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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W07
管理番号 1388538 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-07 
確定日 2022-08-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第6364591号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6364591号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6364591号商標(以下「本件商標」という。)は、「MIUI」の文字を標準文字で表してなり、令和2年1月17日に登録出願、第7類「電気式カーテン引き装置,生ごみ(廃棄物)処理機,遠心製粉機,台所用電気式クラッシャー,家庭用製粉機(手動式のものを除く),電気式缶切,こしょうひき(手持工具に当たるものを除く。),コーヒー豆ひき器(手動式のものを除く),業務用アイロン装置,家庭用電気式ジューサー」を指定商品として、同3年1月22日に登録査定、同年3月17日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第1142043号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品及び指定役務:第9類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
国際登録出願日:2012年(平成24年)5月31日
優先権主張:2011年12月1日(China)
設定登録日:平成26年12月19日
2 国際登録第1388677号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際登録出願日:2017年(平成29年)6月23日
優先権主張:2017年2月27日(China)
設定登録日:平成30年12月21日

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、「MIUI」の文字を標準文字で表してなるものであるが、引用商標の「MIUI」も、標準文字で表されていないものの、「MIUI」の文字からなる商標であり、両商標は、実質的に同一の商標である。
(2)引用商標の著名性及び独創性について
申立人は、中国の北京に本社を置く総合家電メーカー(甲2)であり、スマートフォン市場においては、2021年現在において、世界シェアが17%で2位、出荷台数は世界1位であり、2011年の創業以来、累計8億台のスマートフォンを販売する世界的に著名な企業である(甲3〜甲5)。
そして、我が国においても、2017年からモバイルバッテリーやステレオイヤホンの販売を開始し、2020年6月からはスマートフォンの販売を開始している(甲6)。
出願人(決定注:申立人の誤記と認める。)の製品名称の一つに、「Mi」という名称を冠する製品シリーズがあり、スマートフォンは「Mi」、「Redmi」、スマートウォッチは「Miスマートバンド」、スマートカメラには「Mi 360°スマートカメラ」のように、様々な機器に「Mi」を使用している(甲7)。
申立人は、本件商標と同一の「MIUI」については、申立人のスマートフォン及びタブレット向けの独自ユーザーインターフェースの名称として、需要者に提供している(甲8)。
このように、申立人の販売するスマートフォンは世界でシェアが2位、出荷台数が1位であることからも、申立人である「Xiaomi」のブランドと、申立人が販売するスマートフォン「Mi」及び「Redmi」は、諸外国において著名である。
そして、申立人が開発するユーザーインターフェース「MIUI」も、申立人の著名なスマートフォンには必ず搭載されていることから、申立人のスマートフォンに接した際には、必ずユーザーインターフェースである「MIUI」にも触れることとなり、結果として、「Mi」や「Redmi」の名称と合わせて、「MIUI」のユーザーインターフェースの名称についても、スマートフォンの「Mi」や「Redmi」の商標と合わせて、需要者の間に広く認識されている商標である。
また、我が国においても、申立人のスマートフォンやそのユーザーインターフェース「MIUI」は、2020年の販売開始以前から継続的に様々なメディアで取り上げられており(甲9〜甲11)、それは販売が開始された2020年以降においても同様である(甲12〜甲15)。
以上より、申立人のスマートフォン及びタブレット向けのユーザーインターフェースである「MIUI」は、我が国において、本件商標の登録出願日以前から需要者の間に広く認識されている商標であると判断されるべきである。
加えて、本件商標は、特段の意味を有していない、申立人が創作した造語であることから、独創性を有している。
(3)商品の関連性、商品等の取引者及び需要者の共通性について
本件商標に係る指定商品は、第7類の商品であり、大半は家庭用の製品、又は業務用であるとしても、一般家庭において馴染みのある商品である。
これに対して、引用商標の商品は、「スマートフォン及びタブレット用ユーザーインターフェース」であって、「ユーザーインターフェース」は、ユーザーである需要者と、機械やコンピュータとが情報のやり取りを行う際に接する、機器やソフトウェアの操作画面や操作方法を指す語である(甲16)が、引用商標も、スマートフォン及びタブレット用に用いられることから、主な需要者は一般需要者である。
そのため、両者は家庭用の製品及び業務用の製品であっても、一般需要者にも馴染みがある商品であるということを考慮した場合には、両商品の間には、取引者、需要者が共通しているといえる。
また、ユーザーインターフェースは、スマートフォンやタブレットに限定されることなく、様々な製品にて使用されるものであるが、近年では、IoTやアプリケーションを通じて、家庭用の機械器具とスマートフォンと連携することが増え、スマートフォンのユーザーインターフェースを通じてアプリケーションを作動し、家庭用の機械器具を作動させるといった実情を有していることから、スマートフォン用のユーザーインターフェースと家庭用の機械器具には強い関連性を有しているという取引の実情がある。
(4)小括
上記の諸点を踏まえて検討すると、本件商標と引用商標は、文字「MIUI」であって、実質的に同一である。
また、世界的に著名な申立人が販売するスマートフォンは世界で市場シェアが2位であり、我が国でも需要者の間に広く認識されている申立人の「Mi」や「Redmi」といった名称のスマートフォンに必ず搭載されているユーザーインターフェースである「MIUI」は、「Mi」や「Redmi」といったスマートフォンに接した需要者が必ず接するものであることから、申立人のスマートフォンと併せて、申立人のスマートフォン用のユーザーインターフェースである「MIUI」についても、同様に需要者の間に広く認識されている。
さらに、引用商標は、特段の意味を有さない造語であるため、独創性を有している。
また、申立人のスマートフォンの販売自体は2020年であるが、それ以前から継続的に申立人のスマートフォンは様々なメディアに取り上げられていたという事実から、申立人のスマートフォンや、そのユーザーインターフェースである「MIUI」も、本件商標の登録出願日より前から需要者の間に広く認識されている商標であったことは明らかである。
そして、本件商標の指定商品及び引用商標に係る商品「スマートフォン用ユーザーインターフェース」は、互いに家庭用の製品であるという点で関連性を有する上に、需要者、取引者が一般需要者で共通し、また、近年のIoTで家庭用の製品とスマートフォンを連携して作動させることが増えているため、強い関連性を有しているといった取引の実情がある。
これらの点に照らすと、両者には共通点を多く有していることから、本件商標及び引用商標の需要者である一般需要者が普通に払われる注意力を基準として総合的に考慮した場合、出所の混同を生ずるおそれを有しているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の外国における著名性について
申立人のスマートフォンは、2019年頃からは既に世界で市場シェア4位であり、中国においても3位、インドでは2019年頃には既に市場シェアが1位となっている。
この点で、本件商標の登録出願前から世界で著名であった申立人のスマートフォンには、必ず「MIUI」のユーザーインターフェースが搭載されていることを考慮すると、本件商標と同一の商標であって、申立人のスマートフォン及びタブレット用ユーザーインターフェースの名称である「MIUI」は、本件商標の登録出願前から我が国のみならず、既に中国やインドにおいて著名な商標であったことは容易に認識できる。
(2)本件商標権者の不正の目的について
引用商標は、中国を代表し、2019年頃から少なくとも中国やインドにおいて著名であった申立人のスマートフォンに必ず搭載されているユーザーインターフェースの名称「MIUI」と同一であって、かつ、我が国以外にも、中国やインドにおいても全国的に知られている商標である。
そして、「MIUI」は特段の意味を有さない造語である。
そのため、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人の我が国のみならず、中国やインドにおける著名な商標「MIUI」と同一商標について、不正の目的を持って使用するものと推認することができ、そのような判断がなされて然るべき状況にある。
さらに、本件商標権者は、申立人のスマートフォンの市場シェアが特に高いインドにおいても登録出願を行っており、申立人は、現在、本件商標と同様に、申立てを行っている状況にある(甲17)。
このように、申立人の著名性が特に高い国においても同一の商標について登録出願を行っていること、そして、本件商標権者の住所が中国であり、申立人の本社が中国と、共通していることに鑑みると、本件商標権者は、申立人の著名商標と同一の商標について偶然に想起し、登録出願をしたとは考えがたく、その著名表示へのフリーライドといった不正の目的を有していると判断されるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標の登録出願の経緯を検討すると、本件商標権者は、申立人が独自に創作した著名商標に対するフリーライドやダイリューションが認められることから、不正の目的を以て本件商標の登録出願を行ったと認められる。
このような剽窃的な登録出願は、健全な法感情に照らし条理上許されず、また、商標法の目的にも反し、公正な商標秩序を乱す登録出願であることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の主張及び提出した証拠によれば、申立人は、2010年に設立された中国の北京に本社を置く総合家電メーカーであり、2021年第2四半期のスマートフォン市場においては、世界市場でのシェアが17%で2位、2021年6月の出荷台数は世界1位となったこと(甲2〜甲5)、我が国においては、2020年6月からスマートフォンの販売を開始していること(甲6)、申立人は「スマートフォン」、「スマートウォッチ」、「スマートカメラ」に、製品名として「Mi」という名称を冠していること(甲7)は認められる。
しかしながら、申立人の提出した2019年12月のウェブサイトの記事(甲9、甲10)を参照しても、これらのウェブサイトの説明文中に「MIUI」の文字が記載されているのみで、申立人の「スマートフォン用のユーザーインターフェース」の商標として引用商標が使用されていることは確認できない。
その他、引用商標を使用した「スマートフォン用のユーザーインターフェース」について、我が国における市場シェア、広告宣伝の規模、売上等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はない。
そうすると、申立人が、我が国において、本件商標の登録出願後の2020年6月からスマートフォンの販売を開始していることは確認できるものの、引用商標を申立人の「スマートフォン用のユーザーインターフェース」に使用している事実は見いだせないものであり、さらに、我が国又は外国における引用商標の使用に関する具体的な証拠の提出はないこと等から、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「MIUI」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「エムアイユーアイ」の称呼を生じ、また、当該文字は、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、別掲1のとおり、「MIUI」の欧文字を横書きにしてなるものであり、その構成文字に相応して、「エムアイユーアイ」の称呼を生じ、また、当該文字は、上記アのとおり、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲2のとおり、黒色長方形(以下「図形」という。)内に「MIUI」の欧文字を白抜きにしてなるところ、当該図形は、「MIUI」の背景であると容易に認識し得るものであるから、「MIUI」の構成文字に相応して、「エムアイユーアイ」の称呼を生じ、また、当該文字は、上記アのとおり、辞書等に載録されている成語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、書体及び図形の有無に差異があるものの、いずれも「MIUI」の文字からなるものであるから、これらは、類似する商標である。
したがって、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものといえる。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」との関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、第7類「電気式カーテン引き装置,生ごみ(廃棄物)処理機,遠心製粉機,台所用電気式クラッシャー,家庭用製粉機(手動式のものを除く),電気式缶切,こしょうひき(手持工具に当たるものを除く。),コーヒー豆ひき器(手動式のものを除く),業務用アイロン装置,家庭用電気式ジューサー」であり、家庭内又は業務用として使用される機械器具に該当するのに対し、申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」は、スマートフォンに内蔵されるソフトウェアに該当するものであるから、これらの商品の需要者、生産者や販売場所等は必ずしも共通するものではなく、密接な関連性を有するものではない。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似する商標であり、類似性の程度は高いものであるとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」を表示するものとして、我が国の需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできず、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」について、これらの商品の需要者、生産者や販売場所等は必ずしも一致するものではなく、密接な関連性を有するものではないことからすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「スマートフォン用のユーザーインターフェース」を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできず、また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、さらに、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見当たらない。
さらに、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)




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異議決定日 2022-08-17 
出願番号 2020005125 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W07)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2021-03-17 
登録番号 6364591 
権利者 胡偉娜
商標の称呼 ミウイ、ミーユーアイ、エムアイユウアイ 
代理人 中澤 昭彦 
代理人 宮嶋 学 
代理人 本宮 照久 
代理人 砂山 麗 
代理人 高田 泰彦 
代理人 猿山 純平 
代理人 中村 行孝 
代理人 柏 延之 

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