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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W09
管理番号 1388461 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-21 
確定日 2022-08-02 
事件の表示 商願2019− 91833拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標及び本願の手続きの経緯
本願商標は、「PDF」の文字を標準文字で表してなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年7月2日に登録出願されたものである。
本願は、令和2年7月14日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月21日付け意見書により拒絶理由に対する反論がなされ、本願の指定商品は、同日付け手続補正書により、第9類「科学に関する情報その他の文字・音声・画像・動画からなるコンテンツを記録させたビデオディスク・電子回路・磁気ディスク・磁気カード・磁気シート・光ディスク・ROMカートリッジ・CD−ROM・DVD−ROMその他の記録媒体,予め記録されたUSBフラッシュドライブ,録画済みビデオディスク,電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),録音済みの光ディスク」に補正されたが、同3年3月17日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して、令和3年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 当審における拒絶理由通知
当審において、請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対し、令和3年11月19日付け拒絶理由通知書により、別掲1及び別掲2のとおりの事実を提示した上で、本願商標は、指定商品中の「電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」や「文字及び画像からなるコンテンツを記録させた記録媒体」に使用するときは、商品の品質を表示するものであり、本願商標を、PDF形式で作成された商品以外の商品に使用する時は、商品の品質に誤認を生じさせるおそれがあるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の本願の拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。

第3 当審における拒絶理由通知に対する請求人の意見
請求人は、上記第2の拒絶理由通知に対し、令和4年2月22日付け意見書(以下「意見書」という。)を提出し、要旨以下のとおりの意見を述べた。
1 本願商標の使用状況及び周知性
本願商標を構成する「PDF」は、米国材料試験協会(ASTM)によって、1941年に設立された粉末の回折データの収集や公開などを目的とした合同委員会(後の非営利組織、国際回折データセンター(International Centre For Diffraction Data。「ICDD」と略される。)が策定した結晶材料同定のための粉末X線回折のデータベースである「Power Diffraction File」の頭文字からなるものである。
そして、このデータベースに集積された情報は、多くの学術雑誌から収集され、ICDDによる研究助成による成果や、ボランティアによる提供なども含まれ、それらのデータはICDDによる審査を受けた上でPDFに収録されるという斯界において権威あるものである。
このように、本願商標は、一般消費者とはほぼ無縁の科学の世界においてではあるが、およそ80年にわたって国際的に頒布されてきたデータベースの出所を示す標識として知られている。
2 本願商標の識別力
以上のように、本願商標は、その指定商品との関係において権威あるデータベースの名称として国際的に識別力を発揮しているものである。
その一方で、拒絶理由通知において引用された10件の情報は、すべて米国アドビシステムズ社が開発した電子ファイルの形式(フォーマット)において使用される拡張子である「.pdf」を用いた文書フォーマットによって作成されていることを示しているにすぎない。
つまり、いずれの商品においてもそれぞれ出所とは無関係であることは明らかであって、本願商標の表示態様とは明白に異なる。
商標の識別力の有無は、取引の実情に則して判断されるべきであるところ、以上のように、特定のデータベースの出所を示すものとして広く知られた本願商標は、既に自他商品の識別力を十二分に発揮しているものである。
3 結び
以上のとおり、本願商標は、電子文書のファイル形式の意味を有する語として認識されるものではなく、これを前提として商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の指摘は適切ではない。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
本願商標は、上記第1のとおり、「PDF」の文字を標準文字で表してなるところ、別掲1に示す辞書等の記載を参照すると、当該文字は、電子文書のファイル形式の意味を有する語として認識されるものである。
そして、別掲2に示すインターネット情報等を参照すると、PDF形式の電子書籍が存在し、それが、実際に取引されている実情があることが確認できるものである。
そうすると、本願商標をその指定商品中、「電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」や「文字及び画像からなるコンテンツを記録させた記録媒体」に使用するときは、当該商品が、PDF形式で作成された商品であることを認識させるものであるから、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法により表示するものと判断するのが相当であって、自他商品の識別標識としての機能を有さないものである。
また、本願商標を、その指定商品中のPDF形式で作成された商品以外の商品に使用する時は、商品の品質に誤認を生じさせるおそれがあると判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
2 請求人の主張に対する反論
(1)請求人は、「本願商標は、一般消費者とはほぼ無縁の科学の世界においてではあるが、およそ80年にわたって国際的に頒布されてきたデータベースの出所を示す標識として知られている。」旨主張する。
しかしながら、請求人が意見書にて提出した第1号証ないし第4号証を参照すると、「PDF」の文字が、米国材料試験協会(ASTM)が策定した結晶材料同定のための粉末X線回折のデータベースである「Power Diffraction File」の頭文字であることは確認できるものの、本願の指定商品を取り扱う業界において、「PDF」の文字が、粉末X線回折のデータベースを表示したものと一般的に認識すると判断しなければならない特別な事情はないものである。
そして、上記1のとおり、本願商標「PDF」は、本願の指定商品との関係において、電子文書のファイル形式を表示する語として理解されるものであり、これをその指定商品中、「電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」や「文字及び画像からなるコンテンツを記録させた記録媒体」に使用するときは、自他商品の識別標識とは認識しないと判断すべきである。
(2)そうすると、請求人の上記主張は採用できず、その他請求人の主張は採用するべき事情はない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(「PDF」に関する各種辞書等の記載)
(1)広辞苑第6版(発行者:株式会社岩波書店)
「PDF」の項目に、「(portable document format)電子文書のファイル形式の一つ。文字情報以外に、フォントの種類や大きさ、図や画像、それらのレイアウト情報などを記述できる。」の記載がある。
(2)大辞林第4版(発行者:株式会社三省堂)
「PDF(Portable Document Format)」の項目に、「異種のパソコン間でのドキュメントの交換を可能にするファイル形式の一つ。」の記載がある。
(3)大辞泉第2版(発行者:株式会社小学館)
「ピー・ディー・エフ(PDF)<portable document format>」の項目に、「米国アドビシステムズ社が開発した、電子文書のファイル形式。テキストや画像のほかに、フォントやレイアウトの情報が収められており、パソコンの機種やOS環境に依存しない表示が可能。」の記載がある。
(4)現代用語の基礎知識2018(発行者:自由国民社)
「PDF」の項目に、「電子書類の規格の一種。文書を電子的に配布でき、PCの機種を問わず、オリジナルのイメージをかなり正確に再生することができる。PDFファイルを閲覧するには、アドビシステムズ社のアドビ・リーダーというアプリケーションが必要。」の記載がある。
(5)大きな字のカタカナ新語辞典第2版(発行者:株式会社学習研究社)
「PDF(portable document format)」の項目に、「アメリカのアドビ社が開発した、インターネット上で配信者のデータの体裁を忠実に保ちながら送信できる電子文章の規格。受信者は自分のパソコン環境に関係なく閲覧できる。」の記載がある。
(6)日経パソコン用語事典2009年版(発行者:日経BP社)
「PDF ピーディーエフ:portable document format」の項目に、「米アドビシステムズが開発した電子文書のファイル形式。ファイル名にpdfという拡張子が付く。閲覧ソフトが用意されていれば、OSなどの違いにかかわらず、作成したイメージのまま表示できるのが特徴。インターネット上で配布されている文書の実質的な標準形式である。(後略)」の記載がある。
(7)2009−’10年版 最新パソコン・IT用語事典(発行者:株式会社技術評論社)
「PDF(ピーディーエフ)Portable Document Format」の項目に、「米国アドビシステムズ社が、同社のPostScript技術をもとに開発した文書フォーマット。どのような環境であっても、文書作成者の意図したとおりに表示されることを目的としている。同社では、PDFフォーマット普及のために、閲覧専用のソフトウェアとして「Adobe Reader」を無償で配布している。現在では製品マニュアル、操作説明書、カタログ、時刻表など、多くの資料がPDFファイルで提供されている。(後略)」の記載がある。

別掲2(PDF形式の電子書籍(電子出版物)が実際に取引されている事実)
(1)「翔泳社の通販」のウェブサイトにおける「電子書籍/PDF版 一覧」の項目に「独習JavaScript 新版【PDF版】」の記載及び「販売価格:3,278円(税込)」の記載がある。
https://www.seshop.com/product/327
(2)「パーソナルメディア社」のウェブサイトにおける「超漢字・BTRON」の項目の「超漢字・BTRON」の項目に「康煕字典 内府本(電子書籍版)」の記載及び「(PDF版)定価6,050円(本体 5,500円+税)」の記載がある。
https://www.personal-media.co.jp/book/genre/btron.html
(3)「Manatee」のウェブサイトにおける「基礎から学ぶ React/React Hooks」の項目の「購入形態」の欄に「PDF 3,386円」の記載がある。
https://book.mynavi.jp/manatee/books/detail/id=124221
(4)「インプレスブックス」のウェブサイトにおける「ドローンビジネス調査報告書2022【インフラ・設備点検編】」の項目に、「CD(PDF)+冊子版 104,500円」及び「CD(PDF)版 93,500円」の記載がある。
https://book.impress.co.jp/books/1121501007
(5)「安全門社」のウェブサイトにおいて「安全門社 電子書籍PDF版」の記載があり、「大学特許動向2019年 総合編」等の書籍が紹介されている。
http://www.datangraph.com/category/731
(6)「語研」のウェブサイトにおける「TOP>一覧(全点)>電子書籍>PDF版電子書籍」の項目に「2020年4月29日」の記載、「PDF版電子書籍」の記載があり、その下に「♯韓国女子のためのイマドキ韓国語」の記載がある。
https://www.goken-net.co.jp/catalog/catalog.html?c=ebook-pdf
(7)「Tech Village」のウェブサイトにおける「いちおし!」の項目に「トランジスタ技術 2021年12月号 農業水産ロボットに挑戦!【PDF版】 900円」の記載がある。
https://cc.cqpub.co.jp/lib/
(8)「BOOTH」のウェブサイトにおける「とりもち書房」の記載の下に「電子書籍・PDF版『パンとお茶の話』」の記載があり、その下に「ダウンロード商品 ¥200」の記載がある。
https://booth.pm/ja/items/3380668
(9)「SmileUS」のウェブサイトにおいて「電子書籍『パンキーフィロソフィ』PDF版」の記載及び商品名の項目に「電子書籍『パンキーフィロソフィ』PDF版」の記載がある。
https://www.smile-us.com/item1799.html
(10)「科学評論社」のウェブサイトにおける「電子ジャーナルのご案内」の項目に「弊社の電子ジャーナルは電子版とPDF版の2種類からご利用いただけます。」の記載がある。
https://www.kahyo.com/download


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

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審判長 榎本 政実
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2022-03-04 
結審通知日 2022-03-07 
審決日 2022-03-18 
出願番号 2019091833 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W09)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 豊田 純一
荻野 瑞樹
商標の称呼 ピイデイエフ 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 

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