておらず、トークショーのタイトルも「日本の女子サッカーの歩み〜around FIFA Women’s World Cups」であり、「なでしこジャパン」という商標のタイトルではなく、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」において、「なでしこジャパン」の商標が使用されているとはいえない。
また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表の愛称である。
つまり、「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、トークショーの対象である選手達を表すものであって「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」を表すものでなく、乙第2号証が示す「なでしこジャパン」の使用は、商標的使用に該当しない。
ウ 乙第3号証及び第6号証について
乙第3号証は、2018年11月11日に鳥取市営サッカー場バードスタジアムで行われたサッカー日本女子代表対ノルウェー女子代表の国際親善試合のチラシである。
被請求人は、乙第3号証により、「同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授、記念撮影が提供され、それらに際して、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『NADESHIKO JAPAN』が、使用されていることが理解できる。」と主張している。
また、乙第6号証は、「@jfa_nadeshiko」というアカウントのTwitterでの投稿であり、被請求人は「同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授が提供され、その際に本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『なでしこジャパン』が、使用されていることが理解できる。」と主張している。
しかしながら、まず、本件商標は、二段併記から構成される「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」であるため、本件商標と同一の商標はどこにも使用されていない。
また、被請求人が社会通念上同一であると主張する「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」は、乙第3号証に「NADESHIKO JAPAN(日本女子代表)×NORWAY(ノルウェー女子代表)」と記載されているとおり、また、乙第6号証に「なでしこジャパン×メキシコ女子代表」と記載されているとおり、サッカー女子日本代表を表すものであり、被請求人が主張する「フェイスペイントの教授、記念撮影の提供」を表す名称ではない。
また、これらの親善試合が「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」というイベントでもない。
仮にそのように解釈したとしても、その場合、役務は「スポーツの興行の企画・運営又は開催」であって、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」に該当するものではない。
さらに、被請求人は、乙第3号証及び乙第6号証から「フェイスペイントの教授」と主張しているが、乙第3号証には「フェイスペイント無料サービス バックスタンド側ブースエリアにあるフェイスペインティングコーナーで、お気に入りのフェイスペイントをGETしよう!※後半キックオフまで ※お1人様1枚まで(数量限定)」と記載されており、これは顔に貼るフェイスペイント(シール状のもの)を無料で提供するものであり、フェイスペイントを教えたりするものではなく、「フェイスペイントの教授」には該当しない。
そもそも大人数の来場者が予想されるのに、1人1人に対してフェイスペイントを教授するようなことは行われないし、また、実質的にできるものでもない。
これは乙第6号証のメキシコ女子代表との試合でも同様である。そして、このフェイスペイントのシールを無料配布するサービスは、なでしこジャパンの試合だけでなく、U−24等の他のサッカー日本代表の試合でも行われており(甲9)、なでしこジャパンの試合に限られるものでもない。
したがって、フェイスペイントのシールを無料配布するサービスは、被請求人が主張するような「フェイスペイントの教授」に該当するものでなく、また、「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」という名称のもと行われているイベントではない。
また、被請求人は、乙第3号証から「記念撮影の提供」と主張しているが、乙第3号証には「記念撮影ボード 記念撮影ボードの前で写真を撮ろう!運が良ければ、カラッペ・カララと一緒に撮影できるかも??」と記載されており、「写真撮影をする」というものではなく、「記念撮影ボード」が置いてあるだけであり、自ら(又は友人によって)撮影するというものであって、「記念撮影の提供(写真の撮影)」には該当しない。
また、被請求人も主張するように、「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」は、サッカー女子日本代表の愛称である。
つまり、「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、親善試合の選手達を表すものであって、乙第3号証及び乙第6号証が示す「NADESHIKO JAPAN」及び「なでしこジャパン」の使用は、商標的使用に該当しない。
エ 乙第4号証について
被請求人は、乙第4号証に基づいて、「同書証においては、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『なでしこジャパン』『NADESHIKO JAPAN』が、本件指定役務中の様々な役務との関係で使用されていることが窺い知れるものである」と主張しているが、具体的にどの指定役務に該当するか不明である。
また、本件商標は二段併記の「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」であって、「なでしこジャパン」又は「NADESHIKO JAPAN」と同一の商標ではない。
また、上記(1)で述べたように、「なでしこジャパン」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
また、乙第4号証に係る「朝日新聞サッカー応援イベント なでしこのちから」は、株式会社朝日新聞が提供するものであって被請求人(被請求人は後援者)が提供するものではなく、乙第4号証に係る内容は、被請求人の本件商標の使用に該当しない。
また、被請求人も主張するように、「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」は、サッカー女子日本代表の愛称である。
つまり、「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字が表すものは、サッカー女子日本代表のことであり、サッカー女子日本代表の選手達を表すものであって、乙第4号証が示す「なでしこジャパン」及び「NADESHIKO JAPAN」の使用は、商標的使用に該当しない。
これらのことは、乙第4号証2葉目に「出演 なでしこジャパン、高倉麻子監督、なでしこジャパンOG、・・・」と記載されていたり、「6月から開幕する大一番を控えたなでしこジャパンの選手たち、そして高倉監督が登壇。・・・」と記載されていることからも明らかである。
オ 乙第5号証について
乙第5号証に示す広告の内容は、「JFAユースプログラムリモートチアキッズ」というイベント名のイベントであり、オンラインでサッカー日本代表の選手の練習の映像などを見たりするイベントである。
被請求人は、乙第5号証を用いて、「本件商標と同一又は社会通念上同一の商標『なでしこジャパン』が、『興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)』の役務との関係で使用されていることが明白である。」と主張している。
しかしながら、まず、「なでしこジャパン」は本件商標と同一ではない。
そして、乙第5号証で広告されているイベントは、甲第10号証からもわかるように、イベント名は「JFAユースプログラムリモートチアキッズ」と明確に記載されており、「なでしこジャパン」ではない。
また、このイベントは、「なでしこジャパン」に限られるものでなく、甲第10号証からもわかるように他のサッカー日本代表でも行われているイベントである。
さらに、このイベントは「スポーツの興行」に関するものであり、本件不使用取消審判で請求する指定役務「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」には該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、乙第1号証ないし乙第6号証からは、本件商標である二段併記からなる「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」及びこれと社会通念上同一の商標が、請求に係る指定役務において使用されていないから、本件商標は、請求に係る指定役務において、取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)被請求人は、サッカー競技の普及及び振興を図り、国民の心身の健全な発達に寄与することを目的として設立された公益財団法人であって、本件商標「なでしこじゃぱん/NADESHIKO JAPAN」は、サッカー日本女子代表チームの愛称として我が国のみならず世界中で広く知られているものである。そして、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標は、下記のとおり、広範な役務との関係で実際に使用されている。
(2)乙第1号証は、2019年に日本各地で開催された、同代表チームの写真展を紹介する資料であるが、同書証からは、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の役務との関係で使用されていることが容易に理解できる。
(3)乙第2号証は、2019年3月24日に開催された、同チームの優勝トロフィーの特別展示会及びトークショーを紹介する資料であるが、同書証からも、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の役務との関係で使用されていることが容易に理解できる。
(4)乙第3号証は、2018年11月11日に開催された、サッカー日本女子代表チームとノルウェー女子代表チームとの国際親善試合に際して配布されたスタジアムガイドである。同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授、記念撮影が提供され、その際に、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「NADESHIKO JAPAN」が、使用されていることが理解できる。
(5)乙第4号証は、2019年5月25日に開催された、朝日新聞サッカー応援イベント「なでしこのちから」の紹介記事である。同書証においては、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」「NADESHIKO JAPAN」が、本件指定役務中の様々な役務との関係で使用されていることが窺い知れるものである。
(6)乙第5号証は、2021年4月に開催が企画された、サッカー日本女子代表チームのオンラインイベントに関する資料であるが、同書証からも、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」の役務との関係で使用されていることが明白である。
(7)乙第6号証は、2021年6月13日に催された、サッカー日本女子代表チームとメキシコ女子代表チームとの国際親善試合に際して、試合会場で実施されるイベントを告知する資料である。同書証からは、親善試合の観戦の来場者に対して、フェイスペイントの教授が提供され、その際に本件商標と同一又は社会通念上同一の商標「なでしこジャパン」が、使用されていることが理解できる。
(8)以上のとおり、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人又はその許諾を受けた者によって、請求に係る指定役務について使用されているから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び当事者の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人は、サッカー競技の普及及び振興を図り、国民の心身の健全な発達に寄与することを目的として設立された公益財団法人であり、「なでしこジャパン」は、サッカー日本女子代表の愛称として広く知られているものである。
(2)乙第5号証は、株式会社クレディセゾンのウェブサイトにおける「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」、「リモートチアキッズ参加者募集!」と題する広告である。
(3)当該広告の1葉目には、「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」について、「2020年3月を最後に代表戦から遠ざかっているなでしこジャパン。4月に開催される親善試合2試合は約1年ぶりの代表戦となり注目を集めています。4月11日行われる国際親善試合に合わせて、なでしこジャパンで活躍した宇津木瑠美さんを招いたオンラインイベントを実施いたします!多くのファン、サポーターが集まるイベントに参加して一緒に盛り上がりましょう。」と紹介されている。
(4)当該広告の2葉目には、当該イベントの情報等が四角囲いの中に記載されている。具体的には、四角囲いの前半に「日時 2021年4月11日(日)12:00〜13:00(予定)」、「主催 公益財団法人日本サッカー協会」、「実施方法 ライブでのオンライン配信(zoom)」、「人数および対象 小学1年生〜中学3年生のお子様20名様とその保護者様」、「イベント詳細 元なでしこジャパン代表選手とのトークセッションやリモートスタジアムツアー、ウォーミングアップ見学など、盛りだくさんのイベントに抽選で20名様をご招待いたします!」と記載されている。そして、当該四角囲いの後半に、当該イベントの「参加者募集」として、「エントリーはこちら」の文字の下に、募集期間と認められる日付「2021年4月1日(木)〜4月5日(月)」(審決注:曜日は黒丸の中に白抜きで表示されている。以下同じ。)が記載され、さらにその下に「セゾンカードをお持ちの方/Netアンサーへログイン」、「UCカードをお持ちの方/アットユーネット!へログイン」、「クレディセゾン公式Twitterはこちら ※クレディセゾン公式Twitterアカウントのフォロー&RTでも応募可能 当選のチャンスアップ!」と記載されている。
(5)当該広告の3葉目には、「【当選発表】」として「ご当選の方には、4/6(火)以降お電話またはメールまたはTwitterダイレクトメッセージにてご連絡いたします。」との記載があり、左下部に「株式会社クレディセゾン」が表示されている。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標
本件商標は、別掲のとおり、「なでしこじゃぱん」の平仮名と「NADESHIKO JAPAN」の欧文字を二段に表してなるものである。
そして、「なでしこジャパン」が「サッカー女子日本代表」の愛称であることは広く知られているので、当該愛称を平仮名と欧文字で表した、本件商標の上段及び下段の各文字は、ともに「サッカー女子日本代表」の観念を同一にするものといえるから、その一方の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる。
この点に関し、請求人は、「なでしこじゃばん」及び「NADESHIKO JAPAN」の文字は造語であって特定の観念が生じるものではなく、これらの商標に後から付着した「サッカー女子日本代表」という観念が生じるとするのは妥当ではない旨主張するが、商標の観念とは、商標自体が客観的に有する意味をいうのではなく、商標を見又は称呼することによりその商標を付した商品の需要者又は取引者が思い浮かべるその商標の意味をいうものと解するのが相当である(東京高裁昭和48年(行ケ)第61号)。そして、請求人も自認しているように、「なでしこジャパン」が「サッカー女子日本代表」の愛称であることは広く知られているので、本件商標の上段及び下段の文字からは、ともに「サッカー女子日本代表」の観念が生ずるものと認められる。
一方、上記1(2)(3)のとおり、乙第5号証の1葉目には、上段のタイトル部分と下段の説明部分に「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」(以下「使用商標」という。)が表示されているところ、構成中後半の「オンラインイベント」の文字部分は、提供される役務の質(「オンラインによるイベント」)を表すもので、自他役務の識別機能を有しないのに対し、構成中前半の「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)」の文字部分は、「(サッカー日本女子代表)」が「なでしこジャパン」を説明するために補足的に記載されたものと認められるから、冒頭の「なでしこジャパン」の文字部分が、使用商標において自他役務の識別機能を有するものであり要部といえる。
そして、「ジャパン」の片仮名は「じゃぱん」の平仮名の文字の表示を変更するものであって、ともに同一の称呼(「ジャパン」)及び観念(「日本」)を生ずるから、両者は社会通念上同一と認められる。
そうすると、使用商標の構成中、要部である「なでしこジャパン」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用役務
本件商標の使用に係る役務は、「トークセッション及びリモートスタジアムツアー等のオンラインによるイベントの開催」(乙5)であるところ、当該役務は、請求に係る指定役務中、第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」の範ちゅうに含まれるものである。
(3)使用時期
当該イベントの開催日は「2021年4月11日(日)」であり、当該イベントの広告(乙5)における参加者募集のエントリーの日付は「2021年4月1日(木)〜4月5日(月)」であることから、当該イベントの広告は、少なくとも要証期間内である、2021年4月1日(木)から4月5日(月)の間、クレディセゾン株式会社のウェブサイト上に掲載されていたものと認められる。
(4)使用者
当該イベントの広告(乙5)に記載されているとおり、当該イベントを主催したのは、「公益財団法人日本サッカー協会」であることから、商標権者である「公益財団法人日本サッカー協会」が、使用商標の使用者である。
(5)使用行為
当該イベントの広告における使用商標の使用(乙5)は、株式会社クレディセゾンのウェブサイトを通じてインターネット上で提供されたことから、「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の商標権者である公益財団法人日本サッカー協会は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」の範ちゅうに含まれる「トークセッション及びリモートスタジアムツアー等のオンラインによるイベントの開催」に関する広告を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一の商標を付して、株式会社クレディセゾンを利用して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたことが認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第5号証で広告されているイベントは、甲第10号証からもわかるように、イベント名は「JFAユースプログラムリモートチアキッズ」と明確に記載されており、「なでしこジャパン」ではない旨主張している。
しかしながら、甲第10号証とは異なり、乙第5号証の広告のタイトルは「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」、「リモートチアキッズ参加者募集!」であり、当該広告の1葉目には、「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」についての紹介もされていることから、乙第5号証で広告されているイベントの名称は「なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)オンラインイベント」であり、その要部は「なでしこジャパン」の文字部分にあること、上記2(1)のとおりである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(2)また、請求人は、乙第5号証の広告における「なでしこジャパン」の文字は、本件商標と同一の商標ではない旨主張している。
しかしながら、上記2(1)のとおり、本件商標の上段及び下段の各文字は、ともに「サッカー女子日本代表」の観念を同一にするものであるから、その一方の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められ、かつ、「ジャパン」の片仮名と「じゃぱん」の平仮名も社会通念上同一と認められるものであるから、使用商標の構成中、要部である「なでしこジャパン」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)さらに、請求人は、乙第5号証で広告されているイベントは「スポーツの興行」に関するものであり、請求に係る指定役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」には該当しない旨主張している。
しかしながら、上記2(2)のとおり、乙第5号証で広告されているイベントは、「トークセッション及びリモートスタジアムツアー等のオンラインによるイベント」であるところ、当該イベントの開催は、請求に係る指定役務中、第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」の範ちゅうに含まれるものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の商標権者が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。写真展の企画・運営又は開催を除く。)」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(本件商標)



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審理終結日 2022-03-23 
結審通知日 2022-03-28 
審決日 2022-04-12 
出願番号 2004062898 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y41)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 森山 啓
板谷 玲子
登録日 2005-03-11 
登録番号 4845345 
商標の称呼 ナデシコジャパン、ナデシコ 
代理人 塩田 尚也 
代理人 田中 尚文 
代理人 渡部 彩 
代理人 三好 豊 
代理人 本田 史樹 

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