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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1386407 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-11-04 |
確定日 | 2022-06-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6430581号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6430581号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6430581号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年10月1日に登録出願、第3類「化粧品,香料,石けん類,シャンプー,歯磨き,育毛料」を指定商品として、同3年7月21日に登録査定され、同年8月18日に設定登録されたものである。 2 引用商標及び引用標章 ア 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第6247390号商標(以下「引用商標」という。)は、「DESALMONDE」の文字を標準文字で表してなり、平成31年3月12日に登録出願、第3類「洗顔クレンザー,ベルガモット油,口紅,美顔用パック,キットになった化粧品,化粧品,歯磨き,ポプリ,芳香剤,浴用ローション」を指定商品として、令和2年4月22日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 イ 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するとして引用する標章(以下「引用標章」という。)は、別掲2とおりの構成からなり、申立人が、中国において著作物として著作権を有するとするものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 称呼について 本件商標は、欧文字「SALMON」と、円状の図形からなるものであり、その欧文字に対応して「サーモン」の称呼を生ずる。 他方、引用商標は、欧文字「DESALMONDE」から、「デサーモンデ」の称呼を生ずる。 してみれば、両商標は、語頭及び語尾の「デ」の有無の相違があるものの、引用商標は本件商標の称呼「サーモン」を完全に含むものであり、その称呼において類似の商標である。 イ 外観について 本件商標と引用商標は、語頭及び語尾の「DE」の有無の相違があるものの、引用商標は本件商標の文字列「SALMON」全てを含むものであり、その外観において類似の商標である。 ウ 観念について 本件商標は、欧文字部分から「サーモン(鮭)」の観念が生じる(図形の部分からはいかなる観念も生じない。)。 他方、引用商標は、申立人による造語であり、いかなる観念も生じない。 してみれば、両商標は、その観念において比較することができない。 エ 総合判断 上記アないしウの称呼、外観、観念を総合的に判断すると、本件商標と引用商標とは、互いに類似する商標である。 そして、両商標の指定商品は、前記1及び前記2のとおりであるから、同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号について 本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「SALMON(サーモン)」の語は、「サーモン(鮭)を原材料として用いた商品」を表示するものとして普通に使用されている事実がある(甲3〜甲15)。 してみれば、本件商標は、その構成中に「SALMON」の欧文字を有してなるものであり、これを本件商標の指定商品中「サーモンを原材料とする商品」以外の商品に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、申立人が著作物として著作権を有するものである(甲17〜甲20)。登録第2018−F−00606000号著作物(甲17、別掲2)は、欧文字「SALMON」及び図形の組合せであり、本件商標と比較すると、図形や若干ロゴ化された欧文字の細部に至るまで同一のものであるし、登録第2018−F−00515848号著作物(甲18)は、円状の図形からなり、本件商標と比較するとその図形部分の細部に至るまで同一のものであり、偶然の一致は考えられず、本件商標の商標権者が当該著作物を剽窃したことは明らかである。そして、中国及び日本はベルヌ条約の加盟国であり、申立人の著作権は当然日本においても保護されるべきものである。 してみれば、本件商標の商標権者が、本件商標を登録出願し、商標権を取得した行為は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審における取消理由通知(要点) 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、引用標章は2018年8月29日に中国において著作権登録されていること(甲17)が認められ、著作権登録証明書(甲17)の所有者の名称と申立人の名称が一致し、当該著作権登録証明書を申立人が証拠として提出していることから、引用標章に係る著作権は申立人が保有しているものと推認でき、引用標章は申立人保有に係る創作物であるといえる。 そして、引用標章は独創性の程度の高い標章であり、本件商標と引用標章は類似性の程度が極めて高いこと、引用商標の指定商品に「化粧品,歯磨き」などが含まれていること(甲2)から、申立人はそれら商品に係る業務を行う(又は行う意思を有する)者であること、本件商標の指定商品中に「化粧品,歯磨き」などが含まれていること、商標権者は本件商標の登録を受けることについて申立人に承諾を得ているとは認められないこと、を併せ考慮すれば、商標権者は、引用標章が我が国で商標登録されていないことを奇貨として、申立人が引用標章を使用して業務を行うことを阻止する等の不正の目的をもって、本件商標を登録出願したものと判断するのが合理的である。 そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その商標登録は、商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 5 本件商標権者の提出した意見書(要点) 本件商標権者は、取消理由通知書に記載の認定は誤った事実に基づいて判断されたものであることを確信している。以下に、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないことについて具体的に述べる。 ア 本件商標の創作の経緯及び著作権登録について 本件商標は、R氏という女性が中国において最初に、かつ、独自に創作した創作物であり、R氏が本件商標の著作権者である。 R氏は、2017年6月2日に、本件商標の図形部分に相当する創作物を創作し、当該創作物を中華人民共和国国家著作権局に著作物として登録した。作品登記証書によれば、本件商標の図形部分に係る著作物は、「登録番号:国作登字−2022−F−10031071」、「作品名称:竜巻ロゴ」、「著作権者:R氏」、「創作完了日:2017年6月2日」として登録されている(乙5〜乙10、別掲3)。 また、本件商標の図形部分と、その下に四角張った書体で「SALMON」の欧文字を表してなる標章についても、引用標章の創作時(2018年2月7日)より以前に創作されている。中華人民共和国重慶市渝信公証役場の公証人による公証書及びその証明過程を記録した動画によれば、本件商標と類似性の程度が極めて高い標章が、少なくとも2017年6月15日時点において、R氏により創作されている(乙11〜乙14)。 さらに、引用標章の創作時(2018年2月7日)より以前に、R氏により創作された本件商標と類似性の程度が極めて高い標章が、化粧品に使用されていた(乙15〜乙18)。 以上のとおり、引用標章の創作時(2018年2月7日)より以前に、引用標章と類似性の程度が極めて高い標章がR氏により創作され、著作権登録され、さらには化粧品に使用されていた。本件商標権者が本件商標の登録を受けることについて、申立人に承諾を得る必要は何ら生じないものである。 イ 商標権者が本件商標の真の著作権者から使用に関する承諾を得ていることについて 本件商標権者は、本件商標の真の創作者及び著作権者であるR氏から、R氏が創作した本件商標に係る図形部分の著作物の使用、図案のロゴ化、商標登録及び第三者への使用権の許諾について承諾を得た上で、本件商標に係る商標出願をしている(乙19、乙20)。 ウ まとめ 上述のとおり、本件商標は、R氏により最初に創作された著作物に相当するものであり、本商標権者はR氏からその著作物の使用等に関する承諾を得た上で、本商標権を得たものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 6 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、藍色で、外側が大きく、内側が小さく表された12の細長い涙滴形状の曲線を三重の円形状に描いた図形(以下「図形部分」という。)と、四角張った書体で表してなる「SALMON」の文字(以下「文字部分」という場合がある。)とを上下に配した構成からなる結合商標である。 そして、本件商標において、図形部分と文字部分とは、視覚上、分離して看取、把握されるものであり、また、全体として、特定の観念を生じるものでもなく、他に、両部分を常に一体不可分なものとして認識しなければならない特段の関連性は認められない。 そうすると、本件商標は、その構成中の図形部分と文字部分とを分離して観察することが、取引上、不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないことから、両部分がそれぞれ独立して、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえる。 以上からすると、本件商標は、「SALMON」の文字部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるところ、当該文字は、「(魚)サケ」の意味を有する語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)として我が国において広く親しまれているものであるから、本件商標は、その構成中の文字部分に相応して、「サーモン」の称呼及び「(魚)サケ」の観念を生じるものである。 イ 引用商標 引用商標は、前記2アのとおり、「DESALMONDE」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを有する語として知られているものでもないから、一種の造語として認識し、把握され、特定の観念を生じないものである。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「デサルモンデ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標との類否を検討すると、上記ア及びイのとおり、両者の外観は、構成態様が明らかに異なることに加え、構成文字のつづりを比較しても、語頭及び語尾において「DE」の文字の有無という差異を有するところ、この差異が6文字又は10文字という文字構成からなる外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、明確に区別し得るものである。 次に、本件商標から生じる「サーモン」と引用商標から生じる「デサルモンデ」の称呼とを比較すると、両者は、その構成音数、各音構成の相違及び音調の差異等により、それぞれを一連に称呼した場合においても、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念においては、本件商標からは、「(魚)サケ」の観念を生じるのに対し、引用商標からは、特定の観念が生じないから、両者は、観念上、相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において明らかに区別し得るものであり、称呼において明瞭に聴別し得ることができ、観念においても相紛れるおそれはないことから、その外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第16号該当性について 申立人が提出した証拠によれば、サケから抽出される「マリンコラーゲン」、「白子由来原料」、「ペプチド」等の成分が化粧品に用いられている(甲6、甲12、甲14。本件商標の登録査定時以前のものに限る。)ことはうかがえるものの、「SALMON」の文字が、本件商標の指定商品である化粧品等の原材料を表すものとして使用されている事実は見いだすことができない。 また、当審において職権により調査するも、本件商標の登録査定時において、「SALMON」の文字が、本件商標の指定商品の原材料を表示するものとして一般に使用されている実情は発見できず、また、取引者、需要者が、当該文字を、本件商標の指定商品の原材料を表示したものと認識するというべき事情も見当たらなかった。 そうすると、「SALMON」の文字は、本件商標の指定商品の原材料を表示するものということはできないから、本願商標をその指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 本件商標と引用標章の類否 (ア)本件商標 本件商標は、上記(1)アのとおり、図形部分と文字部分とを上下に表してなるものである。 そして、本件商標、特に図形部分は、12の細長い涙滴形状の曲線をまとまりよく三重の円形状に表してなり、独創性の程度の高いものというのが相当である。 (イ)引用標章 引用標章は、別掲2のとおり、黒色で、外側が大きく、内側が小さく表された12の細長い涙滴形状の曲線を三重の円形状に描いた図形(以下「引用標章の図形部分」という。)と、その右下に、四角張った書体で「SALMON」の欧文字(以下「引用標章の文字部分」という。)を表してなるものである。 (ウ)本件商標と引用標章の類似性の程度 本件商標と引用標章とを比較すると、両者は、色彩や、図形部分と文字部分の配置は異なるものの、本件商標の図形部分と引用標章の図形部分及び本件商標の文字部分と引用標章の図形部分は、いずれも同一の態様といい得るものであり、類似性の程度が極めて高いものといえる。 イ 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標件者提出の乙各号証及び同人の主張によれば、引用標章の創作時(2018年2月7日)より前の2017年6月2日に、本件商標の図形部分と類似性の程度が極めて高い別掲3のとおりの標章が、中国において創作されていることが認められ(乙5〜乙10)、また、当該標章は、中華人民共和国国家著作権局に著作物として登録されており(乙5〜乙8)、本件商標権者は、上記著作権の作品登記証書に記載された著作権者から、当該著作物の使用等に関する承諾を得た上で、本件商標を登録出願し、登録している(乙19、乙20)のであるから、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあったとはいえない。 また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的であるなど他人に不快な印象を与えるような構成のものではなく、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、社会の一般的道徳観念に反するもの、法律により禁止されているもの又は国際信義に反するものとすべき事情も見当たらないから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第16号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(色彩は原本参照。) ![]() 別掲2 引用標章(甲17) ![]() 別掲3 R氏が中華人民共和国国家著作権局に著作物として登録した標章(乙7) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-06-17 |
出願番号 | 2020121332 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W03)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
佐藤 淳 |
特許庁審判官 |
小俣 克巳 石塚 利恵 |
登録日 | 2021-08-18 |
登録番号 | 6430581 |
権利者 | 東京春日和株式会社 |
商標の称呼 | サーモン |
代理人 | 松崎 隆 |
代理人 | 安達 友和 |