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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1387677 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-04 
確定日 2022-07-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6414450号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6414450号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6414450号商標(以下「本件商標」という。)は、「大正薬研」の文字を標準文字により表してなり、令和元年12月26日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児用粉乳,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),動物用サプリメント(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液,食物繊維」を指定商品として、令和2年11月12日に登録査定され、同3年7月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、「大正製薬」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)であり、申立人が「医薬品及び栄養補助食品、並びに、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品」の分野で使用し、著名となっているというものである。
また、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、及び「大正」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、申立人が「特に薬剤及び栄養補助食品」の分野で使用し、著名となっているというものである。
2 申立人が、本件異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の9件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2432441号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲1のとおり、「大正製薬」の文字を横書きした構成からなり、昭和56年2月19日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録され、その後、同15年12月17日に、第1類ないし第5類、第8類ないし第10類、第16類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録されたものである。
(2)登録第1353981号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおり、「大正製薬」の文字を横書きした構成からなり、昭和50年11月6日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同53年10月31日に設定登録され、その後、平成21年3月11日に、第4類ないし第6類、第8類、第10類、第11類、第16類、第18類ないし第21類、第24類及び第26類ないし第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録され、その指定商品については、同30年8月14日に商標権の存続期間の更新登録において、第5類及び第21類に減縮されたものである。
(3)登録第1463118号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲3のとおり、「大正製薬」の文字を横書きした構成からなり、昭和50年11月28日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同56年5月30日に設定登録され、その後、平成14年8月28日に、第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録されたものである。
(4)登録第2049414号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲4のとおり、「大正製薬」の文字を横書きした構成からなり、昭和50年11月28日に登録出願、第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年5月26日に設定登録され、その後、平成20年10月1日に、第1類、第5類及び第29類ないし第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録されたものであり、その指定商品については、同30年3月13日に商標権の存続期間の更新登録において、第31類に減縮されたものである。
(5)登録第2679445号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲5のとおり、円形の図形内に鷲を配した図形とその下に「大正製薬」の文字を横書きした構成からなり、平成4年3月27日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年6月29日に設定登録され、その後、同16年6月9日に、第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類ないし第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録されたものである。
(6)登録第6181657号商標(以下「引用商標8」という。)は、「大正」の文字を標準文字により表してなり、平成30年9月6日に登録出願、第5類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年9月20日に設定登録されたものである。
(7)登録第4578583号商標(以下「引用商標9」という。)は、「大正」の文字を標準文字により表してなり、平成13年7月31日に登録出願、第5類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年6月21日に設定登録されたものである。
(8)登録第5226221号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲6のとおり、「大正」の文字を横書きしてなり、平成20年8月29日に登録出願、第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同21年4月24日に設定登録されたものである。
(9)登録第2164493号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲7のとおり、「大正」の文字を横書きしてなり、昭和59年6月8日に登録出願、第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録され、その後、平成21年8月5日に、第1類及び第29類ないし第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの指定商品に書換登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第11号、同項第8号及び同項第19号に該当するものであり、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第244号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 具体的理由
(1)申立人の事業内容及び引用商標1及び2の著名性
ア 申立人の歴史及び事業活動等
(ア)申立人の歴史
申立人である大正製薬株式会社は、日本を代表する製薬会社である。そして、大正製薬グループは、国内で13、海外に27のグループ・関連会社から構成される一大企業グループであり(2020年6月末時点、甲17、甲18)、その従業員数は9,000名を超え(2020年3月末時点グループ連結、甲17)、日本各地に事業所を擁する等、その事業規模は日本全国にわたる(以下、大正製薬株式会社、並びに、大正製薬ホールディングス株式会社及び同社率いる大正製薬グループ各社を総称して「申立人」と記載する場合がある。)。
申立人の起源は、大正元年(1912年)に遡り、創業当時の20世紀初頭、申立人は一般大衆の病気の予防と健康増進の支援を目的とし、輸入に頼らない日本製の滋養強壮剤の製品化を目指して創業、以来、大衆向けの医薬品(大衆薬)を次々と発売、国民の病気予防及び健康増進を支えてきた(甲11)。現在は、医療用医薬品の研究開発及び製造販売を行う「医薬事業」並びに一般用医薬品(OTC医薬品)、栄養補助食品、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品といった生活者の健康ニーズに対応した各種商品の製造販売を行う「セルフメディケーション事業」の2つの事業を主軸とし、日本国内及び海外において多角的に事業を展開している(甲12)。
(イ)申立人の代表的出所表示としての「大正製薬」の使用
「大正製薬」の商標は、申立人の前身である大正製薬所の創業者が採択したものであり(甲15)、創業の後、1928年には株式会社大正製薬所としで法人化され、1948年には現在の大正製薬株式会社へと商号を改称、2011年には、純粋持株会社である大正製薬ホールディングス株式会社を設立、申立人は大正製薬ホールディングス株式会社の完全子会社となったが、申立人は、創業時から一貫し、申立人の商号において、また、申立人の業務に係る商品の出所表示として「大正製薬」の商標を継続的に使用してきた(甲16)。
また、2011年の大正製薬ホールディングス株式会社の設立による持株会社体制へ移行後は、「大正製薬」の商標は、大正製薬ホールディングス株式会社が率い、大正製薬株式会社を中心として構成される企業グループである大正製薬グループ全体の出所表示としても使用されてきた(甲11、甲94、甲95、甲97、甲98、甲130〜甲132、甲135、甲176、甲177、甲201、甲230等)。
(ウ)申立人の事業内容等
申立人は、前記のとおり、医療用医薬品の開発販売からなる「医薬事業」と、一般用医薬品(OTC医薬品)、栄養補助食品、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品といった生活者の健康ニーズに対応した各種商品の製造販売からなる「セルフメディケーション事業」の2つの事業を主軸として事業展開を行ってきた。現在申立人が展開する商品の数は主力製品群の一つである一般用医薬品(OTC医薬品)に限っても373種にも及び、その他にも医療用医薬品、ドリンク剤・ビタミン剤・特定保健用食品といった栄養補助食品、食品や清涼飲料、美容・口腔・ヘアケア及びスキンケア関連商品、マスクや検査用キット等、様々な種類の商品を販売している(甲19〜甲89)。これらの製品群の中でも、申立人の創業時から事業の中核をなす一般用医薬品(OTC医薬品)の分野では、2019年度及び2020年度を例にとっても、市場にてシェア1位を誇っている(甲17、甲90)。
申立人の業務に係る商品には多くのヒット商品・ロングセラー商品が存在し、申立人の略称である「大正製薬」の商標は、これらの製品パッケージや広告宣伝媒体において共通して使用されている(甲102〜甲111、甲240〜甲242等)。
(エ)大正製薬グループ各社の事業内容
申立人の事業内容は上記のとおりであるが、大正製薬グループ全体においても、医薬品や栄養補助食品等の商品を主力製品群として多角的な製品展開がなされている。大正製薬グループは、大正製薬株式会社を含む国内13社、海外27社の法人から形成されており、これらのグループ会社においても、申立人である大正製薬株式会社と同様に、医薬品・医薬部外品等の製造販売等の事業が行われている(2020年6月末時点、関連会社も含む。甲17)。
(オ)売上高等
大正製薬グループの過去5年における年間売上高は、2016年度に290,135百万円、2017年度に279,773百万円、2018年度に280,092百万円、2019年度に261,551百万円、2020年度に288,527百万円という規模であり(グループ連結、甲17、甲90〜甲93)、そのうち、セルフメディケーション事業(一般用医薬品(OTC医薬品)の他、栄養補助食品や化粧品・スキンケア商品、飲食料品等の事業も含む。)に限定しても、2020年度には220,027百万円(2019年度は180,123百万円、2018年度は183,996百万円、2017年度は179,992百万円、2016年度は180,722百万円)という実績を持つ(グループ連結。甲17、甲90〜甲93)。
(カ)宣伝広告活動
申立人は、医薬品及び栄養補助食品等の商品分野を中心に、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等、一般大衆の生活基盤を支える製品群を長期的かつ大規模に販売し展開してきており、申立人は、これらの製品群について、永年にわたり、マスメディアやインターネット等、様々な宣伝広告媒体を通じ、全国的規模で宣伝広告活動を行ってきた(甲126〜甲136、甲240〜甲242等)。
申立人は、永年にわたり、申立人の業務に係る各種製品について、様々な宣伝広告媒体を通じ、一般大衆に向けた大規模かつ継続的な宣伝広告活動を行ってきており、その広告宣伝費は、2017年に22,087百万円、2018年に22,579百万円、2019年に20,206百万円、2020年に26,046百万円、2021年には25,017百万円にも及んでおり(甲183〜甲187)、これらの宣伝広告活動においては、申立人製品の個別のブランド名等と共に、申立人の商号の略称である「大正製薬」の商標も申立人の代表的出所表示として共通して使用されてきた(甲126、甲129、甲134〜甲136、甲150、甲151、甲236〜甲242等)。
イ 引用商標1及び2の著名性
(ア)引用商標1の著名性
引用商標1は、「大正製薬」の文字からなる商標であるところ、かかる商標は、申立人の創業以来現在に至るまで、申立人の代表的出所表示として、申立人自身を指称し、また、申立人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品並びに化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の出所表示として永年にわたり継続的に使用されてきた商標である(甲11〜甲98、甲101〜甲111、甲113〜甲122、甲124、甲126〜甲136、甲145〜甲152、甲156、甲158〜甲166、甲168〜甲172、甲176〜甲178、甲201〜甲231、甲236〜甲242)。
(イ)引用商標2の著名性
申立人は、引用商標2「大正」も、申立人の代表的出所表示の一つとして、申立人及び申立人を中核とする大正製薬グループ全体を通じ共通して使用してきた(甲17)。
また、申立人は、「大正」の商標を、申立人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品をはじめとする各種商品の出所表示としても継続的に使用してきたほか、申立人が展開する健康や美容に関する情報サイトの名称において「大正健康ナビ」(甲231)や「大正」の欧文字表記である「TAISHO」の商標を用いた「TAISHO BEAUTY」といった名称を用いる等(甲13)、「大正」の商標を、申立人の代表的出所表示の一つとして、「大正製薬」と並んで使用してきた。
これらの使用例及び実績に鑑みれば、「大正」の商標が申立人の代表的出所表示の一つとして、「大正製薬」と並び、特に、申立人の主力製品群である医薬品や栄養補助食品等の分野では周知に至っていることは明らかである。
とりわけ医薬品の分野においては、「大正」の商標は、申立人を表象し、かつ、申立人の業務に係る商品(医薬品)の出所表示として唯一無二のものであり、このことは、例えば、国内の主要医薬品メーカーが所属する任意団体等において、その所属企業・団体でその商号又は名称に「大正」を含むのが、申立人である大正製薬株式会社のみであること(甲233〜甲235)、また、薬剤を指定商品に含む国内の商標登録において、「大正」の文字のみからなる、又は、「大正」の文字を構成中に含む商標が、本件商標を除き、いずれも申立人により登録されている事実からも明らかである(甲232)。
ウ 小括
以上述べたとおり、申立人は、「大正製薬」の商標を申立人及び申立人を中心とする大正製薬グループの代表的出所表示として、かつ、申立人が製造販売する医薬品及び栄養補助食品、並びに、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の各種商品の出所表示として永年にわたり継続して使用してきたのであり、「大正製薬」の商標がこれらの商品分野において全国的な知名度を有するに至っている。また、申立人は、「大正」についても、申立人の代表的出所表示及び申立人が製造販売する医薬品及び栄養補助食品等の各種商品の出所表示として継続して使用してきたことから、「大正」の商標も同様に、申立人の業務に係る前記各商品との関係で全国的に広く知られるに至っている。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性
ア はじめに
前記のとおり、引用商標1及び2は、申立人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品並びに化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の商品、特に、申立人の主力事業分野である医薬品や栄養補助食品といった商品の表示として著名に至っている商標であるところ、本件商標は、著名な引用商標1及び2と類似する商標であり、かつ、申立人の業務に係る商品と同一又は類似する商品について使用されるものであるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。
イ 本件商標と引用商標1とが類似すること
引用商標1は、申立人の代表的出所表示及び申立人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品並びに化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の商品の出所表示として著名に至っている商標であり、本件商標と引用商標1とを比較すると、これらは、最も看者の注意を引く語頭部分において「大正」の文字を共通にするのみならず、漢字4文字という構成文字数、かつ、そのうち「大正」と「薬」という3文字という、構成の3/4が共通し、外観上極めて似通った印象を与えるから、本件商標と引用商標1とは外観上類似する。
また、本件商標と引用商標1は、語頭に「大正」の文字を含み、「タイショウ」の音から称呼されるため、称呼においても紛らわしい印象を与えるのみならず、申立人の「大正製薬」の著名性が故に、「大正」及び「薬」の文字を構成要素とする本件商標からは申立人の出所表示としての「大正製薬」が連想想起されるため、両者は観念上も紛らわしい。
したがって、本件商標は、引用商標1と類似する。
ウ 本件商標と引用商標2とが類似すること
引用商標2は、「大正」の文字からなる商標であるところ、「大正」は申立人の代表的出所表示及び申立人の業務に係る医薬品や栄養補助食品等の出所表示として「大正製薬」と共に長年にわたり使用されてきた商標であり、特に前記各商品の分野においては、申立人又は申立人の業務に係る商品の出所表示として著名に至っている。
他方、本件商標は、その構成中最も看者の目を引く語頭に「大正」の文字を配してなるところ、申立人の商標としての「大正」の著名性も相侯って、需要者が本件商標に接した場合その構成中「大正」の部分に特に強く注意を引かれるため、該文字部分のみが独立して商品の出所表示と認識される。
しかして、申立人の引用商標2と本件商標とは「大正」の文字を共通にすることから外観及び「タイショウ」の称呼を共通にし、さらに、以下エに記載のとおり、本件指定商品がいずれも申立人の業務に係る医薬品や栄養補助食品等の商品と同一若しくは類似することに鑑みれば、本件商標がその指定商品に使用された場合に、申立人及び申立人の業務に係る商品が連想・想起されることは自明であるから、本件商標と引用商標2とは観念上も相紛れるおそれが高い。
したがって、本件商標と引用商標2とは類似する。
エ 本件商標の指定商品と引用商標1及び2に係る商品とが同一又は類似すること
本件商標の指定商品中には、申立人の主力事業分野であり、かつ、引用商標1及び2が著名に至っている医薬品や栄養補助食品等と同一又は類似する「薬剤,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食物繊維」といった商品が含まれているのみならず、その余の指定商品も、申立人の業務に係る医薬品(特に申立人の主力事業である一般用医薬品(OTC医薬品))や栄養補助食品、並びに、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等と同じようにドラッグストア等を通じて一般大衆に対し販売されるものであるから、これらは取引経路及び販売経路並びに取引者及び需要者を共通にする関連性の高い類似商品である。
オ 小括
以上述べたとおり、本件商標は、著名な引用商標1及び2と類似し、かつ、これらの商標が著名に至っている申立人の業務に係る医薬品及び栄養補助食品等の商品と同一又は類似する商品に使用されるものである。
そして、商標の類似性及び指定商品の関連性の高さに鑑みれば、本件商標がその指定商品に使用された際に、需要者が、本件商標が使用された商品の出所が申立人であるかのごとくその出所につき誤認混同するおそれ、すなわち、狭義の混同が生じるおそれが高い。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
「大正製薬」の商標は、申立人及び申立人を中心とする大正製薬グループの代表的出所表示、すなわちハウスマークとして全国的に著名に至っており、申立人が現在に至るまで継続的に事業展開を行っていることを考慮すれば、「大正製薬」の知名度が本件商標の登録出願時はもとより査定時においても継続していた。
また、本件商標と申立人の引用商標1は、いずれも漢字4文字を組み合わせた構成からなるところ、全体の構成文字数(漢字4文字)を共通にするのみならず、構成文字の3/4を占める「大正」及び「薬」という3文字が共通しており、看者に対し、外観上極めて紛らわしい印象を与えるものである。
さらに、本件商標と引用商標1とは共に語頭に「大正」の文字を含み、「タイショウ」の音から称呼されるため、特に簡易迅速を尊ぶ商品の取引の場面においては、称呼においても紛らわしい印象を与える。
加えて、引用商標1の著名性がゆえに、「大正」及び「薬」の文字を構成要素とする本件商標からは、申立人の出所表示として著名に至っている引用商標1が容易に連想想起されるため、両者は観念上も紛らわしい。
このように、本件商標と引用商標1とは構成文字の3/4が共通するという外観上の共通性があり、称呼も紛らわしいこと、また、本件商標の「大正」と「薬」の文字の組合せから、本件商標がその指定商品に使用された場合に申立人や申立人の業務に係る商品が容易に連想想起されることを考慮すれば、特に、本件商標と引用商標1を時と場所を異にして離隔的に観察した場合、かかる外観及び観念上の共通性が特に強く影響し、取引者又は需要者が、本件商標と引用商標1とを同一の出所に係る表示であるかのごとく混同するおそれは極めて高い。
よって、本件商標と引用商標1との類似性は高い。
さらに、本件商標の指定商品は、いずれも、申立人の業務に係る商品と同一又は類似、もしくは、これらと取引経路・販売経路や取引者及び需要者を共通にする密接な関連性を有する商品である。
また、大衆薬の製造販売から始まった申立人の事業は、医療用医薬品事業とセルフメディケーション事業(一般用医薬品(OTC医薬品)及び栄養補助食品、化粧品やスキンケア商品、飲食料品等の研究開発及び製造販売)を事業の主軸とし、また、時代の変遷に伴い、国内外で積極的に企業買収等を行う等、事業の多角化を図っており、申立人の業務に係る商品の種類は拡大の一途を辿っている。
以上の各点に加え、取引の実情についてみると、申立人は申立人の代表的出所表示として「大正製薬」の商標を使用すると共に、「大正」を冠した商品を多数販売し、その中には「大正漢方胃腸薬」のような長い歴史とシェアを誇る商品も含まれること、また、申立人を中核とする大正製薬グループには商号に「大正」を含む法人が複数存在し、「大正製薬」と共に、「大正」の商標も、申立人グループ全体で共通する出所表示として継続して使用されてきたという実情がある。
これらの実情に鑑みれば、看者の最も注意を引く語頭に「大正」を冠した本件商標を目にした本件指定商品の需要者は、本件商標を、あたかも申立人又は申立人と経済的又は組織的に関係を有するグループ企業であるかのごとく誤認するおそれは高いというべきである。
以上の点を総合的に考慮すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合、著名な引用商標1との関係で、需要者をして、申立人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあることは自明であるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項11号該当性
ア 本件商標は、引用商標3ないし11に係る登録商標と類似し、かつ、これらの商標登録の指定商品と同一又は類似する商品について使用されるものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 本件商標と引用商標3ないし7との類似性について
申立人所有の引用商標3ないし6は「大正製薬」の文字から構成される登録商標であり、引用商標7は「大正製薬」の文字と円形の図形内に鷲を配した図形(以下「鷲図形」)とを上下二段に組み合わせた商標であるところ、かかる構成においては「大正製薬」の文字と鷲図形部分とは外観上それぞれ分離して把握されるものであり、また、「大正製薬」が著名に至っていることを考慮すれば、引用商標7において「大正製薬」の文字部が、鷲図形とは別個の独立した出所表示として看取されるといえる。すなわち、引用商標7の構成において「大正製薬」の文字部は独立して商標の要部の一となる。
しかして、本件商標と引用商標3ないし7を構成する「大正製薬」の文字とは、外観及び称呼において共通性を有し、かつ、観念上も相紛らわしいものであり、同一・類似する商品にこれらの商標が使用された場合、需要者をして、商品の出所の混同を来たすおそれがあることは明らかであるから、本件商標と引用商標3ないし7とは類似商標である。そして、引用商標3ないし7の指定商品と、本件商標の指定商品とは、いずれも同一又は類似するものであるから、本件商標は、申立人の引用商標3ないし7との関係で商標法第4条第1項第11号に該当する。
ウ 本件商標と引用商標8ないし11との類似性について
引用商標8ないし11は、いずれも「大正」の文字を標準文字又は標準的な書体で表した商標であるところ、「大正」は、申立人の代表的出所表示及び申立人の業務に係る医薬品や栄養補助食品等の出所表示として「大正製薬」と共に長年にわたり使用されてきた商標であり、申立人又は申立人の業務に係る商品の出所表示として著名に至っている。
そして、「大正」の文字からなる申立人の引用商標8ないし11と本件商標とは「大正」の文字を共通にすることから外観及び「タイショウ」の称呼を共通にし、さらに、本件指定商品がいずれも申立人の業務に係る商品と高い関連性を有する商品であることに鑑みれば、本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人及び申立人の業務に係る商品が連想・想起されるため観念上も相紛れるおそれが高い。
よって、本件商標と引用商標8ないし11は類似し、引用商標8ないし11の指定商品と本件商標の指定商品とは、いずれも同一又は類似するものであるから、本件商標は申立人の引用商標8ないし11との関係でも商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性
本件商標の構成中「大正」は、申立人の代表的出所表示及び申立人の業務に係る商品の出所表示として「大正製薬」とならんで長年にわたり使用されてきた商標であり、特に、申立人の主力事業分野である医薬品や栄養補助食品といった商品の分野では、申立人である大正製薬株式会社の略称として著名に至っている。そして、本件指定商品は、いずれも、申立人の業務に係る前記各商品と同一若しくは類似又はこれらと密接な関連性を有する商品であるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、本件商標に接した取引者及び需要者は、その構成中「大正」の文字部分を申立人である大正製薬株式会社と強い結びつきをもって理解することになる。
よって、本件商標が申立人とは無関係の本件商標権者により登録され、本件商標権者にのみその独占的な使用が許された場合、大正製薬株式会社の人格的利益は著しく毀損されることにもなりかねない。このように、本件商標は、他人である大正製薬株式会社の名称の著名な略称を含む商標であるにも関わらず、その出願及び登録に当たり申立人の承諾を得ていないため、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、申立人の著名な引用商標1及び2と類似するものであるところ、本件商標の指定商品は、申立人の主力事業分野である医薬品や栄養補助食品等を含む申立人の業務に係る商品と同一若しくは類似し又はこれらと取引経路や取引者・需要者を共通にするなど、申立人の業務と密接な関連性を有する商品であるから、本件商標権者が著名な申立人の引用商標1及び2を知らずに本件商標を偶然採択したとは到底考えられず、本件商標権者が、著名な引用商標1及び2に化体した業務上の信用及び顧客吸引力にフリーライドし、不正の利益を得ることを目的として本件商標を使用せんとして出願に及んだものであることは明らかである。
そして、本件商標の指定商品には、人の病気の治療や健康の増進といった目的で使用される「薬剤,サプリメント,ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,栄養補助食品,食物繊維」等の商品が含まれているところ、本件商標権者が製造販売等する商品が申立人の業務に係る商品と品質において全く相違するものであれば、本件商標権者が販売する商品と申立人の業務に係る商品が市場において取り違えられた場合に、申立人の永年にわたる営業努力の結果引用商標1及び2に化体した業務上の信用が毀損されることになるのみならず、申立人の引用商標1及び2に化体した信用の下で商品の取引を行う需要者の利益も害されることになりかねない。
このように、本件商標は、著名な申立人の引用商標1及び2と類似する商標を不正の目的をもって出願したものと言わざるを得ず、よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 結語
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第11号、同項第8号、及び、同項第19号に該当するものであり、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標1及び2の周知性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 「大正製薬」の文字は、申立人の前身である大正製薬所の創業者によって、1912年(大正元年)に申立人の名称として採択されたものであり(甲15)、創業時から、申立人の商号の一部として、また、申立人の業務に係る商品の出所表示として継続的に使用されてきたものである(甲16等)。
また、2011年の大正製薬ホールディングス株式会社の設立による持株会社体制へ移行後は、「大正製薬」の文字からなる商標は、大正製薬ホールディングス株式会社が率い、大正製薬株式会社を中心として構成される企業グループである大正製薬グループ全体の出所表示としても使用されてきた(甲11、甲94、甲95、甲97、甲98、甲130〜甲132、甲135、甲176、甲177、甲201、甲230等)。
イ 申立人は、医療用医薬品の開発販売からなる「医薬事業」と、一般用医薬品(OTC医薬品)、栄養補助食品、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品といった各種商品の製造販売からなる「セルフメディケーション事業」の2つの事業を主軸として事業展開を行ってきており、現在申立人が展開する商品の数は主力製品群の一つである一般用医薬品(OTC医薬品)に限っても373種に及び、その他にも医療用医薬品、ドリンク剤・ビタミン剤・特定保健用食品といった栄養補助食品等、様々な種類の商品を販売しており、そのほとんどに「大正製薬」の文字からなる商標が使用されている(甲19〜甲89等)。
ウ 申立人の事業の中核をなす一般用医薬品(OTC医薬品)の分野では、2019年度及び2020年度には、市場シェア1位である(甲17、甲90)。
エ 申立人の業務に係る商品には、「パブロン」、「リポビタンD」、「大正漢方胃腸薬」等、多くのヒット商品・ロングセラー商品が存在し、「大正製薬」の文字からなる商標は、これらの製品パッケージや広告宣伝媒体において共通して使用されている(甲102〜甲111、甲129、甲240〜甲242等)。
オ 大正製薬グループは、大正製薬株式会社を含む国内13社、海外27社の法人から形成されている(2020年6月30日現在。甲17)。
カ 大正製薬グループの過去5年における年間売上高は、2016年度に290,135百万円、2017年度に279,773百万円、2018年度に280,092百万円、2019年度に261,551百万円、2020年度に288,527百万円であり(甲17等)、そのうち、セルフメディケーション事業(一般用医薬品(OTC医薬品)の他、栄養補助食品や化粧品・スキンケア商品、飲食料品等の事業も含む。)の年間売上高は、2016年度は180,722百万円、2017年度は179,992百万円、2018年度は183,996百万円、2019年度は180,123百万円、2020年度は220,027百万円であった(甲17等)。
キ 申立人は、医薬品及び栄養補助食品等の商品分野を中心に、化粧品・スキンケア商品及び飲食料品等の製品群について、マスメディアやインターネット等、様々な宣伝広告媒体を通じ、「大正製薬」の文字からなる商標を使用して全国的規模で宣伝広告活動を行ってきた(甲126〜甲136、甲240〜甲242等)。その広告宣伝費は、2017年に22,087百万円、2018年に22,579百万円、2019年に20,206百万円、2020年に26,046百万円、2021年には25,017百万円である(甲183〜甲187)。
ク 申立人は、「大正製薬」の文字からなる引用商標1と共に「大正」の文字からなる引用商標2も、申立人グループ全体で共通する出所表示として継続して使用されてきた旨主張しているが、「大正」の文字のみからなる商標が単独で使用されている例は極めて少なく、申立人の略称として広く使用されている事実は見いだせない。
(2)判断
上記アないしクによれば、「大正製薬」の文字からなる引用商標1は、1912年(大正元年)の申立人の創業時から申立人の商号の一部及び申立人の業務に係る商品の出所表示として継続的に使用されてきたことが認められ、また、申立人の業務に係る一般用医薬品(OTC医薬品)は、2019年度及び2020年度の市場シェアが1位であって、引用商標1が使用された医薬品及び栄養補助食品等の商品が大規模に販売されたことが認められる。
さらに、これらの製品群について、引用商標1を使用してマスメディアやインターネット等、様々な宣伝広告媒体を通じ、全国的規模で宣伝広告が行われ、その広告宣伝費は、2017年ないし2021年に、継続して約202億円ないし約260億円に上っている。
以上のことから、「大正製薬」の文字からなる引用商標1は、1912年以来、申立人の業務に係る商品を表す商標として現在に至るまで継続して用いられ、同商標を使用した申立人の商品は、近年、市場において高いシェアを占め、その宣伝広告活動は全国的に盛大に行われたことが認められるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時はもとより現在においても、申立人の業務に係る商品を表す商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
しかしながら、「大正」の文字のみからなる引用商標2は、申立人の証拠をみても、それが単独で商品に使用されている例は少なく、また、宣伝広告活動等においても、申立人の略称を表すものとして広く使用されている事実は見いだせないから、引用商標2が申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「大正薬研」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、等間隔に、視覚上、まとまりよく一体的に表されているものであり、外観上、「大正」の文字部分又は「薬研」の文字部分が、他の部分から独立して強調されているものではない。
また、本件商標全体から生ずる「タイショウヤゲン」及び「タイショウヤッケン」の称呼も、格別冗長というべきものではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中の「大正」の文字が、「大正天皇の時の年号。日本の地名の一つ」(デジタル大辞泉、精選版 日本語大辞典、ウィキペディア)等を理解させ、「薬研」の文字が、「主として漢方の薬種を細かくするための金属製又は硬木製の器具。」(広辞苑 第七版)を理解させる場合があるとしても、これらを組み合わせてなる本件商標は、直ちに特定の観念を生じない一種の造語として看取されるものであって、先に認定したとおり、本件商標は、いずれかの文字部分のみが着目され記憶されることはないから、全体が不可分一体のものとして、取引者、需要者に記憶されるというのが相当である。
してみれば、本件商標は、「大正薬研」の構成文字全体で取引に資されるとみるべきであって、「大正」の文字部分をのみもって取引に資されるというべき特段の事情は見いだせないから、該文字部分のみを捉えた称呼及び観念は生じないというのが相当である。
したがって、本件商標は、「タイショウヤゲン」及び「タイショウヤッケン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標3ないし7について
引用商標3ないし6は、前記第2の2(1)ないし(4)のとおり、「大正製薬」の文字からなり、引用商標7は、前記第2の2(5)のとおり、その構成中に「大正製薬」の文字を含むところ、いずれも同じ書体、同じ大きさにまとまりよく表されており、その構成全体から生ずる「タイショウセイヤク」の称呼も無理なく称呼し得るものである。
そして、「大正製薬」の文字は、上記1のとおり、申立人の業務に係る医薬品や栄養補助食品の出所表示として広く知られているものと認められる。
してみると、引用商標3ないし7からは、「タイショウセイヤク」の称呼及び申立人の商標の観念を生ずるものというのが相当である。
(3)引用商標8ないし11について
引用商標8ないし11は、前記第2の2(6)ないし(9)のとおり、いずれも「大正」の文字からなるところ、その構成は、それぞれ同じ書体、同じ大きさにまとまりよく表されており、これからは、「タイショウ」の称呼を生ずるものであり、また、該文字は、前述のとおり、元号や地名といった複数の意味を有する語であるから、当該文字から直ちに特定の観念は生じないものというのが相当である。
(4)本件商標と引用商標3ないし11との類否
本件商標と引用商標3ないし11の構成は、上記(1)ないし(3)のとおりであるから、両商標は、構成文字及び構成態様が異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
そして、称呼について、本件商標から生じる「タイショウヤゲン」、「タイショウヤッケン」の称呼と、引用商標3ないし7から生じる「タイショウセイヤク」の称呼を比較すると、両者は後半の「ヤゲン」、「ヤッケン」と「セイヤク」の音において明らかに相違する。また、本件商標から生じる上記各称呼と、引用商標8ないし11から生じる「タイショウ」の称呼を比較すると、両者は「ヤゲン」、「ヤッケン」の有無において明確な差異を有するから、本件商標と引用商標とは、称呼上十分に聴別することができるものである。
また、観念においては、本件商標からは、特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標3ないし11とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標3ないし11とは、非類似の商標というべきであるから、その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
「大正製薬」の文字からなる引用商標1が、上記1のとおり、申立人の業務に係る「医薬品及び栄養補助食品等」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるとしても、「大正」の文字からなる引用商標2は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず、かつ、本件商標と引用商標3ないし11は、上記2のとおり非類似の商標であるから、引用商標3ないし11と構成文字を共通にする引用商標1及び2もまた本件商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないものであり、また、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者が、申立人らの使用に係る「大正製薬」(引用商標1)及び「大正」(引用商標2)を想起、連想させるものではないというのが相当であって、申立人ら並びに同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品及び役務であるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じるおそれはないものというべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
申立人の業務に係る商品を表示する引用商標1は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものということができるとしても、引用商標2は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、外国又は我が国の需要者の間に広く認識されているものということができない。
また、上記2のとおり、本件商標と引用商標1及び2とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、申立人から不正の利益を得る目的、他人(申立人)に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、「大正薬研」の文字からなり、その構成中に「大正」の文字が含まれているものの、申立人が提出した証拠からは、「大正」の文字のみが、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず、当該文字が申立人の略称を表すものとして広く使用されている事実も見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成中に他人の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1
引用商標3(登録第2432441号商標)

別掲2
引用商標4(登録第1353981号商標)

別掲3
引用商標5(登録第1463118号商標)


別掲4
引用商標6(登録第2049414号商標)


別掲5
引用商標7(登録第2679445号商標)



別掲6
引用商標10(登録第5226221号商標)


別掲7
引用商標11(登録第2164493号商標)



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異議決定日 2022-07-06 
出願番号 2019167395 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W05)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 鈴木 雅也
小林 裕子
登録日 2021-07-12 
登録番号 6414450 
権利者 株式会社本吉
商標の称呼 タイショーヤゲン、タイショーヤッケン、タイショーヤクケン 
代理人 下田 一徳 
代理人 中川 慶太 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 松尾 和子 
代理人 中村 稔 
代理人 樋口 頼子 
代理人 藤倉 大作 
代理人 北原 絵梨子 
代理人 辻田 朋子 
代理人 ▲吉▼田 和彦 

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