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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W09
管理番号 1389507 
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-06-01 
確定日 2022-02-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第6146399号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6146399号商標(以下「本件商標」という。)は、「SooPii」の文字を標準文字で表してなり、平成30年8月7日に登録出願、第9類「プラグ・ソケットその他の電気接続具,太陽電池,蓄電池,ラジオ送受信機,ナビゲーション装置,テープレコーダー,携帯型メディアプレーヤー,ビデオカメラ,ヘッドホン,コンピュータ用マウス,USBフラッシュドライブ,読取り装置(データ処理装置),腕時計型携帯情報端末,自撮り棒(手持ち用一脚),データ処理装置用カプラー」を指定商品として同31年4月17日に登録査定、令和元年5月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、請求人の主張の全趣旨からすれば以下のとおりであり、これらをまとめて引用商標という。
なお、引用商標中、別掲1及び別掲2のとおり「SooPii」の文字をデザイン化したと思しき部分を、以下、単に「SooPii」の文字という。
1 中国における登録第23753929号商標
商標の構成:別掲1のとおり
指定商品:第9類「コンピュータ周辺機器,携帯電話機専用スタンド,イヤホーン,スピーカー用筐体,送電線用材料,プラグ・ソケットその他の電気接続具,充電式蓄電池,バッテリーチャージャー,自撮り棒(手持用一脚)」(請求人による翻訳)
登録日:2018年4月14日
2 使用商標
(1)商標の構成
ア 別掲2のとおり
イ 「SooPii」の文字を横書きしたもの
(2)使用商品
「ケーブル(移動通信装置),携帯電話用USBケーブル,家庭用小型扇風機,携帯電話用イヤホン」

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標はその登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するので、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人所有に係る中国の登録第23753929号商標は、本件商標の出願前に登録されていた(甲2)。
請求人は、中国における販売を行っており、販売額は大きなものであった(甲3)。平成30年4月17日及び18日のみで9000元を超える販売があったものである。
請求人は、多額の経費を用いてSooPiiの製品を展示した(甲4、甲5)。
請求人は、また、米国、インド、韓国、EUその他の地域においても、本件商標の出願前に、販売を行っていた。甲第6号証は韓国への販売実績である。
請求人は、本件商標の商標登録出願前に海外においても商標登録出願を行い、米国の登録第87647793号商標は、本件商標の商標登録出願前に登録されていた(甲7)。
以上のとおり、「SooPii」の商標を付した請求人の製品は、本件商標の商標登録出願前に広く知られていた。
本件商標は、「SooPii」の文字を標準文字で表してなるが、請求人は、その名称に含まれる「首佩」の発音に基づいて商標を考案し、中国、その他の国で出願したものである。すなわち、「SooPii」は請求人の考案した造語である。1個人である被請求人が偶然に同一の文字からなる商標を出願した可能性は小さい。特に、本件商標中の「P」が大文字でその周辺が小文字であることに鑑みれば、中国の登録第23753929号商標を模したものと考えられる。また、本件商標の指定商品は、中国の登録第23753929号商標に類似する。被請求人は中国に在住しており、中国における請求人のブランドを知悉していたと考えられる。
してみれば、本件商標は、日本で登録されていないことを奇貨として請求人のブランドにフリーライドする目的で出願されたものであり、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第19号について
商標法第4条第1項第19号は、商標登録の出願時において他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的で使用するものについては、商標登録を受けることができない旨規定したものである。
同号の趣旨は、先願登録主義(商標法第8条第1項)を採ることにより、商標使用者の業務上の信用の保護を図らんとする我が国商標法の下、いわゆる未登録商標であっても、需要者の間に広く認識されるに至った結果、相当程度の業務上の信用を獲得しているものについては、例外的に出願商標の登録を排除し、未登録商標の保護を認めていることにある。
(2)請求人提出の証拠(甲2〜甲7)について
ア 中国登録第23753929号公報(甲2)は、請求人の商標が、本件商標の出願日である平成30(2018)年8月7日より前の、平成30(2018)年4月14日に中国において商標登録されたことを示すものであるが、そもそも、請求人の商標が中国において登録されたという事実又は当該公報に掲載されたという事実だけでは、当該商標が中国の需要者の間に広く知られていたとは推定されない。
よって、当該公報からは、請求人の商標が本件商標の出願日前から中国において広く知られていた事実は確認できない。
イ 深▲せん▼増値税特別請求書(深▲せん▼増値税専用発票)(甲3 審決注:「▲せん▼」は漢字を置き換えていることを示す。以下同じ。)のうち、No 13258217の特別請求書(専用発票)は、請求日が平成30(2018)年4月17日、移動通信装置首佩SooPiiケーブル(以下、「同商品」という。)の販売数量が206個、売上の合計金額が3096.60元であったこと等を示すものであり、No 13258219の特別請求書(専用発票)は、請求日が平成30(2018)年4月18日、同商品の販売数量が421個、売上の合計金額が6321.00元であったこと等を示すものであるが、これらの特別請求書(専用発票)からは、同商品の販売開始期間、販売期間、販売地域、営業の規模(店舗数、営業地域等)等は確認できない。また、実際に取引された同商品について、請求人の商標の実際の使用態様も確認できない。
よって、これらの特別請求書(専用発票)からは、請求人の商標が中国の需要者の間にどの程度広く知られていたのかを推し量ることは困難である。
ウ 深▲せん▼増値税普通請求書(深▲せん▼増値税普通発票)(甲4)は、請求日が平成30(2018)年5月24日、展示会費が55062.00元であることを示すものであるが、この普通請求書(普通発票)からは、展示場の場所、展示日時、来場者数、請求人の商標を使用した商品の販売数量、売上高等は確認できない。また、実際に取引された商品についての請求人の商標の使用態様も確認できない。
よって、この普通請求書(普通発票)からは、請求人の商標が中国の需要者の間にどの程度広く知られていたのかを推し量ることは困難である。
エ 甲第5号証に係る写真は、売り場内において「SooPii首佩」や「SooPii」の商標を表示したパネルが設置されていることが確認できるが、展示場の場所、展示日時、来場者数、請求人の商標を使用した商品の販売数量、売上高等は確認できない。また、実際に取引された商品についての請求人の商標の使用態様も確認できない。
よって、この写真からは、請求人の商標が外国の需要者の間にどの程度広く知られていたのかを推し量ることは困難である。
オ 中華人民共和国税関申告書(中華人民共和国海関出口貨物報関単)(甲6)は、請求人が輸出した商品名称、数量及び単位、原産国、最終目的国等を示すものであるが、韓国への輸出に関するものしか示されておらず、韓国以外の米国、インド、EUその他の地域への輸出に関しては、何ら示されていない。
また、この申告書(報関単)は、申告日が2018年5月8日であることは示されているが、請求人の商標を使用した商品の販売開始期間、販売期間、販売地域、営業の規模(店舗数、営業地域等)等は確認できない。さらに、実際に取引された商品についての請求人の商標の使用態様も確認できない。
よって、この申告書(報関単)からは、請求人の商標が中国の需要者の間にどの程度広く知られていたのかを推し量ることは困難である。
力 米国登録第87647793号公報(甲7)は、請求人の商標が、本件商標の出願日である平成30(2018)年8月7日より前の、平成30(2018)年8月14日に米国において商標登録されたことを示すものであるが、そもそも、請求人の商標が米国において登録されたという事実又は当該公報に掲載されたという事実だけでは、当該商標が米国の需要者の間に広く知られていたとは推定されない。
よって、当該公報からは、請求人の商標が本件商標の出願日前から米国において広く知られていた事実は確認できない。
キ 以上のとおり、請求人提出の証拠(甲2〜甲7)からは、請求人の商標が本件商標の出願日前から日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているとする事実が確認できない以上、請求人の商標が本件商標の出願日前から日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているとはいい難い。
また、被請求人が、請求人の商標に化体した業務上の信用にフリーライドして不正の利益を得る等の不正の目的をもって本件商標の使用をするものとすべき具体的な事実も確認できない。それゆえ、被請求人が、請求人の商標に化体した業務上の信用にフリーライドして不正の利益を得る等の不正の目的をもって我が国に出願し、商標登録を受けたともいい難い。
(3)したがって、請求人の商標は、我が国において未登録の商標であって、本件商標の出願日前から日本国内又は外国の需要者の間に広く認識されているものではなく、また、被請求人は、請求人の商標に化体した業務上の信用にフリーライドして不正の利益を得る等の不正の目的をもって我が国に出願し、商標登録を受けたともいえないので、請求人の商標について、我が国における出願商標の登録を排除してまで保護を認めることは、商標法第4条第1項第19号の趣旨を逸脱することとなり、妥当ではない。
2 まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者は争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(ア)請求人は、本件商標の登録出願前後に「SooPii」の文字又はそれを含む商標を、中国及び米国において登録出願し、それらは商標登録された(甲2、甲7)。
(イ)請求人は、2018年4月17日及び同月18日に中国において、「移動通信装置 SooPii ケーブル」を、それぞれ206個、421個販売したとされ(甲3)、また、同年5月8日に、「携帯電話用USBケーブル SooPiiブランド」7478個、「家庭用小型扇風機 SooPiiブランド」3000個及び「携帯電話用イヤホン SooPiiブランド」160個を、韓国に向けて販売したとされる(甲6)が、これらの商品における引用商標の使用態様、当該商品の販売期間、販売地域、取扱い店舗数等は明らかにされていない。
(ウ)請求人は、2018年5月24日頃に、SooPiiの製品を展示したとされる(甲4、甲5)が、展示ブースのような壁面に「SooPii」の文字が表示されていることは確認できるものの、展示されている商品、展示期間、展示場所、来場者数等は確認することはできない。
イ 以上、アよりすれば、請求人が、本件商標の登録出願日前後に「SooPii」の文字又はそれを含む商標を、中国及び米国において商標登録を受けたことは確認できる。
しかしながら、請求人が、中国又は韓国において販売したとされ、引用商標を使用しているとされる商品の販売期間、販売地域、取扱い店舗数等といった販売実績及び営業規模は明らかにされていない。また、「SooPii」の文字と共に展示(甲5)したとされる商品は特定することができず、仮に、その商品が、ケーブル(移動通信装置)、携帯電話用USBケーブル、家庭用小型扇風機及び携帯電話用イヤホンだとしても、それらの展示期間、展示場所、来場者数等といった広告実績を確認することはできない。さらに、提出された全証拠から請求人が使用しているとする引用商標の使用態様を確認することもできない。
そうすると、請求人が提出した証拠から、引用商標の周知性を推し量ることはできないというべきである。
したがって、本件商標の登録出願時及び査定時において、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国はもとよりそれ以外の国における、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標
本件商標は、「SooPii」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「スーピー」の称呼を生じ、また、当該文字は辞書等に採録のない語であるから、これより特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、図形及び「SooPii」の文字より構成されるもの、又は「SooPii」の文字のみからなるものである。
そして、それらの「SooPii」の文字は、上記アと同様にその構成文字に相応して「スーピー」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、「SooPii」の文字部分を共通にするものであるから、外観において似かよった印象を与え、「スーピー」の称呼を共通にするものである。
そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観における似かよった印象及び「スーピー」の称呼の同一性を、取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、類似の商標である。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標と類似の商標であるとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国をはじめそれ以外の国においても、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものであるから、商標法第4条第1項第19号の適用要件を欠くものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標権者の不正の目的について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当せず、その登録は、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 中国における登録第23753929号商標



別掲2 使用商標 (1)ア



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 齋藤 貴博
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2021-09-28 
結審通知日 2021-10-01 
審決日 2021-10-19 
出願番号 2018100541 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (W09)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 岩崎 安子
板谷 玲子
登録日 2019-05-24 
登録番号 6146399 
商標の称呼 スーピイ、ソーピイ、スーピー、ソーピー 
代理人 岡田 陽之介 
代理人 金子 宏 

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