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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0614213241 |
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管理番号 | 1386395 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-19 |
確定日 | 2022-07-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6381326号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6381326号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6381326号商標(以下「本件商標」という。)は、「FRODO」の文字を標準文字で表してなり、令和2年8月5日に登録出願、第6類、第14類、第21類、第32類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同3年3月23日に登録査定され、同年4月22日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議申立ての理由において引用する登録第4548857号商標(以下「引用商標」という。)は、「FRODO BAGGINS」の文字を表してなり、平成12年11月20日(優先権主張:2000年7月28日 アメリカ合衆国)に登録出願、第6類、第14類、第16類、第20類、第21類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成14年3月8日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。 (1)「ロード・オブ・ザ・リング」及び「FRODO」について ア 英国の作家ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンが執筆した世界的に有名なファンタジー小説「指輪物語」を実写により映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」3部作は「スター・ウォーズ」オリジナル3部作、「ゴッドファーザー」3部作を超えて、世界で最も商業的に成功した3部作となり、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作はアカデミー賞において高い評価を得ており、我が国でも、2002年から2003年にかけて「ロード・オブ・ザ・リング」として、3部作の映画が公開され大きな反響を呼び、さらに、2012年及び2014年にその関連作品「ホビットの冒険」3部作も国内で公開されている(甲2、甲3)。 イ 申立人は、独立系の映画製作会社であり、「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビットの冒険」の映画化権と商品化権を所有し、社名の要部である「Saul Zaentz(ソウル ゼインツ)」は、アカデミー賞を受賞した米国の映画プロデューサーであった故人の氏名であり、同人が設立した法人である(甲4)。 また、申立人は、1976年にジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンの著作権に基づいて「ロード・オブ・ザ・リング」及び「ホビットの冒険」の映画化権と商品化権を取得し、その後、他の映画製作会社にライセンスを供与し、その作品に関連した著作権を所有している(甲5)。 ウ FRODOは、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンの著作とその関連映画において、ホビット族の一人として創作された重要なキャラクターの名称であり、いわば主役に準じた地位にあるといえる(甲6)。 エ 「ロード・オブ・ザ・リング」の公開に際して、ポスターやパンフレットのほか、清涼飲料やビールなどの商品も販売された。 また、申立人は、映画製作とは別に事業活動を行う別部門の「ミドル アース エンタープライズ」(以下「ミドルアース社」という。)を設立し、同社を通じ、各種商品について商品化権に基づくライセンス業務を行っており、申立人のウェブサイトに「ミドルアース社」が作品のライセンスの申し込み窓口の連絡先として掲載されており、「指輪物語」と「ホビットの冒険」に関する独占権を有するミドルアース社を通じてライセンスが供与されている旨が記載されている(甲7)。 オ 申立人がライセンスした商品及び役務は、多岐にわたっており、FRODOに関してライセンスされた商品は、主に米国内でライセンスが供与されたものであるが、商品の説明として、FRODO(Frodo)が商標として明示されており、これらの商品は、例えば、amazon等のショッピングサイトを通じて世界のどこでもいつも誰でも容易に購入することができる(甲8)。 カ 日本国内でのFRODOに関する資料とライセンス商品の紹介として、映画自体の国内での興行収入は、「ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間」(2002年3月2日公開)が69,140,370ドル、「ロード・オブ・ザ・リング二つの塔」(2003年2月22日公開)が65,150,115ドル、「ロード・オブ・ザ・リング王の帰還」(2004年2月14日公開)が94,966,172ドル、「ホビット 思いがけない冒険」(2012年12月14日公開)が19,213,976ドルである(甲9)。 そして、FRODOは、映画の主要キャラクターであり、「ロード・オブ・ザ・リング」では2028の場面に登場している。また、日本国内でポスターが頒布され、FRODO商標について商品化された商品も含まれている(甲9)。 キ このように公開された映画作品が世界的に大きな人気を得たことに加えて、申立人のライセンスによる各種の商品(以下「申立人商品」という。)にFRODO商標が付されて世界的に頒布されている事実を考慮すれば、FRODO商標は、申立人が所有する商標として広く認知されている。 我が国で広く利用されている検索エンジンにおいて、「FRODO」を検索すると、ジョン・ロナウド・ロウエル・トールキンの著作とその関連の映画に登場するホビット族の一人として創作された重要なキャラクターの名称 が最初に検出されることからも、FRODOは、このキャラクターの名称として広く認知されているというべきである(甲10)。 ク 申立人は、FRODOに化体された信用を保護するために日本国内で引用商標を所有しているが、世界各国でFRODO(又は、FRODO BAGGINS)の商標を獲得している(甲11)。 (2)商標法第4条第1項第15号について FRODOは、申立人の映画作品に登場する著名なキャラクターの名称であるとともに、申立人の商標としても世界的に広く認知されていることから、本件商標がその指定商品又は役務に使用されると、あたかも申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるため、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反する。 (3)商標法第4条第1項第16号について 本件商標がその指定商品又は役務に使用されると、申立人が厳しい品質管理のもと商品化権のライセンスを供与している商品又は役務であるかのごとく誤解を与えることから、品質の誤認を招き、商標法第4条第1項第16号に違反する。 (4)商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について 著作権者及び商標権者である申立人と別人である本件商標権者が、申立人の映画作品に登場する著名なキャラクター名称であるとともに、申立人の商標としても世界的に広く認知されているFRODOを盗用して使用しようとするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するとともに、そのような行為は信義誠実を旨とする国際商取引秩序を危うくする行為であるから、本件商標は同項第7号にも違反する。 4 当審の判断 (1)引用商標及び「FRODO」の周知性について ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)「ウィキペディア」のウェブサイトにおいて、3部作よりなる映画「ロード・オブ・ザ・リング」は、全世界における累計興行収入が29億1000万ドルに達しており、また、同映画について、アカデミー賞で30回ノミネートされ、そのうち17回受賞したことが記載されている(甲2)。 また、「ロード・オブ・ザ・リング」は、我が国において2002年ないし2004年にかけて公開され、2001年及び2002年に発行された国内の新聞、雑誌等において、同映画の公開にあたり、「300億円大作「ロード・オブ・ザ・リング」」、「世界中のファンが待ち望むファンタジー大作の一部がカンヌで初公開された」、「史上空前の超大作の秘密を解く!」のように紹介されている(甲3)。 なお、上記ウェブサイトや新聞、雑誌等において、「ロード・オブ・ザ・リング」の登場人物の一人として、「フロド・バギンズ」が紹介されており、当該記事中に「フロド・バギンズ」の略称として「フロド」の記載も見受けられる(甲2、甲3、甲6)。 (イ)申立人が有する著作権の証明書写とする証拠によれば、申立人は、「FRODO DISAPPEARS」というタイトルの音楽作品及び「Middle−earth 2017Calender」に係る著作権を有し、上記音楽作品のタイトルに「FRODO」の文字が含まれ、上記カレンダー中の挿絵の一部の説明に「FRODO(フロド)」の記載がうかがえるが、当該音楽作品及びカレンダーには、「FRODO」の文字単独の使用は見いだせず、売上高等も確認できない(甲5)。 (ウ)FRODOに関するライセンス商品には、フロド・バギンズをモチーフとしたフィギュアやTシャツ等が含まれ、国内外でこれらの商品が販売されていることがうかがわれ、当該商品名に「FRODO(フロド)」の文字の表示が見受けられるが、当該商品の売上高や広告宣伝費等は確認できない(甲8、甲9)。 (エ)我が国の検索エンジンにおける「FRODO」の検索結果によれば、「フロド・バギンズ(Frodo Baggins)」に関するものが検出できる(甲10)。 イ 上記アによれば、映画「ロード・オブ・ザ・リング」は、2002年から2004年にかけて我が国において公開され、全世界の累計興行収入、アカデミー賞等の受賞歴、我が国の新聞、雑誌における同映画の記事の内容からすれば、ある程度知られていたといえる。 しかしながら、「FRODO BAGGINS(フロド・バギンズ)」又はその略称としての「FRODO(フロド)」は、我が国のウェブサイト、新聞及び雑誌において、「ロード・オブ・ザ・リング」に登場する登場人物の一人として紹介されたことはうかがわれるが、当該記事における「FRODO BAGGINS(フロド・バギンズ)」については、例えば、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」、「「ロード・オブ・ザ・リング」キャラクター図鑑」等のタイトル下での登場人物の説明としての記載や映画の特集記事の一部としての記載にとどまり、また、その略称としての「FRODO(フロド)」については、ほとんどが当該記事中の説明的な記載にとどまるものであるから、新聞、雑誌等を通じて、「FRODO BAGGINS(フロド・バギンズ)」又はその略称としての「FRODO(フロド)」が、需要者にどの程度認識されていたかを把握することができない。 また、「FRODO」の文字をタイトルに含む音楽作品や「FRODO」の文字を挿絵の一部の説明に有するカレンダーが存在していたことは認められるが、当該商品に「FRODO」の文字単独の使用は見いだせない。 さらに、FRODOに関するライセンス商品が国内外で販売され、これらの商品名として「FRODO(フロド)」の文字が使用されていることがう かがえるとしても、当該商品の売上高などの販売実績及び広告宣伝費などについては、その事実を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。 なお、「FRODO」の検索エンジンの検索結果をもって、「FRODO(フロド)」が「FRODO BAGGINS(フロド・バギンズ)」の略称として認識されていたとはいえない。 よって、申立人提出の証拠からは、引用商標及び「FRODO」が、我が国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。 その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標及び「FRODO」が広く知られていることを認めるに足りる証拠の提出はなく、引用商標及び「FRODO」の周知性を認め得る事情は見いだせない。 してみると、提出証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標及び「FRODO」が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本件商標と引用商標の類似性の程度について (ア)本件商標は、上記1のとおり、「FRODO」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「フロド」の称呼を生じるものである。 また、当該文字は、一般の辞書等に載録のないものであり、かつ、特定の意味合いを想起させる語として知られているような事情も見いだせないものであるから、特定の語義を有しない一種の造語として認識されるというのが相当である。 そうすると、本件商標は、「フロド」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (イ)引用商標は、上記2のとおり、「FRODO BAGGINS」の文字を表してなるところ、その構成文字は、同書同大で表されており、視覚上まとまりよく一体的に把握できるものであって、これより生じる「フロドバギンズ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 また、「FRODO BAGGINS」の文字は、一部の辞書において、「フロド・バギンズ(J.R.R.Tolkien,The Lord of the Ringの主人公;Hobbit族の一人)」(リーダーズ英和辞典 第3版)の意味を有する語として載録されているものである。 そうすると、本件商標のかかる構成においては、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「BAGGINS」の文字を捨象し、「FRODO」の文字のみに着目すると判断し得る特別な事情はなく、本件商標の構成文字全体をもって一連一体のものとして把握するとみるのが相当である。 したがって、引用商標は、その構成文字全体に相応して「フロドバギンズ」の称呼を生じ、「ロード・オブ・ザ・リングの主人公としてのフロド・バギンズ」ほどの観念を生じるものである。 (ウ)本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、外観においては、「BAGGINS」の文字の有無に差異を有するものであるから判然と区別できるものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる「フロド」の称呼と引用商標から生じる「フロドバギンズ」の称呼とは「バギンズ」の音の有無の差異により、両商標は、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を有しないのに対し、引用商標は「ロード・オブ・ザ・リングの主人公としてのフロド・バギンズ」の観念が生じるものであるから、両商標は、観念において、相紛れるおそれはないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において明らかに相違し、称呼において明瞭に聴別できるものであり、観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらを総合して判断すれば、互いに別異の印象を与えるものであり、その類似性の程度は低いものである。 イ 出所の混同のおそれについて 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標及び「FRODO」が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認めることができないものである。 また、上記アのとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が低いものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について 上記(1)のとおり、引用商標及び「FRODO」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認められないものである。 また、上記(2)アのとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が低いものである。 そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若 しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、さらに、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。 さらに、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。 そうすると、申立人提出に係る証拠からは、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、「FRODO」の欧文字を表してなるところ、上記(2)ア(ア)のとおり、本件商標は、特定の観念を生じないものであり、本件商標の指定商品及び指定役務との関係において、当該文字が商品の品質及び役務の質を具体的に表示するものとして取引上一般に使用されている事実は見いだせず、また、需要者に商品の品質及び役務の質を表示するものと認識されるというべき事情もない。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、商品の品質及び役務の質について誤認を生じるおそれがあるものとは認められない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2022-06-30 |
出願番号 | 2020096744 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W0614213241)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
渡邉 潤 小田 昌子 |
登録日 | 2021-04-22 |
登録番号 | 6381326 |
権利者 | 株式会社カカオ |
商標の称呼 | フロド |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |